小宮果穂は悩んでいた
それは思春期特有の誰もが通る道であったが、実直で真摯な彼女にとっては受け流し難いものだった
身体の性徴と精神の成長の著しい乖離
果穂の精神成熟度は同世代の中でも十分早い方であったが、身体はそれを遥かに凌駕していた
小学四年生の時点で乳房が発達し始めたのをきっかけに彼女の成長スパートは起こった
五年生の夏休みだけで身長が8cmも伸び、同じクラスの男子たちを次々と追い抜いた
母親しか知らないことであるが、その頃には彼女の恥丘にはすでにうっすらと陰毛が生えかかっており、今ではしっかりと質量を持つ存在になっていた
耳年増な同級生が自分を囃し立てているのも気づいていた
小学校高学年ともなると残酷なもので、「小宮のおっぱいやばいよな」などと直情的で下劣な陰口も聞こえてくる
果穂は少しだけ胸がちくちくするのを感じていたが、そういうものだと思って日々を過ごしていた
プロデューサーにスカウトされるまでは
芸能プロダクションのプロデューサーにスカウトされたのは彼女が12歳の時であった
プロデューサーは果穂のことを高校生だと勘違いして声をかけた
だが実際には彼女はまだ日曜日の朝から放映されている戦隊ものの番組を好んで観る年頃だった
それは即ちプロデューサーが果穂の身体的特徴をもってして"女"であると認識していたことに他ならない
その時はその事実から二人とも目を背けていたが、小宮果穂の肉体はその時点で既にもう立派に子孫を残す役割を果たせるほどに完成しかかっていた
アイドルになってから、人の目に触れる機会はさらに多くなった
信頼するプロデューサーと同じユニットのメンバーの支えもあり、今や果穂はトップアイドルの仲間入りを果たした
だが同年代の男子からだけではない、不特定多数の老若男女から向けられる視線の量と質は、本来なら12歳の少女が耐えられるものではなかった
まだ両親が恋しい、性徴が恥ずかしいと感じる年齢である果穂にとってそれは想像以上に精神を蝕んだ
決定的だったのは、信じていたはずのプロデューサーからの視線だった
ある個人レッスンの日、誰もいないからいいやと果穂はレッスン室でそのまま汗ばんだインナーを着替え始めた
ちょうどその時にプロデューサーが部屋に入ってきたのだ
豊かな双丘の頂上に生えた美しい桃色の蕾を見られた果穂は反射的に胸を隠した
今までならさほど気にしていなかった裸体であったが、プロデューサーに見られるとなると何故かとんでもなく気恥ずかしく感じられた
プロデューサーは慌てて「ごめん」と部屋を出た
必死に謝るプロデューサーを果穂は笑って慰めた
笑って"こんなこと大したことじゃない"と自分に言い聞かせなければ、果穂の心はどうにかなってしまいそうだった
それからプロデューサーの自分を見る目が少し変わった
ステージで着る可愛い衣装、ラフな着こなしもキメるファッション雑誌、そして水着でのグラビア撮影
プロデューサーは平静を装いながら、明らかに果穂のことを"女"として見ていた
それはつまり彼が彼女を初めてスカウトした「あの日」から、担当だからと抑え込んでいた"異性"としての魅力を感じ始めたからに他ならない
だがクラスの男子やファンの男性から向けられる視線は苦手であるのに、プロデューサーからのそれは不思議と嫌ではないと感じていることに果穂は気づいてしまった
試しに、ほんの出来心で、事務所のソファに座っている時に、ぱかりと両脚を開いてみた
心臓の鼓動がばくばくとうるさく、そんなはずがないのに胸が実際に拍動しているような気さえした
目の前のデスクに座るプロデューサーは作業をしているように見せて、明らかに果穂の股間を気にしていた
プロデューサーとの角度を考えて、敢えてギリギリ下着が見えるか見えないかの位置に身を捩る
めったに履かないスカートの裾を少しだけ捲し上げて太腿が露わになるようにした
果穂はどうしようもなく高揚していた
思えばその時点で果穂には娼婦の才能があったのであるが、彼女はまだこれを悪戯ぐらいにしか思っていなかった
キャラクターものではない、プロデューサーにも見せられるような成人用の下着が果穂の白い肌の隙間からちらりと覗いた
プロデューサーは興奮を誤魔化すかのように深いため息をつきながら必死にパソコンを睨んでいた
果穂はその一挙手一投足が何故かたまらなく愛おしくて、下腹部がじわりと熱くなるのを感じた
それを皮切りに、果穂の悪戯はエスカレートしていった
わざと薄着で事務所に行ってプロデューサーにスキンシップをしてみたり
エレベーターの中でわざとらしく胸元をパタパタしてみたり
ゆるゆるのアウターを着てノーブラで近づいたりしたこともあった
これは少女が性成熟期の悩みを誤った方法で昇華しようとしているのに他ならないのだが、そんなことに果穂が気づくはずもなく、ただ慌てるプロデューサーを見て自らの欲望を満たしていたのだった
だが、ある日、果穂は越えてはいけない線を越えてしまった
いつものようにわざわざ薄着のノーブラでレッスン室を訪れ、必要もないのにプロデューサーに立ち位置やフォームチェックをさせていた
姿は多少はしたないが、大好きなプロデューサーの前だけでダンスを踊る
性徴の悩みも成長との乖離もこの時間だけは全て忘れていられた
果穂はこのレッスン室の中では間違いなく一等星のように輝いていた
「果穂」
聞いたこともないような冷たい声でプロデューサーが声をかけた
その威圧感に反射的に身体がすくみダンスをやめる
果穂は恐る恐るプロデューサーの方を見た
当然のことだが、プロデューサーはフォームチェックのためにスマホでカメラを回していた
皆にそうするように、レッスンの様子を動画で撮影して後で確認するためだ
だが明らかにプロデューサーの様子はそんな感じではなかった
「今の動画、確認してくれるか」
果穂は安堵した
プロデューサーはただ自分のダンスを見直させたかっただけだったのだ
はい、と小さく返事をしてプロデューサーにかけより、肩越しに撮影した動画を見せてもらい…
戦慄した
そこに映っていたのはとても自分とは思えない
娼婦のような顔つきで、場末のストリップショーのように妖艶に身体をくねらせ、男を誘惑するためだけに胸や尻を強調して弾けさせる、ダンスとはとても言えない動きで
プロデューサーの方を見つめる女豹のような何かが居た
「トレーナーさんは、こんな踊り方教えたか?」
プロデューサーもいつものプロデューサーではなかった
およそ聞いたこともない、別人のような、冷たく深い夜のような低い声で果穂を諭すように言った
「あ…ああ…」
「果穂、トレーナーさんは、こんな踊り方、教えたか?」
プロデューサーが果穂の肩に手を回し抱き寄せた
ぎりぎりと力が入り、指がめり込んでいる
痛い──と言う言葉さえも恐怖で抑えられた横隔膜のせいで口から出なかった
プロデューサーの力が強くなる
大きく成長した果穂よりひとまわりもふたまわりも大きいプロデューサーの身体が壁のように背中にのしかかってくる
「おっ…おしえて…おそわってないです…」
震える声でかろうじて返事をした
悪戯をした同じクラスの男子が怖い担任に詰められているのを見た時のような恐怖感
それが何十倍にもなって襲いかかってくるような圧力を果穂は感じていた
「そうだな、果穂
気づいていたよ。果穂が俺の前で、こういうことしちゃうって」
心臓が口から飛び出しそうなほど速く大きく鼓動する
これは恐怖なのか興奮なのか果穂にはわからなかった
ただ自分が取り返しのつかないことをしてしまったことだけは理解できた
「俺は悲しいよ、果穂がこんなことするようになっちゃって」
すっすっとプロデューサーがスマホのライブラリを操作する
果穂はあっと息を呑んだ
そこには自分がわざとらしくプロデューサーを誘惑する様子や肌や下着を露出する様子、あるいは下半身をあられもないポーズで見せつける姿がある時は写真で、ある時は動画で撮影されていた
「果穂がずっと俺を誘惑するようなことをしてくるからさ、どんなにはしたないことかってわかってもらいたくて撮りはじめたんだ」
「こ、こんなっ……こんなっ……」
プロデューサーが片手で果穂の両頬をぐいっと掴み、半ば吊り上げるような形で顔を持ち上げた
「あっ…あっ…いた…痛……」
「こんな、何だって?果穂、今なんて言おうとしたんだ?」
吐息が当たるぐらい顔を近づけて、握りつぶしてしまいそうな力を込めて、プロデューサーが凄んだ
「あ、ご、ごめんなさ…」
果穂のかわいらしい顔面が醜く歪んでいく
ぽろぽろと溢れ出した涙がプロデューサーの指にあたり、あっちこっちにつたって幾つもの線を引いた
口を閉じられないから涎がついっと零れ落ちる
「あ…あ、あ…こんな…こんな…
どうしてこんな……ひどいこと…するんですかって…」
果穂の両頬を掴んだまま自分の頭より高くプロデューサーが持ち上げる
宙吊りになった果穂の両手両足がぶらりと垂れ下がる
恐怖で小刻みに揺れているからカタカタと壊れたマリオネットのように滑稽に踊った
「酷いことっていうのは、どのこと?
俺が果穂のことを撮影していたこと?
俺が今果穂をこうして叱っていること?
それとも……」
がらあきになった果穂の下腹部にずしりと質量を感じる
「あっ…あ…あ……」
空いていたプロデューサーの左手が固く握られて、果穂の子宮が眠る部分を上から押さえつけた
プロデューサーが左手の力を込めて、下腹部をぐっと押し込んだ
宙吊りにされた恐怖と、子宮を外から圧迫された衝撃と、プロデューサーから放たれる冷たい言葉の数々が、果穂の女を撃ち抜いた
果穂はどんなダンスの時よりも両手両足が指先までぴんと伸び、しょろしょろとだらしなく小水を漏らした
ぴちゃぴちゃとレッスン室のフローリングに水たまりを作り、その上にすとんと落とされた
プロデューサーはしゃがんで、まだ目の焦点の定まらない果穂を覗き込んだ
「果穂は知っちゃったんだな。見られることが快感だって。アイドルとしてじゃない、男に、女として見られることが快感だって」
虚ろな表情で果穂がゆっくりと話し始める
「あた、あた、あた、あたしは、さい、最初は、いやでした。そんなつもりないのに、身体ばっかりおっきくなって、男の子に見られるのがいやでした。アイドルになっても、見られる数が増えるばっかりで、たくさん視線を感じて、こわかったです。でも、でも、ぷ…プロデューサーさんも、そうだって、わかって…プロデューサーさんも…」
「俺も?」
「あ…ああ…」
「プ…プロデューサーさんも…プロデューサーさんだって……
あたしのこと大人の女の人みたいに、そういう目で見てました!!!」
ふうん、とプロデューサーは相槌を打った
果穂はかたかた震えながらプロデューサーの顔色を伺っている
「……だ…だけど…プロデューサーさんに見られるのは…そんなにいやじゃありませんでした…!」
果穂の涙がぽろぽろとおしっこの上に落ちていく
「きづいたら、あたし、プロデューサーさんのまえでっ、まえでぇっ………
いやらしいこどじでまじだっ……!
プロデューサーざんにみえるようにっ…
わざどえっちなかっこうじでみだりしでっ…!
見られるのがっ!たのしくなっで!ぎもぢよぐなってばじだっ……!
ゆるしてっ
ゆるじでくださいっ!!
きらいにならないでっ……!
おこらないでぇっっ………!」
堰が切れたように果穂は泣き出した
汚れるのも厭わずに床に突っ伏して許しを乞うた
小学6年生のアイドルが人前でそんなことをしているのを側から見ればさぞ異常に見えただろう
ただ、プロデューサーは「はあ」とひとつため息をつくと、言った
「そうか、果穂は露出狂になっちゃったんだな」
「ふえ…?ろしゅつきょう…?」
「そう、露出狂。
自分の身体を、裸を、おっぱいを、おしりを、おまんこを見せびらかして興奮を覚える変態さんのこと。
果穂はアイドルでもヒーローでもなくて、変態さんだったんだなあ。
がっかりだよ、俺」
「あ…ああ……」
「どうしよう、お父さんにもお母さんにも、放クラのみんなになんて言おう」
「ああーーーっ!
わああーーーーーっ!!!」
年齢相応に、いやあるいは若干退行したかのように、果穂は大声で泣き始めた
欲しい玩具を買ってもらえなくて泣き叫ぶ幼児のように、プロデューサーに駄々をこねた
「いや!いや!いやでず!みんなにきらわれだぐないでず!!!おどうざんやおがあざんにいわないでっ!!!ゆるじでぐださいっ!!!ゆるじでっ!!!」
そこまで言われてプロデューサーはようやく安堵した
小宮果穂という人間は実に善くできていた
最年少なのに大人びて、空気を読めて、手をかからせない子だった
それが逆にプロデューサーは心配だった
なにかを抱えて、塞ぎ込んで、自分一人で解決しようとしていないか不安だった
だが果穂はちゃんと人並みに悩みがあって、人並みに欠点がある、どこにでもいる普通の女の子だった
そう、ただ、自分のスケベな身体を見られて興奮する、どうしようもない女というだけだった
プロデューサーは泣いている果穂の顎をくいと持ち上げて、指で涙を拭った
「あ……」
果穂は不安だったが、プロデューサーはもう怖い顔をしていなかった
いつもの優しい、兄のようなプロデューサーだった
「果穂、大丈夫だよ。果穂が露出狂でヘンタイで、持ち上げられて興奮して、ポルチオを押されておしっこを漏らすどうしようもないマゾ女だってことはみんなには内緒だよ。俺たちだけの秘密だ。約束だ」
果穂には言っている意味がほとんどわからなかったが、プロデューサーが優しい笑顔で語りかけてくれるのでそんなことはどうでもよかった
ただこのまま、優しく頭を撫でて欲しかった
「だからさ、果穂。果穂のどうしようもない欲求は俺が発散してあげる。今から動画を撮ろう。俺と、果穂の秘密の動画。果穂のカラダを隅から隅まで撮影する。恥ずかしい部位も、恥ずかしいことも、たくさんする。もちろん秘密だから公開はしない。だけどいつでも、俺の指ひとつで全世界に公開できるようにはする。気分次第で、それこそ寝ぼけてたりして、間違えて公開してしまうかもしれない、そんな感覚で保存する。カメラの向こうに、お父さんやお母さんがいるつもりで、クラスのお友達に見せるつもりで、知らないおじさんに見せつけるつもりで果穂の全てを見せるんだ。俺にそうしていたように。俺に全てを見せてくれていたように」
果穂はぼんやりとした視界の端で、いつから回っていたのかわからないカメラがあることに気づいた
だがそんなことはどうでもよかった
果穂はただ自分のプロデューサーさんが最高のプロデューサーさんであることを再認識していた
「………はい♡」
果穂はするりと濡れたズボンと下着を脱ぎ捨てた
(終)
hondy/ほんでぃ
2025-02-25 14:43:07 +0000 UTCヒカル
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