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さすらいのヒモ
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日本が誇るトップアイドルの四条貴音が、偶然に見つけた運命の番であるあなたに逆ナンを仕掛けて都合の良いマゾメスオナホとして徹底ご奉仕をしていくお話。(前半)


 あなたは、都内の中小企業で務めるしがないサラリーマンである。

 大学を卒業してすぐに入社したその会社はいわゆるイベント会社――――と言っても、企画立案などを行う種類のクリエイティブな類のイベント会社ではなく、発注された内容に従って人員の整備や資材などの準備を行うような人材派遣を主に扱う、どちらかと言えば、前者のクリエイティブな会社の下請けを担うようなイベント会社だった。

 年齢は二十九歳。

 大卒だからまだ十年も社会人としての勤続年数が経っていないのだが、それでも日々身を粉にして働いていた。それはその業種が過酷というよりも、今の時代は便利になりすぎた故に求められるものが多くなるという社会事情に耐えきれないというのが正しいだろう。

 その上で単なる業務の量だけの問題ではなく、さらには気難しい上司と、無責任のアルバイトとの調整に、居丈高な取引先などの人間関係での軋轢も重なってくるのだ。

 極めつけにはこの不況の世の中だから、どの業務も一緒だが『この仕事を続けておけば安泰だ』という安心感に基づく希望も存在しない。

 そんな、現代における一種の社会病とも呼べる暗澹としたものを、あなたもまた抱え込んでいた。


 185センチという長身を誤魔化すように猫背に体を前屈みに曲げて、少し癖のある髪の毛は角度によっては目元が見えないほどに伸び切っていた。髪の毛に関してはあまりに忙しいためにケアを怠っているという一面が大きいが、それ以上に、その猫背の体勢も目元を隠すような長い前髪も、あなたという人間の暗い精神性を表していた。

 根っからの陰キャ。

 学生時代はもちろんのこと現在の会社でも、人間が集まれば大なり小なり発生する『カースト』においては底辺に近い位置だったあなたは、そもそもとして鬱屈としたものを常に抱いて生きていたのだ。

 そんな元々の素養にこのブラックな労働が重なったのだから、あなたが無自覚に精神的な病を患ってしまうのも当然と言えるだろう。

 そして、この病の最大の特徴は『それを打開するための気力』というものさえ自発的には湧きもないということだろう。

 湧いてくるものは気力などではなく、たった一つの代わり映えのない思考だけ。


 ――――ただ、『疲れた』という思考である。


 そんな思いだけが、あなたの頭と心を支配するのだ。

 その重い足取りは肉体の疲労だけではなく、精神の疲労が現れた足取りそのものである。

 このまま帰ってもシャワーを浴びる気力すら沸かないかもしれない。そう思いながら、あなたは帰路についていた。

 朝に家を出て、夜に帰って眠るだけの生活。

 貴重な休みも掃除などに時間を取られて、余暇と呼べるような時間を上手く作れたとしてもぼけーっと虚空を見てただ時間が流れるのを待つだけだ。

 趣味と呼べるものも昔はあったかもしれないが、今はそれを思い出すこともない。その程度には、あなたはもはや人ではなく機械と呼ぶほうがしっくりと来るモノになってしまっていた。そんな起伏など存在しないものこそがあなたの『日常』であり、何の変哲もないルーチンワークの一つである。


 だからこそ、あなたの心は蝕まれていた。

 心を鈍化させることに成功させて何もなさずに人生を終えることに成功するか、それとも人生を終える前に心を病んで別の生き方を余儀なくされるか、その二択しか残されていないものだった。

 もはや、病みつつあるあなたでは現状を打開することは出来ないだろう。

 これを打開にするには外からの干渉しか存在せず。

 幸いなことに、その外からの干渉が今日行われたのだった。



「申し訳ありません、あなた様。少々、お時間をよろしいでしょうか?」



 これこそが、冴えないサラリーマンであるあなたにとっての運命の出会いであり――――。



「私は、四条貴音と申します。僭越ながら、あなたとお話をしたいと思っているのです❤」



 ――――トップアイドル・四条貴音にとっての、運命の出会いでもあるのだ。





 落ち着かない。


 今のあなたの心境はとにかくその一言で説明が出来た。

 今日は『苦しさ』というよりも『重さ』しかない日々を送って、それを終えて寝るだけの部屋に戻る代わり映えのない一日だったはずである。

 それがなぜだか、あなたの暮らしているアパートの部屋が二つ、いや、三つも四つも入ってしまいそうな豪勢な部屋に、何故かあなたは入室していた。

 何から何まで、高級な部屋だった。

 腰掛けている椅子は、今まで一度も座ったことのないほどに柔らかく、それでいて沈み込むだけではなく弾き返すように姿勢を整えてくる高級なソファーである。

 恐らくは、ブラック気味なあなたの務める中小企業では、社長室にだって備えられていないような高級家具だとわかってしまう。

 嫌味にならない程度に香ってくるこの匂いは自然に発生したものではなく、何かしらのアロマを焚いているのだろう。

 貼られた壁紙も敷かれた絨毯も、何から何まで見たことのないものだった。

 あなたは物の善し悪しをわかるほどに教養もないが、それでもあなたの知るそれらとは圧倒的に格が違うことはわかる。

 それも、ものすごく頑張れば手が届くとか、他の全てを切り捨てればこの中の一品だけなら入手できるかもしれないとか、その程度の格の違いとかではなく、恐らくは普通に生きていれば目に入ることさえも出来ないほどの高級品だと、直感的に理解できた。


「おまたせしました、どうぞお飲みください」


 そんな部屋の中で、あなたは今、女神もかくやという美女から歓待を受けていた。

 今あなたの鼻孔を刺激している香り立ついい匂いが、僅かに焚かれたアロマの匂いなのか、高級ソファーの前に備えられたやはり高級なローテーブルへ載せられた紅茶の香りなのか、それとも、このニコニコと嬉しそうな満面の笑みを浮かべている目の前の美女が放つ体臭なのかもわからないほどに、あなたは混乱していた。


 あなたは、この美女を一方的に知っている。

 恐らくはこの日本で知らない人間など存在しないだろうし、いるとすれば、その人物は檻の中で監禁されて暮らしているような哀れな犯罪被害者に違いない。

 それほどの有名人なのだ。


 四条貴音。

 半世紀にも近い長い歴史を持つアイドルプロダクション、『074プロダクション』に彗星のごとく現れたトップアイドルだ。

 074プロダクションとは、『女性アイドル』という人気商売においては常にトップシェアを誇っており、トップシェアであるがゆえに多くのアイドル志望の美少女たちが駆け込んでくることでさらにその力を増すという好循環を成立させている、現在の日本の芸能界においては女王的な存在だった。

 ただし、その圧倒的な人材と資金力を持つが故に当然として『逆張りアンチ』と呼べるような層が存在していた。

 そのアンチたちはSNSやインターネット掲示板などで、074プロが冠とするその数字を、『無理読みの語呂合わせ』で――――『オナホプロ』という蔑称をつけていた。

 しかし逆に言えば、そんな蔑称をつけることでしか別プロダクションのファンの反感を発散することが出来ないほどの巨大プロダクションなのである。


 その074プロに所属している美少女や美女たちの中で今もっとも熱いアイドル。

 アイドルとは主に歌唱力、ダンス、ファッションセンス、トーク力、グラビアなどでその特徴を大きく割り振りすることが出来るだろうが――――四条貴音は、『この世界』においては全ての要素で他のアイドルを圧倒する存在だった。

 まず、その歌唱力は『令和の歌姫』と称えられるほどで、他のアイドルどころかそれを専門で励んでいる、顔立ちが冴えないが故にその強烈な歌声で他の女たちに対して優越感を覚えることでコンプレックスを慰めていたトップ・ミュージシャンを上回るものだった。

 次にダンスにおいても素晴らしいパフォーマンスを魅せていた。

 女性にしては高い身長を初めとする恵まれた体格から繰り出される、長い手足をメリハリの効いた動きで踊るその姿は、性別も年齢も関係なく、全ての人間を魅了する美を放っていたのである。

 それほどの素晴らしいアイドルなのだから、当然、現在におけるファッション・リーダーとも呼べる存在にもなっていた。

 公式SNSを更新した際に着ていたその服はすぐさまに特定され、それと同じものはもちろんのこと、それと似たような色合い・デザインのものさえもあらゆる店舗から消えてしまうほどだ。

 誰もが四条貴音になろうと、貴音の全てを真似しようとするためである。

 そんな貴音だが、テレビ番組や動画投稿サイトでのコラボ参加などでも非常に素晴らしいトーク力を見せつけていた。どこか不思議な、その生い立ちを謎めいたものにする天然のお姫様センスと、それでいながら高い知性を感じさせる話の内容は、気難しい年配や逆張りしがちなサブカル・クラスタが持っていた『単なる見た目が良いキャピキャピした小娘』という印象を吹き飛ばすものだった。

 今だって、特徴がないはずの灰色の縦セーターと膝丈の黒いタイトスカートに、少し厚めのストッキングだけというラフな姿なのに、どんなオシャレと言われるモデルたちよりも魅力的に感じるファッションである。何を着るかではなく誰が着るかという有名な言葉があるが、貴音を見ればそれは一種の真実なのだとわかってしまうほどに、貴音は特別な存在であった。


 そして、何よりもグラビアである。

 四条貴音は美しく――――そして、エロかった。


 公称では169センチの身長と、上から90・62・92というスリーサイズが発表されている。

 だが、これらはあまりにも完璧すぎる貴音を『親しみやすい存在』とするための逆サバを読んだ数字であることは、誰もが知っていた。

 170にギリギリ届かないその身長は、実際は日本の成人男性の平均身長よりも高いものである。

 男のプライドとはさもしいもので、特にこの身長というものを無意味に大事にしていた。

 どれほど美しいお姫様であっても、それが自分よりも背が高いと思えばその矜持を傷つけられたと逆恨みする傾向があるため、彼女を担当している『女性プロデューサー』は気を使って、169センチと発表しているのである。もっとも、とある男性芸人や男性アイドルと並んだ時に、逆サバを読んでいた貴音と順当にサバを読んで170センチと称していた男性たちとの間の差が際立ってしまったことで、ネットで『爆笑ニュース』と盛り上がったしまったのだが。

 次にスリーサイズだが、これもまた当然、実数はもっと大きいものだ。

 90センチの巨乳は実際のところは100センチを超える、111センチという脅威の爆乳。

 特殊な矯正下着を使用していることで普段の活動では順当に90センチの巨乳になっているものの、先月についに販売された初の『水着グラビア』ではさすがに寄せてあげるような真似をしなくても20センチの差は明確な差であるために、元々が恐らくは逆サバを読んでいるのだろうという考察がついに正解である見抜かれてしまったのだった。

 そして、62センチというウエストサイズも大嘘である。

 実際は57センチという誰もが羨むくびれを誇っているのだが、これを実際に発表すれば女性たちの多くはただでさえ抱いている妬みの感情を強くさせてしまうのだから、そのウエストを太めに明かしているというわけだ。

 なによりも、この92センチというヒップだが、これはさすがに発表された当初から誰もが信じていなかった。

 水着グラビアが解禁されるまでは矯正下着で隠されていた爆乳と、妬ましいほどに細いウエストに関しては『う~ん、それっぽくないけど、そうなのかも……?』と騙される人間も居ただろう。だが、このヒップに関してはその数字は、爆乳のサイズをはるかに超える120センチのデカ尻なのである。『言葉も出ない』とはまさに貴音のデカ尻を評価する際に使われるべき言葉だろう。


 今現在、全ての日本人男性の夢は、『四条貴音を人生のパートナーとする』ということで統一されていた。実際に、『小学生の夢ランキング』というおなじみのランキングで、男子部門では『四条貴音の旦那さん』というものが、プロスポーツ選手やお笑い芸人、最近ではおなじみになった動画配信者というものを抜き去った圧倒的1位になって、アンケートを取った会社はこんなものを発表して良いものかと頭を抱えたものである。

 もちろん、貴音が日本人の心理に与えている影響は男性や男子に限ったことではない。

 この小学生の夢ランキングの女子部門では、『四条貴音』という個人名が1位にランクインされているのだから。


 アイドルはラテン語における『偶像』を語源にした言葉と言われている。

 この偶像とはつまり、『崇拝される存在』を意味している。

 あくまでその熱狂的な人気や在り方をイメージしてつけられた言葉だろうが、しかし、四条貴音に関しては少々意味が異なる。四条貴音に関しては、例えアイドルの語源がこの偶像とはまた別の意味を持っていたものを語源としていたとしても、恐らくは偶像の意味で使われていただろう。

 四条貴音は、もはや人間ではない。

 四条貴音は、『女神』そのものと言える存在なのだ。


「本日は急なお願いを聞いていただき、本当に感謝しています」


 そんな風に四条貴音に関する情報を脳内で洗い直していたあなたの目前で、貴音はゆっくりと頭を下げた。

 これに、あなたは慌てて頭を上げてくれと、いや、座らずに立ってくれと懇願をしてしまった。

 『ローテーブルの前でソファーに腰掛けているあなた』と、『そのあなたに向かい合って頭を下げた貴音』いう言葉だけを聞くと、貴音もまた当然ローテーブルを挟んで別のソファーに腰掛けた状態で頭を下げたと思うだろう。


 だが、現実は違う。

 貴音は、床に敷かれた絨毯からも一歩離れた、フローリングの上に膝をついて座り込み、三つ指をつくように両手を揃えて前に差し出し、あなたへと頭を下げているのである。

 そう、あの四条貴音が、多くの人間の心を掴んでは離さない本物の『女神/アイドル/偶像』が、あなたへと――――『土下座』をしているのだ。

 もはやその存在が特別と言える貴音が行った、まさかのそんな行動に、一市民に過ぎないあなたは心臓が潰れそうなほどの動揺を覚えてしまうのも仕方ないのだろう。


「いえ、私はこれから非常識な懇願をあなたへと向けるのです。これでも礼が足りないほど。あなた様のお優しさはこれ以上ないほどの喜びを覚えますが、どうぞ、私にあなた様への礼儀というものを取らせてくださいませ」


 何がなんだかわからなかった。

 なぜ、四条貴音は自分のような存在をこんな上等な部屋に呼び寄せたのか、あなたはさっぱりと理解できない。

 だって、四条貴音とあなたはこれが初対面だ。


「本日のことです。私はいつものようにアイドルとしての仕事を、ファンの皆様に笑顔を、一瞬だとしても輝けるものを届けてまいりました」


 デビュー当時はどこかアイドルという単語をたどたどしく、言うならば、ひらがなで『あいどる』と言っていたような浮世離れしていた貴音だが、トップアイドルへと上り詰めた今ではアイドルとしての自覚に満ち溢れているかのように『アイドル』とはっきりと発音するようになっている。


「そこで、あなた様のご尊顔を拝見したのです。そして、私は確信しました」


 そう、そのトップアイドルとなった貴音も参加したイベントで走り回っていたのが、まさに今日のあなたなのである。

 予定されていた運営アルバイトが急遽来れなくなり、その穴を埋めるために社員であるあなたも現場仕事で裏方として奮闘していたため、トップアイドル四条貴音の姿を満足に見ることが出来ないという悔しさを味わったのだ。

 あなたは、別に強烈な『四条貴音オタク』というわけではない。だが、平凡な日本人男性の全てがそうであるように、四条貴音というアイドルに魅了されているひとりでもあるのだ。

 そんな一市民として、四条貴音にどこかで認知されたという事実にあなたは心躍らせた。

 ちなみに、もはや四条貴音に直接誘われて、恐らくは自室と思われる高級な部屋に通され、その部屋の中で自分は高級なソファーで偉そうに腰掛けながら貴音は正座で床に座っているという、あまりにも理解しがたいシチュエーションに関しては、逃避するように脳みそから弾けとんでいる。



「あなた様こそが、私の運命の旦那様なのだ、と❤」



 ――――そんな風に現実逃避しているものだから、当然のようにその言葉の意味も理解できなかった。



「ああ、このようなことを言われてもわかりませんよねっ……❤ 申し訳ありません、あなた様には似つかわしくない不器量な娘で❤ あなた様を前にすると、どうしても心が高ぶってしまい……❤ 一から順に、説明をさせてもらいます❤」


 ぽかんとしているあなたの顔を愛おしそうに見つめながら、正座をしたままの貴音はスススっと膝立ちのままであなたの膝下まですり寄ってくる。その際に、ぽよんぽよんと柔らかな音が聞こえてきそうなほどに、貴音の爆乳が縦セーターを着ていてもはっきりとわかるほど揺れていることに気付いた。

 まさか、ノーブラ?

 そんな下品な性欲にまみれた事を考えてしまうのは、恐らくは全く理解できないこの状況から逃れるためなのだろう。そんな風に、自身の胸元に注がれているというあなたのセクハラ視線を感じ取った貴音は嫌悪の色など一切感じさせない、むしろその正反対の位置にあるであろう喜色満面と言える笑みを浮かべる。

 なにせ、そのノーブラは意図的なものなのだから。


「私の四条の家は、女系の家となっています。

 自分で言うのも少々気恥ずかしいが、その、一般的な高貴なという修飾が使われるような家系となっています。他の男性たちにも負けない気の強い者が多く、私も淑やかな女を意識しておりますが実際のところは負けん気が強いと言われているのです」


 四条貴音の人間的な背景には秘密が多い。

 プライベートは徹底的に隠されているため、そのため様々な憶測が呼ばれている。

 『今はなき財閥のご令嬢ではないか』だとか。

 『実はこの国の象徴となっているやんごとなき身分の方の血を引いている』だとか。

 『いやいやそんな人たちすらも影で支配している闇の支配者のお姫様ではないか』だとか。

 それこそ、『四条貴音はこの世の人間ではなく、月の世界から来たかぐや姫』なのではないか――――そんな風に、もはや『陰謀論』というよりも『フィクションの設定』に近いような噂話はいくらでも存在するほどだ。


 そんな貴音の家系のことについて、貴音の口から語られる。

 そのことに、あなたは社会人生活で様々な感情が摩耗してしまってもなお、僅かにだがまだ生き残っていた野次馬根性が疼き出して、無言でその言葉の続きを待つのだった。


「その中に……『運命の番(つがい)』という概念が存在するのです。

 四条の女だけが持つ、特殊な在り方。定かではありませんが、昔は人ならざる者と交わって生まれた家だからだとか……その番というものは、四条の女ならば一目見れば感じ取ることが出来るのです」


 ごくり、と。

 無意識に生唾を飲んでしまったことをあなたは意識してしまう。

 つまりは、その、話の流れからすると。

 全日本国民が羨望と嫉妬と、薄汚い肉欲を向ける四条貴音の、『運命の番』とは、すなわち。


「だからこそ、ひと目見ただけでわかりました。

 私の運命の番とは――――あなた様だ、と❤」


 そういうことなのだろう。

 ぐらぐらと、めまいを起こして世界が揺らしてしまうような、それこそ一瞬で体調を崩してしまうような衝撃があなたに襲いかかる。

 決して不快だからの衝撃ではない、人間とは嬉しすぎる出来事に直面しても、その事実を上手く飲み込むことが出来ずにそのような反応を起こしてしまうものなのだ。


「ああ……あなた様❤ 私の、運命のお方……❤」


 そんな呆然としているあなたの体に、さらに貴音が迫りくる。

 もはや、二人の間に距離は存在しない。

 上等な生地を使われている縦セーター越しに爆乳が、あなたの胸板に押し付けられて『むにゅり❤』となんとも淫靡な感触で歪んでいくのを感じる。

 それだけで射精してしまいそうな快感だった。


「どうぞ……この哀れな女に、お慈悲をお与えくださいませ……❤」


 吐息から香る匂いだけでなく、その声の響きまで甘い女だった。その甘美な声自体に魔力が秘められているかのような、

 かくかく、と油の切れたロボットのような不格好な、あなたは反射的に頭を上下に動かすことしか出来なかった。


「あぁ……ありがとうございます、あなた様❤ そのお優しいお気持ちに報いるために、精一杯ご奉仕させていただきますね……❤」


 この世のものとは思えない美貌があなたの顔に迫り、その甘い吐息が顔面全体に降り掛かってくる。さらに、貴音がその美貌を近づければ当然のように規格外の爆乳もまたあなたの体に押し付けられた。

 甘さと柔らかさによってあなたの脳みそはデロンデロンに蕩けだして、あまりの『優しい衝撃』によって、あなたは自分の体が自分のものではないかのように指一本として満足に動かせなくなってしまっていた。


「それではお耳を、失礼しますね……ふふ、形までなんだか可愛らしく思えてしまいます❤ それでは……ん~、ちゅぅっ❤」


 その動かない体のあなたへと、貴音は耳元にその艷やかな唇を寄せて、ゆっくりとキスをしてきたのである。

 唇にでも頬にでもなく、耳に、だった。キスと同時に真っ赤な舌が飛び出してきて、時には耳の縁をなぞるように、時には耳穴の中に侵入するように動いていく。

 それは、昨今のポルノ作品では一般的になっている『ASMR音声』における耳舐めというエロシチュである。

 水着グラビアを出している上にどんなエログラビアを専門にしているタレントが足元にも及ばないほどのドスケベボディを持っているものの、一般的には『清楚』な印象を抱かれている貴音がするとは到底思えない、今はまだ『特殊プレイ』と呼ばれるような行動だった。


「ちゅっ、ちゅぅ❤ ちゅぅぅ~……ちゅっ❤ どうか、稚拙な奉仕をお許しください……❤ 書物や映像で勉学には励んできたものの……いかんせん、全ては座学でして❤ この唇も舌も、他者の肌に触れるのは、あなた様が初めてなのです……❤ んちゅぅ、ちゅぅ~❤」


 とは言え、その動きは熟練と呼べるようなものではなかった。それどころか、どこか恥じらいを感じるような動きである。それでいて、その動き自体には迷いが一切ないという矛盾したラブラブな耳キスだ。

 これが、心と股間に響かないわけがない。

 なにせ、その奉仕者があの四条貴音なのだ。

 エロい行為に対して知識として所有しつつも技術としては未熟というのもまた、男心をくすぐってくれる。しかも、そのことをあなたに謝罪する際に『ふぅ~……❤』とその甘い吐息が耳や首筋に吹きかけられるのだから、余計に心地よさは増していく。

 その快感は形容しづらいもので、ただ言えることは、人とはあまりにも気持ちいいと全身が麻痺状態になってしまうのだということを、あなたは初めて知ったということだけだろう。


「それでは……こちらも、失礼いたしますね❤ ベルトを、カチャ、カチャ……❤ こちらのチャックを、すぅ~~……❤」


 そして、そんな風に知識を重ねている貴音だからこそ、その耳舐めと胸の押し付けだけでは終わらない。

 その白魚のような美しい指があなたの股間へと伸びていき、スムーズな動きでベルトを外して、ズボンのジッパーを下ろしていき下着姿へと導いたのである。

 これに対して、全身が快感に犯されて麻痺をしたように上手く動かせないからこそ、あなたは慌てざるを得なかった。

 185センチの長身でありつつ日本人にありがちな胴長短足ではなく脚もスラリと長く、肥満ではなくかといって痩せ型でもない、まさに中肉と呼ぶべきあなたは、スタイルに関しては理想的な成人男性と言えるだろう。

 だからこそ、上司はもちろんバイトの学生たちからも、ことあるごとに『シャキリと背筋を伸ばせば良いのに』と言われる。

 だが、あなたにはその肉体に対する圧倒的なコンプレックスを持っており、だからこそ、その背筋を伸ばすことが出来ずに肉体を隠すような姿勢を取りがちであった。

 そのコンプレックスとは身長でも体重でも、足の長さでもない。


「さぁ……ぽろろ~ん、ですね❤」


 そのコンプレックスが刺激されてしまうことを避けようと動こうとしても、あなたの体は満足に動かすことが出来ない。まるで、耳元に吹きかけられる吐息にそのような麻痺毒の効果を持っているかのようである。

 もはや泣きそうになりながらも、それでも貴音の動きは止まらずに、ベルトやズボンと同じく、下着もまたトップアイドルの手によって脱がされてしまうのだった。


「……あら?」


 ぽろん、と。

 あなたの『コンプレックス』が露出されてしまい、それこそ涙をこぼしそうなほどの苦しみと悔しさを感じていた。


「まぁ❤ なんと愛らしいのでしょうか❤ ふふふ、このように手のひらの中に収まる……皮も被った、恥ずかしがり屋のオチンポ様❤ あなた様のものならばどのようなものでもと思っていましたが、それでも」


 そう、あなたのチンポは――――『仮想包茎』で『少し短小気味』な『粗チン』なのである。


 貴音の言葉が弾んだ様子で、嘲りの含まない笑みを浮かべていた。その瞳はキラキラと輝いており、それでいて興奮からかわずかに潤んでいることも合わさって、瞳がぼやけてハートマークにも見えるというエロ漫画のような状態である。

 四条貴音は、あなたのことを『運命の番』だと称した。それは、貴音の言う通り、『人ならざるもの』だからこそ感じ取れる、絶対的な肉体・精神の相性の良さを裏付ける本能的なものなのだろう。だからこそ、貴音にとってはチンポの大きさというのは大した意味を持たないはずだ。ただただ、あなたのものであるというだけで魅力的に見えるのだ。


「このように、カリ、カリカリ~❤ シコシコとするよりは、まずはこのように……指先でひっかくように、刺激いたしますね❤ 耳舐めとの組み合わせはこちらのほうが多いようですので……❤ このまま、続けさせていただきます❤」


 そんな中で、貴音は『手コキ』ではなく『チンカリ』で責めてくるのだった。

 これが、あなたの股間と心に響く。

 貴音本人は奉仕と意識しているようだが、あなたの性的趣向というべきか、ポルノ作品ではチンポを指先でカリカリと刺激するこの微弱な責めは、どちらかと言えば女性上位の微マゾシチュに使用されることが多い、奉仕というよりも『責め』の動きである。

 そこに、粗チンというコンプレックスを露出させられたばかりもあって、あなたの中で途端に、『四条貴音と性的行為をしている』という優越感よりも、『四条貴音にコンプレックスを刺激される』という被虐的な快感が強くなってしまうのだ。


「カリカリ、ちゅ、ちゅぅ~❤ 耳を舐めながらの、チンカリ、です❤ 重ねてになりますが、拙いのはどうぞお許しください……❤ できれば、あなた様から『ご指導』をいただければと思うのですが……どうやら、私の奉仕に気持ちよくなってくれているご様子ですね❤ どうぞ、あなた様は私の主のようなもの❤ ただ、ひたすらに気持ちよくなってくださいませ❤ んぅ、ちゅぅ~❤」


 コンプレックスを丸出しにされて悶えているあなたに対して、そのように言葉もうまく出せずに震える体の様子を、貴音は満足しているという風に捉えたのだろう。男女の駆け引きとして焦らしているのではなく、拙いが故にゆったりとした責めを行っていくのであった。

 それが、あなたにとっては自身のコンプレックスを癒やしてくれるようにも感じるものだった。 そもそも、あなたが短小包茎をコンプレックスに抱いているのは、男子校であった中学生時代の苦い思い出からである。

 とは言え、その思い出も実に単純な話だ。

 修学旅行で自身の性器を周囲のクラスメイトが囃し立てて、嘲りの嵐に叩きつけられたというだけだ。それでも、やはり思春期に男性としての象徴が劣っていると、自身の所属しているコミュニティで烙印を押されるということは人生のすべてを否定されるにも等しい出来事だった。

 その影響なのだろう。長身で脚長とスタイルは抜群に良いし、顔立ちはイケメンとは決して言えないが、それでも『塩顔イケメン』などと無理矢理にカテゴライズしてパッケージ付けして並べれ、それこそミーハーな女性は騙せそうなぐらいには悪くはないはずだ。


 だというのに、そのコンプレックスを延々と引きずった結果、体を小さくした猫背で前髪を伸ばした陰キャスタイルで生きてきたためなのだろう。

 来年には30になる年齢になっても、あなたは未だに――――『童貞』であった。


「あぁ、オチンポ様がふるふると震えて❤ これは……射精が近いのですね❤ 射精、してくださいませ❤ 私の稚拙な奉仕でも気持ちよくなってくれたことが、こんなにも嬉しい❤ さぁ……それ、ぴゅっ、ぴゅ❤ ぴゅぴゅぅ~❤ ちゅぅ、カリカリ、ちゅぅ~~❤ どぴゅどぴゅ、いっぱい精液だしてください❤」


 その童貞が四条貴音の耳舐めチンカリに耐えられるわけがなかった。

 それがどれだけ稚拙な動きだったとしても、なにせ行っている奉仕者が四条貴音なのだ。

 どんな玄人娼婦が行う巧みな性技であったとしても、四条貴音がその美貌を近づけて耳元を舐め、その爆乳をセーター越しだとしても体に押し付けてきて、さらにはその箸よりも重いものを持ったことがないだろう美しい指先でチンポをカリカリと刺激してくるのだ。

 その『情報』がもたらす快感は同じ女を二度と寝ないと最低の言葉を堂々と豪語するようなヤリチンでも耐え難いもので、童貞には身に余る快感である。


「ん~、ちゅぅ❤ かり、かりかり、かりぃ~……ちゅぅ❤ さぁ、ぴゅっぴゅ、ぴゅぅぅ~❤」


 どぴゅっ! ぴゅぅ、ぴゅるるぅ! どぴゅぴゅぅぅぅ~~!


「きゃぁっ❤ ああ、わ、私の指を白濁に汚していく、子種が……うぅっ❤ す、凄まじい匂い……です……❤ こうして顔を埋めた首筋から漂う、その労働の成果であろう汗の匂いが生み出す『ふぇろもん』の時点で頭がどうにかなりそうだったというのに……❤ はぁぁ❤ 体が蕩けて、消えてしまいそう……❤」


 当然、童貞であるあなたが耐えられるわけがない。

 ソファーに腰掛けている体でそのムダに長い脚をピンと伸ばしながら、あなたは最高に気持ちいい射精をしてしまう。

 そこから飛び出た精液が向かう先は、あなたの腹部である。

 仕事着のままであったために白いワイシャツに薄汚いシミを作るが、一方でそのうちの精液の一部は貴音の指先へと飛び込んでいくのだった。

 恐らく、その精子たちに意思というものがあればシャツのシミになってしまった精子たちは、幸運にも貴音の指先に引っかかることが出来た精子たちへと呪詛の念を送るだろう。

 なぜならば。


「は~、むっ❤ んちゅぅ、れろれろぉ……ちゅるるぅ❤ あはぁ……匂いだけでなく、味もなんて濃厚なのでしょうか❤ 喉を流れ落ちる感覚だけで、お、覚えたこともないほどの快感がぁ……❤ こ、これが、噂に聞く『アクメ』なのでしょうか……❤ 精飲だけでこんな甘い感覚を覚えるのならば、そ、その先を行えばどうなって……あぁっ……❤」


 なにせ、その指先に引っかかた精液を、貴音は迷うことなく口に含んだのだから。

 しかも、まるでその精子を口内に染み込ませるように舌の上で転がしてその味を確かめてから喉を鳴らして胃の中へと落としていったのだから。自身の一部が四条貴音の肉体の栄養になるなんて、それこそ無数に存在する『四条貴音ガチファン』からすれば血涙を流すほどに羨ましい事態だ。

 あなたは射精の快感を味わいながらもそれを眺める。

 まるで現実のものとは思えない。

 ただでさえブラック労働で疲れ果てていた体と、この異常な事態を必死に受け止めようと演算を続けていた脳が、射精という形でついにキャパオーバーを訴えた。


「あぁ……お疲れのところ、私の奉仕を受けてくださって本当にありがとうございます❤ どうぞ……今日は、お休みくださいませ❤」


 つまりは、ブチリとブレーカーが落ちてしまったのだ。

 重い瞼を持ち上げることも出来ず、あなたの意識は暗闇に染まる視界と同時に真っ暗な闇の中へと落ちていく。



「どうぞ、明日からは全力で私があなた様にお仕えいたします……❤ その身を苦しめる全てから私が守り、ただただ、私の浅ましい欲望を……『運命の番』である殿方専用の、『マゾメスオナホ』となるために生まれてきた四条の娘である私を、愛する日々をお送りくださいませ……❤」



 貴音の口にした言葉の意味を理解することも出来ないまま、あなたは意識を失うように眠るのだった。


(続)

日本が誇るトップアイドルの四条貴音が、偶然に見つけた運命の番であるあなたに逆ナンを仕掛けて都合の良いマゾメスオナホとして徹底ご奉仕をしていくお話。(後半)


日本が誇るトップアイドルの四条貴音が、偶然に見つけた運命の番であるあなたに逆ナンを仕掛けて都合の良いマゾメスオナホとして徹底ご奉仕をしていくお話。(前半)

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