一気に公開するシリーズラスト!
三話目の終わりですね。
最後は彼岸くんらしい一言で締め括られてますので、お楽しみに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
↓↓↓↓
【メトロポリス『ICPO本部地下88階』-始まりの塔入口-】
ICPO本部は地下50階以下に入るには、長官レベルのIDカードが必要である。
それは、地下50階以下からは世界規模で極秘レベルとされる物を秘匿にしているからでおり、その存在は天来学園上層部と神封鬼一級以上の執行官、ならびにこのICPO内のごく限られたものたちのみである。
その秘匿にされているものは、この世界が作られるより遥か昔……まだ、とある世界が存在していた頃の遺物。
全扉を保管していたとされる、塔……始まりの塔。
神が舞い降り、生物を生み出したとされる聖域に建てられた神のための建築物。
とある世界崩壊後、天野教授たちにより移設され、現在はこの場所に保管されていた。
地下50~88階最下層部までがこの塔を保管するためだけに作られた空間であり、秘匿とされた聖域でもあるのだった。
そして、ここには数多くの滅ぼされかけた一族や種族が匿われており、普段彼らはこの塔で暮らしている。
例えば時を読む一族、例えば空間を繋げる一族、そして……世界の記録を保存する一族など。
「やあ、待っていたよ皆さん」
地下88階のフロアに降りると、そこで出迎えたのは優しそうな顔をした白熊の獣人だった。
服装は和装ではあるものの、伝統的な衣装か?というような趣のある腰帯などが特徴であった。
「ここにきたってことは、ワシに用があってってことだろ?」
「そうですね、記録者(ログホルダー)……いえ、霜月闘神(しもつきとうじん)……世界の記録を保存する者よ」
霜月一族末裔にして、最後の生き残り……霜月闘神。
猫探偵フェイク=ミラージュの専属執事にして、相談役でもある。
フェイクが唯一迷い事があるときに相談する男であり、そして天野教授たちの知らない幾重もののあらゆる世界の記録を保管する者……それが彼である。
「天野迅雷くんが命懸けの犠牲により、世界の未来はようやく確定されました……これまで、秋月紅葉による虐殺、魔王インフィニティーによる時間凍結、惑星老化による滅亡、始まりの神による実験などなど、多くの事象や出来事により他の未来は絶望的な状況で滅んでいきました……しかし今回、ようやく全ての黒幕であった秋月楓を葬ることにより、その全ての絶望的な未来は消滅しました……たった一人の人間がここまでの事を成し遂げてしまうのは本来あり得ないこと……しかしながら、迅雷くんはそれを成し遂げてしまった……さすがはあなたのお子さまですね、ボルさん」
「いや、そんなに誉められても嬉しすぎるけど……今日はそれを聞きにきたんじゃない」
「分かっていますとも……迅雷くんを蘇らせたい……でしょ?」
その言葉を聞いた瞬間、彼岸もオズも……そしてボルでさえも、希望や活力が漲ってきているのがわかった。
嬉しそうに尻尾を揺らしている三人に対して、霜月闘神はまずはこちらに、と始まりの塔内にある自室へと案内してくれたのだった。
そこは、始まりの塔における図書館のような場所で、紙媒体の書籍から電子媒体、果ては石媒体まで多くの書物が並んでいた。
これら全ては世界を記録していたものであり、一冊で一世界分の知恵と知識が詰め込まれている。
そんな貴重品だらけの中で、悠然と泡風呂に浸かっている男と、さしてそれを世話する二人の姿があった。
猫探偵フェイク=ミラージュ、そして専属執事の白虎獣人のレインと黒兎獣人の葬であった。
「坊っちゃん、だからここで泡風呂には入らねーでくれって言ってるだろ」
「ごめんなさい闘神。 しかし、隠匿森での葬儀の後で大急ぎで戻ってきたので、汗をかいてしまっていてその状態でお客人を招くわけにはと……」
「いや、もう客人来てるから……」
「失敬……レイン、もう上がります。 後片付けをよろしく」
「はい、フェイク様……っ!」
振り向いたレインの目先には光の賢者ボルの姿があった。
実はこの二人……ボルとレインは犬猿の仲と呼ばれており、三日三晩殺しあった程にお互いを嫌っているらしく……普段なら確実に戦闘が始まるのだが……。
「お悔やみ申し上げる……光の賢者殿」
「ありがとうよ……英雄さん」
最愛の息子が亡くなったばかりに、さすがにレインは同情していた。
もしも、自分で言うところのフェイクが亡くなってしまったら……それと同じ目に今彼はあっている。
故に、レインは特になにもせずフェイクに指示された片付けをせっせとこなすのであった。
一方、葬はといえば……。
「こいつがオズ……」
「??」
「ユキヒョウ……かわいい」
「うわっ!いきなり尻尾をふわふわしないでください!」
「もっと、さわる……」
実は葬はかわいいもの好きなため、ユキヒョウの子供であるオズに夢中であった。
さて、物語は再び進んでいく。
霜月により、客間に案内された彼岸たちはフェイクと霜月闘神との対談をしていた。
というより、彼らは聞きたかったのだ。
黄泉の国へ囚われたものを救う方法を。
「ワシの知る限り、実例としてはありとあらゆる並行世界でも黄泉の国に囚われた者を連れ戻すなんてのはないな……」
「やはりな……黄泉の国は閻魔一族が支配する世界の境界線たる国だ。 天野教授でさえ、足を踏み入れれば安全に戻れるか分からない世界……。 そう易々とはうまく行かないか」
「しかしながら、黄泉の国を往き来する生物は過去に存在していた記録はありましたな……」
「!? 本当ですか?」
「ただ、その存在は伝承……つまりは、実在するかどうかさえも怪しい存在……正直確証は得られておりません」
「でも……伝承があるってことは、いるかもしれないんですよね?」
「かもしれない……全くのゼロかもしれないし、ゼロではないかもしれない……」
「だったら……探します。 僕たちが世界をめぐって……」
夜見野彼岸は泣き虫であった。
事あるごとに怯え、決して自分でなにかをすると言えるほど昔は強くなかった。
それを記録者である霜月は記録していたからこそ、彼の成長さには目を見開いて驚いていた。
ここまで彼を精神的に育て上げたものがなんなのか……いや、それは言わずとも分かるまい……と。
「僕たちもって、彼岸殿、流石にボルさんやオズくんも同じ考えかどうかは……」
「何を言っているんですか、霜月闘神。最愛の息子を救えるなら喜んで身を投じますよ」
「僕も迅雷には命を助けてもらった借りもあるし……また一緒にスープ作りたい……だから、行く」
「ね?言ったでしょ闘神。 彼らは行くと」
「そうですね、フェイク坊っちゃん……こうなることも運命だったのですな……では少々お待ちを……」
と、霜月は懐からタブレットを取り出すと、そこから5枚の写真を彼岸たちに見せるのであった。
「これは『麒麟』……『黄龍』とも呼ばれる幻獣です」
「『麒麟』……陰陽師の世界でも聞いたことあります。 四聖獣『朱雀』『玄武』『白虎』『青龍』を生み出したとされる始まりの聖獣……」
「そう……東西南北を司る四聖獣の中央に座するこの獣は、不死の力を持ち、更にはあらぬる世界へ渡航できたと言われています」
「その麒麟が黄泉の国へと往来できると?」
「厳密に言えば、麒麟に関する何らかの力があれば可能だと、ノース文明と呼ばれる滅びし国の文献には載っておりました」
「ほほう……」
「ですので、皆さんにはノース文明の跡地を巡って欲しいのです」
「麒麟の情報ではなく、ノース文明の?」
「はい……麒麟の情報はこちらでもっとかき集めておきます……今はそれより、麒麟に関する何らかの力……それを使役していたノース文明の跡地を巡る方が、麒麟を見つけた時でも力を行使できるかと……」
「なるほど……では麒麟については霜月闘神……あなたに任せます……」
「それと、私からもひとつ頼み事をしたい」
それは、隣にいた猫探偵フェイクからの言葉であった。
「これは、私からの正式な依頼です……ボルさんやオズくんではなく、彼岸くんだけに……」
「え?なんでしょう」
「実は……」
えっ?
【メトロポリス駅】
ICPO本部を後にした彼岸一行は、メトロポリス駅に来ていた。
獣人中央都市の一番大きな駅ゆえ、獣人ごみで溢れかえっていた。
「では彼岸……ここからは我々は別行動だ」
「はい。 ボルさんはオズを連れて二人で……僕は式神たちと共に二人の反対側方向から世界を巡ります」
「まあ、オズ単体じゃ心配だし、ついでに道中稽古をつけてやろうと思ってな」
「ボルさんの修行厳しいって雷オーナーいってたけど、僕大丈夫かな……」
「修行終わったら毎回アイスやるよ」
「やります!!!」
子供かっ。
「それにしても、彼岸。 猫探偵からの依頼……一人で大丈夫か? 流石のお前でも……」
「まあ、これも修行ですね。 何とかします。 僕は天海の陰陽師『夜見野彼岸』ですから」
「わかった……じゃあ、またな」
「はい、またこの街で会いましょう」
こうして僕の旅は始まったのだった。
天野迅雷……親友の恋人を助ける旅へ。
例え、親友の紅葉から嫌われようとも、僕は彼には幸せになって欲しい……昔僕を絶望から救ってくれたかけがえの無い愛すべき友の幸せを願って僕は歩みを始める。
僕の名前は夜見野彼岸……天海の陰陽師にして獣人陰陽師の長だ。
なにも心配はいらない……必ずみんな救ってみせる。