ヒトブタの飴食い競争#2ヒトブタの飴食い競争はクラスから女子が一人強制参加です
Added 2021-11-15 09:21:42 +0000 UTC液晶モニターの中の石見先輩が言葉を続ける。
「以前というか昭和初期までは豚になるのだから裸になるのが当たり前」
酷い言い草だ。
「この様な装具もなかったので」
だれがこんな装具作ったんだ。
「参加する女子生徒は裸で手足を麻縄で括られて競技をしていました」
当時の白黒写真が映し出される。
聖豚が女学校時代の写真であろう、体育祭なのに本当に裸で飴食い競争をしている信じられない光景だ。
「時代の流れと共に参加する女子学生達から裸は嫌と言われ、褌にさらし巻、水着やハイレグレオタードと変わっていきましたが」
昔の裸で参加させられていた女子達は怒っても良いと思う。
「もっと肌を隠して欲しいとの要望が高まり、朝田さんが着ている物になり」
要望を出し過ぎてそれを逆手に取られて、水着やハイレグレオタードよりも変態な物を着させられてるじゃない、今の物に変更の決定打になってしまった要望を出した女子生徒はほんとありがた迷惑だ。
「手足を括る縄も跡が残って恥ずかしいとの理由から、幅広の布を使用してみたり等の試行錯誤をしたそうです」
手足に残った縄の痕なんて見られたら、女子〇生なのにSM好きの変態女子〇生って思われても仕方がない。
「そして五年前からは今、朝田さんが着ている物と装着していてる豚の装具になったそうです」
豚の装具を装着している朝田先輩を見て私はゾッとしているし、クラスの女子達も引き気味の反応だ。
ただ、男子は好奇の視線や明らかに興奮して欲情している熱い眼差しを送っている者もいる。
「飴食い競争の内容も簡単に説明しておきます、参加者はこの姿になりグランドのコースを走ります」
走るってあの恰好と姿勢のままで? 無理に決まってるじゃない!
「もちろん飴食い競争なので途中に飴を口の中にいれる箇所があります、そこで飴を口の中にいれたらゴールまで走ってください」
そこは普通の飴食い競争なんだ。
「ゴールにお皿がありますのでそこに吐き出してください、途中で吐き出す失格となりますので注意してくださいね」
ちゃんと口に入れたか最後に確認される訳か。
「飴食い競争の内容はこんな感じですね、あと当日まで秘密の装具もありますのでお楽しみにしていてくださいね」
秘密の装具、悪い予感しかしない。
「尚、途中で失格となってしまった参加者にはペナルティがあります、毎年厳しいペナルティになっていますのでくれぐれもご注意してください」
厳しいペナルティっていっても所詮は体育祭の一競技なのだからたかが知れてるでしょ。
「そしてミス聖豚に輝いた参加者は交流校や近隣の学校との交流イベントや学園祭等の訪問、地域でのイベント等にも聖豚〇校の代表として参加する事になります」
これはちょっと面倒そうね。
「〇校生活においても特別待遇を受ける事ができます」
スカートを短くしても怒られないとか?
「大学進学において希望する大学からの指定校推薦がある場合は優先的に与えられます」
えっ、それって凄いことなのでは?
みんなもそう思ったのか教室内がざわつく。
「ほら静かに聞け」
担任の武沢先生がたしなめる。
聖豚は進学校の中でも有名な〇校だ。
世間一般での高偏差値大学はもちろん、国内最難関と言われる大学からも指定校推薦を受けている。
「この特別待遇の恩恵はミス聖豚を輩出したクラス全員に与えられます、これはクラス全員が一丸となって参加者を応援して貰う為です」
うちのクラスからミス聖豚が出たら凄い事になるね。
「但し、飴食い競争と美人コンテストの総合点で一位になっただけではミス聖豚の称号は貰えません」
まだ他に何かやらせるつもりなのか? ミス聖豚の特別待遇を考えたら当たり前か。
「天川聖羅の牝豚は性欲も強かったとの事なので、毎日女性用性欲増進剤の服用――」
なにそれ? 生徒にそんな物飲ませるなんてふざけてる。
「私の着ているラバー制服一式と――」
石見先輩がラバースカートを捲り上げる。
てっきり朝田先輩と同様にピンクの全身ラバースーツが見えると思った。
いや確かに見えた、石見先輩はピンクの全身ラバースーツを着ている、ただ股間部分を金属の何かが覆っていた。
「貞操帯を着用して登校する事――」
貞操帯って歴史の授業で聞いた事はあるけど本物って実在するんだ。
「この同意書にサインして始めてミス聖豚の栄誉と権利を得る事ができます」
クラスの女子に動揺が広がりざわつく。
「同意書にサイン後、規約を破る事があれば退学処分となります」
石見先輩が足元の朝田先輩を指さす。
「あ、因みに朝田さんも貞操帯を着用して登校していますが、今は豚の装具の着用実演の為、校長先生から特別に貞操帯を外す許可を得ています」
女子達からは不安の声が上がり始めている。
「これは自分がミス聖豚だと〇校生活の間、常に自覚を持って頂く事としてやって頂きます」
「ほらそこ静かに」
女子達の声が大きくなってきたの武沢先生の注意が飛ぶ。
「この体育祭当日の閉会式でミス聖豚の権利を得られた女子生徒を発表し、その場で同意書にサインをした時のみ、ミス聖豚の称号を得られる事になります」
クラスの女子全員の顔が強張っていく空気を感じる。
その場であんな事をさせられる同意書にサインさせられるのか。
「もちろんミス聖豚の権利を得られた女子生徒には同意書の拒否権はありますのでご安心ください」
クラスの女子に安堵が広がる。
でもまってその言葉に安心できる?
ミス聖豚の特別待遇の恩恵はクラス全員に及ぶんだよ?
本当にみんなの前で拒否できる? しかも大勢の父兄も見ている体育祭の閉会式でだよ?
私には拒否する自信はあるかどうかわからない。
「同意書のサインを拒否した女子生徒のクラスと最下位の女子生徒のクラスにはペナルティがあります」
さらにペナルティまで科せられるなんて。
「ペナルティは毎週金曜日の放課後に校門から駅までの道と駅周辺のゴミ拾いをクラス全員でして貰います、毎週月曜日と水曜日に三年生と二年生がやっているのを見た事あると思います」
あっ、二年生と三年生が毎週やっていたのはこの最下位の女子生徒の居るクラスだったのか。
「このゴミ拾いは卒業式まで必ず毎週金曜日です、祝日休み、夏休み等の長期休暇期間中もやって貰います」
クラス全員から非難の声が上がる。
「参加しなかった生徒は一回の不参加に付き一週間の停学処分になります、長期休暇期間中も同様になりますので注意してくださいね」
夏休みの暑い日も曜日まわりによってはクリスマスと元旦も登校して道の掃除か。
「飴食い競争の説明は以上となります、一年生の皆さんはこれより各クラスの代表を決めて貰います」
え? 今から?
「代表選考の方法は各クラスにて自由に行ってください、立候補、推薦、多数決、くじ引き、なんでも構いません決まるまで今日は下校できません」
立候補者は流石にいないだろう。
「ミス聖豚へのヒントを一つ教えてあげます、重視されるのは飴食い競争のタイムや順位ではなく美人コンテストでの得票数です」
だから石見先輩も朝田先輩も美人でかわいいのか。
「私達からは以上となりますでは代表選考に移ってください」
テレビ集会が終わり武沢先生が液晶モニターの電源を落とした。
「よしみんな理解したなうちのクラスからミス聖豚が出れば恩恵はでかい、石見が出したヒントを良く考えながら代表選考をしてくれ、青木、司会を」
武沢先生に指名されたクラス委員の青木君が教卓に立つ。
生贄選びの始まりか。
「えーじゃあ始めます、立候補する人いますか?」
女子はもちろん誰一人として立候補しない。
無言の教室で時間だけ過ぎていく。
青木君が一人の女子生徒に声を掛ける。
「赤井さんどう? やってみない?」
赤井さんはもう一人の女子のクラス委員だ。
「えっ、わ、私は、いや、遠慮します、クラス委員だし、かわいくないし」
赤井さんはそう言ってはいるが十分かわいい、石見先輩や朝田先輩に引けを取らずミス聖豚に選ばれて誰も不思議に思わないだろう。
その後も無言のまま二時間が過ぎた。
ミス聖豚に選ばれればその後の〇校生活が大変になるのは明らかだし、もし最下位になったらペナルティでクラス全員に迷惑が掛かる。
誰もやらないなら、じゃあ私がやりますとは気軽に言える物ではない。
青木君が数名の女子に声を掛けるがみんな固辞してしまう。
女子達の沈黙。
これは議論の拒絶を意味する。
代表は女子しかなれないのだからね。
男子達は女子の誰かに押し付けるのは気が引けるし、もし押し付けた女子が最下位になってしまった時のペナルティが怖くて簡単に口出しできない。
武沢先生もこうなる事がわかっていたのか口を出さない、今まで受け持ったクラスでの代表の決め方やミス聖豚の校内生活、飴食い競争のアドバイス等何も話してくれない、クラスの代表はあくまで生徒達の自主性と手段によって責任を持たせ決めさせるという事か。
何一つ進展なく、そのまま時間だけが流れていく。
教室の時計が午後八時を回った時に突如チャイムが鳴り響き放送が入る。
「学年主任の木田です、まだ飴食い競争の代表が決まっていないクラスは今より一時間以内に代表を決めて、私の所に代表者自身が報告に来てください、報告がないクラスは棄権とみなし最下位と同様のペナルティが課せられます、以上です」
この放送により無言だった教室内に初めての議論が女子主導で沸く。
「誰々が立候補したら?」
「そういう貴方がやりなよ」
「誰々のが良いでしょ」
「私は無理、できない」
女子は自分の所属するグループ以外の誰かに押し付け始める。
男子はまだ様子の感じだ。
今の所、女子からも私の名前は上がってこない。
女子全員から憧れを抱かれている私の名前が上がる事なく、この議論は終わるだろう。
残り30分か、みんなの声に焦りが混ざり始める。
焦れた男子の一人が気の弱そうな女子を立候補させようとする。
「堀内さんがいいんじゃない?」
「ええ、すごく良いと思う」
「うん、堀内やれよ」
この一言でクラス一おとなしくて友人も少なく気の弱い堀内さんの名前が男女問わず複数人から上り始める。
「えっ私なんてだめだと思います」
はっきりと嫌と言えない性格だからしょうがないけど、もうこうなってしまったら流れは止まらない。
「いやいや堀内ならできるって」
堀内さんが生贄になりこの議論は終わると思う。
残り20分そろそろ決めないと時間がない。
それでも堀内さんは首を縦に振らない。
あんな変態ラバースーツを着せられたり、鼻フックなんていうお笑い芸人みたいな物を付けられて、飴食い競争なんてやりたくないのはわかるしかわいそうだけど、もうクラスの全体の意思は堀内さんを生贄として自ら立候補させてクラスの輪を乱す事なくこの議論を終わらせる事に向かっている。
残り15分。
突如、堀内さんが席を立ち言う。
「あの、私なんかじゃなくて、あの、その、皆が確実に勝てると思う人に投票しませんか?」
堀内さんが多分人生で最高の勇気を振り絞った一言だと思う。