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「あんのバカ、いつまで寝てんのよ⁈」
翌朝、出発の予定時刻を過ぎてもカタパルトに姿を見せない相棒を罵りながらも、リーィン・パープがそのジョー・ブロの部屋に怒りのモーニングコールを入れないのは、彼が夜を徹して作戦の為の武器整備を行ってくれていたのを知っているからだ。
ぽかりと空いた待ち時間でふと彼女は相棒の事を考えた。
ジョーとリーィンは生まれた家も隣同士、物心つく前からの付き合いだった。同い年ではあったがケムマニク人であるジョーはその身体的特徴からリーィンよりも絶えず小柄で、またその容姿から彼女は彼をずっと弟かペットのように扱ってきた。常に彼よりも上からの立場で物を言い、命令してはいるが、近所のガキ大将にジョーがいじめられているときは真っ先に奴らをその拳で追い払うといった間柄だ。それは高校を卒業するときまで続き、彼女の勉強という言葉の意味する所はジョーのノートを書き写すことであったし、ジョーはジョーで、彼女のおかげで10代特有の陰湿ないじめや差別を回避出来ていたとも言えた。つまり彼等はずっと『持ちつ持たれつの関係』であったのだ。
高校の卒業を3ヶ月後に控えたリーィンはついにジョーに彼女の夢を打ち明けた。
「ジョー!私銀河探偵になりたいの!こんな田舎星飛び出して有名になりたい!お願い!私についてきて!!」
彼女はてっきり馬鹿にされると思った。相手にされないと思った。数ヶ月前に彼が地元では最大手の宇宙船メーカー『トヨマルタ』工場に整備士として内定を決めていたのももちろん知っていた。しかしジョーは意外なほど真摯に彼女の夢の話に聞き入り、また現実問題としての今後のプランや、かかる費用の問題、取得しなくてはいけない技能、免許についても色々とアドバイスをくれた。そして最後に目線を合わせず、散々に吃りながら顔を真っ赤にしてこう言ったのだ。
「わ、わかった…ただし、じ、条件として…あ、あの…その…一回セ、セ、セックスさせてく、くれたら…考えてやってもい、いいぜ。」
その言葉にリーィンは目が点になった。別に彼に性的な目で見られていたことで軽蔑したのではない。ただ本当に実の弟に突然Hさせてと言われたような気分だった。『だが…そうだ!私達はこれまでもずっとイーブンな関係だった!』これほどまでに無謀で馬鹿馬鹿しい夢に乗っかってくれる幼馴染にこちらが差し出せる物が乙女の純潔しかないのだとしたら、彼がそれで満足なのであれば、彼女にもその覚悟はあった。
「あ、あーらジョー、貴方も知らないうちに随分とマセガキになったもんねぇ。じ、じゃあ経験豊富なこの私が、本当の快楽をあっ、貴方に教えてあげるわ。だけどそれはちゃんと2人でこの星を旅立ったあとよっ!一発ヤってやっぱりヤメタじゃこっちだって馬鹿馬鹿しいわっ!」
「わ、わかったよ。ぜ、絶対だからなっ!」
勢い啖呵をきったリーィンだったがジョーのその交換条件がはたして彼女との交際まで含めた愛の告白だったのか?思春期のマスカキザルが持つ一回きりの性欲の捌け口だったのか?は聞きそびれた。なんだかんだで彼女も動揺していたのだろう。
それからの日々は今から思い出すと人生で一番過酷ではあったが、またいかにも青臭い青春の1ページとしてリーィンの胸に今も刻まれている。2人は寝る間もおしんで宇宙船購入用のバイトをいくつも掛け持ちし、銀河探偵育成の夜間学校で勉学に勤しんだ。おかげで身体テストは1番、学力はビリのリーィンと、全く逆のジョー、まさに2人で1人の名コンビは最短で銀河探偵免許を取得し、2人で買ったオンボロ中古船を『メイアーク号』と名付け、大宇宙の海原へ夢と希望を抱いて飛び出したのだ。
航海初日の夜、2人は諸々の成果を一度に祝い、ドンチャン騒ぎでお互いへべれけになっていた。
「んーんでさぁーあ?見たあー?さんざんアタイらをブァカにしてたサーセロンのドアホーを模擬訓練でハチの巣にしてやったときの奴の顔ー、うわはははは!」
真っ赤な顔で下着だけの姿になったリーィンがワインをラッパ飲みしながら高笑いした。
「オメェが奴を負かせたのは誰のおかげだぁー?言ってみぃー?」
ビールの空き缶とつまみに埋もれたジョーの目もすわっている。
「あなた!あなた様!それはジョー・ブロ様の好アシストのおかげなのれす!ジョーーー!アナタはしゃいこうの相棒よぉおんーー!」そう言いながら勢いリーィンはジョーに飛び付いた。ブラジャー1枚の彼女の豊満な胸にジョーの顔が埋もれる。色々な意味で顔を真っ赤にしたジョーがその谷間から尋ねた。
「な、な、なぁリーィン?お、お前約束…わ、忘れちゃねーよなっ?」
はっ⁈今コイツが言ってる約束と言えばアレしかない。途端に酔いの覚めたリーィンは咄嗟にジョーから身を引いた。
「わ、分かってるわよ。でぇもアンタぁ、こんなベロンベロンになってるレディーに手を出しゅとかぁ、そんなマナーのないことをするわけぇ?」
「わ、分かってんならいいんだけどよっ!」
「まーー楽しみにしてなさいってぇ、ヒック」
彼女はわざとらしく酔った『ふり』で答えた。そう、彼とはハッキリと約束をした。2人で無事に銀河探偵になり宇宙へ飛び立てたなら『セックス』してあげる、と。そして別に彼女は彼をキライなわけでもなかった。いや彼女がこれまで見てきた男の中では、なんなら1番なんの抵抗もなく性行為をしてもよいと思える異性かもしれない。彼女が物心ついたときから彼はずっと側にいたのだから。しかしただ一つ余計なプライドが彼女に二の足を踏ませていた。
『だって困るのよ。あれだけリードしてあげるわチェリー君だとか、経験豊富なお姉さんに任せなさいだとか言ってる私が…【バージン】だなんてバレちゃったら。』
そう、彼との『H』の約束をしたあと、彼女の唯一の悩みの種と言えばそれだった。実際には彼女もまだ未経験の素人だったのだ。この際テキトーな男をつくってさっさと処女を捨てようかとか馬鹿な考えも持ったが、なんとなくそれは良心が咎めたし、なによりバイトと勉学に明け暮れた日々にそんな悠長な時間などなかった。気がつけばこの狭い中古船の中、男と言えば目の前でいつの間にやら泥酔している小柄の半獣人1人だ。
『こうなったら、もうこの方法しかないわね…』
いびきをかくジョーの股間を凝視し生唾を飲み込みながらリーィンはある計画を決断した。
翌日珍しく夕飯の食事当番を申し出たリーィンはジョーのスープの中にたっぷりの睡眠剤と興奮剤、そして自分のスープの中にも少しばかりの興奮材を混ぜた。
その日の夜、おNEWの下着と透けたネグリジェというそれなりにセクシーな佇まいで相棒の寝室に忍び込んだリーィンはイビキをかいて熟睡する小さな相棒を見た。『コイツの寝顔はホントに昔から可愛らしいよな…』少しばかりの郷愁のあと、意を決して彼女はシーツをひっぺがした。予想通りそこには大の字で眠る幼なじみのいちもつが直立しておりパジャマにテントを張っていた。
『お、思ったより大きいじゃない…』
その小柄な身体から想像出来ない程隆起したそれに一瞬怯んだ彼女であったが、コ、コホンと咳払いをひとつ打ち、そっとジョーのパジャマのズボンを下ろしていく。いよいよズボンを守備よく剥ぎ取ったが相棒は起きる素ぶりすらない。
『あっ、可愛い』
それはリーィンが初めて見た異性の勃起した陰茎の実物に抱いた感想だった。まず大きさは脱がせても想像以上であったが、勉強と自主練がてらに見たポルノビデオのようにアフロパーマのような真っ黒い剛毛が所狭しと茂ったものではなく、彼の地肌と同じような灰色の短い毛が睾丸全てと陰茎の根本を埋めていた。これだけで随分と抵抗感が軽減されるというものだ。しかし目の前にあるのが興奮した男の陰部であることには変わりはない。彼女は高鳴る鼓動を抑えながらゆっくりとその棒を握り、手を上下に優しく動かした。
『あったかい…それに表面は結構柔らかいんだ…』途中に何度かビクリと痙攣するジョーに怯えながら、さんざん相棒の棒を弄った彼女は、彼の熟睡を再度確認すると作戦を第2段階に移した。自分にもそろそろ興奮剤が効いているのか、火照った身体から彼女はまずネグリジェを床に落とし、続いてブラジャーを外した。眠っているとはいえ、幼なじみの目の前で堂々と裸になり、セックスの真似事をしている。馬鹿馬鹿しいと思う反面、リーィンの興奮は止まらなかった。息を荒げながら彼女は自分の両乳房を抱えてジョーのいちもつを挟みこむ。そしてそのまま彼の棒を擦ったのだが、これは模範のポルノとはなんだか様子が違っていた。ビデオではその動きはもっと滑らかだったのだが、どうにも彼の陰茎の表面が乳房の内側に張り付き、スムーズでもセクシーでもない。『種族によって違いもあるのかもね…これがダメなら…いよいよ次よ!』第3段階、勢いにまかせ、リーィンは目をつぶりながら相棒の肉棒を口に含んだ。しょっぱ苦い味が彼女の口の中に広がる。『なにこれ?マズ…ホントにみんなこんなことやってんの?』そうは思いながらも先ほどのパイズリよりはよっぽど手応えがある。見よう見真似で右手で肉壁を剥きつ戻りつさせながらより深くその棒を舐ると、それはビデオと同じようにジュポッ、ジュブッと卑猥な音を立てた。その味が奇妙な事には変わりなかったが、リーィンはその行為を止められなくなっていた。興奮剤のせいなのか、背徳感からの欲情か、彼女も既に下半身を濡らし、自分の陰部が激しく疼くのを我慢出来なくなっていた。
『うっ…うむっ…ハァ…ハァ…そろそろ最終段階…行こうかな…』
そう思い最後に深くリーィンがジョーの息子を咥え込んだそのときだった。
「ウグッ!」
突然ジョーが呻き声を出しビクリビクリと痙攣した。と同時にリーィンの口内がニュルリと粘り気のある液体で満たされた。
「へっ⁈」
なにがなんだか分からず、またジョーが起きたのではないかと彼女は咥えた陰茎を離したが、ジョーはいまだ眠りこけていた。しかし彼の鬼頭のその先端からはドクリドクリと白い液体が溢れている。『ヤバい!射精しちゃったんだ!』慌ててリーィンは未だ溢れるジョーの精液を啜って飲んだ。それは決して美味しい物では、イヤはっきりと不味い物ではあったのだが、今夜の夜這いの痕跡を残してはいけないのだ。
『ヤダもう、どうしよう?』狼狽しながら四散したジョーのザーメンを舐めとるリーィンの頭にはもう一つの不安があった。『射精しちゃうとたしか勃起も収まっちゃうのよね…だったら折角の計画が…』そう思いながら彼の肉棒にまとわりついた精液を舐めとっていた彼女だったが、特にジョーのいちもつの硬さに変化がないことに気付いた。『あれっ?まだ元気だ…』ためしにもう一度口で咥え込んでみる。精液に塗れたそれはさっきよりもさらに苦くてマズかったが、何度か舐ってあげるうちに先ほどよりもよっぽど硬く太く反り上がった。
『こうなったらグズグズしてられないわ。』
彼女はいよいよ今夜の作戦の最終段階に進むため、深呼吸をした後履いていたパンティをゆっくり脱ぎ、幼なじみの前で一糸まとわぬ姿になった。
もたつきながらも相棒の如意棒にコンドームを被せ終わると、その後リーィンはジョーに跨り馬乗りになった。まずは両手を付き、四つん這いの状態になる。目の前に涎を垂らして眠る可愛らしいジョーの顔があった。『チュッ』彼女は彼の口に軽く口づけた。これから始める馬鹿馬鹿しくて愚かしい行為をせめて愛のあるものだと自分に信じ込ませたかったからだ。
『どうしよう?どうしようかな?やっぱりこんなの変かな?どうせあげちゃうんだから、今コイツを起こして二人でしたほうが…でも、でもなぁ、あんな大見得切っちゃったしなぁ、処女だなんてバレたら、このチビに散々バカにされるに決まってるわ!よ、よぉし!』
いよいよ彼女は涎を垂らした自分の溝を彼の棒に触れさせてみる。
「あんっ!」
自分で思った以上の大きな声に、思わず口を押さえて眼下のジョーの顔を見る。よかった、彼は眠ったままだ。その後彼女はさっきよりもよっぽど強く、自分の陰部を彼の陰部に押し付け、擦り、這わせた。「んあっ…あん!…あんっ!…き、気持ちいい…」
いよいよ彼女の興奮も頂点に達していた。でもこれではダメだ。これはまだストレスが溜まったときにたまにする自慰行為とおんなじだ。
『ジ、ジョー…も、貰ってね…』
そう言うと彼女は膝をついたまま起き上がり、右手で彼の反り返った陰茎を真上に勃たせると、ゆっくりと腰を落とした。ヌルリ。彼女の身体の中に初めての男が侵入してくる。
「…⁈うあっ⁈あああああ!」
さっきのような快楽だけではない。全てが入りきると、やはりそこには明確に重い痛みがあった。
「痛っ!…うっ、ううう…あうっ痛っ!!」
なんとかあのポルノビデオの女優のように腰を振ってみる。しかしとてもじゃないがあんなに激しくなんて無理だ。今リーィンの腰を動かしているのは、幼なじみと歪とはいえ初体験をしているという純情な興奮のみだった。
思わずこんな状況でも鼻ちょうちんを膨らませて眠っている相棒の顔を見る。
『ううっ、全く人がこんな痛い想いをしてるのにいい気なもんね。なんとか言ったらどうなの?貴方の願い、今目の前で叶ってんのよ。』
それからもやはり、いつまでたっても気持ち良さには程遠い痛みが続き、もういいかと彼女がその行為を止めようとしたそのときだった。
突然ジョーが目を見開いてその上体をむくりと起こした。
リーィンはしどろもどろになりながら、「わわっ!え、えっとジョー、これは違う!違うのよ!え、えっとね、これはそのあの…えっ…?」
ジョーは優しくリーィンを抱きしめ、その顔をリーィンの胸の谷間に埋めた。「?…ァン…ハァ…」彼の柔らかな産毛と温かい体温の心地良さに思わず彼女は熱い溜息を漏らす。
「⁈うンッ…はああああ!」なんとそのままジョーは優しく強く腰を動かし彼女を突き上げてきた。
さっきまでの感じていた痛みは小さく小さく奥の方へと隠れ、途端に心地よい多幸感が彼女の心に降り注いだ。
「ジ、ジョー…あっ⁈ぁぁあんっ!はぁああんっ!」
突き上げられる度に快感がリーィンの体に深く染み渡る。
「あんっ!アンッ!!だ、ダメぇ!」
彼女は幼なじみを強く抱きしめ返した。その突きは深い愛情を持ったまま激しさを増した。
「あっ!ああんッ!…いい…イク…イッちゃううううう!」
2人の身体は同時に硬直してひとかたまりの銅像のようになり、やがてビクリビクリと大きく痙攣して、そのうちにまた柔らかさを取り戻した。リーィンは何が何だか分からなかったが、相棒の事がたまらなく愛おしくなり、彼と深い接吻を交わしたいと胸に埋もれていた顔を両手で抱き起こした。「ジョー、大好き♡」照れながら瞳を閉じ、顔を近づけたが、彼の顔は彼女の両の手からスルリと抜け落ちた。そしてそのままジョーは仰向けに倒れ、またも大きな鼻ちょうちんを作り、イビキをかいて眠りについた。いや、正確には彼はずっと眠ったままさっきまでの行為を行っていたようなのだ。
「な?な、なんなのよっ…」
途端に全てが馬鹿馬鹿しくなった彼女は痕跡を残さぬように念入りに後片付けを始めた。ジョーの陰茎に被せたコンドームは表面には薄く血が絡まり、中には白濁した液がたっぷり溜まっていた。
部屋を出る前に振り返ってリーィンはジョーを見た。可愛そうに今夜起こったラッキーな出来事などつゆ知らず、憐れな小動物は大の字で寝息をたてていた。
「アナタに…あげたんだからね…」
そう呟いて彼女は外に出た。
そーっとドアを閉めたあとリーィンはそこに背中をもたれて黙って通路の無機質な天井を見つめた。
『これで良かったんだろうか?…』
彼女が後悔しているのは初体験の相手の事ではなかったし、寧ろジョーは今の彼女の境遇の中ではその相手に最も相応しいと言えた。もしリーィンの側に彼がいてくれなかったら、彼女はこうして銀河探偵として独り立ちなど到底出来なかったであろう。小さい頃から彼に対して抱いている想いは、まだハッキリと形にはなっていないが、愛情と呼んでもよい物だった。
彼女が後悔しているのはそのやり方だった。最後にジョーが、眠ったままだったとはいえ彼女を抱きしめリードしてくれたときの、あの気持ち良さと幸福感はなんだったのだろう?もし素直にジョーと2人でお互いの初体験を経験していたら、あんな素敵な瞬間が最初から最後まで続いていたのだろうか?
『………。…まっ、済ませちゃったものはしょうがないよね。』自分で自分に踏ん切りをつけながら、リーィンは自室へと戻った。
翌朝その後もあまりよく眠れなかったリーィンはひどい顔でキッチンにやってきた。ジョー・ブロはというとやたらに元気で、すでに朝食の準備を万端に整えていた。
「…おはよー…」
「やぁ、リーィン!グッドモーニング!」
「…やけに調子いいじゃない相棒。なに?いい夢でも見たの?」
彼女の何気ない質問にジョーはギョッとして振り向いた。
「なんだ図星かぁ?何なに、『誰か』とエッチしちゃう夢でも見たとかぁ?」
その頃にはリーィンもすっかり目が覚めており、彼女は昨夜の出来事を脳裏に浮かべながら、少し照れて相棒にわざとらしく問いかけてみた。
「…さ、さすが旧知の仲と言うべきか?オメェなんでそこまで分かっちまうんだ?」
不思議そうな顔でジョーは答えた。
「アンタのことならなんでもお見通しよォ。で、どうだった?気持ちよかった?」
ジョーは目を潤ませて天を仰ぎ述懐する。
「あぁ、ありゃあ気持ちいいなんてもんじゃねぇ…夢ん中だったが俺は長年の想いを叶えたんでぃ!まさかあんな体験が出来るなんて…あれが現実だったら俺は今すぐ死んだって全然かまわねぇよ!だって俺は!…だって俺は最愛の…」
「…えっ?ヤダ…ちょっと、ジョー…」
突然吐露された彼の熱い想いにリーィンはやはり昨夜の事を激しく後悔した。こんなに…こんなに彼が私の事を大切に想っていてくれたなんて!あぁ!やはり最初の経験はちゃんと2人でするべきだった!いいえ!今からでも遅くないわ。ジョー!私を今ここで抱いて!2人で永遠に消えない愛の炎を燃えあがらせましょう!!リーィンが感極まってジョーに飛びつこうとした、そのときだった。
「まさかA・キーナ・マッツーダとセックス出来る夢見るなんてよー!だってさ!だってさ!銀河のトップアイドルだぜぇ⁈まーたやけにリアルだったんだぁ、これが!フェラチオだろ?パイズリだろ?最後は騎乗位でお互い激しくパン!パン!パンパン!パ…⁈」
彼に抱きつこうとジャンプしたリーィンだったが、その言葉で咄嗟に体勢を変え、全体重を乗せたエルボーを彼の顔面にめり込ませた。
「朝っぱらからキメェんだよーーーっ‼︎‼︎」
「⁈ぐぅふううう!痛てーーーーーーッ!なんだよっ!聞いてきたのはそっちじゃねぇかっ⁈」
「ああもう!ホラ!さっさとメシ食って!航行チェック!船体整備!やる事いっぱいあんだからね‼︎」
「けっ、テメェはさっき起きてきたばかりじゃねぇか!」
飲み干したコーヒーのカップとお皿を片付けながらジョーは悪態をつき返した。
「あっ、それからー、この前言ってた『約束』だけどぉ…」
「おおっ!今夜か!それとも今ここで始めるか⁈」
慌てて食器を洗浄機に放り込み、ジョーは涎を垂らしてリーィンに食い入った。
「だーれがっ!『アレ』は、銀河探偵としてちゃんと成果をあげるまでお預けな!」
「な⁈えーーーーー!そりゃ約束が違うぜ、リーィン!」
「違わないわよっ!いい?私達はいま銀河探偵と名乗れるようになっただけ。仕事をちゃんとこなすまではまだそこらの素人とおんなじなんだからね!」
「そんな〜〜〜」
リーィンは自分でも理屈の通らない事を言ってるとは思いながらも、おさまらない腹の虫のせいで強情を張った。そして落胆するジョーブロを見て『フン!いい気味だわ。なによ!アンタなんかそうやって三流アイドルでオナニーでもしてりゃいいのよ。』と内心で空威張るのだった。
一方でジョー・ブロはと言えば、また遠のいた魅惑のお約束のゴールテープにすっかり意気消沈し、『こりゃあ当分昨夜の夢をオカズにするしかねぇな…』と溜息をついた。彼はその夢について、恥ずかしくて幼なじみには言えなかった事がひとつあった。なにせ彼はとても生々しい『A・キーナ・マッツーダのコスプレをしたリーィン・パープとセックスする夢』を見たのだ。それはもし現実に起こったなら、死んでもいいと思えるほどの、ジョーの長年の悲願が叶った最愛の人との狂おしいまでに幸せな夢だった。
そんなことも知らず、その『最愛の人』はまだ腹立たしげに相棒の作った朝食を頬張っていた。
『はぁ…大事な作戦の前だってのに、エッチなこと思い出しちゃった…』
リーィンは未だカタパルトに現れない相棒の顔をぼんやり思い浮かべた。
『今回の件が上手く片付いたら、約束…守ってあげようかな…』
そして彼女があの夜、眠ったままのジョーに突き上げられたあの感触を思い出し頰を赤らめていた、その時だった。
「おはよう。すまない、遅れてしまったかな?」
現れたのはクジャ博士だった。不意をつかれたリーィンは慌てて言葉を返した。
「あ、ああっ博士、おは、おはようございます!遅れたなんてとんでもない。ウチの相方なんてまだ来るそ振りすらないんでございますよ!アハハ…」
「あー、ジョー君かい?そうだ、彼に伝言を預かったんだ。なんでも彼用のホバーの調子が悪くまだ修理中みたいでね、すぐに追いつくから私達だけひと足先に向かっててほしいんだとか…」
「はぁ?全くもうアイツったら肝心なときに抜けてんだから!」
そう言いながらリーィンはすぐに修理ドックの内線を鳴らした。
「あっ⁉︎君…」
その様子に何故か慌てたのは博士だった。
「…………やっぱり出ないわ。私に怒鳴られると思ってんな、あのビビリめ…。しょーがない、じゃあ博士!あんなバカはほっといて先に出かけましょうか?」
「あ…ああ。バカは失礼だよ、リーィンくん…」
そしてリーィンは博士をホバーの後部席に乗せ、自らハッチを操作してウスハ救出のためメイアーク号をあとにした。
「ンググ!ウゴーッ!フゴーッ!!」
薄暗い整備ドックの奥ではジョー・ブロが途切れた内線コールのあとも相棒の名を呼び続けていた。しかしそれは言葉にならない言葉だった。彼の口は応急用の強力粘着テープでしっかり塞がれ、両手両足を縛られたあげく背中には舟壁応急修理用のとりもちをたっぷりと塗られて、その体はドックの壁面にビッタリと貼り付けられていたからだ。
『リーィン!リーィン‼︎行っちゃいけねぇ!罠だあっ‼︎』
彼の慟哭は虚しくドックに響いた。