「アストンマーチャンの伝記の1文目は何だろう」
それを考えることからアストンマーチャンについて思いを馳せる時間が始まった。
今月初め、ビジュアルをアニメで見たときからアストンマーチャンは必ず引こうと思っていたので全ジュエルを使って彼女を引き当てた。
早速ストーリーを見ると、電波少女な感じでトレーナーとの出会いが描かれるもどこかワケ有りな感じで「あ、これは重いストーリーだな」という予感がした。
そして4話まで見終えた後アストンマーチャンが「伝記の1文目に書く事は決めてある事は決めてある」と言う。
普通に考えれば生まれた年代、場所からであるがトレーナーに向けてこの質問をしている事からトレーナーとの出会いのストーリーからだろうと予想は立つ。
中央広場で初めて出会った時か、ハトの埋葬の時か、それとも専属レンズとして任命された時か。
そんな思案をしつつ育成ストーリーを進めていく。
そこから繰り広げられるストーリーは他所でもよく言われているkey作品を想起させるものでもあり、様々な方向から「思い出させる」という起爆スイッチを押されふと歩いてくる金木犀の香りのように頭の中を懐かしさと感動、そしてアストンマーチャンへの思いで心の中を一杯にされた。
その上で続くストーリー5話の「香り袋」のお話。
クリスマスイベントとリンクした瞬間、多くのトレーナー達は鳥肌が立った事だと思う。
シナリオライターはきっとただただ泣かせるのがうまい人ではなく、行きすぎると陳腐になる一定のラインを見極め、様々な世代の人たちを遠心分離器にかける事ができる手腕をもつ人だと思うので本当に凄い。
そしてとにかくストーリーの先を見たかったので、育成を進め好感度を上げて7話まで見終えた後はただただ彼女と共に海に流れ、レンズとして海の中から見える…少し揺蕩いながらも綺麗に映る花火が脳内に思い浮かんだ。
そして気付けば私の手は普段あまり描かない4コマ以外の漫画を描きだしていた。
ストーリークリア後、私は未来のトレーナーがどうなるかが気になっていた。
反感をかうかもしれないが、恐らく先に亡くなるのはアストンマーチャンの方だと想像しており、ストーリー7話の
「ずっと覚えていたかは未来のトレーナーに聞きたい」
という言葉を回収してほしいなと勝手に考えこの漫画を考えた。冒頭ではアストンマーチャンに先立たれ、娘が担当医の方と話してるシーンから始まる。
会いに来たお孫さんが実家の押入れに大切にしまっていた、マーチャン人形を持ってくる。
トレーナーはマーチャンのエンディングで「きれいにして大事にしまっておく」と言っていた。さすがに長年置いておいたので使い込まれてはいるが欠損もなく比較的綺麗に残っていたのだろう。
史実では子供を残せなかったが、ウマ娘の方では多分きっと娘さんもウマ娘で、お孫さんもウマ娘なんだろうなという勝手な想像をしている。これはマーチャンに限らず全てのウマ娘で思う事ではあるのだが。
マスコットに結びつけられた、ストーリー5話でかつてトレーナーが作ってマーチャンにあげた拙い作りの「香り袋」。
マーチャンをイメージした布と糸を使い、モチーフにもするなど彼女の事だけを思って作ったそれは云わばトレーナーにとってのマーチャンの「現身(うつしみ)」のようなものでもある。
それ故、その香り袋は彼女曰く「ムズムズする」という。自分の分身のようなものでもあり、初めて自分の事を忘れまいという思いを込めて作られたものだからでもあるからだろう。
彼女が生前、こっそりしまわれてた形あるぬいぐるみに結び付けた形のないものを入れる「香り袋」。二重でトリガーをつくっておくのがなんともマーチャンらしい。
そして思い出されるアストンマーチャン。それはストーリー7話で未来のトレーナーに問いかけた当時の姿。トレーナーのレンズに映る忘れられない姿。
袋から出てきた匂いを嗅ぎ、奇しくも思い出したのはその質問を問いかけた夏の8月。しかしそれを彼は「クリスマスの香り」という。
それは育成3年目のクリスマスでトレーナーにプレゼントした香水の匂い。
彼女が覚えていてほしいとお願いをした、だれのでも、どこの香りでもない、彼女とトレーナーしか知らない体に刻み付けた「クリスマスの香り」。
実際、特定の匂いがそれに結びつく記憶や感情を呼び起こすことは「プルースト効果」と呼ばれており、匂いと記憶は強くリンクしているため理にもかなっている。
バレンタインイベント、感謝祭、クリスマスイベント…大事なイベントの節目節目で彼女は固有スキル「Silent letter」のLvを上げていく。それはまるで思い出を積み重ねるように。
特にクリスマスイベントからのLvUPは内容も合わせてメタファー的な意が汲み取れたのでそのまま今回の漫画の元にもさせていただいた。
本当はマーチャンが何かの出来事の度に録音していた「ボイスメモ」についてのお話も考えていたが、それは余裕ができたら描き下ろしたい。
話は大きく変わるが、今月初めに友人の訃報が届いた。
まだ20代の若さで事故により亡くなり、しばらく僕は漫画が描けず落ち込んでいた。
しかしそんな友人が最後に会った時に言っていた一言
「漫画これからも頑張れよ」という一言。
これは彼が残してくれた種であり、一生忘れずに刻み付ける言葉だと思い再び筆をとったという出来事がある。
また一昨日、祖母が亡くなり医師からの死亡時刻を告げる場に居合わせた。
こちらはだいぶ前から覚悟していたことであり、自身としてはやっと行きたがってた祖父の元にいけたんだなという事もあり、ショックはそれほど受けてはいないのでご安心を。
アストンマーチャンのシナリオのように病院は命が流れていく場、というのを身をもって実感すると共に、命は流れていって海に行くのが当たり前であり、忘れないでいる事が大切、という言葉の通りだなと今月はそう強く感じる月になっている。
閑話休題、彼女のストーリーは様々な考察ができ、様々な感情に溢れ、様々な思い出達で構築されており、本当に1本の小説、はたまた映画を見たような感覚にさせてくれる。
そんなお話を知り、触れ、こうして感情の出力ができたことを嬉しく思うと同時に、きっと自分もアストンマーチャンの事を覚えていくことだろう。
たとえ忘れていたとしても、トレーナーのように匂いとはいかないが、何かのきっかけがあれば思い出すかもしれない。
そういう種をアストンマーチャンの3年間と同じように、ウマ娘はたくさん、たくさん蒔いてくれたのだから。
『Silent letter』解説 了
夕 くれま
ZOE
2022-10-23 08:21:18 +0000 UTCシカ
2022-10-22 16:17:39 +0000 UTC