(悪夢の中の話だけど、動物がひどい目に合うから苦手は人は注意。俺もそんな夢みたくない)
ひどい時間に起きて、ひどい時間に寝た。二週間ずっとそうしていた。「だめな時期」だ。「だめな時期」は人生によく発生する。少なくとも俺の人生には。ランダムで訪れるリセットのタイミングまで、なににもならないただ灰色の時間が流れ続ける。掃き溜めの毎日が。起きている時間に頭が動かないので、たいていは横になるか、BLEACHを読む。外に出る予定があるときだけは生きていられるが、それ以外は死んでいる。しかし外に出る用事っていうのはあんまりないんだ。時間がいつの間にか過ぎて、どうにか明日はマシになりますようにって眠剤飲んで寝ようとするけど、眠れない。物心ついた時から眠ることがうまくなかった。こればっかりは性質なのでどうしようもない。眠れればなんでもいいんだけど睡眠薬は耐性がつく…どうでもいいからぱっと眠らせて欲しいよ。今日も睡眠薬と個人輸入したメラトニンを飲み、目を瞑るが、相変わらず頭の中がうるさくて、なんだか感覚もバグってて、布団に触れる腕がずっと痒い。ああよくないな。不眠のスタメンたちが一堂に会する予感がする。嫌な予感は当たり、程なくしてムズムズ足症候群が始まった。大当たり。最悪だ。時間が引き伸ばされるかのような不快感に狂いそうになりながら、足を壁にぶつけたり、ねじ切ってしまうようなことを考えていると、30分とか1時間とかだけ意識が飛ぶ。それを断続的に繰り返して、眠ってることにしながら、朝が来るのを耐えて待った。数ヶ月に一回か二回ある、大外れの夜だ。途切れ途切れの睡眠の中、体感時間の長い悪夢が差し込まれて、意識が戻るったと思えば足や皮膚が異常な感覚に包まれている。悪夢のほとんどは忘れてしまうけど、脂汗と、嫌な気持ちだけがずっと残り続けた。カーテンから光が差し込む。サイテーの朝日。なぜだか自分の存在を否定されるような気持ちになる。確か3時とかに眠剤を飲んで、今は6時で、全く眠れていないのでぐわんぐわんして気持ちが悪い。今日はシャキッと作業をしようと考えていたけど、もう無理だろうな。足気持ちわりー、腕も、頭もだ。なんか脳みその真ん中にゴーヤのわたみたいなやつ詰まってるみてえ。意識飛ばないかな。飛べ飛べ、飛べ飛べ飛べ。死ね。また30分飛んで、起きて、1時間飛んで、起きて、気がついたら知らない人の家に遊びに行っていた。知らない人の家は父の家で、俺は知らない人に随分と気を使ってるようだ。気を使って喋る。きっと今この瞬間にも何かやらかしてて、どんどん「評価」が下がってるんだなって思いながら話し続ける。汚い畳。相入れない人間。なぜか知らない人と飯を作ることになって、魚焼きグリルで魚を焼いたらグズグズに腐って焦げて、ひどいものができあがった。知らない人に怒られないように引き攣った笑みを浮かべる。知らない人はいいよいいよと言っている。それがよくないって意味なのは、流石にこの人生の中でいつしか理解したことだった。いいよはよくない。わかんないとこで評価は下がる。やらかしは許されない。すみません、今すぐ掃除しますって頭下げながら、頑張って魚焼きグリルを掃除する。キッチンスポンジを使って、ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ。全然取れない。擦る。苦闘していると知らない人が飼っている猫がやってきた。猫がグリルの悪い魚を食べようとしてしまう。だめだよ。追い出そうとして、慌てた俺の脳は回路が間違っちゃって手がグリルに火をつける。違う!火を消す。心臓がバクバクする。なんで脳って間違えちゃうんだよ、なんで回路おかしいんだよ、なんでこういう時に、なんで、背筋にでかい蛇みたいな怖気が伝う。ドッドッドッドッド…グリルを見る。猫が鮭の切り身みたいになっている。どうしてか、スーパーでパック売りしてるやつを焼いたみたいに。毛皮と焦げたところが混ざって、でも最初は少し動いてて、慌てて様子をみるけどぴく、ぴくって動いてたのがまったく動かなくなって嘘だろって思って腕に抱いてみる。グリルであったまってるから冷たくはないけど、その熱は生きている熱じゃなくて、魚食べるときの熱だった。あー。知らない人はまだ気が付いていない。俺はもう後戻りできない。そこからの動き方がわからなくなる。キーーーンって音が頭に響く。カチコチの脳みそがどうしてしかリピートしなくなる。そこで目が覚めた。手と足の気持ち悪さは幾分かマシになっていて、不快感がへって空いた脳みそに特大の怖気と吐き気とサイテーな気持ちがタプタプに詰まっている。時計を見ると15時になっていた。睡眠不足のしんどさは消えたっぽけど、気分が悪過ぎて本当に消えたのかわからない。こんな夢をずっとみていた気がする。しばらく嫌な気持ちで布団から動けなかった。体も重い。そうしてるうちに今度はあっさりと寝て、また起きると18時だった。そろそろ起きれる。あーあ。今日も何もない灰色の日になるだろう。