もう9月も終わりを告げる頃だというのに、夜にはまだ蒸した暑さが充満していた。
下がり過ぎているカーエアコンの温度も、上がり過ぎのダンスミュージックの音量も、今の私の暴走する疼きに比べたらよっぽど自制が効いているなと、等間隔で迫っては過ぎる国道沿いの街灯をぼんやり追いながら私は考えた。
私はタケルさんが運転する車の助手席に座っていた。
そして彼との逢瀬はこれが初めてというわけではない。
「美香からバイト先聞き出しちゃった。」
私がオーダーを取りに行ったファミレスのテーブル席で彼がそう言ってニヤリと笑ったとき、私に訪れた感情は恐怖よりも期待と興奮だった。
その夜に彼のこの車の車内で生まれて初めての女の絶頂を経験し、私は彼に、いや彼との性行為に溺れ、その後の彼の誘いを待ちわびるようにまでなってしまっていた。
強引で、ときに暴力的ですらある彼の激しい欲情を私は全て受けいれたし、性技も彼に指示されるままなんだってやった。その後に待っている震えるほどのご褒美にありつくために。私は彼の犬だった。涎を垂らし、待てを我慢出来ない強欲な牝犬。
そうしているうちに車はその道沿いにあった蛍光色の看板が揺らめく建物へとハンドルを切った。
「いっつも車の中っていうのもさ。優香ちゃん嫌でしょ?」
「あ、ううん、私は別に…」
その後に続いてどこだっていいと言おうとした私は慌てて言葉を飲み込んだ。まるで自分がセックスだけが目的の淫乱女のように思えてしまい、私は「…で、でもありがとう…」と囁くような声を彼に返した。
いわゆるラブホテルと言われる場所なんて、もちろん入るのは初めてだった。「明るい所から選ぶんだよ。」壁にズラッと並んだ部屋のパネル写真の前で戸惑っていた私に後ろから抱きついて彼が言った。
「あっ…ああ、じゃあ…」
私は一番地味な部屋を指差すと、「これ?」と言いながら彼はその画面に触れた。
やや赤いオレンジの間接照明が灯るその部屋は思っていたよりもずっと普通で綺麗だった。大きなダブルベッドが部屋の大半を占めているが下世話なデザインというわけではない。ぼんやりと部屋を見渡す私の横をタケルさんが通り過ぎたかと思うと彼はそのままベッドへダイビングした。ベッドは屈強な彼よりもさらに頑丈みたいで彼はその上でぴょんぴょん跳ねながらはしゃいで言った。「いやぁ広くていいねぇー。今日はいつ迄大丈夫なの?」
「こ、今夜は友達の所に泊まるって言ってきたから…」私は『誰に』そうことわったかは言わずに言葉を返した。
「へぇー朝までいれるんだ!じゃあ色んなことして楽しもう!」
私は顔を赤らめながら小さく頷いた。彼のいう『色んなこと』の言葉で連想したこれまでの彼との様々な情事が脳裏に浮かび、身体が火照るのを悟られるのが恥ずかしかったのだ。
「じ、じゃあ私、シャワーを…」
「あっ、ダメダメ。まずはこっちに来てよ。」
彼はベッドの上で胡座をかき、その目の前を指差した。私はまず彼のを大きくしないといけないのかなと思い、ベッドに上がって彼に対して四つん這いになり、手を彼のズボンのファスナーに掛けようとした。
「あー違う違う。そうじゃなくてここに立って。」
「?」私は訳もわからず彼の目の前で立ち上がる。私を見上げて彼はニヤけて言った。
「セックスする前に君が優香ちゃんかどうか確かめないとね。」
「…どういうこと?わ、私は本当に優香ですっ!」
彼が今自分が一緒にいるのが私か美香かもわからないのかと私は少し不機嫌に言葉を吐いた。彼も何となくそれを察したのか「あー、そうじゃなくてさ。」となだめるように言いながら、私のワンピースの上から左太ももの付け根あたりを指で押した。
「?!あんっ…!」彼に触れられて私はビクリと仰け反る。彼はそのまま服の上から私の腿肉にその指を押し込みながら言った。
「今日はたっぷり時間あるんだからさ。ゆっくりと君の裸をみせてよ。」
私もいつもの車中とは違う展開に興奮し、酔いかけていた。「わ、わかった…」布越しの彼の指がじれったく私はワンピースの胸のボタンを外しにかかった。
「あっ!またまた違うんだなあこれが。とりあえずさぁ、パンティだけ脱いでよ。」彼は笑顔のままだったがその言葉には少し苛立ちを含んでいるようにも思えた。
またもや私は訳がわからなかったが、経験不足が露呈するのが嫌だったのと彼をがっかりさせたくもなかったのでロングのワンピースを少したくし上げ、ストッキングとパンティを一緒に掴んで降ろしていった。
「いっつも恥ずかしそうに脱ぐよねぇ…好きだなぁ俺、優香ちゃんのそういうとこ」
彼の満足そうな顔を真下に見ながら私はパンティとストッキングを脱ぎ終えた。しかし今だに何を求められているかわからず、赤面して途方に暮れていた。
「いやぁ、よかったよかった。ハイ、それこっちに預かります。」
右手に持っていた下着を言われる通り彼に手渡す。彼はそれにはあまり関心がないようで、受け取ると無造作にその辺りに投げた。それは私が今日のために新調した下着だった。
「さてと、俺もう1回この前みたいなのやってほしくてさあー」
「こ、この前って?」
「見せてくれたじゃーん。俺と美香に『お姉ちゃん』の証拠。」
そう言われて私は鮮明にあの日のことを思い出した。彼が何を望んでいるかは分かったが、私は少しばかりの抵抗を示した。
「だ、だったら全部脱ぐから…確かめて…」私はまた胸のボタンに手をかける。
「あっ、違うよ。わかってねーなぁ。」
ううん、よくわかってる。でもイヤなの。
「ほらぁ前みたいにゆっくりスカートを上げていってよぉ」
イヤなの。貴方の隣にいた美香の目を思い出すから。
「時間はいくらでもあるんだしさぁー」
出来ないの。あの意に反した止まらない欲情を思い出すから。
何も言わず震えて立ちすくむ私に、いよいよ苛立ちを募らせた彼は真顔で言い放った。
「いいからやれよ。」
あのときと同じように、震えながら私はワンピースをゆっくりと上げ始める。あのときと同じように私に注がれた視線を感じ、あのときと同じように私は、息を荒げ、欲情し、性器を濡らす。あのときと同じように。
膝下を過ぎ、太腿が姿を現わす。彼はこの前よりもより間近でじっと私のスカートの中を覗いている。
「やっぱそそる脚してるよなぁ、お前。普段隠してるから余計だわ。」彼のぶっきらぼうな褒め言葉にすら私の性欲は刺激されて快感に変わる。
「ハァ…ハァ…ハァあん!…ぁあん!」私は既に興奮し、喘いでいた。この前のように我慢することなどないから。
「あっ、見えたよ、ホクロ!うん、間違いなく優香ちゃんだわ。」
彼は優しい笑顔で私を見上げて言った。息を荒げながらも私は微笑み返した。
「ハァ…ハァ…じ、じゃあ…」
とスカートを握る手を緩めようとすると突然彼の手が伸びてきて私の腕を強く掴んだ。
「おっと待った!…今日はここからさらに上までだ。」
私は彼が先にパンティを脱がせた意味をここでやっと理解した。あの日も実はそうだったなんて勿論知ってはいないだろうけど。
「?!そ、そんな…い、イヤよ…」
私の頭はそう思ってる。だけど私の身体はそうは思っていないのだろう。
「今日のお客は俺一人なんだ。サービスしろよ。」
「………」
結局彼の指示を拒めなかった。それはすでに私の肉体があの日の感覚を追体験していたからだ。止めたいのに止められないスカートを上げる手と、興奮、欲情…羞恥の果ての絵も言われぬ開放感。もはや見られたくないのか、見られたいのか、それとも見せたいのかもわからない奇妙な感覚。私は彼の言葉でなく、私の内から欲する物に抗えず、何度か怖気ながらもついにワンピースをへそのあたりにまでまくりあげた。
「ひゃー、こりゃたまらないね。もう少し脚を広げてよ。」
「…は、ハイ…。」
広げた股の下に流れ込んだ空気が冷たい。エアコンの効いた部屋だっていうのに私は興奮から汗をかいていたし、おそらく私の陰部はすでに湿っていた。
「気持ちいいんでしょ?こうやって誰かに見られるのが。」彼はまるで私ではなく私の性器と会話をしているかのようにそれを凝視していた。
「そ、そんなこと…」
途端に彼は私を見上げ、和かな笑顔で言った。
「あの日だってちょっとヤバかったじゃん。ほっといたら優香ちゃん絶対マ◯コ見せてたでしょ?」
その言葉は性の快楽に耽溺していた私の頭を一瞬で冷ました。
「⁈…なんで知ってる…うぅんっ!、あンッ!ああああっ!」
途端に羞恥の感覚が蘇り、慌てて下ろしたワンピースの中に素早く彼の右手は忍び込んだ。今にも蜜が溢れそうだった私の溝は飛び込んできた彼の長い指をやすやすと受け入れ、噴き出した粘液が絡まりグチョリグチョリと卑猥な音を立てる。
「やだぁアアン!ウンッ!…ウンッ!」
彼の太い腕を支えにして私は立ったまま何度も快感に打ち震えた。
「あんときだってこうなってたんだろ?クサいマ◯コの臭いがプンプンしてたぜ。」
「…そ、そんな…そんなことない…ハァ…ハァアン!」
右手で私のアソコを弄り続けながら、彼のもう片方の手はズボンのポケットから何かを取り出した。
「だってあの日、スケベな優香ちゃんは何も穿いてなかったんだもんねー」
悪戯っぽく笑いながら言う彼の、その左手にあったのは結局あの日以来見つからなかった私のパンティだった。
「⁈…いやああッ!返してええっ!!」
取り返そうと伸ばした私の手は簡単に遮られ、私は彼に覆いかぶさるような体勢になった。より自由の効くようになった彼の右手が私の恥部の中でさらに激しく暴れまわる。クチュグチュッチャプッチャプッ!水遊びでもしているのじゃないかと思うほどの音がワンピースの中から聞こえる。
「あああああああああ!いやああああ!」
私は自立出来ずに彼にもたれたまま彼の腕と一緒に身体を揺らした。
「あんっ!あんっッ!!き、気持ちいいいっ!いいいいいっ!!…あん!あん!」
もはや盗まれていたパンティの事などはすっかり頭から消え去り、望みどおりの快感を享受してもらった私は愛情を示そうと、彼に抱きつき口づけようと顔を近づけた。すると途端に彼は右手の動きを止め、私からその身を引いてしまう。
「?…はァ…はぁ…ハァ…はァ…」
「おっとと。ちょっと飛ばし過ぎたな。今日はもっとねっとり、ゆっくりと気持ちよくなろうよ。」そう言って彼は立ち上がりどこかへ行ってしまった。
突然のお預けをくらった私はしばらく股下に残った熱い疼きを感じながら、その場にへたり込んで放心していたが、偶然にあの日のパンティが視界に入ると、慌ててさっき脱いだパンティと一緒に拾い上げ、軽くたたんで私のハンドバックに隠した。
「お待たせしましたー」
そう言って戻ってきた彼が手にしていたのは何故かお風呂の洗面器だった。それが無造作に私の目の前に放り投げられるとカランと音がした。覗きこむとその中には浣腸薬がカラコロと揺れていた。
「な、なに?…」
「うん?あぁ、まずは優香ちゃんのお腹をキレイにするんだよ。」私の横に腰を下ろした彼はなんの臆面もなく言葉を続けた。
「しよう、アナルセックス。したことないでしょ?」
さらりと出たその言葉に私は赤面し、動揺した。
「⁈…そ、そんな…アソコはその…そんなことする所じゃ…」
「えぇ〜?この前ヤッた後に『なんでもします。教えてください』って頼んできたの自分じゃん。だから今日はラブホに来たのになぁ〜。つまんねぇー。」
私はそのまま震えて俯いてしまった。確かに以前彼との行為で絶頂に達したあと、私は気分を良くしてそのようなことを言ったとは思う…。彼は会う度にそれまで以上の快楽を私に与えてくれたし、それは同時に引っ込み思案の私に女としての自信をつけさせてくれもした。一体世の中の男女がどこまでの激しくて変わった性行為をするのか私には分からないけれど…もう私は奥手で地味な女の子には戻りたくないんだ!
私は目の前の浣腸薬を掴み立ち上がった。
「じ、じゃあ…済ませてきます。」
「おー!ヤル気になった?あ、ちょっと待って、どこ行くの?」
トイレを探す私を彼は引き止め、洗面器をベッドから僅かの床上に放り投げた。
「ここでするんだよ。」
「…え?……」
私は頭が真っ白になった。いくらなんでもそんな所を他人に見せるなんて…いや、たとえ身内でもイヤだ!先程の決意はいきなり揺らいでいた。
「…そ、それは…嫌です。で、出来ません。す、済ませてきますんで…」
そう言ってトイレの方に向き直った私の背中に彼の言葉の矢が飛んだ。
「あーーーっそ。じゃあ今度また『君とそっくりな子』のでも見て楽しむかな。」
思わず私は振り返る。
「み、美香が?…」
そうなの?妹は好きな男の前ならそんな恥ずかしい事だってしてるの?
私の心を読み取ったかのように彼はおどけて言った。
「アイツあんなじゃん?『なんならタケルにかけてやろうか?』ってケツをこっちに突き出してさぁ。さすがにそんな趣味はないっての。」
…そうなんだ…みんなするんだ…こんな事…妹だってしてるのに…お姉ちゃんの私がなんで出来ないの?美香への対抗心、タケルさんに見放されたくないという焦りが私の平常心を乱していく。私は黙って洗面器の前に、彼の方に向かって立ち、なるべく彼に見えないようにワンピースの後ろの方だけを捲り上げ、震えながらしゃがみこんだ。
「お?その気になった?頑張れー。」
口を真一文字に結び、薬をお尻に挿入しようとしたが、手がガクガク震えているのと、初めてのことで全く上手くいかない。
彼はそんな私をニヤニヤとただ観察していた。
「…緊張してんの?うんうん、俺は大好きだよ、優香ちゃんのそういう所。大好きだから…手伝ったげるよ。」
そう言って彼はベッドからピョイと飛び起き、私に向かってきた。
「…い、いや…来ないで…」
もはや薬を指すどころではなくなり私はお尻をついてそのまま後ずさった。といってもすぐ後ろは壁で一瞬に私は逃げ場を失う。
「ほら、壁に手ェ付いてケツこっちに突き出せよ。」
またあの冷たい目だ。彼はたまにこういう目をする。
ドン!震えて固まっている私の横の壁に彼の重い蹴りが入った。ビクリと大きく震えた私の手から浣腸薬が落ち、転がった。面倒くさそうに彼はそれを拾い上げる。
「いくら夜は長いっつってもさ。こんなのに時間をかけるのは勿体ないっしょ?うん?」
しばらくの後、私は怯えて立ち上がり彼のいうとおりの姿勢を取った。
バサッ!!彼は乱暴にワンピースをまくりあげた。
ペシッ!勢いよく両手を置かれて私の臀部は張った音を上げた。
「⁈…あっ…やっ…」服で隠れてよく分からないが多分私はいまお尻の肉を掴まれてそのまま左右に広げられている。
「あー可愛いねぇ処女アナル。てっきり前の穴もそうかと思ってたんだけどなぁ…」
「イヤぁ…見ないで…ください…」
すると突然私の溝を下から上に何かが這った。
「ひィんっ!…」私は仰け反りさらにお尻を突き出したような姿勢になった。
舌舐めずりをした彼が言った。
「意外と敏感ド助平マ◯コちゃんだったとはね。」
「んあっ!…ァ、あァん…あぅん…アッ!…ああっ…」
しばらく彼の舌は私の肛門を舐め回し、その指先は私の陰部を絶え間なく刺激し続けていた。時間をかけた彼の舌や指使いはいつもよりもさらに上手で、私は壁にしがみつき、溶け出しそうな足腰を支えているのがやっとだった。
「天然のローションがタップリだな…」
彼がボソリとそう言った直後お尻の穴に冷たいものが入り込んで来た感覚が一瞬あった。しかし動きを止めない指使いが私をまた快楽の海に引きずりこむ。
ヌッと彼の顔が真横から私の顔を除きこむ。手技を続けられたままの私はその定まらぬ瞳で彼の顔をぼんやり見つめ返すしかなかった。
「終わったよ。いつ入れたかわからなかったでしょ?出したくなるまでちょっとあるからさぁ。ベッドでイチャイチャしようよー」
子供みたいに無邪気な笑顔で彼はそう言った。
私は何も言わず、ただ桃色の吐息を吐いて彼の口に濡れた舌をわがままに押し込んだ。