聴き慣れないスマホのアラーム音で、寺島京太(てらしまきょうた)は目を覚ました。ムワリとした、男臭い匂いが漂う室内。空気の淀んだ自室の床には、ビール缶や、脱いだままの衣服が散乱している。
「……」
顔をしかめて頭を掻きながら、布団から起き上がると、賞味期限の過ぎた食パンを齧り、歯を磨いて顔を洗った。鏡には、いつも見る冴えない顔が映っている。だが今日は、どこかその自分の顔に違和感を覚えた。何かが違う気がするが、それが何なのかわからない。
まあ、考えても思い当たらないほどのことなので、大したことではないのだろう──。胸の奥にモヤモヤとした不快感が残るが、とりあえずはそれを無視をすることに決め、スマホを手に取るとトイレに入った。
京太は性欲が強いほうで、朝一番にオナニーをしないと、日中もムラムラしてしまって、仕事が手に付かないほどである。朝勃ちで元気になったチンポは人並みサイズだが、カリ首は皮で覆われ隠れている。その勃起した包茎チンポは、精子を吐き出したくてしかたがないのか、ボクサーパンツの中でビクビクと脈動していた。
お気に入りの写真が入ったフォルダを開くと、筋肉質な男性の写真で画面が埋め尽くされる。京太は、その中でも一番好きな写真のサムネイルを、無意識にタップしていた。そして、その写真がスマホの画面全体に広がった瞬間、彼の脳内に電流が駆け巡った。
鏡を見て感じた、違和感の正体が解けたのだ。
「こ、これは【私】じゃないかっ!」
写真には、ワイシャツにスラックス姿で眼鏡をかけた、たくましい体つきのサラリーマンが写っている。京太の勤める会社の課長である、柳幸四郎(やなぎこうしろう)だ。彼は写真を見た瞬間、思い出したのだ。自分が昨日まで、【柳幸四郎】だったということに──。
「なんで、私は寺島君になっているんだ?!」
昨日までは、確実に自分は柳だった。なのに今は、部下である寺島京太になっているうえに、自分の写真を見るまで、自分が京太だと思い込んでしまっていた。いったいどうなっているのかと、彼は混乱するしかなかった。
夢ではなさそうだ。とりあえずスマホの電話帳を開いて、『柳課長』と書かれた番号に電話を掛けてみた。だが、何度コールをしても相手は出ない。そうこうしているうちにも、時間は経ち、就業時間が差し迫ってきている。仕方なく、彼は京太のスーツに手足を通して鞄を手に取ると、会社へと向かった。
***
会社に着くと、【柳幸四郎】はまだ出勤していなかった。時計の針が進み、就業時間が開始してもやってくる気配がない。何かあったのかと気が気でないが、仕事に手を抜くわけにはいかない。京太がミスを犯すと、巡りめぐって、課長である自分が責を負う羽目になるのだ。
幸い記憶をさらうと、京太の仕事の段取りが思い浮かび、特に失敗することもなく、気が付くと昼休みの時間を迎えていた。
そして昼休みに入ったのと同時に、柳が姿を現した。同僚たちは、どうしたのかと心配の声を彼に投げかけた。
「いやぁ、すまんすまん。ちょっと家内が腰をやってしまってな。病院に行ったりしていたら、こんな時間になってしまった」
「奥さん、大丈夫ですか?」
「ああ。医者によると、ただの軽いぎっくり腰らしい。数日休んでいれば治るとさ」
ホッとした表情を浮かべる一同の中、一人だけ冷や汗を流している男がいた。京太だ。
【柳幸四郎】は自分だ。ということは、目の前にいる彼の中身は、別人のはず。だというのに、仕草から話し方に至るまで、柳幸四郎としてなんの違和感も感じられない。京太の頭の中はおかしくなりそうだった。
「ところで……寺島君、どうかしたのか?」
柳の言葉を聞いて、同僚たちは一斉に京太のほうを振り向いた。全員の顔に浮かぶのは、『お前、何しでかしたんだよ?』という表情だ。課長になって以来、こんな表情を同僚から投げかけられるのは久しく、背中を嫌な汗が伝っていく。
「い、いえ。なんでもありません……、課長」
なんとか平静を取り繕って答えたが、心臓はバクバクとうるさいくらいに鳴っている。自分の口から自然と、彼に対して課長という言葉が出てきて、動揺してしまった。
自分こそが【柳幸四郎】、【柳課長】なのに──。
俯いて、頭の中で自問自答を繰り返す京太の背中を、誰かが大きな掌で叩いた。驚いて目を見開き、叩いた本人の顔を見上げる。柳だった。彼は目尻を下げ、どこか楽しそうに口元をほころばせている。
「なら良いんだ。そうだ、寺島君。【あの件】で話があるんだ。小会議室までちょっと来てくれ」
力強く腰を押されると、抵抗する気力も湧かず、否も応もなく彼の後をついていく羽目になってしまった。
*
「それで……、何の件で呼ばれたかわかるかな、【寺島君】?」
後ろ手で鍵を閉め、椅子にどっかりとその巨体を預けた柳が、京太に尋ねた。彼は筋肉質な長い脚を組むと、京太の肉体を堪能するように、眼鏡の奥の眼をゆっくりと上下させた。
名前を呼んだときのイントネーション。そして、京太を見る彼の目付き。まるでいじめっ子が、面白い標的を見つけたときのような陰湿さが、彼のあらゆる行動からにじみ出ている。彼もまた、気付いているのだ。【自分の肉体】が、【自分のモノ】ではないということに。
「俺──、僕たちの体が入れ替わっているってことですよね?」
柳は京太の答えを聞いて、満面の笑みを浮かべた。
「さすがは、元【柳課長】だ! 君なら気付くと思ったよ、入れ替わったことにね。どうして入れ替わったかまでは──」
「わ、わかりません……。それよりも僕の妻は、課長の奥さんは大丈夫なんですか?!」
「ん? ああ、すまんな。気を揉ませてしまったみたいだな。彼女がギックリ腰をやったっていうのは、嘘なんだ。恥ずかしい話、遅刻したのは単なる私の寝坊だよ」
それを聞いて、京太は胸を撫で下ろした。
「まあ、腰を痛めたというのは、あながち間違ってはいないんだが……、とりあえずこれを見てくれ」
そう言うと、柳は自分のスマホを取り出して、京太のほうへと向けた。画面には【柳幸四郎 進行度100% ボディチェンジ完了】、そしてその下には【寺島京太 進行度20% ボディチェンジ未完了】と表示されている。
「これは……?」
意味の分からない文言に、京太が首を傾げる。
「昨日の夜、この【肉体交換アプリ】がいつの間にか私の、つまり【寺島京太】のスマホに入っていることに気付いてね。試しに使ってみたんだよ。なぜ相手に君を選んだかは──、今の君にはわかるだろう?」
京太は今朝、どうして自分が【柳幸四郎】であることに気付いたのかを思い出した。大好きな【柳課長】の写真を見ながら、オナニーをしようとしたからだ。
彼には普段から、他人と自分の肉体が入れ替わる場面を想像して、興奮する癖があった。なかでも、その相手として選んでいたのは、【柳幸四郎】だった。
「たぶんその願いが、神様に届いたんだろうな。君にとっては、とんでもない神様になるだろうがね……」
柳は、くつくつと低い笑い声を上げている。
「ちなみに今の私の状態は、表示にもある通り、ボディチェンジ完了済み。完全にこの【柳幸四郎】の肉体に、魂が馴染んだ状態だ。この身体の今の持ち主は、間違いなく私。つまり私が、【柳幸四郎】になっているということなんだよ」
「そ、そんなっ!」
京太は愕然として、悲鳴のような声を上げた。自分が【柳幸四郎】だということに、全く疑問を抱いていない様子の柳に戦慄を覚える。
「でも、安心してくれ。まだ二人の肉体が、永遠に入れ替わったままだと決定したわけじゃないんだ。アプリの表示通りなら、君はまだ、その身体に20%しか馴染んでいない。そして今日が終わるまでに、二人両方が進行度100%になっていないと、どうやら肉体の交換は不成立になるらしいんだ。普通に過ごしていても進行度は上がるが、君の場合、半日で20%しか進んでいないなら、今日中に100%にはならないはずだ」
「え、そうなんですか……? でも、どうして課長はそこまで詳しく教えてくれるんですか?」
僕と身体を交換したままでいたいはずなのに、どうして──。口から出そうになった言葉を、京太は飲み下した。
「やはり、不公平なのは良くないからな。私が【寺島京太】のままだったなら黙っていたかも知れないが、完全に【柳幸四郎】になってしまったことで、隠しているのがいたたまれなくなったんだよ。だから私で協力できることがあれば、なんでも言ってくれ。君だって、こんな状態で一生を過ごすのは嫌だろ?」
「それは、はい……もちろんです」
京太の歯切れの悪い返事を聞くと、柳は自分の胸をどんっと叩いた。
「任せておけ! 【柳幸四郎】の身体で、君に協力できることがあるなら、喜んで手を貸そうじゃないか」
柳は京太に近づくと、彼を力強く抱き寄せた。筋肉質な胸板がムニュッと重なり、萎えていても大きなイチモツがスラックス越しに、股ぐらに密着しているのを感じる。普段から柳が使っているシトラスの香りの香水に、中年男性特有の男臭い体臭が混じった、雄のフェロモンたっぷりの匂いが鼻腔をくすぐる。不覚にもその匂いで、京太の股間がムクムクと膨らんでいく。
そして、京太が鼻を鳴らしたのと同時に、彼の進行度が、20%から25%へと跳ね上がった。
「えっ! どうして?!」
驚く彼に、柳はニヤリと口角を上げた。京太はハッとした。進行度が上がったのは、【柳幸四郎】の肉体に性欲を感じてしまったから。つまり【寺島京太】らしい反応をしてしまったからだ。柳は京太が事実を悟ったことに気付くと、さらに強く彼を抱き締め、いきなり唇を奪った。
──ブチュウ、ちゅぱぁ♥
互いの舌が絡み合い、唾液を交換し合う音が部屋に響く。
──くちゅ……、むちゅぅ♥
柳は顔を離すと、満足げに微笑んだ。京太は呆然としていた。自分の体に突然、強い刺激が与えられたことで、彼の進行度が一気に40%にまで上がってしまったのだ。
しかし柳は気にした様子もなく、京太の頬に分厚い掌を添えると、抵抗しようと閉じた彼の歯をこじ開けて舌を捻じ込んできた。
──ぶちゅっ、じゅるるるぅ……♥♥
二度目のディープキス。
先ほどよりも長く、ねっとりとした濃厚なものだった。
京太の全身が痺れる。盛り上がった股間に、自分よりも大きく膨らんだ、柳の股間がズリズリと擦り合わされ、多幸感が脳内に溢れかえる。彼は抵抗できず、されるがままになっていた。だが、頭の隅では警鐘が鳴り響いている。これ以上は危険だと。
ピコンッ! 電子音が鳴る。京太がハッとしてスマホに目をやると、進行度を示す数値が再び回転する。
【──進行度50%】
それを見た柳は、嬉しそうに笑うと、ようやく京太を解放した。
「すまなかったな……。どうやったら進行度が上がるのか、君に身をもって体験してもらおうと思ってね。じゃあ、そろそろ昼休みも終わる頃だ。仕事に戻ろうか」
「はい……」
一方的に捲し立てられたせいもあるが、今は上司という立場である彼に、反論する気力が湧いてこない。二人は何事もなかったかのように、それぞれのデスクに戻った。
*
それから京太は、午後の仕事中、ずっと上の空だった。頭の中では、先ほどのキスのことが忘れられない。
今までの人生で味わったことのないような、甘美な感覚。脳髄が蕩けるようだった。あの快楽を思い出しながらオナニーしたら、どれだけ気持ちいいだろうかと考えるだけで、勃起したペニスから先走りが溢れ出してしまうほどだ。
柳の肉体は、鍛え抜かれた筋肉に包まれていて、とても魅力的だ。特に胸筋なんかは凄いボリュームだし、腕だって丸太のように太い。
京太は広がる妄想を、頭を振ることで脳内から追い払った。自分の身体に欲情してどうする。こうして彼のことを考えているだけでも、おそらく進行度は上がってしまうはずだ。
──ピコーン!
ふと視線をスマホに向けると、進行度の数値が変化していた。
【──進行度55%】
どうやら進行度が5%上昇するたびに、アプリの通知が来るようになっているらしい。
【柳幸四郎】は、京太の席から少し離れたところで、部下たちと話をしている。節電の影響で室内の温度が少し高いせいか、鍛え上げた筋肉でパツパツになったワイシャツの腋が、汗で滲んで黒ずんでいる。京太はそれを見て、また興奮が高まってくるのを感じた。
(だめだ……このままじゃ、本当に取り返しのつかないことになる)
京太は意を決すると、立ち上がった。そして上司のところへ向かう。
「課長! ちょっとよろしいですか?」
「ん? 寺島君、どうした?」
「実は、体調が悪くて……。早退させていただいてもよろしいでしょうか?」
具合悪そうにそう言うと、柳は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに心配そうな表情を浮かべた。
「確かに具合が良くなさそうだな。キリの良いところまで仕事が終わっているなら、家に帰って静養しなさい」
「ありがとうございます!」
演技も忘れて、ホッと安堵した顔になる。これで、この場から──、【柳課長】から離れられる。
*
京太は帰り支度を整えて部屋を出ると、エレベーターに乗り込んだ。扉が閉じる瞬間、柳が巨体を滑り込ませて入ってくると、京太の腕を掴んだ。そして彼の身体を引き寄せると、強引に唇を重ね合わせた。
「か、かちょ……! んんっ! ん゛ん゛~」
ぐちゅぐちゅと舌が絡み合ういやらしい水音が、狭いエレベーター内に響く。京太は離れようとしたが、圧倒的な体格差から抵抗することもままならない。そのまま、押し倒されるようにして壁に背をつけると、柳は覆い被さるようにして、さらに激しく唇を求めてきた。
エレベーターが下の階に着いたことで離れた二人の唇の間には、唾液が糸を引いていた。京太は呆然としながら、自分を見下ろす男の顔を見た。
威厳があり、頼りがいのありそうな精悍な顔。だが今、その顔には欲望の色が浮かんでいる。
柳は京太の腕を掴むと、グイグイ引っ張って歩き出した。廊下に出ると、すぐそばのドアを開ける。そこは給湯室になっており、部屋の中央に置かれたテーブルの上にはポットやティーセットが置かれていた。壁際には冷蔵庫があり、中には社員の飲み物やおやつなどが入っている。
柳は京太をそこに引っ張り込んだ。ガチャリという鍵をかける音が響く。
京太の肩を抱くと、彼は再びキスをした。互いの唾液を交換しあう淫靡な音が、静かな部屋に響き渡る。
しばらくして、ようやく顔を離すと、柳は口元についたよだれを拭った。それから、京太の目を見つめた。そこには、獣のようなギラついた光が宿っていた。
「すまんが、このまま君を帰らせるわけにはいかない。君には、【寺島京太】になってもらわないといけないからな……」
そう言って彼は、ワイシャツとスラックスを脱ぎ捨てた。下着姿になると、イチモツの形がクッキリと浮かんでいて、勃起しているのが一目でわかる。さらにそれもずり下ろすと、ぶるんっと勢いよく、巨大な肉棒が現れた。血管が浮き出て脈打つそれは、まさに凶器と呼ぶに相応しい代物だ。
昨日まで、当たり前のように見ていた自分の巨根であるにもかかわらず、京太は思わず生唾を飲み込んでしまった。そんな彼の様子に、柳はニヤリと笑みを浮かべた。
彼は【柳幸四郎】のモノを見せつけるようブラブラと揺らしながら、京太に近づいた。そして、太くなった自分の竿を優しく掌で包み込むと、上下に動かし始めた。その速度は次第に上がっていき、やがて絶頂が近づいてきたのか、息遣いが激しくなった。二人しかいない部屋で、野太い喘ぎ声と先走りでヌチヌチと鳴る、柳のイチモツを扱く音だけが響いている。
「んっ、くっ……。寺島君、私のチンポ、もっと見てくれっ!気持ち良いぞ、寺島君。んお゛おぉ、 イクぞ! イクイクッ!!」
ひときわ大きな声を上げた瞬間、柳は射精した。ねっとりとした大量の白濁液が、彼の大きな手から溢れ出し、床へとボタボタと滴り落ちる。京太は呆気に取られていた。柳は一仕事終えたかのように、満足げに大きく息を吐くと、掌に付いた精液を舐め取った。
そして、ゆっくりと京太のほうへと向き直った。その瞳からは、理性の光が失われつつあった。
柳は、京太の身体を押し倒すと、馬乗りになった。そして、片手で自分のものを握りながら、もう片方の手で京太の股間をまさぐってくる。
「ちょっ……! 何をするんですか!?」
「何って、ナニだよ。決まっているだろう? 君も本当はしたいんじゃないか? 私のチンポを見て、興奮しているのはわかっている。君は、昨日までの私なんだからな」
「ち、違います!」
必死に抵抗するが、腕力の差は歴然だ。京太はあっけなく組み伏せられてしまった。
「抵抗しても無駄なのは、君もわかっているだろう?」
スラックスとパンツを同時に脱がされた京太のモノは、ギンギンに勃ち上がっていた。それを見ても、柳は表情を変えない。
「ふむ……。やはりかつての自分のチンポを見ていると、入れ替わったことを実感して、興奮してくるな」
シックスナインの体勢になると、勃起してもなお亀頭に被った京太の皮を、舌で丁寧に剥いていく。京太は歯を食いしばって耐えていたが、カリ首を舌先でなぞられると、たまらなくなったように甘い吐息を漏らした。
「うぅ……」
「気持ち良いか?」
答えない京太に、柳は頬を緩ませた。それから、今度は玉袋を口に含んで転がすようにして刺激を与える。さらに裏筋を指先で撫でるようにして、焦らすような愛撫を加えた。
「【柳幸四郎】になったことで、男に対する興味が薄くなったが、やはり【寺島君】が相手だと違うようだ。妻を抱いたときよりも、チンポが疼いてたまらん」
その言葉どおり、京太の目の前にぶら下がっている柳の精液塗れのイチモツは、元気を取り戻して再び勃起していた。
「妻を……、抱いた?」
「ああ、そうだ。念願の【柳幸四郎】の肉体を手に入れて興奮した私は、入れ替わってから、何度も自慰行為に励んだ。だが、いっこうに進行度は上がる気配を見せない。当たり前だ。君も気付いているとおり、肉体の持ち主らしい振る舞い・反応をしないと、進行度は上がらないからね。【柳幸四郎】は、ゲイでもナルシストでもない。自分のことを考えながらオナニーなんかしても、私の魂がこの身体に馴染むわけがない。だから私は、【柳幸四郎】が愛する妻と、セックスをすることにしたんだ」
彼の突然の告白に、京太は怒りを覚えなかった。【寺島京太】としての進行度がすでに半分を超えてしまった彼にとって、【柳幸四郎の妻】はもはや縁遠い存在と成り果ててしまっていたからだ。
柳もまた京太のその薄い反応を意外に思うことなく、独白を続ける。
「君は、肉体交換が行われたのは今朝だと思っているだろうが、実際には昨晩のうちに、我々の身体は入れ替わっていたんだ。妻もまだ起きていた。肉体がまだ馴染んでいない状態下で、セックスにまでもっていくのは、なかなか苦戦したよ。なにせ、本当の私はゲイで、女性には一ミリも食指が動くこともないからな。必死になって【柳幸四郎】の記憶を漁って、妻とのこれまでのありとあらゆる性行為を思い出したよ。そうしているうちに、妻のことを考えると勃起するようになっていたんだ。それからは簡単だった。【いつもどおりのセックス】をするだけだからな。妻の中に射精した瞬間、一気に進行度が100%になったよ」
話しながら、愛する妻とのセックスを思い出しているのだろうか。柳の硬くなった竿は脈打ち、小刻みに震えている。
汗をかいて、パンツの中で蒸れた中年男のイチモツの匂いは、今の京太にとってはまるで媚薬のようだった。ドロリと蕩けそうな脳味噌の中では、柳と彼の妻がセックスに興じる光景が繰り広げられている。想像するのは簡単だ。なにしろ二人の生まれたままの姿は、彼の記憶の中にあるのだから。
柳が妻の乳房を揉みしだき、唇を重ねて舌を絡める。四つん這いになって舐め回して濡れそぼったマンコに、屹立した肉棒を挿入し、獣のように腰を振る。筋肉質な大男が唸り声を上げて、愛する女性の子宮に、濃厚な子種を注ぎ込んでいく──。
気が付くと、京太もまた鼻先にある太い肉棒を口に含んで、舌で愛撫し始めていた。昨晩は彼の妻の中へと挿入されていたモノを、自分がしゃぶっていることに気分が高揚する。反対側からは、その持ち主の重みを含んだ低い呻き声が聞こえてくる。二人はしばらく互いの性器を刺激しあったあと、同時に果てた。柳のパンパンに張り詰めた玉から放たれた大量の精子が、京太の口内に溢れかえる。
すべてを出し終えた彼は京太から離れると、自分の尻からはみ出した突起に指を掛け、勢いよく体内に挿入されていたモノを引き抜いた。
「ふぬおお゛お゛ぉっっ!」
ズボズボッという音とともに彼の肛門から姿を現したのは、直径3センチほどの球だった。巨大なアナルビーズだ。計6個もの球体を一気に排泄した彼は、「あぁ~」と情けない声で喘ぎ、腰砕けになって床に崩れ落ちた。
息も絶え絶えになりながら、彼は両手で尻を掴んで広げ、ぽっかりと口を開けたアナルを京太に見せつけた。それはまるで、餌を求める魚の口のように、パクパクと動いていた。
「はあっ、はあっ……。この尻は君のモノと違って、何も入れたことのなかった処女マンコだったからな。使えるように解させてもらったよ。どうかな寺島君、私のケツマンコは?」
柳は四つん這いのまま振り返り、頬を紅潮させ、期待に満ちた目でかつての自分の姿を見つめた。
京太はゴクリと唾を飲み込んだ。柳の無防備な秘部を見た瞬間、今まで抑え込んできた欲望が、堰を切ったかのように溢れ出してきたのだ。
「入れたいのか? 私のケツマンコに、君のモノをぶち込みたいだろ? さっき、私にフェラチオしながら興奮していたもんな。わかるぞ。だが入れてしまえば、進行度は確実に上がってしまうだろうな。君はどうしたい?」
京太は黙って立ち上がった。そして、柳のがっしりとした肩を掴むと、強引に仰向けにさせた。
「おや? いいのか? 後悔するかもしれないぞ」
京太は何も言わずに、大きくなった自分のモノを柳の尻穴に押し当てると、そのまま挿入していった。
「お゛っ……! んおお゛ぉっ!」
柳が、低い唸り声を上げる。彼のアナルは男の竿を躊躇いなく呑み込み、腸の襞はまるで、生き物のように京太のチンポに絡み付いていく。
熱くヌルリとした、人の体内にイチモツを挿入する感覚。【寺島京太】としては初めて体験する感触に包まれ、京太は思わず顔をしかめた。
しかし、それも一瞬のこと。すぐに快楽が全身を支配していく。柳の肉体は皮肉にも、京太の肉体と最高に相性が良かった。オナホとは比べ物にならないほどの、締まりの良さを持っている。まるで二人の下半身が、一体化したような錯覚に囚われてしまいそうになる。
「あ゛っ……! ああぁっ! 寺島君のチンポが入ってくる……」
京太が腰を振るたびに、柳が切なげな悲鳴を上げる。
「イ゛、いいぞ……。もっとだ……。もっと突いてくれ……」
言われるままに、京太は激しくピストン運動を繰り返した。
「ああ、そうだ……。気持ち……良いぞぉ、寺島君……」
うっとりとした顔の柳もまた、その動きに合わせて自ら腰を振り始める。
「くっ……」
「おいおい、もう……イキそうなのか? 我慢してくれよ……。今度は私が動く番だからな」
柳は笑うと、京太を押し倒して馬乗りになった。手を頭の後ろで組むと、筋肉を見せつけるようなポージングをしながら、焦らすようにゆっくりと腰を動かし始める。開放された腋には濃い毛が生え揃い、汗の滴り落ちるそこからは、ますます雄のフェロモンが匂い立っている。京太は無意識のうちにそこに鼻先を近づけていた。
「ハハハ。そんなに嗅いで、私の匂いが好きか?」
自分が【柳幸四郎】だったときには、忌むべき加齢臭としか思えなかった匂いが、【寺島京太】となった今、とても香ばしく、甘美なもののように感じられる。京太は夢中で、犬のように鼻を鳴らした。
「ああ……、柳課長……」
口に出して、目の前の相手を呼んでみる。途端に【柳幸四郎】という存在が遠く感じられ、記憶が曖昧になっていく。自分が【柳幸四郎】なのか【寺島京太】なのか、判然としなくなってくる。
「いいぞ、寺島君……。私の匂いに狂うといい……。私の肉体に溺れるんだ……。気持ち良いだろう? それが君の望みなんだからな」
柳の言葉が、脳内に染み込んでいく。どこかでアラームのような警告音が鳴っている。これは何の音だっただろう。思い出せない。
「私は【君のモノ】だ。この肉体は、全部好きにしていいぞ。ほら、こうして欲しいか?」
柳が下腹部に力を入れると、中の肉壁が京太のイチモツにより強く絡み付き、ストロークを重ねるたびにカリ首に強烈な刺激が加わる。
「あぁ課長……、すごいです……。すごく良い……」
京太は我を忘れて、柳の動きに合わせるように腰を突き上げた。
「ああ゛っ、私もだよ。ん゛っ、お゛っほ。最高だ……。寺島君、私のケツマンコに精子をぶち撒けたいか?」
「はい……、ぶち撒けたいです……」
「よし、わかった」
柳は、ニヤリと笑った。
「なら、私のケツマンコに中出ししたまえ。思い切り奥まで突き上げて、私の中にたっぷりと注ぎ込むんだ。いいね?」
京太は、無言で頷いた。
「ああ、そうだ。私のケツマンコに射精するときは、ちゃんと宣言しながらイクんだよ。いいな? よし、じゃあイケ。私のケツマンコに、ザーメンをぶち撒けるんだ!」
「はい、課長……ッ!出ます……! 受け取ってください、俺のザーメン……!!」
京太は自分のモノを、柳の奥深くへと押し込んだ。最大限にまで肥大したイチモツが、締め付ける柳の腸壁をズリリと擦り上げ、亀頭が彼の前立腺を激しく刺激する。
「お゛ ぉっ! んおお゛ ォオッ!」
柳が野太い獣じみた叫び声を上げ、身体を大きく仰け反らせた。肛門がギュウッときつく締まり、京太の精液が搾り取られる。
「ああ゛ぁっ、課長!! 柳課長ォッ!!!」
京太は叫び声を上げ、自分のモノを柳の一番深いところへと捻じ込んで、溜め込んでいた欲望をすべて吐き出した。
ドクンドクンと脈打つように、柳の体内に大量の白濁が流し込まれていく。
「あぁ……、出てるぞ、寺島君……! 寺島君の濃いザーメンが……! ああぁっ、これで私たちは……!」
柳もまた精悍な顔をだらしなく蕩かせ、ヨダレと涙を垂れ流しながら、絶頂に達した。全身の筋肉が激しく痙攣し、彼の男根からは勢いよく真っ白な雄汁が飛び散った。それは京太の顔にも降りかかり、ドロリとした粘液が彼の口の中へと入ってくる。
生臭い味と独特の臭気が鼻腔を通り抜け、脳髄を刺激する。先ほどまで何度となく聞こえていた電子音が、ひときわ大きな音を立てたあと、機械的な音声がスマホから流れ出した。
【寺島京太 進行度100% ボディチェンジが完了しました】
その瞬間、京太の意識が覚醒した。
──俺はいったい何を……!?
慌てて上体を起こすと、目の前には、自身の肉体を両手で抱き締め、愛撫する柳の姿があった。
呆然とする京太に対し、柳は満足そうな表情を浮かべて言った。
「寺島君、どうだったかね、私のケツマンコは? 君が欲望のままに、私の中に出してくれたおかげで、この【柳幸四郎】の肉体は、永遠に私のモノになった。感謝するよ」
柳は床に落ちていた眼鏡をかけ直すと、いつものように自信に満ちた口調で言った。
「さて、これで私の用事は済んだ。それでは仕事に戻るとするよ。そうそう、君は体調が悪かったんだったな。引き留めて悪かったね」
彼は悠然と精液に塗れた己の体を拭い終えると、衣服を身に着けて立ち上がった。京太は、慌ててスマホを確認した。だが、そこにはもう【肉体交換アプリ】と書かれたアイコンは無かった。
「か、課長……。もう俺たちの身体は、一生このままなんですか?!」
「ああ、そうだ。残念ながら、そういうことになるな。まあ、心配することは無い。ボディチェンジは完了して、魂は肉体に完全に馴染んだんだ。君も問題なく【寺島京太】として生きていけるだろう。【柳幸四郎】の人生は、私に任せてくれ。妻と子供の面倒もちゃんと見るつもりだ」
柳はそれだけ言い残すと、部屋を出て行った。一人残された京太は、呆然自失状態で、いつまでも立ち尽くすしかなかった。
(了)
以下、差分イラストです
hirokeiball001
2023-07-18 21:51:25 +0000 UTCムチユキ
2023-07-18 18:22:43 +0000 UTChirokeiball001
2023-07-18 16:54:57 +0000 UTCムチユキ
2023-07-17 17:51:11 +0000 UTC黒竜Leo
2023-07-17 17:04:43 +0000 UTC