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シビュラ外伝⑤

前回の続きです。

※外伝は正史として捉えても良いですし、ifとして読んでいただいても構いません。


ゴリゴリのネタバレ有なのでKPと通過者以外は×。


↓↓大丈夫な方のみ読み進めてください。↓↓



































Day 3:late at night


[3日目:深夜 六天エリア]

六天の狭い路地を走る2つの影。

女神と少年は息を切らしながら路地の奥へと進んでいく。

女神はふらつく少年の手を引き、少年もそれに応えるようにその手を強く握る。

行く宛がある訳ではない。この空間の出口もない。

ただ、ひたすら誰の目にも触れない場所を探して逃げていた。


その時ピタリと女神の足が止まる。

次いで、一瞬のうちに槍で少年の首に迫る斬撃を弾き返す。

女神が睨みつけた先には一人の男が立っていた。

目深にフードを被り、その顔は全く伺い知れない。


「女神様…あれは…」

「…あれが例の実験体か。やはり、この街に居たようだな」

満身創痍の少年を庇う様に、女神は一歩前へ出る。


「そこの男!私達はもうこの空間に用は無い!」

「……」

「組織も裏切った。お前達を追う理由もない!お前達と同様、組織から逃げて暮らす」

「……」

「見ての通り満身創痍だ。もう戦えない」

「……」

「…頼む。見逃してほしい」

女神は武器を下ろし、頭を下げて懇願する。しかし。


「理由にならんな」

興味がないと言わんばかりに、男はその首目掛けて刀を振り下ろす。

女神はそれを槍で弾けば、諦めたようにもう一度武器を構えた。


「…やはり、私は邪神が嫌いだ。話が通じん」

「……それは同感」


・・・・・・






・・・・・・


「ねえ、その子まだ生きてるけど」

「…もうじき死ぬ」

折り重なるように倒れた二人を見下ろしながら、ピンク髪の青年-毘多尼はフードの男に話し掛ける。フードの男-多多羅の腕には金髪の少女が抱えられていた。


「楽にしてあげたらいいのに」

「…お互い楽に死ぬ権利はない」

「厳しい」


ボソリ、と少年の口から微かに声が漏れる。

虫の息だが、何かを呟いているようだ。

「なんだ」

「…バカ あほ わからず屋 …」

「大いに結構」

恨み言だろうか。子供の低レベルな暴言がいくつか吐き捨てられる。

そのまま少年はちらりと少女に視線をやった。

「……ブス」

その瞬間、少年の側頭部には強い蹴りが入る。

少年はそのまま動かなくなってしまうだろう。


「大人げなさ過ぎて流石に引いた」

「楽にしてやっただけだ」


明らかに機嫌を損ねたのだろう、多多羅は踵を返すとさっさと自身の根城へと帰っていく。毘多尼は肩を竦めるとそれに付いて行くだろう。

「そういえばお前、あの黒いガキをもうラボに近づけるな」

「今回魔誘を寄越したのは俺じゃないよ。でもなんで?」

「PCが一台イカれた」

「あは。1台で済んで良かったねえ」


ケラケラと笑う毘多尼に多多羅は舌打ちを返す。

路傍に打ち捨てた女子供には目もくれず、3人はこの場を後にするのだった。


・・・・・・






・・・・・・


白い空間に少年は立っている。

ああ、死んだのか。

少年は達観した様子で己の状況をそう分析するだろう。

そんな少年の目の前に、光に包まれた誰かが現れる。

「女神様」

眩しくてその姿は見えないが、そこに居るのは間違いなく女神であると少年は確信した。


「すみません女神様。死んでしまいました」

——ああ。


「お守りすることも、守られることも叶いませんでした」

——気にするな。


「でも、女神様と一緒に逝けて本望です」

——……。


「死んじゃったものは仕方ないですし、天国でも地獄でもお供します!」

——…それは出来ない。


その否定の言葉に少年は思わず目を見開く。


「何故ですか?」

——私達にとってこれは「死」ではない。容れ物が破壊され、解放されたに過ぎない。


「…行き先が違うのですか」

——在るべき場所に還るだけの事。再び呼び起こされる迄の間、少し眠りにつくだけだ。


「では、ここで別れるのですか…」

そう言って俯く少年の後ろを女神が指さす。

少し遠いが、そこには一人の女性が立っているだろう。


「……シスター…」

——お前を待っていた者だ。ついて行け。あれと一緒ならお前も寂しくあるまい。


「でも、」

——イヴよ。


女神の手が少年の頭に乗せられる。

「神官の務め、ご苦労だった」

その言葉を最後に、目の前の女神は光の粒子となり、消える。


少年は暫く放心したが、ふと我に返ったかのように後ろを振り返り、駆け出す。

ずっと自分を待っていたその人に抱き着き、会いたかったと名前を呼び、大粒の涙を流して泣きじゃくる。

年相応の子供の姿がそこにはあった。




シビュラ外伝「Day 3:late at night」 完




外伝⑥「Day 5:dusk」に続く。

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