櫻木真乃が家に来たいと言い出したのは2ヶ月ほど前のことだった
所帯のある男の、それも不倫関係にある男の家に来たいという女がどれだけの不吉を孕んでいるかはいくら彼が愚か者であっても容易に想像できた
そして断る権利がすでになく、万が一断ったとして櫻木真乃がどのような行動に出るかを考えることの方が恐ろしいことを重々承知していた
プロデューサーはしばしの沈黙の後、『愛する妻』に電話して自身が手塩にかけて育てた担当アイドルを家に招く予定を立てるよう伝えた
「おいしい…!」
櫻木真乃は本当に心からの賛辞を述べた
プロデューサーの妻は腕によりをかけて櫻木真乃と夫の好物を拵えていた
それは赤の他人であっても、別にそれが好物でなくても、食べた者を魅了するに相応しい料理だった
ただ一人、プロデューサーだけが味がまるでわからないでいた
「プロデューサーさんはいつもこんな美味しいお料理を作っていただいてるんですね、羨ましいです」
そんな言葉のひとつひとつが、彼の心を冷たく突き刺していった
不安と焦燥と、興奮で、どうにかなってしまいそうだった
櫻木真乃は食卓を囲みながら、妻の目の前でプロデューサーを愛撫していた
机の下で伸ばされた綺麗な指先が巧みに彼の形をなぞった
櫻木真乃の女性の部分に侵入しその本性を暴き出した肉棒を、いつものお返しとばかりに爪でかりかりと刺激していく
柄と傘の境目を執拗に攻撃され、そのたびにプロデューサーは呻き声をあげたくなった
櫻木真乃は幾度にも渡る彼との行為で、弱点を完璧に把握していた
彼女がその気になれば人差し指の爪ひとつで服の上からでも絶頂させることができただろう
そうしなかったのは妻の前だからというわけではなく、ただこの先、この夜起きるであろうことを余すところなく楽しみたいからであった
今この場で、プロデューサーは櫻木真乃の意志によってのみ生かされていた
快楽に犯されそうになりながら、プロデューサーは身を捩って料理に咽せたふりをして咳き込んで誤魔化した
妻はそんな夫を気遣う
その罪悪感がさらなる隠し味となってプロデューサーの心を震蕩させた
あともう少しで果てるというところで櫻木真乃の指はついと離れてしまった
妻と談笑しながら、大きな身振り手振りでプロデューサーとの思い出を語る
この少女が、出会った時の無垢なままであればどれだけよかったか
そう思わずにはいられなかった
妻がデザートを取りにキッチンへ向かう
その刹那、あくまで自然に、まるで手品でも見ているかのように、櫻木真乃の右手が妻のグラスに伸びた
さらりと粉のようなものをワインに溶かし、櫻木真乃は妖しく微笑んだ
まさか、と狼狽えるプロデューサーの唇に櫻木真乃はそっと人差し指をおいた
先ほどまで彼の肉棒を散々いじめていた人差し指だ
その先端をちゅぷりと口の中に滑り込ませ舌の先を優しく撫で、にこりと笑いながら
言った
「毒じゃないから安心してください」
それはまぎれもなくアイドル櫻木真乃の愛らしい声色だったが、プロデューサーには死の底よりも暗く冷たい不協和音に聞こえた
櫻木真乃は先ほどまでプロデューサーの口内にあった指先を愛おしそうに舐め上げた
気づいた時にはプロデューサーは櫻木真乃に組み伏せられていた
もちろん力任せに彼女を振り解くことはできたが、隣で眠る妻を起こさないように暴れることは容易ではなかった
なぜなら彼も、彼女も、なにも身につけていなかったのだから
櫻木真乃が細工したグラスは妻のものだけではなかったのだ
その指先に妖艶に肉棒を弄られ前後不覚になっていたが、彼女はプロデューサーのグラスにも粉薬を入れていたのだ
しかもおそらく、妻のものとは違う
身体が、熱く、気持ちが、昂る
目の前で全裸の櫻木真乃がその肢体をくねらせながらしなだれかかってくる
その事実だけで射精しそうになるほど彼の理性は何処かに行ってしまっていた
挿入れたい
挿入れたい
櫻木真乃に挿入したい
隣で眠る妻のことも
なかなか子供に恵まれないことも
まとまりかけている仕事のことも
皆に信頼されるプロデューサーであることも
全てをかなぐり捨ててただ今は櫻木真乃の海で溺れたかった
櫻木真乃が馬乗りのまま、秘部をぱかりと広げて見せた
それは触らずともわかるほどぐっしょりと湿度を帯びており、陰唇の間で愛液が橋をかけていた
櫻木真乃は膣内に指を滑り込ませ、恍惚の表情を浮かべながら引き摺り出した
親指と人差し指で引き伸ばされた牽糸性の高い愛液がびろりと長く長く伸びた
「効果てきめんです…♡」
プロデューサーはその言葉の意図を知る由もなかったが、女性の分泌物の性状は月経周期によって変化するものであり、いま櫻木真乃の秘部から溢れ出したそれはまさに排卵期のものであった
櫻木真乃は自身が使った薬剤の効果と、主治医の有能さを再確認していた
「プロデューサーさんも…準備万端みたいですね…♡」
櫻木真乃がゆっくりと腰を落とす
彼女が愛した男の象徴を愛おしそうに股にあてがう
もうプロデューサーは彼女から逃げられないことを悟った
静かに瞼を閉じて、彼女から与えられる快楽を受け入れた
※283文庫「梟のねぐら」より引用
前回→

櫻木真乃は魔性であった 彼女をスカウトしたあの日から、あるいはそうしようとした瞬間から、彼は櫻木真乃に魅了されていた 人を惹きつける天性の素質と類稀なる芯の強さ 櫻木真乃を構成する細胞のひとつひとつが彼女をアイドルたらしめていた 彼はスーツも折り目正しく美しい、側から見れば理想的な好青年だが、櫻木真...
次回→

「今日は早く帰ってきてね」 穏やかな金曜日の朝、プロデューサーは妻からそう告げられた 櫻木真乃との狂乱の夜から1週間ほど経った 精力剤を盛られたうえで淫らに肢体をくねらせる櫻木真乃を前に欲望を抑えられるわけもなく、隣で妻を寝かせながらプロデューサーは激しく腰を打ちつけた 櫻木真乃は破滅など厭わないとば...
hondy/ほんでぃ
2022-08-04 22:31:25 +0000 UTCのぶし
2022-08-04 22:16:11 +0000 UTChondy/ほんでぃ
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