1話

Skebのご依頼で書かせてもらいました。よろしくお願いします。 ──────────────────────────────────────────────── 夢野公男は、S県K市で生まれ育ち、高校卒業後に一人暮らしで近隣県へと就職をして、十五年ほどが経ったまま働いている、平凡な三十代の独身男性である。 現在の彼に恋人はなし――――これは『今は居ない...
2話

1話 ─────────────────────────────────────────────── 理想の現パロ多重クロスオーバー世界・『ドリームワールド』に、『夢野公男』が来てから最初の一日が終わった。 と言っても、このドリームワールドの初日とは夕方から訪れての一日であるため、より正確に言えば『半日』と呼ぶべきだろうが、ともかく、その異常...
3話

1話 2話 ─────────────────────────────────── 【プロローグ】 ドリームワールド。 それは夢野公男にガチ恋をした、神のような超常存在であるプロト・マーリンが創り上げた公男のためだけの箱庭である。 技術基準は公男が暮らしていた時代よりも遥かに優れた科学技術を誇っている。 例えば、百数十年前に繋がっ...
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ドリームワールド。
夢野公男という平凡な男に、彼が生まれたその瞬間からガチ恋をしていた女神ごとき上位存在・プロトマーリンが創り上げた、夢野公男が心地よく暮らせるためだけの世界である。
そこでは夢野公男もよく知るオタク・カルチャーの登場人物が、一人の人間として生きる世界だった。
と言っても、完全に登場作品の設定や性格、外見に準拠しているかというとそうでもなく、万能の存在であるプロトマーリンによって公男好みになるように変化したキャラクターたちである。
ドリームワールドの基本的な社会状況は近未来的なSF都市であるため、その時代に適応したキャラクター背景に設定され直され、性格は殺人鬼や戦闘狂というような人物は社会に適応しているようなマイルドな性格になったり、二次創作的な設定に過ぎない『レズビアン』的な性嗜好になっていたり、本来はスレンダーな体型なのに胸が頭よりも大きな爆乳になったりと、とにかく様々な変化だった。
「別にね、アルトリアと一緒にいるなって話じゃないの。ただ、アルトリアと一緒にいるのが多いんじゃないかってことの理由を聞きたいの」
「そうです。アルトリア姉さんを嫌いになってくださいってことじゃないんです。ただ、私とも一緒に居て欲しいって言いたいんです」
今、自宅のリビングにてソファーに腰掛けている夢野公男に対して、向かい合うようにソファーに腰掛けている『艦これ』の榛名と『咲-Saki-』の原村和も例外ではない。
彼女たちは真っ当な普通の人間として、名前も『夢野榛名』と『夢野和』として夢野公男の家族として生活を送っているのである。
もちろん、普通の人間というにはあまりにも顔が美少女すぎるし、エロい体が過ぎるのだが、それでも艦これ原作では艦娘という人外の存在だった榛名は、このドリームワールドでは普通の美人すぎる女性として、美女という以外は実に共通点の少ないなっているのだ。
「ふっ……全く、いちいちと小うるさい姉妹だな。公男は思春期だ、そう押し付けると嫌われるぞ? そうは思わないか、我が弟よ」
そうして、向かい合う二人の姉妹とは別に、公男と隣り合うように座っている『Fate/シリーズ』のアルトリア・ペンドラゴン[オルタ]もまた、『夢野アルトリア』として公男の姉としてこのドリームワールドでは生活をしていた。
しかし、アルトリアの場合は原作と違うのはその生まれや能力だけではなく、外見も大きな変化が生まれていた。
王を選定する聖剣を引き抜いた影響で少女の姿のままであったアルトリアだが、このドリームワールドにおいてはその少女性とカリスマ性に満ちた美少女顔はそのままでありながらも、スラリとしたはずの胸部には、その小顔にも等しいほどの大きな膨らみがある、『爆乳美少女』になっているのだ。
今もまた、その自身の女性としての魅力である爆乳をモニュモニュと公男に押し付けながら、余裕と優越感に満ちた笑みを浮かべながら、榛名と和の二人とからかいを含んだ言葉を投げかけていく。
「なにより、『選ばれた雄』である公男の大事な自由意志を奪おうとするのは関心せんな。我が弟は弟自身の意思で私や我が剣道部とともに高等部で活動することが多いんだ。
それを捻じ曲げようとしているのは……ふふふ、嫉妬か?」
「嫉妬です!」
「嫉妬に決まってるじゃないですか!」
そんなアルトリアの挑発に対して二人の美少女は、我慢ができないと言わんばかりに顔を真っ赤にさせながら応えた。
つまりは、そういうことなのである。
榛名は大学二年生であり和は中学三年生、対してアルトリアは高校三年生であり公男は高校二年生に当たる学生だ。
そういったこともあってか、公男は小等部から大学部まで存在するマンモス校・夢ノ国学園における高等部の敷地で生活することが多い。
稀に他の敷地へと足を運ぶことはあっても、それはアルトリアについて大学部の剣道部へと付き添いで行ったり、『深い仲』になっている美少女たちの知り合いがいるということでやはりこれも付いていくことがあるぐらいのものだ。
そのため、榛名と和は家族では有りながらも、こうして休日であったり朝や夜などの家族団らんの時間でぐらいでしか公男と交流する時間を持てないのである。
これに対して、二人は強い不満を覚えているということなのだ。
「ご、ごめんね、ふたりとも。でもほら、俺も高校生だから、あんまり用もないのに大学や中学のキャンパスに行くのもよくないかなぁ~って思ってさ」
バチバチと火花が散りそうなほどに激しい視線を交わし合っている三姉妹たちに気圧されながら、公男はおずおずといった様子で言葉を発していく。
そもそも、公男にもアルトリアと一緒にいることが多いのも言い分があった。
本来はアラサー社会人であった公男だが、今は肉体も社会的な立場も高校生である。
そのため、一年だけしか違いがない以上はアルトリアと同じ敷地内で学生生活をしているのだから当然と言えるだろう。
「あら、それはちょっとおかしいですね?」
「え、母さん……?」
そんな公男の発言に訂正を入れるものがいた。
『ポケットモンスターシリーズ』に登場するエリカは、『夢野公男の母』である夢野エリカとしてドリームワールドで生活している。
科学技術並びに魔法技術が整備されているこのドリームワールドの中で、エリカは結婚をせずにシングルマザーとしてたった一人で四人の子供を出産し、さらには華道のプロフェッショナルとして家族を養っていた。
家事を終えたばかりなのだろう、エプロンを外すと原作とはまるで異なる爆乳をぶるるんと震わせながら、アルトリアとは反対の位置にあたる公男の隣へと腰掛けていく。
アルトリアとエリカのW爆乳を体の両端に押し付けられ、さらには香り高い体臭を味わわされた公男はすでに勃起しているほどに性欲を掻き立てられるのだが、そんな中でエリカは優しく言い聞かせるように、公男へとこの『ドリームワールド』の社会常識を説いていく。
「中等部までだったら義務での通学も多いけれど……高等部まで進学していたら、学校には別に出なくてもいいのよ? 進学のための試験とかも必要最低限のものしかないし、それこそ遊び回って年に数回しか学校に来ない子だって、珍しいけれど居ないわけじゃないもの」
「え、ええ!?」
エリカの説明に思わず驚きの声を上げてしまう。
まるで大学のような、それでいて大学よりもよほど緩いシステムは公男の中にある『高校生活』というものとは大きく離れたものだった。
それでもエリカはゆったりとした耳に心地の良い美声で説明を続けていく。
「それに、公男さんは特別ですからね。むしろ、大学のキャンパスや中等部に顔を出しても、歓迎されることはあっても邪険にされることは絶対にないと思いますよ」
「ぜ、絶対……? 俺って大学への進学試験とか受けてないのに、まずいんじゃないの?」
「絶対ですよ、大学はむしろ公男さんの進学を望んでいる側ですから。それに、公男さんじゃなくても聴講生という言葉もありますから、高校生が一足先に自身の興味のある分野の授業を受けるということも珍しくはありません」
公男は『本物の男性』や『真実の雄』、『選ばれた存在』などと呼ばれるような特別な存在であり、『特待生』という現実のそれとは少々異なる肩書の生徒である。
それは男性の性的な機能が弱体化している――と、プロトマーリンに設定をされている中で唯一の性豪の男性が公男なのだ。
そういった背景もあるのだから、公男が他の敷地に顔を出して授業を受けても文句を言われることはないだろう。
「そう言えば、雪姫先生と一緒に小等部の授業を見学したときも全然文句とか言われなかったなぁ……」
「そもそも、小等部や中等部までで卒業してしまう生徒というのは基本的に『勉強への意欲』がないから進学しないわけですからね。学歴が中等部までの人物でも、学校側に書類さえ提出すれば授業自体は受けられるんですよ」
思えば、このドリームワールドで意識を覚醒させてた次の日に体験した学校生活でも、公男は高校の授業ではなく小学校の特別授業の見学を行っていた。
そのことからも、ドリームワールドにおける高校というのは参加希望を出せばその授業を受けれる奇妙な授業体系であることも連想され、公男は思わず納得をしてしまう。
また、このドリームワールドが社会福祉やエネルギー資源が完全に整った、『仕事をしなくても人が生きていける世界』として完成されているからこその社会構成もエリカが付け加えてくれるため、公男はそのシステムを飲み込みつつあった。
「当たり前だろう、それは授業だけじゃないぞ。部活だってそうだ。剣道部も部外者であるお前を一度でも邪魔だと冷たく扱ったことがあるか?」
「それは……アルトリア姉さんや斑鳩さんと一緒だったからじゃ……?」
「…………私が女王のように振る舞っているから逆らえないと思われていた、ということか。これは失態だな……まさか、弟の情緒を育む上でこの私が障壁となっていたとは」
「今の公男さんは『覚醒』済みですけど、それでもまだボーッとしたのんびり屋さんなところは変わりませんからね」
一方でアルトリアは、自身の存在が公男という世界で最も大事な存在の妨げになっていたことに多少のショックを受けているようだった。
エリカが苦笑しながらそんなアルトリアを慰めるものの、『自由に、奔放に、堂々とした偉大なる人物』に公男を成長させようという目論見があったアルトリアにとって、これは非常にショッキングな出来事である。
チッ、と少しばかり舌打ちをして、ゆっくりと向かい合っている姉の榛名と妹の和を見た。
「姉として、将来は英雄偉人になること間違いないであろう公男の知見を広げる義務がある。
榛名、和。
嫉妬するのも優越を覚えるのも、全部後回しだ……『ローテーション制』でこの弟を成長させるぞ。もちろん、公男の意思が最優先で無理強いはできんがな」
◆
結局のところ、公男は社会について不勉強すぎると割と強い言葉で言い渡された。
少し奇妙な言い回しになるが、このドリームワールドに転移する以前の記憶が存在しない、一種の『記憶喪失』的な状態の公男はそれに対する反論を持たなかった。
こうして、公男は知見を広げるため、ひいては『特別な存在』として自分を求める女性たちと交流するという義務を果たすために、夢ノ国学園の高等部だけではなく、中等部や大学、さらにはそこからの縁を使ってOB・OGなどが代表を務める会社や、エリカの仕事に付き添いをするなどの社会見学を行うべきだと、アルトリアが王としての顔を出して、公男へと厳命したのである。
「ここが中等部のキャンパスか……確か、特別棟の二階での授業って言ってたかな?」
公男は今、中学三年生となる妹の和とともに中等部のキャンパスに足を踏み入れていた。
そんな今日は平日ではなく日曜日、本来ならば中学校は休みのはずの日である。
事実、部活動に励む生徒たちの姿こそ見えるものの、逆に日曜日は文化系の部活などならば休みである場合も多いし、塾であったり学外のクラブチームのようなもので活動している生徒もいるためか、明らかに普段の学校生活で見られる生徒の数は格段に少なかった。
そんな休日の中学校に公男が中学校に訪れている理由は、和が『補習』を受けるためであった。
「それにしても和が補習だなんて……」
和の成績は学年でもトップクラスであり、問題なく高等部へと進学できるはずのものだった。
しかし、『とある授業』についての単位を取得しておらず、その単位を得なければ高等部へと進学できないというような状態なのである。
教師や学校側が優秀な生徒を進学させたいと思うのは、現実の世界でもドリームワールドでも変わらず、和は三年に進学する前から、この必修科目を受けてくれと懇願されていたほどだ。
「性教育ってだけで進学に関わるぐらい、この世界だとそれぐらい大事なものなんだなぁ」
その補習を受ける授業は、性行為の授業であった。
このドリームワールドでは、プロトマーリンによって現実とは大きく異なる倫理観が植え付けられており、学校で性行為に関する実習を行うのである。
それは現実における保健体育とは大きく異なった授業である。
正しい性知識を学ぶのはもちろんのことだが、それ以外にもポルノ作品でしかお目にかかれないようなアブノーマルな知識を座学で学んだり、いわゆる大人のおもちゃを使った自慰などによる性感帯の開発であったり、男性器を模した張り型を使用した性技の習得などを身につけたりするような、それこそエロ漫画でしか見ないような授業だった。
その立ち振舞から想像できる姿を裏切らず、高い知性を持つ優等生である和はこの性行為の授業においてもトップクラスの成績を納めているのだが、ただ一点、『とあること』を完全に拒絶したために、単位を取得できていないのである。
それでも、和は断り続けていた。
機会を待っていたのだ。
「実技だと男が必要なんてね……俺が居て良かったけど、俺が居なかったら別の人を連れてきたと思うと……うぅ~、なんかNTR妄想っぽくて胸が痛い……! NTRは、本当ダメだよ……!」
それはつまり、実際に男性を被検体として行う実技のような内容だった。
公男が記憶を持たない以前、つまりは生まれた時から『公男Love』勢であった和は、公男が見ている中で他の男を翻弄するようなプレイならばともかく、公男の預かり知らぬところで別の男性の精液を搾り取るような行為をするつもりなれなかったのだ。
兄である公男以外の人間に興味を持てない和にとって、この実技の授業は目の上のたんこぶである。
アルトリアからは『わがままを言うな』と軽く叱られ、榛名からは『男の人ってすごく単純だから、変なことしなくても勝手に射精してくれるよ?』と優しく諭されて、嫌々でも授業を受けろと言われていたほどだ。
それでも公男が『覚醒』する希望がある以上は、ギリギリまでこの補習授業を受けたくないと拒否していたのである。
(そう言えば、みんな言ってるけど……『覚醒』って何なんだろう? 俺がドリームワールドに転移したってことと関係あるんだろうけど……?)
公男はそんなことがふと疑問に覚えたものの――――。
(まっ、いっか! マーリンが関わってるんだし、俺がここに来たって意味だろ、多分! それまでのこの世界の俺は、なんか違う感じだったってことにしておこう! 容れ物的というか……なんか、普段からぼんやりとしてた感じっぽいし……!)
――――しかし、瞬時にそんなことはどうでもいいと思考の片隅に追いやってしまう。
この能天気さこそが公男の最大の長所でもあり、短所でもある。
深く物事を考えない性質は、現実の中にあるささやかな幸福を最大限に感じ取れることが出来るし、同時に周囲から自身が搾取されていることに気づかないということにもなるのだから。
しかし、その脳天気な性質はこのドリームワールドでは相性がバッチリであった。
今、爆乳を押し付けるように身を寄せてくる和の好感度MAXな様子から分かる通り、公男はドリームワールドにおいてラブコメ……いや、エロコメ作品の主人公のような存在である。
つまり、和以外にも公男へと向ける好感度が限界まで達している女性は、多く存在するということなのだ。
「あっ、お兄さんっ❤」
そう。
珍しく中等部の敷地を歩いている公男を見て、まるで飛び乗るように公男の背中へと抱きついてきた少女もまた、公男に恋をして肉体関係まで結んだ、『ハーレムメンバー』の一人なのである。
「うわぁ?! って……と、東郷さん!?」
「もうっ、東郷さんなんかじゃなくて美森って呼んでください❤ どうしたんですか、こんなところで❤」
それは『結城友奈は勇者である』に登場する美少女キャラクター、東郷美森であった。
原作の序盤では下半身不随状態で車椅子生活を送っていた彼女だが、このドリームワールドでは五体満足なままだ。
そのため、その原作でも大きかったのにドリームワールドではさらに豊満化している特徴的な爆乳をむにゅりと押し付けるように、背後から抱きつくことも可能なのである。
おしとやかな大和撫子のような黒髪清楚な美少女JC(それでいて爆乳)という男の欲望が形になった美森は、友人たちとともにいる際には極端な愛国心を持ちながらも思慮深いいつもの様子からは考えられないほどにはしゃいだ様子で、ぐりぐりと体を寄せて公男の背中へと爆乳を押し付けながら朗らかに笑っていた。
「い、いや……和の、妹の付き添いなんだ。なんでも、補習を受けるんだけど」
「補習……? 夢野先輩って優等生で有名なのに、それなのに補習って……まさか……!」
妹よりも妹らしく甘えてくる美森に対して、実際の妹である和が側にいるからこそ公男は少々戸惑ってしまう。
そんな公男を気にする様子もなく、美森は一年上の先輩でありながらも才色兼備の優等生として評判高い和が『補習』を受けるということに何かピンとひらめきを覚えたようである。
「性教育の補習ですか……!? それに、お兄さんが参加するってことですね?」
「うん。なんでも付き添いの男の人が必要ってらしくて」
精神年齢はアラサーの社会人であり、現実世界では甥っ子姪っ子を可愛がっていた公男にとって美森は『セフレ』のような関係でありながらも庇護すべき子供のような、ともすればクズ男と呼ばれても仕方のないような気持ちで接する相手だった。
そんな公男だからこそ優しげな落ち着いた様子で美森の爆乳を背中で感じ取りながら応えていく。
「私も行きます!」
「ええっ!?」
間髪を入れずとはまさにこのことだろう、公男の発言に対して美森は嬉々とした表情で自身もその補習に参加するのだと宣言したのである。
「東郷さん……じゃなくて、美森ちゃんもその授業を受けてなかったのかい?」
「はい。前も言いましたけど、私は男性に嫌悪感があって……あっ、もちろんお兄さんは別ですよ? だから、もう高等部に進学しなくてもいいかなって思っていまして。ヴィーラさんや喜多さんは、その、ちょっとした『性技』を使って単位を取ったって言いますけど……私はそういうのもやりたくなくて」
「そ、そうなんだ……」
「でも、お兄さんが一緒ならなにも問題ありません❤ この補習授業は飛び込みでも大丈夫だって先生が言ってる特別なものですから、このまま一緒に行きましょう」
そうして、背中に抱きついていた美森は素早く身を翻し、代わりに公男と腕を組む姿勢を取る。
その際に先ほどまで背中に感じていた爆乳のもにゅりとした感触が腕へと移っていき、自然と頬が緩んでニヤニヤとしただらしない表情を浮かべてしまう。
「教室はこっちになりますよ、お兄さん❤」
ともすれば百年の恋も冷めるような不細工な笑顔だったが、そんな表情を浮かべた公男を美森は実に嬉しそうな顔で見つめていく。
それはむしろ恋慕の念を更に深めたような顔で、まさしく、アバタもエクボというものだった。
そうして、公男は腕を組んだ美森の案内に従って校舎の中を歩いていく。
すると、『性教育補習授業』の立て看板を置かれた一つの教室の前にたどり着いたのだった。
「あっ、兄さんっ❤」
ガラガラ、と。
近未来SFな世界観とは裏腹になんとも懐かしい音が響き渡る。
公男のノスタルジーをくすぐるようにプロトマーリンによってデザインされているこの夢ノ国学園の校舎は、一部を除いて全ての教室のドアが『自動ドア』ではなく『平凡な引き戸式のドア』としてデザインされているのだ。
そんな風に公男と美森が入室すると、和が嬉しそうに声を上げて駆け寄ってくる。
「…………って、なんですか。貴女は」
だが、その上機嫌な声も公男と腕を組んでいる美森を見た瞬間に機嫌が急降下。
明らかな敵意を含んだ視線で美森を見つめ、思わずゾッとするような冷たい声で三森へと問いかける。
その様子だけでも和が大好きな兄に侍る女を歓迎していないことが十分にわかるものだった。
「こんにちは、夢野先輩。私も今回の補習授業に、お兄さんに手伝ってもらう形で参加しようと思いまして」
「なっ……!? どういうことですか……!」
公男が思わず逃げ出したくなるような和に対して、美森はどこか挑発的な態度で応えた。
バチバチと火花を散らすような二人はにらみ合い、やがて、和が美森に近づいていく美森もまたそれに応えるように公男から離れていき、二人はジリジリと近づいていく。
「……!」
「……!」
そうして、まるでキスをするかのような距離まで近づいてにらみ合いを続けていく。
それは野生の獣が威嚇し合うような、あるいは不良同士が行う『メンチの切り合い』のようなものだった。
(う、うわっ……! ふたりとも爆乳だから胸と胸が潰れあって……エッロぉ~!)
しかし、それぐらいまで近づいたものだから、二人は制服の上からでもハッキリとわかる中学生離れした爆乳と爆乳が触れ合ってしまう。
そうすることでお互いの胸によってお互いの胸が潰れてしまい、それは傍で見ていた公男が思わずゴクリと喉を鳴らしてしまうようなほどに官能的な光景を作り出していく。
「っ❤」
「ぁ❤」
そして、選ばれし優秀な男性である公男の『牝』を自負している二人は、何をしていてもまず愛おしい公男に全神経を傾けている。
聞こえるはずのない生唾を飲む音さえも明確に聞き取った二人は、一転して顔を蕩けさせていき、さらに同様に聡明な頭脳を持つがゆえに公男が何に興奮したのかも瞬時に理解した。
「兄さんに目をかけるその観察眼は褒めてあげますが、今日の兄さんは私に付き合ってもらっているんです❤ もちろん、次の日も、そのまた次の日も、その次の次の日も❤ 兄さんは私たち家族と付き合うという予定が組まれているんです❤」
「そうやってお兄さんを束縛するのはよくありません❤ お兄さんは特別な男性です❤ 多くの魅力的な女性たちがお兄さんを心の底から求めているのに、それを跳ね除けることをお兄さん自身が望んでいると思っているんですか❤」
「う、うおぉぉ~……!」
もにゅもにゅぅ❤ むにゅにゅぅ~❤
二人は口喧嘩をしつつも、わざと身を揺らしながらその胸と胸でお互いの体を押し合っていく。
それは『手押し相撲』ならぬ、名付けるならば、『乳押し相撲』と呼ぶべき実にエロティックな行為である。
身をくねらせることでその爆乳おっぱいの潰れ具合が変わっていき、喧嘩をすることよりもその爆乳を淫靡に見せることを優先しているのは明らかだった。
そう、すでに公男の魅力にメロメロになってしまっている二人にとって、全ては公男が気持ちよくなることが優先されるからである。
そんな風に公男を喜ばせるためのおっぱい相撲をしている二人を止めたのは、そんなおっぱい相撲のエロさに夢中になっていた公男ではなく、この補習授業を担当する女教師であった。
「はいっ! そこまで! ほら、授業の時間が迫っているんだから席についてね!」
パチン、と。
手を鳴らされたことで公男がおっぱい相撲から意識を戻して周囲を見渡すと、衆目を集めている次第だった。
どうやら教室内にはすでに複数人の男女が入室しており、それが今回の補習授業の面々で公男たちが最後のようである。
「な、なのはさんだ……! フェイトさんがそうだったし、やっぱりなのはさんも先生をやってるんだ……!」
その担当教諭というのが、『魔法少女リリカルなのはシリーズ』のメインキャラクター、高町なのはだった。
それも少女時代の『なのはちゃん』の姿ではなく、『魔法戦記リリカルなのはForce』で見せた二十代の大人の『なのはさん』としての姿である。
フェイトもそうだったように、なのはもまたこの夢ノ国学園の教師としてこの世界では働いているようだった。
「それじゃあ、みんな揃ったみたいだし……学外の男の人とか担当してない女の子もいるから、改めて、自己紹介させてもらおうかな。私は、高町なのは。今回の補習授業の担当教官を務めさせてもらいます。よろしくね!
って……あれ? あなたは、東郷美森さん? 今回の補習授業に参加する届け出は出てなかったはずだけど……」
「はい、飛び入りになります。こちら、生徒手帳ですので登録をお願いしますね」
そんななのはは補習を受ける生徒たちへとにこやかに挨拶を交わすと、予定にはなかった美森の姿を見て目を丸くする。
美森は美森でゴソゴソと生徒手帳を取り出すと、そのままなのはの目前の教卓に置かれた機器に照らし合わせていく。
「えっと……うん、ID確認したよ。東郷さんも単位を取ってなかったんだね。でも、受けるつもりになってくれたのなら何よりかな。それで、男の人は……フェイトちゃんの言ってた、噂の特待生くんで良いのかな?」
「もちろんです。むしろ、お兄さん以外はお断りなので」
生徒手帳に仕込まれたチップから情報を読み取ったのか、なのはは美森もまたこの補習授業を受ける必要がある生徒だと認識すると参加の許可をあっさりと出した。
もっと書類などの事前登録のようなものが必要だと思うのだが、まるで電子マネーを使用するかのような気軽なあの動作だけで参加と単位取得は問題なく行えるようだ。
開くだけで『ガラガラ』という音を立てるような昔懐かしい引き戸のドアをした教室であるくせに、SFめいたシステマチックな機器が揃っているアンバランスさのあるドリームワールドらしい様子である。
「フェイトちゃんから聞いてるよ。夢野公男くんだよね、とっても優秀な男の子だって。頑なだった夢野さんや東郷さんがあっさりとこの授業に来るぐらいなんだから、フェイトちゃんの話も嘘じゃないんだろうね。
あっ……ただ、こういう補習授業に来れもらうには……う~ん、ちょっと相応しくないかも?」
なのはは公男に対してフェイトから評判を聞いているようだった。
そのため、実に好意的な笑みを向けて語りかけながら、その後すぐに少しだけ難しそうな顔をして考え込んでしまう。
「え、えっ!? 俺、ダメなんですか?」
「ダメじゃないんだけど……生徒の経験になるって意味ではむしろ歓迎すべきぐらいだよ? でも、なんていうか……強すぎるっていうか影響が強すぎるから他の男の人に悪いというか……?
まあ、今回は問題ないかな。ほらほら、みんなで席について!」
なのはから漏れ出た言葉は公男を否定するとも取れる言葉だっために慌ててしまうのだが、それでもなのはは考えた末に問題ないと言って空き席に座るように促す。
ホッとした様子で公男が席につき、和と美森は当たり前のようにその左右の空き席へと座っていく。
こうして、授業の準備は完全に整ったのだった。
「うん、これで全員揃ったし……これから授業の説明をしていきます。今回の性教育の授業は……とても大事な内容だよ。男性の『目利き』になります」
「目利き……?」
思わず公男が漏らした疑問に応えるわけでもないだろうが、なのはは説明を続けていく。
「ちょっと言葉が悪かったかな。この性教育の授業での『目利き』っていうのはね、男性を見極める能力を手に入れるってことなんだ。『観察眼』って言ってもいいかな? どういう男性が魅力に溢れていて、男性の性感を正しく見抜けて気持ちいい射精に導けるかどうかっていう能力のことだからね。
相手の男性の情報をしっかりと把握しながら、同時に相手の男性のことをよく観察して、男性に気持ちよくなってもらう……これはセックスにおいてものすごく大事なことだからね。そして、男性にもいろんな人がいるから、座学で教えることはほぼ不可能。実技じゃないと身につかないんだよ?」
そう、今回の性教育は観察眼を身につけるための授業だった。
どういうことをすれば相手が気持ちよくなってもらえるか。
たとえ一卵性の双子だとしても全く同じ人間などこの世には存在しないのだから、こればかりは座学で教えることは不可能であり、その人によって異なるということを知ってもらうためにも実際に男性と触れ合う必要がある。
そのために、今回の授業では男性のパートナーを連れて来る必要があったのである。
「そういうことなので、皆さん、連れてきてもらったパートナーの紹介をしてください。自分のパートナーを自分の言葉で紹介するのも、その人のことを理解する上で大切なことだからね」
パートナーとなる男性を女子生徒自身に紹介させる。
確かに、これが観察眼を鍛えるものだというのならば、実際に男性の特徴を言語化することで自分はパートナーのことをしっかりと見れているのかということがわかるはずだ。
なのはは手元のタブレットで名簿を確認し、実際に教室で座っている補習授業を受ける面々の顔を見ると、まずは廊下側に座っていた大人の男性を引き連れた金髪の女子生徒を指定した。
「それじゃまず……うん、『八宮めぐる』さんからお願いしようかな」
「はーい!」
(う、うわ……シャニマスのめぐるだ……! ガチモンのアイドル……やっぱり可愛い……!)
最初に指定された女子生徒は、『アイドルマスター・シャイニーカラーズ』に登場する美少女アイドル、八宮めぐるだった。
外国人の血が入っているためにその金髪は染めた結果ではなく本物の地毛で、キラキラと光っているかのような大きな目は蒼い。
顔だけで一生食べていけそうな美少女のめぐるのニコニコとした元気の良い笑顔は、このドリームワールドで数多の美少女を見てきた公男でも思わずドキリと胸を高鳴らせてしまいそうなほどに可愛らしいものだった。
「私、八宮めぐるのパートナーになってくれた男の人は、アイドル事務所でお世話になっているプロデューサーさんだよ! どういう人かというと……う~ん、とにかく優しくて気の利く人! 私たちアイドルのためにいつも頑張ってくれてて、女の子に囲まれているからいつも清潔な身だしなみを心がけてくれてるの! とっても頼りになる大人の男の人だよ!」
「いつもめぐるがお世話になっています。微力を尽くしますので、どうぞよろしくお願いします」
そんなめぐるのパートナーは原作においてプレイヤーの投影対象であり、同時に一人のキャラクターと呼んで問題もないほどに個性を持つプロデューサーだった。
めぐるの紹介の通り、大人の余裕を感じさせる立ち振舞で、かつ、髪型からスーツまで実に身ぎれいにした清潔感のある男性である。
そして、めぐるの説明に足りない部分があるとすれば、プロデューサーは180センチを越えた高身長と優しげな顔立ちをしたイケメンという、内面や仕草だけではなく外見においても秀でた魅力的な男性ということだろう。
そのイケメンっぷりと言えば、公男はだらしのない平凡な自分が恥ずかしく感じて、思わず身を小さくしてしまうほどだった
「ありがとう。それじゃあ次は……うん、小等部から早々にこの授業を受けることにしたんだね。『美遊・エーデルフェルト』さん、お願いします」
「はい、わかりました」
(プリヤの美遊だ! 小学生もいるのか……うぅ、俺はロリコンじゃないけど、やっぱりこのドリームワールドで見る生のロリキャラ、可愛いな……!)
そんなめぐるの紹介が終わると、次はその隣に座っていた小さな少女を指定する。
『プリズマ☆イリヤシリーズ』に登場する美少女ロリ、美遊・エーデルフェルトだ。
小学生らしい小さな体の未成熟な肉体に、やはり幼さを多く残した、だからこそ可憐な印象を与える、黒髪黒目の大和撫子らしい美貌という、ロリコンでもない公男でも思わずチンポを勃起させてしまうほどの、どこか神秘性を持つが故に禁忌を犯す興奮を促してしまうような、儚げなロリ美少女である。
「私のパートナーは、友人の兄である衛宮士郎さんです。家族ぐるみでお付き合いをさせてもらっていて、聞けば、私が養子となっているエーデルフェルト家の義姉やそのご友人の際にも参加してもらった方です。
特徴は……優しい人です。少し鈍感ですけど、人を気づかえる性格の人、でしょうか? あとは、先程この授業にも何度か参加していると言ったことからもわかるかもしれませんが、高校生ですが非常に性行為の経験があります。多くの女性に言い寄られていることからも、男性の魅力に溢れた人だと思います」
「み、美遊……それだと俺がまるで女の子にだらしない性格みたいに……まあ、いいや。えっと、よろしくお願いします」
そんな美遊のパートナーは衛宮士郎だった。
アルトリア・ペンドラゴン[オルタ]が公男の姉となっていることからも、恐らくはセイバーと縁深い『Fate/Stay Night』を軸とした士郎ではなく、セイバーとは関わりの少ない『プリズマイリヤ』を軸とした士郎としての姿なのだろう。
しかも、美遊の言葉からイリヤはもちろんのこと、遠坂凛やルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトのような、作中キャラクターと肉体関係があるようだ。
公男は『ヤリチン』という意味では誰も敵わないようなほどに多くの女性とセックスをしているくせに、士郎のことをモテモテの男だと認識して敗北感を覚えていた。
そういう男なのである、公男は。
「うん、ありがとう。それじゃあ…………ああ、この手の男の人ってことは、もう……! 毎回いるんだよね、こういう子。えっと、『セシリア・オルコット』さん? パートナーのことを紹介してくれるかな?」
「わかりましたわ」
(セシリアだ! 弱めの金髪縦ロールに長めのスカート、王道のお嬢様で、かわいい……!)
美遊の紹介を聞いた後に、なのはは頭を抱えながら次の女子生徒を指名した。
めぐると同じく金色の髪に青い瞳、一方で日本人の血は混じっていない本物の英国貴族。
『インフィニット・ストラトス』シリーズに登場するヒロイン、セシリア・オルコットだ。
原作では高校生である彼女だが、まだ中学生ということもあるのか、原作よりも少し胸が控えめでお尻も小ぶりである。
しかし、そのゴージャスとさえ言えるような王道お嬢様の美貌は変わらず、愛らしさと華やかさが矛盾なく同居した美貌に自信に溢れた表情を浮かばせていた。
ただし、彼女が連れているのは原作の主人公である織斑一夏とは程遠い男性である。
「こちらは、私の家が取引をしている会社に務める男性ですわ。性的魅力に秀でているという評判も高いため、参加をしていただきました。そのため人となりは知りませんが……見ての通り、顔立ちは整っており肉体的にも実に頑強。今は見えませんが、男性器も非常に大きいとのこと。本国では爵位を持っている私の家と取引をしている会社に務めていることからも分かる通り、社会的な能力も高いです。
申し訳ありませんが…………ふふふ、そちらのフィクションのような噂ばかりが先行している、『特待生』という殿方であっても敵わないほどに優秀な男性と見込んでおります」
「どうも、ヨロシク!」
「あー、もう! お金で雇ったんだよね? 良くはないけど禁止されているわけじゃないから認めるけど……はぁ、ほら、夢野さんと東郷さんも無言で睨みつけてないでね。ここは喧嘩をする場じゃないよ!」
そう、セシリアのパートナーはオルコット家が雇った黒人男性である。
セシリアのように金で男性を雇うということはどうやら珍しいことではないようで、それでいて何かしらの問題はあるのか、なのはは頭を抱える。
張り裂けそうなほどに詰まった筋肉は実に逞しく、平凡な男子高校生の肉体である公男はもちろんのこと、成人男性であるプロデューサーや鍛えている士郎よりもいかにも力強そうで頼りになる肉体だ。
しかも、わざとピッチリとしたズボンを履いていることでその股間にある巨根チンポを浮かしてアピールしているではないか。
お嬢様であるセシリアの見栄のために雇われたことは明らかだった。
しかも、セシリアが和と美森を――いや、公男を小馬鹿にしたような笑みを浮かべるものだから、二人の美少女は一瞬で表情を消して冷たい視線でセシリアを睨みつける始末だ。
そんな三人をたしなめながら、なのはは次の女子生徒へと目を向ける。
しかし、こちらもこちらで問題だらけな生徒のようだった。
「…………えっと、『アイネス』? あなたのパートナーの男性は?」
「居ません。ハカセから今回の補習授業を見学するようにと命じられたので、アイネスはここに来ただけですから」
(おお、アイネスまで……本当にドリームワールドにはロボ娘までいるんだな……!)
そして、続いてもう一人の女子生徒、『ドルフィンウェーブ』に登場する完全なアンドロイドである『アイネス』に声を掛けるのだが、そのアイネスの側には男性が居なかった。
そう、アイネスは今回、あくまで見学をするつもりでここに来たというのだ。
「元々、アイネスはハカセから見聞を深めるようにと中等部に入学させられましたが、このような生殖活動を必要としません。それで高等部に進学できないというのなら、それも構いませんから。ハチならばまた違う意味を見出すかもしれませんが、アイネスはこの授業に意味を見いだせません。なので、気にしないで進めてください。アイネスは授業を記憶媒体に記録しておくだけですから」
「うぅ~……! 今回はやりづらいなぁ……!」
アイネスはそれこそ美遊と変わらないような幼い容貌をしているが、こちらは小等部ではなくれっきとした中等部の生徒である。
ハカセ、つまりは原作と同じくアイネスを作成したアマデア・ウォルファに命じられて、妹分であるナハト、通称ハチとともに中学に通っているだけなのだ。
小さな体に大きな乳房、しかし、和や美森のような規格外の爆乳とは呼べない、そんな巨乳を見せつけるように胸を張りながら、補習授業を受けるのではなく見学するのだと宣言する。
その黒髪おかっぱな、幼いながらも将来は美人になるだろうと確信させる美貌にはなんの罪悪感も覚えていないようで、問題児が多いとなのはは頭を抱えてしまうのだった。
「最後に、夢野和さんと東郷美森さん、お願いね」
「はい」
「わかりました」
そうして、和と美森の番になった。
迷いなく立ち上がった二人に対して、逆に公男は少し緊張してしまう。
タイプは異なれど、先に紹介された三人の男性は魅力的な男性と言って何の問題もない。
そんな三人と比較されるようになるのだから、平凡を自覚している公男は居心地が悪くて仕方がなかった。
「私のパートナーは実兄である夢野公男さんです。兄さんは見ての通り、素晴らしい人物です。特待生として知られている通り、『本当の男性』です」
「同じく、私のパートナーも高等部である夢野公男さんです。言葉で説明するのが難しいほどに魅力的な、日の本一の男性……私の貧弱な語彙では、それだけしか説明できないことを歯がゆく思います」
「…………えっと、それだけかな?」
「兄さんの説明は言葉ではできません。どれだけ言葉を尽くしても兄さんはそれ以上の魅力を見せるので、私がウソを付くことになってしまいます」
「魅力的な殿方というのはそういうものです」
紹介される立場の公男が恥ずかしくなるほどである。
いや、実際に恥ずかしすぎて身を小さくしてしまった。
これがからかわれているのならばまだいいが、この二人の中学生美少女は洗脳されているわけでも催眠にかけられているわけでもなく、本気で公男のことを理想の男性だと認識しているのだから始末が悪い。
これは男性を観察するための授業であり、そのために改めてパートナーのことを観察して説明しろという意味での自己紹介だ。
それなのに説明を放棄しているとしか思えない二人に、なのはは何度目になるかもわからなくなるほどに頭を抱えてしまうのだった。
「う~ん、これは苦戦するかも……と、とりあえず、授業を進めていくね!
まずは――――」
――――こうして、補習授業は進んでいった。
自己紹介の後に行ったのは、男性への軽いテストである。
身だしなみチェックから始まり、短い時間で行える簡単な知力や体力を測るテスト。
他にも身体検査さながらに身長や体重はもちろん、視力や聴力などを測った上で、医療用ロボットによる採血も実施。
さらにはチン長、つまり男性器の長さまで測ったのである。
科学技術においても現実の世界より格段の進歩を遂げているドリームワールドのため、これらは実に一時間ほどの時間をかけて全ての結果が出力できたのだった。
そして、結果は――――。
「ひ、ひどいな、俺の成績だけ……!」
公男だけがチンポの長さ以外は平均点をウロウロとしていて、他の女子生徒のパートナーとなる男性は非常に優秀な高得点を叩き出していたのである。
めぐるのパートナーであるプロデューサーは身だしなみや所作、知能テストを中心に高得点を記録し、美遊のパートナーである士郎は体力テストや身体機能の健全さで高い得点を示していた。
特にセシリアのパートナーは凄まじく、知力や体力は最高点を記録し、チンポの長さに関しては公男と並ぶほどの巨根なのだ。
さすがは金で雇われただけのことはある。
「おーほっほっほ! どうかしら、皆さん! 私のパートナーは!」
これに気を良くしたのがセシリアである。
原作からも察せられる通り、過去などとはまた別に自尊心の高いセシリアは胸を張りながら大きく高笑いをしてみせた。
金で買った高スペック男性の高成績に勝ち誇る生徒は珍しくないのだろう、なのはは実にげんなりとした顔でセシリアを見つつ、他の女子生徒が気を悪くしていないかと見渡すのだが――。
「…………」
「…………」
「あれ……?」
特に心配だった和と美森の二人は、そんなセシリアの挑発めいた高笑いに無反応を貫いていた。
強がっているわけではない。
セシリアとそのパートナーに本気で興味を抱いていないようで、それどころかこのパートナーの男性を哀れなものを見るかのような目で見ていた。
(あ~、フェイトちゃんも言ってたけど……そっか。公男くんといつもいるから、『気づいてる』んだね。この男の人がクスリとかでドーピングしてること。公男くんはそういうのじゃない本物だから、それを知ってる二人は違いがわかるから何を言われても『勘違い女の言葉』だって切り捨ててるわけだ)
なのはもまた冷めた目で身体検査の結果を眺めていた。
プロデューサーと士郎は、ドリームワールドの平均的なチン長であるが、黒人男性は『選ばれた存在』であるはずの公男と同等の長さを記録している。
これはありえないことだ。
そんな人物がいれば、間違いなく国際政府に保護をされて、世界的なニュースになっているはずなのだから。
つまり、手術か薬物かはわからないが、合法ではあるものの、女性の本能を揺さぶることのない方法で男性器を大きくしているだけなのだ。
ちなみに、ドリームワールドの平均は現実の世界と照らし合わせると日本人男性の平均よりも小さなサイズである。
「うん。それじゃ、今回の補習授業の準備はこれで全部終わったし……そろそろ、本当の実技を行っていくよ」
そうして、なのはは授業を進行していく。
今までの内容は目利き、つまり観察眼の重要性を説く座学に近い授業だったが、これからは実技と呼ぶに相応しい内容になる。
「性行為のテストだよ。方法はなんでも良いから、相手の男性を射精させてね。射精させられれば単位の取得になるから、頑張ってね」
「ふふふ……お待たせしました、兄さん❤ たっぷりと気持ちよくさせてあげますね❤」
「随分と待たせてしまってすみません❤ お兄さんの大好きなおっぱいで、いっぱいピューピューしてください❤」
そう、実際に性行為と呼べるようなことを行う時間だ。
これに沸き立ったのが和と美森だった。
今にも舌なめずりをしそうな、実に淫靡な笑みを浮かべながら公男へと近づいてくる。
「ただし!」
だが、そこで教師であるなのはからストップがかかった。
その可愛らしさの残った美貌に厳しい表情を浮かべながら、なのははこの性行為のテストにおいて重要な要素を付け加えていくのである。
「その性行為の相手は、自分が連れてきたパートナーとは別の男性です!」
「なっ!?」
「えっ!?」
そして、なのはから飛び出た言葉は和と美森からすると信じられないような言葉だった。
二人の爆乳美少女の顔は瞬時に驚愕へと染まり、そして、徐々に怒りすらにじみ出た恐ろしい顔になっていく。
当然だろう。
二人はあくまで公男という男性のことが好きなのであって、他の男性に関してはむしろ嫌悪感のようなものさえ覚えている節があるのだ。
「ええっ!?」
また、驚いたのは公男も同様である。
なにせ、自分を相手に自分の恋人たちが性教育の実技を習うのならば良いが、その相手が別の男性と言えば、どこか『NTR』を感じさせるプレイになってしまうではないか。
NTRというものに好印象を覚えていない公男としてはあまり歓迎できるようなシチュエーションではなかった。
「初対面になる男性でもその性感を見抜く――それが大事な授業なんだからね。それに、気心の知れたパートナーが相手だったら、性感帯ではない部分を責めても気を利かせて射精してくれるということもありますから。実際に相手を気持ちよくすることが出来るかのテストですから、これは当然のことです!」
どれだけ不満げな顔をしてみせも、教師としてなのはは譲らないだろう。
こうして、公男にとってはNTRとも感じられる性行為のテストが開始されるのだった――。
(続)
