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カルチューン・C・ラブ
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かるちゃあノベルpt4 銀河探偵リーィン・パープ第2話

♦︎

「ほえーっ、見渡すかぎり人気なし。ちょっとアンタ本当にここであってんでしょうねぇ?」

惑星ストーラの大砂漠の真ん中にポンコツ愛機メイアーク号を着陸させたリーィンとジョーは、しかし一切の生命反応を示さない望遠レーダーに早速の疲労感を感じていた。

「ウスハの最終連絡地点がここなのは間違いねぇよ。しかしこりゃあこんなかからコインを見つけろってぐらいの話だな。」

「待って!2時の方向、砂塵が上がってるわ!」

船内望遠鏡であたりを睨んでいたリーィンが突然叫んだ。すばやくジョーは彼女の示したポイントをモニターに拡大フォーカスした。

全長12〜3メートルはあるダンゴムシに似た生物が砂漠に二条の尾を引いている。

「あーこりゃツクワームだ。この辺りによく居る巨大外骨格類だよ。怒らせるとちょっとやっかいだがな。」

「バカね!その前よ!誰かが追いかけられてるわ!」

慌ててジョーは再度モニターを注視した。確かに巨大な虫達の前方に何の装備もない一人乗りホバーに乗った人影が見えた。

「メイの主砲で狙えない⁈」

「ダメだ!コイツの火力じゃ追いかけられてる奴ごと吹き飛ばしちまう!」

「…‼︎ SWシャークをA装備で2番カタパルトから射出準備!私が出るわ!」

そう叫んでリーィンが走り出した。

「待てよ!俺たちにそんな義理があるか⁈それに今からじゃ間に合わん!着く頃には食われちまってるさ!」

「だったらここでこのまま見逃せって言うの⁈」そう言って彼女は格納庫へ向かって出て行った。

「…やれやれ。」

そう言いながらもジョーは格納庫内の戦闘用ホバークラフト、サンドウィッチシャークを陸戦装備に換装する作業をコックピットから遠隔操作で行い、リーィンの搭乗に間に合わせた。

彼女の無鉄砲で正義感の強いところは出会った昔から変わっていないし、彼にとって彼女のそんな所もまた愛し…いや信頼のおける長所だと感じるからだ。


砂塵を巻き上げてリーィンの駆る戦闘ホバーSWシャークが巨大な虫に迫る。

「お願い!間に合って!…」

射程距離ギリギリに入った所で彼女はバズーカを肩に担ぎ、ホバーを減速させぬまま一発目を虫めがけてぶっ放した。


運良くそれは一匹の足元に落ち、その虫は驚き反り返ってその動きを止めた。

「あと一匹!」

リーィンはなんとか疾走する残りの虫に追いつき、前に出た。今にも踏み潰されそうな前方のホバーに並走するとまずその人命を優先し、大きな仕草で手を伸ばした。

「こっちへ!そのままでは危険です‼︎」

その声はもちろんその人物には聞こえてはいないだろうが、リーィンに気づいたホバーの人物もまたこちらへと手を伸ばす。迫り来る巨大な怪物を後ろに緊迫の救助劇が続く。何度目かの失敗の後ようやく手と手を繋いだ!その瞬間だった。リーィンの右足が何かにすくわれた。

「⁈」

足に巻きついたそれは虫の口から伸びた長い触手であった。

一瞬にして繋いだ手は引き離され、リーィンはそのまま中空高く放り投げられた。操縦者を失ったリーィンのホバーはそのまま虫に踏みつけられて爆発し、その爆炎と残骸は一瞬で後方へと流れていく。

「こなくそっ‼︎」

それでもリーィンはベルトに仕込んだワイヤーを素早く発射し、怪物の背中に引っ掛けるとなんとかその巨体に取り付いた。

「どぉおうりゃあああああ!」

リーィンはまるで板野サーカスの様に迫り来る触手の嵐を金田アクションで颯爽とかわし、怪物の背を駆け上がると、そのまま背景全セル360度回り込みアクションで頭上へと到達し、その化物の脳天をレーザーサーベルで貫いた後、大張パースで決めポーズをとった。

賢明な読者であれば、何もカルチューン・C・ラブが下手くそなカットを挟まなくても全ての絵が脳裏に浮かんだことであろう。

こうして巨大虫は動きを止め、その体を砂漠に沈めた。

だが逃走していた人物の姿はどこにも見当たらない。さっきの戦いに巻き込まれ虫の下敷きになったか、あるいはシャークの爆発で吹っ飛ばされたか…

「そ…そんな…」

落胆するリーィンを突然何かが羽交い締めにした。

「キャッ⁈」

それは最初に仕留めたはずだった虫の触手だった。彼女は完璧に油断し背後に迫っていたその存在に全く気付いていなかった。

「ぐぐ…しまった…」

既に何本となく伸びた触手が彼女の身体のあらゆるところへと纏わり付いていた。さらにはその触手から染み出しだ粘液が彼女の衣服を溶かしていく。

「⁈ちょっ…と?アハんっ!…い、イヤっ!」

捕食の前の準備なのだろうか?触手は彼女の身体をいやらしく這い回り、その穴という穴を舐め回した。剥き出しになった彼女の下半身のふた穴までも。

「⁈ふうううんっ!フグッ!あんっ!鳴あああっ!」

その抵抗する意思に反して彼女の身体は敏感にその快楽に反応した。


リーィンはこのまま絶頂を迎えながら丸呑みされるのは痛みもなく楽な死に方だなと思ったが、同時に虚しさも感じていた。私は志高く故郷をあとにしたが、結局こんな辺境の地で化物に犯されながらその短い一生を終えるのか、なにより最後に人ひとり救えなかったとは!オルガズムに震えるその身体とは裏腹に彼女の目から大粒の涙が溢れた…そのときだった。バシュッ!バシューン!!レーザー銃が『とりあえず怪物の方向に』何発か放たれた。しかしそれは全く当たってはいない。『ここまで鈍臭い射撃の腕は宇宙狭しといえどアイツしかいない』リーィンがぼんやりとビームが放たれたほうを見ると、案の定遠くから相棒のジョーがレーザーガンを手にシャーク二号に乗ってやって来ていた。そして擦りもしないジョーの攻撃が怪物の注意を引いたのもたしかだ。少しばかり締め付けの緩まった触手の隙をついて彼女は太腿のレイ銃を引き抜いて怪物の眉間に一撃を加えた。触手の力が弱まりリーィンはそれに絡まったままドサリと地面に落ちた。

「おーーいっ!大丈夫かぁ⁈リーィンッ!リー…う、うおっ⁈うほほっ!これは、これは…たまりませんなぁ。」

そう言いながらホバーを降りたジョーは地面に沈んで動かなくなった怪物の頭上に飛び乗り、そこに胡座をかいてはリーィンの痴態をニヤニヤと見つめ始めた。

「ち、ちょっと!アンタこれなんとかしなさいよ!…⁈ん、あんっ!やぁあん!!」

さっきほど力はないものの虫の触手達は未だリーィンに絡まりその身体を這い回っている。

「俺ァそんな気持ち悪いの触わるのはゴメンだよ。まぁしばらくしたら落ち着かぁな。」

そう言ってジョーは棚からぼた餅のネバネバストリップショーを楽しんでいた。

「どいつもこいつも…このスケベ野郎がっ!」

怒った彼女は再度レイ銃をぶっ放し、一瞬で怪物の眉間にさらに2、3発の風穴を開けた。それは胡座をかいたジョーの股間のわずか数センチ下で、彼はもう少しでズボンに情けない黄色のシミを作るところだった。

完全に動きを止めた触手を振り払い、ほぼスッポンポンの彼女がジョーに詰め寄って行く。

「ちょっとアンタ!その上着寄越しなさいよっ‼︎」

「ええっ?ヤダよ!俺ぁ肌弱ぇんだから!」

「アンタの肌と乙女の柔肌とどっちが大事だってのよぉ!!」

リーィンは怒髪天を突いた表情でジョーに揺れる巨乳をくっ付けるのではないかと思うほど近付き、その右手を天高く上げた。平手打ちを食らわされると思ったジョーは目を閉じ首をすくませたが、いつまで経ってもそれは頬に飛んでこない。怪しく思い目を開けた彼が仰ぎ見たのは、震えて涙を流す美少女の姿だった。


「……ゴメン…救えなかった…助けられなかったよ……ウワアアアアアン!」彼女はそのままジョーの胸に泣き崩れた。彼はそっと上着を脱ぎ彼女の震える白い背中を隠すと、黙ってその頭を撫でてやった。

「お前のせいじゃねェって…」

しかし彼女のその繊細で純真な魂を愛おしく思いながらも、その豊満な肉の柔らかさに欲情してしまうのもまたジョーの若い男としての本能だった。

『…こ、このムードなら…ヤレる!』

ジョーは裸の彼女をゆっくりと抱き起こした。

「…リーィン…」

「ジョー…」

彼女の潤んだ瞳が閉じられる。ジョーが震えながら口をすぼめ、彼女を抱き寄せその唇を奪おうとしたその時だった。


「あ、あのー…おとり込み中にすまないが…」

「⁈」

我に帰ったリーィンは急いでジョーから離れ、その上着を深く羽織り直した。

そこに立っていたのはボロボロの砂まみれではあったが確かに彼女達が救おうとしたその人であった。

「アナタ…無事だったの⁈」

リーィンの顔に笑顔が戻った。

「ええ。助けてくれて、どうもありがとう…」

深くかぶったフードを脱ぎ、防塵ゴーグルを外したその人物を見て、リーィンとジョーは目を丸くし、一斉に言葉を発した。

「お宝!!」


彼女達の目の前に立っていたのはクジャガーガー博士その人であった。



♦︎

「あら〜〜っ、じゃあやっぱりギャング団に捕まってたんですねぇ〜♩」

リーィンのあからさまな猫なで声はメイアークの狭くてボロいティールームに響きジョーを苛立たせた。

「えぇ、命からがら逃げ出しましたがどこへ向かえばいいのかも分からず、危うくあの虫達の餌になるところでした。本当になんと御礼を言えばいいのか…」

「私達が来たからにはもーう大丈夫ですよ。さぁこんな星からはとっととサヨナラしましょーう。」

おうおう、しれっと腕まで組んでやがらぁ。ジョーはそんなリーィンに怒りを覚えながらも、嫉妬といった野暮な感情ではなく、努めて冷静に博士に疑問をぶつけた。

「失踪前アナタは頻繁にここを訪れていますがその理由は?」

「そ、それは…妻と子供を人質に取られていたんです。」

ジョーは呆れた。『はっ、正式にはコイツにはそんなものはいやしねぇ。もっとも非公認には掃いて捨てるほどいそうだが…』

「では今彼女達は?」

「わ、私と身代わりに解放してもらったんだ!」

「わからないな。じゃあ奴等は一体アナタの何が目的だったんだ?さっき貴方はパイドッグ団に捕らえられていたと言ったが、彼等は人身売買で有名なギャングだ。一体なんの理由で…」

「あーあーあー!アンタいちいちうるさいのよ!そういった詳細はあとあと!とにかく博士にはいますぐ療養カプセルに入ってもらって、早いとこ脱出よ!」

「てめ!…」

すっかりのぼせた女になり下がったリーィンに会話を遮られたジョーは、いよいよ堪忍袋の尾が切れた。そのときだった。

「いや、申し訳ないが私はもう一度奴等の隠れ家に戻らなければならない。」

「へっ?ど、どうしてですか?博士?」

「実は私の脱出を手引きしてくれた人がいたんだ。彼女も君みたいに若くて美しい女性だった。2人で逃げ出していた所をパイドッグに見つかり彼女は自分を囮にして私を逃してくれた…だがやはり私1人だけで逃げるべきではなかった!彼女がとても気がかりなんだ。」

「あ、あの〜その女性っていうのはも、もしかしてコイツですかね〜…」

顔にドッと疲労の色を出し、リーィンはウスハの写真をモニターに出した。

「ああ!まさしくこの人だ!君達は彼女の仲間なのか?だったら今すぐ彼女を…」

「ええ!今すぐ彼女をほっといて逃げましょう!彼女は尊い犠牲となったのです。それに今頃は多分殺されちゃってますよぉ〜。」

「リーィン!…いくら気に入らない女だからってオマエは見捨てていけるのかよ?そんな奴だったのかよ?お前は⁈」

「そ、それは…」

ジョーの厳しい叱責に彼女は少しばかり過ぎた言葉を反省した。

「と、とにかくアナタ達が無理なら私1人でも行く!出来ればこの船にある武器をいくらか譲っていただきたい!」

リーィンの表情が、正義感のある強く美しい彼女の顔へと戻った。

「分かりました、博士!彼女を救出に向かいましょう。ただし貴方の体は自身で思われているよりもずっと疲弊されているのです。まずは回復カプセルで睡眠を取ってもらい、作戦実行は明日早朝ということで構わないでしょうか?眠る前に奴等のアジトの詳細を分かる限り教えてください。私達も今から装備を整え作戦を練ります。ジョー、貴方は武器のメンテをお願い。」

「あいよー。」

面倒くさそうにジョーは返事をしたが、再び戻った彼女の真っ直ぐな瞳には敬意を表し、すぐさま作業にとりかかるのだった。

「ありがとう。恩に切ります。」

二人は気付いてなかったが、そう丁寧にお礼を述べた博士の口元はニヤリと笑っていた。



深夜にまで及んだ武器装備の最終調整を終えてもまだリーィン・パープの相棒、ジョー・ブロは眠らずに作業場のコンピュータと睨めっこをしていた。

捕らわれているウスハ・カヌマーンの話で上手く煙にまかれたが、ジョーはまだクジャガーガー博士を完全に信用しているわけではなかった。

特にあの13回の渡航歴は矛盾がありすぎる。どんな小さな物事でもいい!…なにかヒントはないだろうか?そう思い彼はあらゆる方向から博士の足取りの謎を追っていた。

そして奇妙な一致を見せるある事柄に巡りついた。

この宙域の近隣惑星で起きている若い女性の失踪事件、それだけなら膨大過ぎて比較の意味をなさない。だが今回博士を捕らえていたパイドッグ団はこの辺りでは有名な人身売買の闇組織だ。その彼等が犯行に関わった可能性のある事件、そして決定的だったのは博士と異種知的生命体交配可能レベルがAA以上、つまりは博士とは『相性がバツグン』の種族の女性に対象を限定していくと、全ての関連事件が博士の渡航日から3日以前までで起きていた。

「こりゃあ…もしかするかもな…」

試しにジョーはウスハの交配レベルも調べてみる。彼女も博士とはAAの相性だった。ジョーはまさかと思いリーィンとも照合してみた。

「なっ⁈…AAAかよ!」

これには流石にジョーも嫉妬した。この多種多様な知的生命がいまや混じりあって暮らす大宇宙においても、やはり誰かは誰かを好きになり愛を育んでいく。しかし当然異種族の交配が全て可能とは限らない。もちろん交配など出来ずとも愛に縛りなどはないし、科学技術の発展は異種族間の障壁を限りなく取り払ってきた。しかし愛し合う者同士の子孫を残せるかどうかについてはまだまだ壁は存在し、異種知的生命体交配可能レベルチャートといったガイドラインが念の為作成される事となったのである。因みにジョーとリーィンのレベルはC、性行為自体は問題なく行えるが交配種誕生は極めて低いというのが現在までの統計データだ。

それはジョーのリーィンへの想いを踏み留まらせている理由のひとつでもある。「まぁ仮に産まれたってどんなのが出てくるんだよって話だな…ハハ…」そうひとり呟きながら、人間よりも地球上の獣の方に近い自分の手や体を見て彼は寂しく溜息をついた。頭の中に先程の博士と仲良く腕を組むリーィンの後ろ姿が浮かんでいた。

ガタッ

ジョーの背後で物音がした。彼は慌ててモニターに浮かぶリーィンとの相性診断の画面を消しながら振り向いた。

「よ、よぉリーィン、そっちはもう片付いたのか?それよりちょっとこのデータを…⁈」

暗闇に浮かんだシルエットがリーィンのものでないと気付いた頃にはもう遅かった。彼は何者かに殴打され気を失った。


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