「さぁ、いいかげんこんな茶番はウンザリだ!帰りましょう、先輩!」
そう言って僕は彼女の手を取り、颯爽とこの場を立ち去る…はずだった。はずだったが彼女を引っ張るより先に僕は屈強な男二人に引っ張りあげられていた。さっきから後ろの出口脇に立っていた中ボスの手下と思われるサングラスの男達だ。
「ま、待て!なにするんだ!離せよっ!」彼等は易々と僕を先輩から引き離し、僕は抵抗らしい抵抗も出来ぬまま、脇の柱に縛り付けられた。
「は、離せっ!チクショウ!こんなことをしていいと思ってるのか?先輩!先輩だけでも逃げてくださぁい!!」
「ピーチクパーチクと…黙っとれれいぃ!おんどらぁああ!!」
その恫喝に僕は一瞬気押された。
「おい女!!」
中ボスは先輩へと向き直る。
「お前はさっきの気ィは変わってへんねやろのぉ?」
「えっ?…でも…これじゃあ……」
「変わってへんねやろ?!!…ああ?!…ああん?!」
「あ…え、えと…はい!はいっ!」
無理矢理だ。こんなものは脅迫だ。先輩…
「…先輩、お願いだ。そんな奴らの言うことなんか聞いちゃいけない!」
「……」
先輩は黙って目を逸らした。責任感の強い彼女のことだ。自分の身体で事が片付くならとか馬鹿なことを思っているに違いない。
「なぁ、姉ちゃんはすごい乗り気やで。まぁ、竿付いてんのはお前だけやないしのぉ。どうしても嫌や言うならそこでじっくり見とかんかい!さぁ!そしたら始めよかいのぉ!!」
中ボスは先輩の立つ前にドカリと腰を下ろした。
「ストリップショーの始まりやで。」
「そんな…待ってくれ!俺を殺して済むんならコンクリ詰めでもなんでもしてくれ!!先輩には手を出すな!先輩!センパァイ!!」
もう中ボスは俺には目もくれない。
「そしたらまずは羽織っとるもん取っていこか。」
「……は、はい…」
先輩はまずスーツのジャケットをゆっくりと脱いだ。
「うは!姉ちゃん中のシャツピッチピチやな!胸んとこが突っ張っとるわ!なんやそれで会社の男でも誘惑しよるんか!ハハハ!」「そ…そんな…」
最低野郎の下卑た容赦のない野次が飛ぶ。
「オッパイが窮屈で苦しい苦しい言うとるど!ちょっと楽にさせたれや!ほらボタンを2つ3つ外してみぃ!」
「は…はい…」
この柱の位置でははっきりとは見えないが先輩はワイシャツのボタンをゆっくりとだが外していた。震える手で。怯えながら。なぜだ?なぜなんだ?先輩。
「おほーっ!ええ谷間しとるやないか!なんやブラジャーが見えそうで見えへんなぁ、う〜ん、白か?白やろ!はよ答え見せてくれや!」
やめろ。本当にもう、やめろ。
「ほらほら!もうちょっとや!もう一個ボタン外し!ほら…ほらやっぱり来たー!白やんかー!兄ちゃん先輩のブラジャー白色やぞー!せやけど清純な白ちゃうぞ!エッロい柄のやっちゃ!ホンマは助平な姉ちゃんなんとちゃうか?」先輩の肩が震えている。きっと泣いているんだ。
「止めろおっ!先輩はそんな人じゃない!!先輩ももう本当にそんなゲス野郎の言うことなんて聞かないでください!先輩はそんなことをする人じゃあなああいっ!」
中ボスがこっちに向き直った。
「えらい言われようやの…。さっきからホンマに先輩、先輩、先輩うるさいんじゃ!ほな、兄ちゃん、お前にとってこの先輩ってなんやねん?この姉ちゃんのことどう思てんねん?」
なっ?まさかこの状況でそんなことを尋ねられるなんて…。先輩も僕のほうを見た。手で隠してはいるが中ボスの言う通りその谷間は眩しく、チラッと見えたレースのブラはエロかった。先輩を…どう思ってるって…そりゃあ…そりゃあ…でも今こんな場所で言えるかよ。ていうかどんな場所でもどんなときでも絶対に言えないよ。言えば嫌われて去っていかれるに決まってるんだから。
「先輩は…先輩は僕にとって理想の上司だ!僕は、僕は先輩を人間として尊敬している!!」
「ほぉ〜ん」中ボスが鼻をほじりながらやって来た。「理想の上司?尊敬する人間?君にはそう見える?」僕の顔を覗きこむ。中ボスの目に一瞬だけ殺気が走る。そのまま刀がまた空を裂く音がする。同時に先輩のワイシャツは細切れた布切れとなって四散した。
叫ぶタイミングもなく真っ赤になりながらブラジャーだけになった上半身を少しでも手で覆い隠そうとする先輩。慌てて目を閉じ顔をそらす僕に中ボスが耳打ちした。
「ワシには女にしか見えんど」
「さぁ〜続きをやろか〜。いよいよ上半身はあと1枚やあ!」
「やめろ!本当にもうやめてくれ!先輩になにをするんだ!先輩!せんぱぁい!!」
「何するもなんも目つぶってたら分からんやろ?先輩めっちゃ女出して頑張ってんねや。見たかったら、見たらええやんけ。俺の横来いや。」
「嫌だ!僕は絶対に見ない!!見るもんか!!先輩はそんな人じゃない!!お前等が無理矢理先輩を…」
「新城くん!」
意外にもそれは先輩の声だった。
「あの…わたし…私なら大丈夫だから。」
「そんなことありません!!」
「それに私…新城くんとなら…その…み、み、見られてたって平気だから。」
「そんな見えすいた嘘をつかないでください!僕は先輩を晒し者には出来ません!!」
「?!…嘘って…嘘だなんて…そう……そう思うんだ?…本当に…私とは……い、イヤ?……。」
「先輩を汚すことは出来ません!」
本音はもちろん違う。先輩と嫌なわけがない。しかし本音ではないが正論だ。先輩、自分を偽って僕みたいな酷男に抱かれるなんてしちゃいけない。
「…そう…。…新城…くん。ハァー……」
えっ?そんな深い溜息をなぜつくんです?…先輩?
「…だったらアナタはそこで黙ってて。」
…って。え?先…輩?
「姉ちゃんよお言うた〜!ささ向こうではよ続きやろ!」
「はい。」
はい、って…そんな…僕なんか間違ったこと言いましたか?先輩?え?
つづく