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カルチューン・C・ラブ
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かるちゃあノベルpt2「仁義なき目合(まぐわ)い」最終話

ようやく親分のお眼鏡に叶うセックスショーを披露出来た僕達に待っていたのは、今までと打って変わった彼等の手厚い歓待だった。

まずは汗を流せと通された高級旅館と見まごうばかりの露天風呂。しかも混浴だ。さっきあれほどむしゃぶり尽くした先輩の身体なのに、またこういう風情のある場所で見ると改めてその美しさに見とれてしまう。お湯に上気し、赤らんだ先輩の顔がまた可愛い。



てっきり僕はイチャイチャと背中でも流し合えるかと思っていたが、なんだか彼女がよそよそしい。せっかくの混浴なのに僕達はその端と端で静かに入浴を済ませた。

ひと風呂浴びたあとには豪勢な懐石料理が僕達を待っていた。その席で親分は僕達のミスが招いた間違った契約を快く破棄し、再度通常の規定に沿った再契約まで交わしてくれた。さらにあろうことか今回のショーのギャラまで受け取れと言う。目の前に積まれた札束に全く未練がないわけではなかったが、先輩共々それは丁寧にお断りした。

気付けば僕達の服はもう着れないほど切り刻まれていたので、そのまま浴衣をいただいて帰ることにした。

帰り際、屋敷の外で龍二が僕に万札を数十枚ほど握らせた。

「服代や。これは要らんとは言わせん。突き返してきたら腕ごと落とすぞ。」

「いやでも!…」

そう言いかけた僕を先輩が制した。

「…今日は色々と…お世話になりました。」

「それはこっちのセリフや。ええもん見せてもろたわ。兄ちゃんよ…」

「は、はい?」

「幸せにしたりや。」

ニヤリと笑って彼は邸に戻って行った。


会社に事の顛末を電話し(もちろんセックスショーのことはおくびにも出さずだ!)、今日はそのまま直帰することになった。まずは先輩を家まで送ってゆく。車に乗ってからこっち、まだ会話は一言もない。チラリと助手席の先輩を見る。夕陽に染まった浴衣姿の彼女は本当にこの世のものとは思えなくて、この女性をこの手で抱いたことなど、はやくも到底信じることが出来ない。彼女は物憂げな顔で流れる景色をただ黙って眺めていた。その横顔は、すっぴんで浴衣姿ではあるがもうすっかりいつもの冷静な出来る女の一ノ瀬先輩で、やっぱり僕はさっきの事の最中の告白は、僕に発破をかけるための、先輩の演技だったのだろうと悟るに至った。




結局なんの会話もないまま、僕は先輩のマンションへと到着した。あとはさっさと家に帰って、今日のあの幸せな瞬間を何度も反芻しよう、また右手のお世話になりながら、と思っていたところだった。

「あ…あ、上がっていってよ。」

ふいに彼女が言った。断ろうとする僕を更に遮って、

「いいから。おっ、お願い。」


というわけで今僕は先輩の部屋にいる。女性の部屋なんてもちろん初めてだが、ここはお洒落で、小綺麗で、いい匂いのする、彼女そのものといった場所だった。

「お茶でもいれるわね。」

そう言って彼女がこの場を発ってから随分と経つ。いけないとは思いながらも部屋をキョロキョロと観察してしまう。たしかに男の影のようなものは全く見当たらない。それどころか清潔なベッドには大きな熊のぬいぐるみ。昨日までの僕なら先輩のイメージからかけ離れたそれにひどく驚いたかもしれないが、今だとすごく納得出来る。そう、彼女にはこんな可愛らしい一面もあることを今日僕は知った。

可愛いかったなぁ、キレイだったなぁ、美しかったなぁ、素晴らしかったなぁ…そうやって幸せな思い出に浸っていた僕を急に一抹の不安がよぎった。


オマエは、その先輩に、いったい、なにをしたよ?


見ず知らずの男達の前でストリップをさせて、汚いチ◯ポをしゃぶらせて、精液を何度も何度もぶっかけて、飲み込ませて、ありとあらゆる体位を試して、力の限り突いて突いて突いて。大事な初めてを奪って、傷つけて。最後には盛大に体内に子種まで注いで。


改めて自分の犯した罪の重さに戦慄が走った。

あっ!いま先輩が準備していることって、もしかして口封じ?いや、絶対そうだ。あんな痴態を見られて辱めを受けたこの僕を許せるはずがない。お茶に毒を含まれるか、包丁を持って出てくるか、はたまた龍二が肩代わりでやってくるのか、う〜んどうせ死ぬなら出来ればアソコにでも毒が仕込んであって、事の最中に毒殺死がいいなぁ、この後におよんでまだそんな事を考える。

だけどこのままここで死んでもなんの悔いもないやぁ…それどころかもし先輩に殺されるんなら本望だよ。

でも、いやでも、最後にそう、心の底から謝罪しよう。こんな虫ケラの相手をしていただいた慈悲深い女神に、最愛の感謝を込めた謝罪を。


「ゴメンねぇ…クッキーを仕上げてたら時間かかっちゃって。準備はしてたんだけど…」

彼女が戻ってきた。


「申し訳ございませんでしたっ!!」

僕は土下座をし、額を擦り付けてひたすら謝罪した。「ゴメンなさい!今日は僕は貴方に大変失礼なことをっ!すみませんでしたっ!償いはなんでも!いや、いっそ殺して…」

「ゴメンなさぁいっ!!」

えっ?彼女も土下座を仕返してきた。

「?い、いや…先輩はなにも…」

彼女はそのままの姿勢で僕に抱きついてきて、僕の膝元、いや正確には股間で泣き崩れた。

「違うのぉ…ウッ…ウッ…謝るのは私のほう…うぇっ、えっ…ごっ、ゴメンなさぁあい…ウェエエエン!!…」

せ、先輩…重ね重ね謝るのは僕のほうです。なぜ先輩が涙の謝罪をされているのかはわかりませんが、その…丁度頬が僕の愚息に当たっておりまして、貴方の誠意に対して、僕のはその…。

浴衣を易々と突き破ってまたまた大怪獣はその姿を現した…。


可愛らしく色んな形をしたクッキーに混じって、1枚だけ大きなクッキーがあった。その面には大きなハートと相合い傘がクリームでデコレーションされてあり、名前はもちろん『ひな』と『いたる』だった。

「割っちゃダメよ。ゆっくりとね。割らずに全部食べれたら二人は永遠に結ばれるんだって」

そしてお互い端から慎重にクッキーをかじっていく。先輩の顔が近づいてくる。何度見たって美しすぎて緊張してしまう顔だ。そのクッキーを優しく包む唇に触れたくて気もはやる。でも絶対に焦ってクッキーを割ったりしない。だってこれが成功すれば、永遠の愛が約束されるんだろう?

少しずつお互いの顔は近付いていき、やがてその挑戦が成功したと同時に当たり前だが二人の唇は重なった。

「ほら、残ってるよ。」そう言って僕の口の周りに付いた生クリームを彼女の舌がペロペロと舐めとっていく。「口の中はどうかな?チェックします。」そう言って彼女の舌が入ってくる。「先輩こそまだ残ってないですか?」今度は僕の番。永遠かはわからないが当座の即物的願いは叶えられ、二人はまたもや欲望の赴くまま結合していった。


そして今、お互いに通算10回を数えた激しい求愛行為はやっと落ち着きを見せ、僕こと新城周には先輩こと一ノ瀬陽菜に対して、数々の謎に対する質問権が与えられた。

ひとつのシーツに包まり寝そべりながら、二人だとちょっと窮屈な、しかし僕にとっては非常に有意義な、先輩と密着したベッドの中で、そのインタヴューは開始された。




まずは今回の最大にして根本的な謎である彼女はいつ、なぜ僕を好きになったのかについて。


「か、軽い女だと思わないでほしいんだけど…」

顔を赤らめ、目を逸らしながら、口をすぼめた彼女が可愛いかった。

「ル…ルックスが超好みで。だからその…貴方が配属されてきたときから…ひ、一目惚れなのっ!…」

は?なんですと??僕があまりに素っ頓狂な顔をしていたのか、慌てて彼女は続けた。

「も、もちろんきっかけはそうだけど、それだけじゃないんだよ!だって新城君すごく私に優しかったし、仕事だって真面目で優秀だし、そ、それでどんどんどんどん好きになっていっちゃって…」

なんと僕達はお互い初対面で両想いだったのだ。しかし僕の方は分かるがなぜ先輩はこんなブ男を?考えながら思い出した。ものすごく整った外見を持つ人は、独特の美的センスを持っている場合が多いと、以前なにかの本で読んだことがある。先輩はその極端な例なのだろうか?

「だけど先輩モテるでしょう?その中にいい人いなかったんですか?」

「自分から好きにならないと絶対ダメなタイプなの、私。だから本当に私はなんて運のない女なんだって、ずっと思ってたよ。」

「?」

「だってなぜか会社の男性ほぼみんなから告白されるのよ。自分が好きな人ただ一人を除いてね!これが不幸じゃなかったら一体なんなの?」

僕の鼻をイタズラっぽくつねりながら、彼女はおどけて言った。

「だからずーっと一人ぼっちの人生でした!昨日まではね。」そして僕に軽く口付ける。その後急に不安げな顔をして、

「あっ…あの…い、いまさらだけど…わ、私の…か、か、彼氏ってことで…い、いいんだ…で、ですよね?」

としどろもどろになる。僕は笑って口付けを返す。

でもしかしだ。先輩が好きになった人が、同様に先輩のことを好きという可能性は全くなかったのだろうか?先輩のほうから告白せずとも偶然そいつが先輩に告白すれば…とここまで考えて僕は彼女の理想の見た目が僕だという悲劇的事実を思い出してしまった。多分今まで先輩に好きになられた男もみんな僕と一緒なのだ。『彼女が好きなのが俺のわけがない。そして俺が彼女に告白していいわけがない』つまりずっとそうだったのだろう。そうして世界一美しい宝石は今まで誰のものにもならなかったのだ。


「だけど先輩だってそんな素ぶりは全く見せなかったじゃないですか?」

「ええっ?バレンタインチョコあげたじゃない!」

はあぁ?いやいや部分的記憶障害にでもならないかぎりそんな一生に一度あるかないかの出来事は絶対おぼえている!…ハズだ?

「やっぱり覚えてないんだ?ひどい!!」

僕は記憶のページをフルスピードでめくっていく。はあっ!!?そういえばあれはたしか季節は冬だった。その日先輩はなぜか僕と顔を合わせる度にポリポリと違うチョコのお菓子を食べていた。デスクで。昼休みで。外まわりで。営業車の車中で僕は何気に切り出した。

「懐かしいですねぇ、そのチョコ。それでよくメガネの真似しませんでした?」

「…………あーーーー………ひ、ひとついる?……」

「わぁ…ありがとうございます!」

…ってわかるかーーっ!!!

聞くと好きな人を意識してしまうと、ガチガチに緊張して喋れなくなってしまうらしい。さっきの露天風呂でも、帰りの車中でもいざ冷静になると自分はなんてことをしてしまったのだろうか?と気が気でなくなってしまい、何も話せなかったのだという。ふうむ、この外見にしてその性分はさすがに少し不憫な気もしてきた。


次に僕はどうして今日あんなヤクザの無茶な要求を素直に聞き入れたのか尋ねてみた。彼女の顔が急に曇りだす。

「…そ、それは…そうだね…やっぱり正直に話しておかないとね………。…お願いっ!嫌いにならないでっ!…でっ、でも…どう受け取るかは…やっぱりアナタ次第だもんね…」そうやって涙ながらに先輩の口から語られた事の真相はこうだった。

実は二日前、責任を感じた彼女は謝罪のため、たった一人ヤクザの邸に赴いていたらしい。

すると門の前で口論する龍二と派手な女性に出くわしたそうだ。

「いやいや待ってぇなキャサリン。お前がやってくれへんねやったら俺オヤジに殺されっやないか〜。」

「うっせぇ!テメェが上前はねてたのがいけねぇんだろが!とにかくそいつを耳そろえて払ってくんないとアタシは二度とやんねぇから!!」

「払う!ちょっと待ってくれたら払うがなァ、せやから堪忍やでぇ、キャサリン〜」

呆れて踵を返し立ち去る女性とすれ違った先輩は、次に龍二と目が合った。

「なに見とんねんワレ!……?!…あ、いや〜、姉ちゃんよぉ見たら…えらいべっぴんさんやのぉ…ほれにほれに、えらい地味な格好やけどスタイルやって悪ないやんかぁ…なんやウチに用なんか?」

そうして半ば強制的に邸の中に連行され、こちらの理由も話した先輩にヤクザはますます好色の目を向けたそうだ。

「決まりや!いますぐここで人肌脱げ!!パコパコ一発や!それでチャラにしたろ!」

そうして今にも龍二は先輩を押し倒そうとしてきたらしい。先輩も最初はそれで事が収まるならなんて馬鹿な事を思ったらしいが、寸前のところで…あの〜、なんだ、つ、つまりぼ、僕にすごく未練があったということだそうだ。ギリギリで踏み止まった先輩は勢いまかせでこう言ってしまった。

「い、いま私!会社に片想いの人がいっ、いるんです!そっ、その人とならっ!その人がいいって言ってくれたなら、この条件…の、飲みますっ!!」

テンパった彼女は堰を切ったように自分のこともまくしたてた。今まで誰とも付き合ったことがないこと、本当にこれが最後の恋だと覚悟していること、ぼ、僕のことをどれだけ好きかということなどを。

「そしたらね、親分さんも龍二さんもすごく親身になってくれちゃって…俺達にまかせれば大丈夫だって…」

う〜ん、それは…親身になったというよりも、単に目の前で美女の生ロストバージンを見たかっただけなんじゃ…そう思ったが口に出すのも野暮だと思い、僕は言葉を飲んだ。

「龍二さんなんて『これ見て勉強しろ。くっきりはっきり分かるやつだから』ってこんなのもくれたの。」そう言って先輩が出してきたDVDの白ラベルには汚い殴り書きで『のうこうフェラ』とか『処女そうしつ』とかの文字…。くっきりはっきり?…あーそういうことだろうさ…。全くなんてものを先輩に。しかしこれでフェラチオのときの彼女のやたら芝居がかった仕草や言葉、そしてちゃんと僕をイカせたときに見せた無邪気な笑顔の謎は全部解けたってわけだ。

「…で、でもねっ、私…今日あなたをあんな危険な目に合わせるなんて…ぜ、全然思ってもなくて…ご、ごめんなさい…わ、私…な、なんにも出来なくてぇ…ごめんなさぁあい…うっ…ううっ…」

彼女が僕の胸の中で泣き出した。可愛そうに、震えている。一番怖くて恥ずかしい思いをしたのは自分だろうに。

「…もう…二度としないでください。」

「…はっ?!ハイっ!!二度としませんっ!本当にすみませんでし…」

「違いますよ!先輩!!」

「…?!……え……」

彼女は泣きはらした顔を上げた。

「先輩にもしものことがあったら…それだけが只々今日は心配でした。あとは…まるで…夢のような一日でした。今でも…信じられません。」

僕は彼女を見て少し照れて微笑んだ。

「…しんじょう…くん……わ、私も…これ全部夢だったら…ど、どうしよう?…」

「確かめてみます?」「えっ?」

そう言って僕は彼女の乳首を優しくつまんだ。

「あんッ…」ビクリと彼女が反応する。

「どうやら夢ではないようですよ。」

「?!……もうっ!…エッチ!!」

叫ぶと同時に彼女はクルリと背中を向けてしまった。とても美しいうなじと白く細い背中が僕の目の前に広がる。

「…………わから…ないよ……」

背を向けたまま彼女がつぶやいた。

「?」

「…わたし…おっちょこちょいだから…また同じようなこと…しちゃうかも…」

「それは…ダメですよ…」

まだ彼女は背中を向けたままだ。

「…………だっ、だ、だったら!だったら!!私を…ず、ずっと見張っておくしか…なな、な、ないんじゃ…な、な、ないかなぁ?!…な、なんちゃって…」

へ?…せ、先輩…そ、それって…

「せ、先輩がか、か、かまわないなら…僕はずっと、ずーっと…そう、そうしますよッ??!!」

クルリと彼女はこちらに向き直る。顔はもう真っ赤だ。

「わっ、私のいっ、言ってるのはァ!職場だけって意味じゃあ、なっ、ないんだからねっ!!」

「もっ、も、もちろん四六時中見張ってまっ、ますよ!でっ、で、で、でも…だったら…いっ、いい、一緒にくっ、く、暮らさないとダメでっ、ですけ、けど?!!」「そ、そそ、そうねっ!そうしないとダ、ダメよ、よねぇ?!」「そっ、そしたら、おっ、おばあちゃんやおじいちゃんにな、な、なっても見張り続けらっ、られっ…るなぁ!」「あ、あー!そ、その通りよっ!!き、期限なんてっ、ないんだから!!いっ、い、一生み、見て、見つめててくれないとォ!!!」

僕達はいつの間にか起き上がってベッドの上で正座をし、向かい合ってお互いの肩をしっかりと握りしめていた。顔はもう、ペンキでも塗られたかのように真っ赤だった。

「でっ、でもときには喧嘩もするかもですよっ?!そんなときはちゅ…ち、仲裁人がひ、必要かもっ?!」

「こっ、公平を期するたっ、為にもっ!おた…おた、お互いの血がつ、つつ、繋がってないと、ダッ、ダメだと、お、思うんだけどっ?!」

「ふっ…ふ、二人くらいは!い、いい、いてほしいですよねっ?!」

「え〜!三人は作りま…?!…じゃなくてっ!…い、いたほうがい、い、いいんじゃないかしらっ?!」

二人ともこの会話の行き着く先はとっくにわかっていた。でも言えないんだ。奥手で、臆病なふたりだから。

「せ、せせせせ、せっ、せ、せんぱい!」

「は、ははははは、は、はいっ、は、はいっッ!」

「い、い、いい、言っ、言って、言ってい、いい、いいんですかっ?!!」

「どっ、ど、どど、どうぞ!どうぞぉ!!」

「ぼ、ぼぼぼぼ、ぼぼぼぼ…僕とっ…け、けけけけ、けけけけ…」

あぁ、ダメだ!僕は流石に一度、唾をゴクリと飲み呼吸を整えた。そして頭の中に今日親分が先輩に言った言葉を思い出した。人にものを頼むときはしっかり、ハッキリと、心からの気持ちを伝えろと。

「先輩…いや、陽菜さん。」

しっかりと彼女の目を見て僕は言った。

「はい…」

彼女も僕をしっかりと見つめ返した。

「結婚してください」

ハッキリと、一点の曇りもない正直な僕の気持ちを伝えた。

「はい。…新じょ、…周さん。あり…がと…」

彼女も務めて冷静に返していたが最後にその言葉を詰まらせた。

「ありがとう」

お互いがお互いにそう囁き、どちらからともなく抱きしめあった。


人生には、時としてとても奇妙な出来事がある。人前でセックスショーを演じてしまうとか。偶然好きな人の裸を見てしまうとか、その人とファーストキスをしてしまうとか、さらには初体験までしてしまうとか。そして実はその人も僕の事を好きだと分かってしまう日もあれば、告白をして交際に発展する日や、めでたく結ばれる日だってあるかもしれない。

でもそれがたった一日で全て起こってしまうなんて、そんな馬鹿げてて、嘘みたいで、奇跡みたいな事は流石に、流石に自分一人だけでは到底信じる事が出来ない。


今度本当にそんなことは起こりえるのか尋ねてみよう。僕と全く同じ経験をした人に。

今も僕の胸のなか、歓喜の涙で背中を震わせている、その人に。


おわり




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