数日前、壊れたまま放置していた古いハードディスクの、
まるで海の底に沈んだ破片のようなデータの中から、
ひとつのTXTファイルを見つけたの。
中には、すっかり忘れていた作業の進捗メモが残ってて、
それを辿っていくうちに、
「依頼」って名前のフォルダと、途中まで作っていたファイルに辿り着いた。
あれは――
私がかつて、自分の力もわきまえずに引き受けてしまった、
ある“友人”からの制作依頼に関するものだった。
まったく経験もなかった私に、
彼は本当に優しくて、すごく寛大な条件で「まずはラフだけでも描いてみて」って言ってくれて。
だから私は、正直に伝えたの。
「経験も、美術の基礎もないし、
ソフトもほとんど使えなくて……
R-18の○描写も得意じゃないんです」って。
(ちなみに私が“触手”を描くようになったのは、
解剖学を無視できるから、未熟な技術を少しでも隠せると思ったからなんだ)
それで、「作業が進んで、あなたが納得してから報酬のことを考えてください」って伝えて。
(……実のところ、私は報酬を受け取るつもりもなかったの。)
でも、結局は――
私の未熟さや、勝手な気持ち、
その後に降りかかってきた色々な出来事が重なって、
私は、依頼してくれた人の善意を裏切ることになってしまった。
彼は何も責めなかったけど……
私のせいで、そのサークルの頒布計画に影響を与えてしまったのは確かで。
しかも、当時の私は本当に限界で、
(逃げ出した職場の先で、苦手だった人が新しい上司になったりして)
心がもう、折れかけてたの。
それに加えて、FANBOXやPixivでの審査の厳しさ、
よくわからない理由でのアカウント凍結。
(Pixivの初回凍結理由は、FANBOXへの誘導と、違反とされる有料コンテンツの掲載だって言われた)
……でも、他の絵師さんたちも、みんな同じようなことしてるんじゃないの?
なんで、他の人の露骨な○描写は大丈夫で、
リンクまで貼ってあるのに、
私の投稿だけがダメなんだろうって、ずっと考えてた。
私はただ、100円の壁を設けて、
未成年が不適切な内容を見られないようにしてただけなのに。
だから、Pixivの投稿を削除しはじめて、
違反の可能性があるものを一つずつ修正していった。
過去2年分、300件以上削除したけど……
それでも審査は通らなくて。
戻ってくるのは「まだ違反があるので修正してください」という、曖昧な返答だけ。
どこが違反かは教えてもらえなくて、
残っている数百件の投稿を、私は手作業で一つ一つ削除するしかなかった。
たぶん、全部消さなきゃ通らないんだと思う。
それだけじゃなくて――
学生時代の大切なデータが詰まっていた外付けHDDも、落として壊してしまって。
専門の復旧業者さんに頼んだけど、
結局、すべてを取り戻すことはできなかった。
私は、Pixivのアカウントを諦めて、
気持ちの面でも、壊れてしまった。
最後は、慣れないビジネス文書を必死で書いて、
「もう続けられません」って相手に伝えるしかなかった。
……そして、
今になって、あのファイルを見つけてしまって。
つらかった記憶や、
悔しさ、後悔が、
渦のように私を引きずり込んでいく。
……
…
――私、まだ、あれを完成させること、できるのかな。