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「今日は早く帰ってきてね」 穏やかな金曜日の朝、プロデューサーは妻からそう告げられた 櫻木真乃との狂乱の夜から1週間ほど経った 精力剤を盛られたうえで淫らに肢体をくねらせる櫻木真乃を前に欲望を抑えられるわけもなく、隣で妻を寝かせながらプロデューサーは激しく腰を打ちつけた 櫻木真乃は破滅など厭わないとば...
快楽のうしろには面倒と悔恨をもたらすものがついている
その代償がどうなるか最初からわかっていれば、この結末は避けられたのだろうか
あるいは破滅などどうでもいいから、結局は目の前の快楽に溺れていただろうか
「こんにちはっ、プロデューサーさん」
櫻木真乃はプロデューサーの家の扉を叩いた
手には食材や掃除用品などが入ったビニール袋が握られていた
表情は明るく、プロデューサーと出会った頃の真乃だった
櫻木真乃はいつだって、にこやかに微笑みながら礼儀正しく挨拶をした
それは今も変わっていなかった
応答がないことを悟ると櫻木真乃は当たり前のように持っていた合鍵でドアを開けた
以前よりも寂しくなった玄関と、重苦しい澱んだ空気が真乃を出迎えた
だが真乃の心は晴れやかだった
これからの2人の、いや、3人のことを考えるだけで胸がいっぱいだった
櫻木真乃には他の何を差し置いても大切なものがあった
住む場所や、世間体のことなど些細なこと
そう彼女には、彼女のすべてを変えてくれた人がいた
「プロデューサーさんっ♪」
ぐちゃぐちゃに散らかったリビングの片隅で、項垂れるようにプロデューサーは座っていた
ろくに食べ物を口にしておらず頬はこけていた
綺麗に整っていた髪や髭は伸び伸びになり、うっすらと白くなりかけていた
床には書類やら皿やらグラスやらが散乱していた
結婚式の時に撮ったパネルも
プリザーブドフラワーにしたブーケも
2人で開けたワインボトルも
原型がわからないほど粉々になり、そのいくつかがプロデューサーの手足に傷を作っていた
「ほわぁ…だいぶ散らかっちゃいましたね…でも私が来たからには安心です。今日から私、がんばりますねっ、むん♡」
櫻木真乃は腕まくりをしながら嬉しそうにそう言った
櫻木真乃はプロデューサーとの子どもを身籠った
残酷なことだが、彼が愛し連れ添った妻との間に出来なかった命が
櫻木真乃との間にはあっけなく誕生した
これはプロデューサーがどうとか妻がどうとかいう問題ではなく、ただ単に生まれながら、そう純粋に生まれながら、櫻木真乃とプロデューサーの相性が良かっただけの話である
櫻木真乃とプロデューサーは出会うべくして出会った
そう生物学的に、陳腐な言葉を用いれば運命的に
2人は最初から番いとなるべき男女だった
櫻木真乃は精神も肉体もプロデューサーに適合していた
櫻木真乃が求めればプロデューサーは雄としてそれに応え
プロデューサーが求めれば櫻木真乃は雌として子宮を差し出すべきなのだ
唯一よろしくなかった点は、プロデューサーが妻と、「元」妻と出会う前に櫻木真乃と出会っていなかったことだけだった
櫻木真乃の方が先にプロデューサーと出会っていれば
櫻木真乃の方が先にプロデューサーと結ばれていれば
2人は誰からも祝福される、世界一幸せな夫婦になっていたに違いない
だが2人は今そうなってはいなかった
妊娠が発覚した櫻木真乃はそれは嬉しそうにプロデューサーに報告した
初めてオーディションに受かった時のような眩しい笑顔だった
戦慄し策を巡らそうとするプロデューサーを尻目に櫻木真乃は姿を消した
やがて週刊誌に2人の名前が踊った
現役トップアイドルがプロデューサーとの、それも所帯のある男との交際が叫ばれるだけでも大事であるが、さらに櫻木真乃の妊娠まで報じられた時の世論の混乱ぶりは計り知れなかった
SNSは何も知らない一般人たちが事情通ぶり、インフルエンサーは無責任に根も歯もない憶測を掻き立てた
そもそもこのリークは誰からのものだったのか、それはもう誰にもわからない
283プロダクションは一連の騒動について謝罪
該当プロデューサーの解雇と櫻木真乃の契約解除を告げた
涙ながらにプロデューサーを責め立てるアイドルもいた
事態が飲み込めず呆然とするアイドルもいた
何も語らず、ただ事務所を去るアイドルもいた
妻は泣き叫びながらプロデューサーへの恨み辛みを吐き捨て家を出て行った
プロデューサーは数日にして全てを失った
そう、櫻木真乃以外の全てを
「プロデューサーさん、ご気分がすぐれませんか?」
掃除中の櫻木真乃がプロデューサーの顔を覗き込んだ
失意の中ひとりふさぎ込み、自殺することすら考えていたある日
櫻木真乃が堂々と自宅にやってきた
お腹を愛おしそうにさすりながら
「安定期に入ったので帰ってきました♡プロデューサーさん、ひとりにしてしまってすみませんっ。でもこれからは私がいますから」
櫻木真乃は荒れ果てた部屋を見渡しながら言った
「綺麗にしないといけませんねっ♪」
櫻木真乃はもう堕ろせない週数になっていた
堕ろせないというのは精神論ではなく、母体の健康上、法律で守られるべき週数のことで、櫻木真乃はそれを過ぎるのを待っていた
運命を固定された胎の中で愛しい我が子がかすかに動くのを感じる
それだけで櫻木真乃は果ててしまいそうなほど昂揚した
それが昨日の話だった
櫻木真乃は早速2人の愛の巣を掃除し始めたのだ
いまいましい"先客"がいた家ではあったが櫻木真乃はそんなことを気にする女ではなかった
存在を感じはするが、他人からではわからないほどのかすかなふくらみ
櫻木真乃の見事な肉体美が妊娠の生理現象を隠した
道ゆく人の誰も彼女が妊娠中だとは思わないだろう
憎らしいぐらいに櫻木真乃はしなやかな身体をしていた
「プロデューサーさん?ご気分がすぐれませんか…?」
櫻木真乃は不安そうに聞き直した
プロデューサーの気分がすぐれるはずがないのだが、櫻木真乃は今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた
それはちょうどあの日に似ていた
ほんのわずかな疲労の蓄積がプロデューサーを病ませてしまったあの日
それを櫻木真乃が優しく慰めたあの日
その真乃を押し倒して純潔を奪い、魔性を覚醒させてしまったあの日
あの日と違うのは、もうプロデューサーには何もなかった
あの眩しい夕焼けの光線が事務所を赤く染めていた日に戻れるならば
プロデューサーはもう過ちを犯さないだろうか
櫻木真乃という魔性に、吸い込まれることはなかっただろうか
櫻木真乃はくすりと微笑むと、するすると服を脱ぎ始めた
今度はプロデューサーに脱がされるのではなく、櫻木真乃自身で脱いでいったのだ
あっという間に一糸纏わぬ姿になった櫻木真乃は前を隠しもせず呟いた
あの日と同じ台詞を
プロデューサーは櫻木真乃の裸を見るやいなや服を脱いだ
自分でもそんな気になることが不思議で仕方なかったに違いない
ベルを鳴らせば餌が貰えると学習する猿のように、産まれたままの姿の櫻木真乃の前で自身も何も纏わず跪いた
いま、櫻木真乃とプロデューサーの間には遮るものはなにもなかった
物理的に裸だからではなく、お互いの持つ経歴も、友人も、社会的地位も、人間性も、肩書きも、何もかも捨ててただふたつの存在としてそこにいた
櫻木真乃とプロデューサーはこれこそが究極の愛の形だと確信した
櫻木真乃は、その幾度抱かれても形が良いままの秘弁をびらりと開いて見せつけた
それが最後の、2人の人間らしい会話だった
プロデューサーは櫻木真乃を、あの日のように押し倒し、その肉体を力強く打ちつけた
※283文庫「梟のねぐら」より引用
真乃ちゃんってめちゃくちゃエッチだよね
真乃ちゃんに情緒をめちゃくちゃにされて
真乃ちゃんに人生もめちゃくちゃにされて
真乃ちゃんに管理してもらいながら死んだように生きたいな
そう思って描き始めたらこんなことになりました
真乃ちゃんの担当にいいかげん怒られそうなので話をまとめておきました…
違うんだ…俺もただ真乃ちゃんが好きなだけなんだ……
小説形式、難しいけど面白いですね
またやりたいです
こんなもんをまたやるんじゃないよ!怒
hondy/ほんでぃ
2022-10-07 03:03:47 +0000 UTCのぶし
2022-10-07 02:18:39 +0000 UTChondy/ほんでぃ
2022-10-05 09:25:52 +0000 UTCあいおー
2022-10-05 08:56:49 +0000 UTC