先行公開小説
Added 2021-12-03 05:09:18 +0000 UTC部屋に入れられ、ガチャリと鍵を閉められる。 そのままご主人様は僕の腕を引き、ゆっくりとベッドまで移動した。 ベッドにゆっくりと腰を下ろしたご主人様が僕を見据えながら 「分かっているね?」 と静かに口にする。 涙を堪えながらゆっくりと頷いた僕を確認してから、ご主人様は僕を膝の上に横たえた。 自然と体が震えてくる。 背中に手を置かれる。 一刻一刻がとても長く感じられた。 「…ごめん……なさい…」 そう小さく口にすると自然な流れで軽く頭を撫でられた。 そして何事も無かったかのように再び背中に手を添えられる。 怖い…… ランプの明かりだけがこの部屋を照らしている。 頼りないこの灯りが僕の心の揺らぎと恐怖を表しているかのように仄かに揺れ動く。 「ごしゅ…じん……さま……」 震える指先を祈る様にして重ねてから出来た隙間に顔を埋めた。 「…どうしてお仕置きされるのかな?マッディ」 静かにそう尋ねながらご主人様はゆっくりと僕の下着を下ろす。 冷たい空気に晒される感触… でもその数秒も経たないうちにやってくる手の温かさ。 お尻を撫でてもらってる…今は……まだ。 「……ぃい…つけ……破ったから……」 「そうだね、どうして言いつけ破ると怒られるのかな?」 「んっく……いけない事…だから……ひっく」 「それもそうだね、どうしていけないんだと思う?」 「ご主人様…が……困る……から?」 正直この答えにあまり自信はなかった。 最近悪い事をすると何時もこんなふうに考える時間を設けられる。 痛みに泣き叫んでいる間よりも正直辛かった。 何も考えずただ自分が出来損ないだからと言う理由だと言い聞かせて泣いている方が僕にとっては気が楽なのだ。 今までも……これからも でもそういう訳には行かないらしい。 「そうだね、僕はどうして困るんだと思う?」 僕は小さく首を横に振って分からないと答える。 「お前の事が大切だからだよ?」 そう……この答え…この答えを聞くのが嫌だった。 嫌なんだよ僕は大切にされるのも愛されるのも全部全部嫌なのに求めてしまう。 分かっているのに…いつか終わる事が、飽きたら捨てられてしまうことが。 それならば早めに飽きられるように振る舞えばいい。 そしたら早めに捨ててもらえるから でも…どうして…僕なんかを…どうして… どうせ飽きられるのなら捨てられるのなら壊して欲しい、理不尽な暴力で傷付けて欲しい。 僕に貴方を恨ませて欲しい。 …それなのに どうしてこんなにも優しい痛みを僕に教えるの? 壊す時に楽しいから? 信じてしまった僕を笑いながら蹴り飛ばすのが楽しくて楽しくて仕方が無いから? 分からない分からない… こわい…こわい…こわい 恐怖からか涙が溢れてきてしまっていた。 綺麗な白いベッドシーツが僕の涙で汚れてしまう。 僕は悪い子だ…。 これだけの事で殺されてもいいほどに無価値で…死んだ方がマシな程に…僕は… 「マッディ…」 ご主人様はまだ僕を撫でてくれている。 気付けば頭もまた撫でられていた。 早く…早く痛みが欲しい… 全てを忘れてしまいたい。 死んでしまいたい… 僕は…俺はどうしたらいいんだろう 苦しくて辛くて愛されていることを信じたくなかった。 嫌ってくれないのなら、傷付けてくれる人が居ないのなら自分で自分を傷付けるまでだ。 そうしないと僕の存在意味は無いから… 存在価値がないから… 早く…早く傷つけてくれ。 早く…そうじゃないと俺おかしくなりそうなんだよ もう…もう…ダメなんだよ僕とっくの昔にダメなんだよご主人様… ご主人様ご主人様ご主人様… 「お前が大好きだから怒るんだよ?」 ご主人様の声色はゆっくり優しく僕の中に染み込んでくるように温かい。 「さてと…また自分を傷付けようとしたね?」 「それに寝てないしご飯も食べていないし…はぁ……」 「…ごめ……なさい」 「お前が心配だから怒るんだよ?分かる?」 僕はぎこちなくゆっくりと頷く。 そうしないといけない様な気がしたから。 その場しのぎの了承だ。 「…本当はこんな風に怒ったりしたくないんだけどね…」 「お前には痛みでいけない事なのだと認識させるのが1番手っ取り早いらしい…」 「本当は…もっと別の方法でちゃんと分かって欲しいのだけど…」 「それはもっと時間を掛けてゆっくり少しづつ分かって行ければいいから…」 「今はとにかく…」 「もう絶対にしちゃいけないよ?マッディ」 そうご主人様が頭上でニッコリと笑うのを微かに感じた。 バチィイイインッ!!! 「っ!!!!!あぁああああああ!!!」 久しぶりのご主人様のお仕置きは手加減等まるで感じさせないような強烈な一撃から始まった。 全身が揺さぶられ、恐怖と痛みで身体がガタガタと震え出す。 先程までの優しく温かい雰囲気で僕の体の力が完全に抜けきっていたので正真正銘ダイレクトにその痛みが僕の脳神経に伝わってきた。 バチィイイイン!! 「ああぁああ!!いだいいぃいいっ!!!」 痛みで壊して欲しいなんて願っていた自分のことを呪ってしまいたくなるような痛みだ。 とても耐えられるようなものじゃない。 バシィイイイイッ!!! 「ああっああ!あああ!!ごめんなざああいいぃいいい!!ごめんなさいいいいい!!!わあああああっ!!」 身をよじる様にして泣きじゃくりながらわあわあと叫び声をあげる。 バッチィイイイン!! 「ひいいいいづ!!!ああああ!!いひゃあいいいい!!ああああごめええなあいいいいい!!わああああっ!!」 更に身を捩りながら僕が暴れ出したのを見て、ご主人様が手を止めてゆっくりと僕の姿勢を整える。 「次なんて無いけど、次したらどうなるのかきっちり分からせてあげるよ?マッディ」 その冷たい声色は本当はどれ程ご主人様を怒らせていたのかを僕に理解させるには十分過ぎる程冷たかった。