「……あっついなぁ~」
目元まで垂れてきた汗を拭うと、岩崎昌弘(いわさきまさひろ)はパタパタと掌で顔をあおぎながら独り言ちた。声に出せば、余計に暑さを実感してしまうというのは分かっていたものの、こぼさずにはいられない。
九月も半ばに入り、日の入りは早くなったものの、街にはまだまだ夏の気配が色濃く残っている。夕方だというのに、外を歩けば辟易するほどの蒸し暑さだ。
今日は娘の誕生日だからと仕事を早々に切り上げ、六時ちょうどの電車に飛び乗って安堵したのも束の間、彼はすぐに暗澹たる気持ちになった。朝の通勤ラッシュほどではないが、車両内はごった返しており、冷房が壊れているのではないのかと疑いたくなるほどだった。
(電車に乗るより先に、会社の近くのケーキ屋で芽依(めい)の誕生日ケーキを選んだ方が良かったか……?)
昌弘はつり革をギュッと握りしめると、ぐったりと項垂れて、ため息をついた。どちらにせよ電車に乗ってしまったからには、あれこれ考えたところでもう遅い。乗客の隙間からときおり見える車窓には、疲労困憊といった様子の中年親父の顔が映っている。
満員電車には慣れてはいるものの、予想に反してここまで人が密集していると、やはり流石にキツイものがある。今日は朝から晩まで会議だったこともあり、肉体的にも精神的にも疲労のピークだ。
とは言え、それ以上に彼の心の内を占めていたのは、娘の存在だった。今年で八歳になる彼女のことを考えると、自然と昌弘の口元がほころぶ。駅に着いたら、あの子のお気に入りの洋菓子店でいろんなケーキを買って帰ろう。
疲れきった頭でぼんやりと愛する娘のことを昌弘が考えていると、不意に車内アナウンスが流れ始めた。
『本日も、当鉄道をご利用いただきまして誠にありがとうございます。現在、お客様がご利用の車両は【入れ替わり車両】となっております。次の駅に到着いたしますまで、皆様ゆっくりと【入れ替わりタイム】をお楽しみください』
(ん? 【入れ替わり車両】っていったいなんだ……?)
いつも利用している電車内で流れたアナウンス。なのに初めて聞くそのワードに、昌弘は首を傾げた。耳をそばだてると、周囲の人間も疑問の言葉を口にしている。おかしいと思っているのは自分だけではないことに、どこか安堵した気分になった昌弘は、ふと不思議な感覚に囚われた。それは、酒に酔ったときのような、あるいは熱を出したときのような微かな違和感だったが、次の瞬間にはその違和感は消え、代わりに奇妙な確信が彼の心を満たし始めた。
***
──人間は、日常的に他人と肉体を入れ替える存在だ。それが人としての自然な行動である
──生まれつきの自分の肉体に執着することは、とても恥ずべきことである
天啓のように閃いたその【考え】は、疑う余地のない【真実】として昌弘の脳に染み渡った。これまでなぜ、他人と身体を入れ替えようという考えに至らなかったのか。恥ずかしくて、消え入りたくなるほどに。
周囲を見渡すと、他の乗客たちも彼と同じように、心ここにあらずといった表情を浮かべていた。意識を覚醒させるように頭を軽く振った彼らは目をしばたたかせると、次第にその瞳にギラギラとした光を宿し始めた。そしてその視線は、周囲の人たちの肉体を舐めるように観察するものへと変わっていった。
「……あんたの身体、良いな♥」
誰かが呟いた。その声をきっかけに、まるで堰を切ったように車両内がざわつき始める。
「よぉ、俺たち入れ替わろうぜ?」
「う〜ん、今の僕の身体って恥ずかしい……。早く誰かと交換したいよ」
様々な声が、昌弘の耳に届いてきた。以前の彼ならその会話に疑念を抱いただろうが、今の彼にとっては、それらがまるで自然な会話に聞こえる。いや、それこそが当たり前のことなんだと気付いた彼は、ハッと息を呑んだ。
これまで彼は、自身の肉体に誇りを持っていた。小学生の頃からラグビーに明け暮れ、社会人ラガーマンとしても鍛え続けている体。ナルシストというわけではないが、彼自身も自分の顔を男らしくて悪くない方だと思っている。なのに、なぜだろう。それが今、酷くみすぼらしいものに感じられる。
(こんな身体に固執していたなんて、なんて俺は恥ずかしいやつなんだ……。肉体を交換することは、人として当然行うべきことなのに、俺は一度も……)
なぜこれまで俺は、誰とも肉体を交換してこなかったのだろう? その疑問は、昌弘の中で徐々に欲望へと変わっていく。
(俺も早く誰かと入れ替わりたい……。自分じゃない誰かになって、シコりたいッ!!)
*
車両内の誰もが昌弘と同じように、今すぐ誰かと入れ替わりたいという様子でソワソワしていた。
昌弘は辺りを見回して、周りの乗客に目をやった。目についたのは、187センチの巨漢である彼より背は低いが、がっしりとした体つきのキャッチャーらしき高校球児。他には、その球児と同じくらいの背丈でタトゥーを入れた金髪坊主頭の土木作業員風の男、細身で中性的な見た目の新卒サラリーマン風の男。
肉体を交換するなら、高校球児一択だろう。昌弘は、頭の中で妄想を膨らませる。野球で鍛えた筋肉は、ガチムチラガーマンの彼とは違うだろうし、芋臭い見た目も純朴そうで魅力的だ。高校球児になりたいという欲望が、昌弘の中でふつふつと湧き起こる。
新卒サラリーマン風の男も悪くない。イケメンとも言える中性的な顔立ちに、細身だが女性に好かれそうな体つきの彼は、男らしい昌弘とは正反対だ。そんな彼になってみたいという思いも捨てがたい。
それに対して、土方っぽい男。彼は論外だ。学生時代も、社会人になってからも関わるのを避けてきた、昌弘の最も苦手なタイプだ。頭が悪そうだし、こんなやつに自分の肉体を譲り、好き勝手されるのは絶対にごめんだ。
高校球児と新卒サラリーマン風の男。二人の間で揺れ動いていた昌弘だったが、最終的に入れ替わる相手は高校球児に決め、彼に声を掛けようとした。だが、その瞬間、昌弘は後ろから不意に声を掛けられた。
「よぉ、お兄さん。迷ってるみたいだな?」
*
ギョッとして昌弘が振り返ると、土木作業員風の男が歯を見せて笑っていた。
どこか他人を嘲るような、自信と悪意が入り混じった表情。タトゥーが刻まれた太い腕を組み、電車の揺れにも微動だにしない彼は舌なめずりをすると、昌弘の全身を上から下へと眺め回して両手を揉み合わせた。
「いや、私はその……」
息を吞んで口にしかけた彼の言葉は、次の瞬間には封じられた。
「お兄さんみたいなごつい体したおっさんが、こいつらみてえな乳臭えガキの肉体で、満足できるわけねぇだろ? きっとあんたはオレみたいな、野郎っぽいボディが好みなはずだ」
そう言って、男は自身の胸を拳で叩いた。昌弘は反論しようとしたが、言葉に詰まった。確かに彼の言葉は挑発的だが、完全に否定できない自分がいる。その荒々しい雰囲気、堂々とした態度は、昌弘が心にずっと抑え込んできた何かを刺激する。彼が逡巡している間に、男は彼のすぐそばに近づき、ニヤリと笑った。
「黙ってるってことは図星だろ? オレと入れ替われば、きっと楽しいぜ♥」
電車の揺れが激しくなる中、男がわざと昌弘に体を密着させてきた。
「ほら、こうやって【互いのチンポを揉み合えば、入れ替わりのスタート】だ♥」
「なっ……、おいっ?! やめっ!!」
不意に彼の掌がスラックスの上から昌弘の股間の膨らみを握り、昌弘の掌もまた彼に強引に掴まれて、彼の股座に押し付けられてしまった。反射的に握った昌弘の掌は、生温かい男のモノの体温を感じ取る。
(う゛っ……! なんだ、この感じは……。体の中で何かが蠢いているみたいだ……!)
全身に奇妙な感覚が走る。クラクラとするような目眩とともに、昌弘は徐々に視線が低くなっていっていることに気づいた。彼の身長が縮み、逆に男の背が伸びていっている。昌弘は驚いて距離を取ろうとしたが、電車の揺れに足をとられ、彼ら二人の太腿がぶつかった。
「はうっ……♥♥」「うぉ……♥♥」
スラックスと作業ズボンが擦れた瞬間、二人の下半身を強烈な痺れが襲った。昌弘の太腿の筋肉がギュウッと締め付けられるようにして細くなり、代わりに彼の目の前にいる男の下半身が太くたくましくなっていく。ズボンの中の違和感は鮮明で、昌弘は股間に生えたイチモツが少しずつ小さくなっていく感触に戦慄を覚えた。
「やめろ、やめてくれぇっ!!」
昌弘は悲鳴を上げたが、その声には拒絶よりも悦びの色の方が多く混ざっていた。嫌なのに、こんな男にはなりたくないのに……。肉体が入れ替わっていくことが嬉しくて、気持ち良くて、抗えない。なぜなら他人と【入れ替わる】ことは、この世界の定説だからだ。生涯愛していこうと決めていた妻と娘がいるはずなのに、彼の頭の中では早く自分の肉体を捨てて別の人間になれと、本能が叫んでいる。
「う゛っ……♥♥ んお゛っ♥」
小さくなったチンポの先から我慢汁が垂れる感覚が、昌弘の心を狂わせる。
──俺の身体が今、他人の身体と入れ替わっている……。
彼の頭の中はその事実でいっぱいになってしまい、思考がうまくまとまらない。
「……ああ……、俺の下半身が……♥」
昌弘がうっとりと呟いた瞬間、電車が大きく揺れ、その拍子に今度は彼らの胸が擦れ合った。
「い゛っ♥♥」
全身に電流が走り、昌弘が思わず声を上げる。股間から脳天まで、快感が駆け抜けた。
「ハハッ、感じてんじゃねぇか! お兄さん、すっかりオレの体を気に入ってくれたみたいだなぁ♥ んお゛っ、オレも気持ちイ゛イッぜ♥♥」
昌弘の反応に気をよくしたのか、男が電車の振動に身を任せて、さらに彼に強く胸を押しつけてくる。その直後、意識が飛びそうなほどの快感に襲われて、昌弘は背中を反らせた。男の胸が、昌弘の胸を押し返すようにしてデカくなっていく。反面、昌弘の上半身はどんどんと筋肉の嵩を減らし、その代わりとばかりにむっちりとした贅肉で覆われてしまった。
「あ゛……♥♥ んお゛っ♥ やめ゛ろぉ♥」
脳を執拗に刺激する快楽に翻弄されながらも、昌弘は必死に抵抗しようと試みた。
(こんな男になるなんて、絶対に嫌だ!! そもそもこの他人と肉体を入れ替えるのが当然だという認識は、いったいなんなんだ?! 妻と娘が、俺のことを待っているんだ……。早く……家に帰らないと……)
「お゛っ……♥♥ おほっ♥」
しかし、彼のそんな疑念や願いも、脳の中で暴れまわる『快楽』という魔物によって一瞬で塗り潰され、肉体は彼をあざ笑うように変化を続ける。小麦色の肌はさらに黒くなり、掌の表面には固いマメと傷が浮き出てくる。当然だがその節くれだった指は、昌弘の知っている彼自身の指ではなかった。
(頭が変になりそうだ……)
「うっ♥」
心臓の鼓動が激しくなり、腹の奥から何かが込み上げてくる。絶対に入れ替わりたくないと思っていた相手と、体のほとんどが入れ替わってしまった。なのにその、体の一部が徐々に入れ替わっていく感覚が、あまりにも気持ち良くて仕方がない。
朦朧とする意識の中で昌弘が辺りに目をやると、さっき【入れ替わり】の相手に決めようとしていた高校球児の胸と尻が、有り得ないほどにボリューミーになっていた。どうやら、グラマラスなOLと【入れ替わり】が決定したようで、彼は顔を真っ赤にして涎を垂らしながら、相手の女性を見つめている。
その隣では、腹がポッコリと膨らみ、体毛がやたら濃くなった新卒サラリーマンが、ぜいぜいと息を切らしつつバーコード禿げの中年男性に熱い眼差しを向けていた。同じくサラリーマンであろう中年男性は、スリムになった己の肉体に指を這わせながらご満悦の様子だ。
その光景に、昌弘はゴクリと唾を呑んだ。
肉体が入れ替わり始めた瞬間から、脳に巣くっている得体のしれない高揚感。女性と入れ替わることになった高校球児は、これ以上ないくらいに幸せそうだし、新卒サラリーマンも加齢臭を漂わせる身になったにもかかわらず、中年親父に抱き着かれて満更でもなさそうな顔をしている。
順調に【入れ替わり】中であるそんな彼らの嬉々とした姿を見ていると、好みでない相手との【入れ替わり】に対して抱いていた昌弘の拒絶感も薄れ、それどころかせっかく入れ替わるのならもっと楽しもうという気持ちさえ芽生え始めていた。
「お゛っ♥ お゛ぉっ♥」
昌弘と男の体が密着する面積が、どんどん増えていく。昌弘はもう、まともな言葉を発することもできずに喘いでいた。体の一部が入れ替わるたび、空イキしたときのように痙攣するチンポの先がスラックスの中で擦れ、垂れ流しになった我慢汁が股間に大きな染みを作っている。
男は自身のズボンと下着を下ろすと、同じように昌弘のスラックスと下着もずり下ろした。昌弘の股間には仮性包茎だが淫水焼けして黒くなったチンポが、そしてやはり男の股間には見慣れた昌弘のズル剥けチンポがぶら下がっていた。しかも、ピアスのおまけ付きで──。
「やっぱ、ピアスはまだオレのチンポに付いたままなんだな。タトゥーやピアスなんかは、全部が終わったあとに、そっちの体に移るのか? ……おっと、興奮して忘れちまってたが、入れ替わる相手とは自己紹介しあうのがマナーだったよな。オレは柴垣風雅(しばがきふうが)、28歳。見ての通り、職業は土方で、バツイチのバイだ」
「……私は岩崎昌弘(いわさきまさひろ)、40歳。会社員で妻と娘が一人いて……って、バイだって? バイっていうのは、バイセクシャルのことか?!」
昌弘の薬指に光る結婚指輪を見て、風雅がニタリと笑う。
「あん? 今の時代、バイなんてそんなに珍しいもんでもねえだろ。時代遅れだぜ、お兄さん。チンポハメるのも、ハメられるのもどっちもできて一石二鳥だと思わねえか? まあ、あんたと入れ替わったら、オレも嫁さん一筋のノンケになっちまうだろうがな♥」
*
「あぁ、ヤッベ……♥ 体が入れ替わっただけでもこんなに気持ちいいってのに、これで顔まで入れ替わっちまったら、どうなっちまうんだ……?」
気付けば昌弘たちは、餌を求める雛鳥のごとく互いの唇をついばむようにして重ね合わせていた。舌を絡めて唾液を交換するたび、相手の熱い鼻息が肌に当たるたび、二人の顔が火照っていく。
車両の窓には、昌弘の黒く短い髪が、明るい金色に変わり始める光景が映っていた。それが終わると髪の毛が頭皮に吸い込まれるようにして短くなり、最終的には坊主頭に近い形状へと変わった。肌の色も徐々に濃くなり、土方特有の黒く焦げたような色へと変化していく。彫りの深い顔立ちは、少しずつ平坦に。四角く力強かった顎のラインは丸くなり、高かった鼻梁はゆっくりと沈み、平坦で低い鼻になった。
細くなった眉は釣り上がり、まるで挑発的な雰囲気を宿したかのようだ。大きく輝いていた目は、瞼が垂れて鋭くなったせいでどこか悪意めいた迫力が加わる。
そこまで変化が終わると、昌弘の口の中が不意にヤニ臭くなった。タバコなんて吸ったことがないのに、白かった彼の歯が徐々に黄ばんでいく。タバコを吸う奴なんてろくでもない人間だとずっと思っていたのに、今はニコチンが恋しくて仕方ない。歯の隙間からヤニ混じりの口臭が漏れ始めると、それを合図にしたかのように硬く勃起した昌弘の男根は、触れる間もなく射精へと導かれた。
「ああっ♥ チンポイクッ♥♥」
顔面を丁寧に揉み解されたかのような充足感に、自分のモノではないチンポでの射精感。酒焼けしたような【柴垣風雅】のかすれた声で喘ぎ声を上げると、昌弘はザーメンを撒き散らしながら顔を蕩かせた。
「へへっ、すげぇ! お兄さんの顔、完全にオレの顔に変わっちまったじゃねえか! んおっ♥ オレも来たぁッ♥♥ オレの脳みそ、お兄さんのと入れ替わってるっ♥ 最高だッ!! 脳汁出て、頭が変になっちまうぅぅ♥♥♥」
昌弘の顔面が変わりゆく様を目にして竿を押っ立てていた風雅が、両掌で頭を抱えて天を仰ぐと、昌弘同様彼の顔にも変化が現れ始めた。
金色の髪が伸びて、ぞわぞわと黒く染まっていったのを皮切りに、肌は徐々に明るくなって健康的な小麦色のトーンへ。人相の悪さが際立っていた顔立ちは、彫りを深めて精悍な面構えになっていく。頬が引き締まって鼻筋が高く通ると、骨格がシャープな形状に変わる。細い眉が太く堂々とした形へと変わると、鋭く陰気だった目もパッチリと大きくなり、濁っていた瞳は透明感のある誠実な光を帯び始める。最後に、風雅の黄ばんだ歯は真っ白に輝き出し、歯並びも整った。
そして黒い窓ガラスに映った、健康的で男らしい【岩崎昌弘】の顔を目にした風雅は、先ほどの昌弘同様、いや彼以上に激しくチンポを震わせて射精を繰り返した。
*
「いやぁ~、この顔めちゃくちゃ気に入ったぜ。体もエロすぎだろ♥ これでオレも今日から、立派な妻子持ちのノンケリーマンか~♥♥」
いつも鏡で見る自分の顔。だが昌弘はそんな慣れ親しんだはずの顔を同じ高さではなく、下から見上げていた。
【岩崎昌弘】の声を口から漏らす風雅が、【彼】の肉体を褒めたたえている。今まで昌弘が浮かべたことのないような下卑た笑みを浮かべ、恍惚とした風雅を見ていると、昌弘の口角も自然と吊り上がった。最初はいけ好かない相手だと頭の中で決めつけ、入れ替わるのは嫌だと思っていた相手でも、【岩崎昌弘】という肉体をこうも愛してくれるのであれば彼にとって嬉しいことこの上ない。昌弘は、風雅が【自分の肉体】に興奮しているのを見るだけで、脳の奥がジンジンと痺れるのを感じた。
「ヘヘ、それにしてもお兄さんのチンポ、とんでもねえな♥ デカすぎて、パンツに入らなさそうだ♥♥ こんなにデカいと、突っ込まれる嫁さんもさぞかしヒイヒイいい声で鳴くんだろうな♥」
風雅はそう言いながら、すっかり大きくなった自らのイチモツを確かめるようにやわやわと揉みしだき始める。彼の無骨な手の中で血管が浮き立ち、ドクンドクンと脈打つ肉棒。その先端からは透明な汁がなみなみと垂れ、竿を伝って陰毛に絡んだ。
「身体が完全に入れ替われば、あとは【射精して魂を肉体に馴染ませ、入れ替わり相手の人生を円滑に引き継ぐ】っていうのがマナー。だよなぁ、お兄さん?」
「あぁ、その通りだ……」
顔を見合わせた二人は、ズル剥けの竿の先と黒い包茎チンポの先をくっつけた。
「ん゛っ♥」
「お゛っ♥♥」
亀頭同士が、キスをするようにくちゅりと音を立てる。二本の竿は互いの我慢汁に塗れてぬらぬらといやらしく光り、カリ首が擦れ合うたびニチャニチャと粘っこい泡を作り出した。
グチュグチュといやらしい音が電車の中に響き渡る。その刺激で二人はさらに興奮を昂らせながら体を密着させ、竿の根元にぶら下がる金玉同士も擦りつけあった。肉体が入れ替わったばかりで敏感になったチンポは、それだけですぐに限界を迎えてしまう。
「ア゛ッ♥ やっべぇなコレ♥♥ おチンポキスさせてるだけだっつーのにすげ〜、マジきもちぃー……。これだけでイッちまいそうなくらいやべぇぜ! あ゛ぁっ、もう我慢できねぇ、イクッ、イクゥ♥♥」
「私……、俺もだ! イクッ♥ イッちまうぅぅっ♥♥」
勃起した肉棒をほんの数十秒つばぜり合いだけで、二人は射精してしまった。二本の太い筋となって放たれた精液がぶつかっては混ざり合い、昌弘のワイシャツと風雅のコンプレッションウェアを白く汚していく。まるで、二本のチンポがくっついて一本になったかのような心地よさ。ザーメンでドロドロになった二人は、恍惚とした表情を浮かべて見つめ合った。
視線が交わった瞬間、息をつく暇もなく昌弘の脳内には【柴垣風雅】の記憶が、風雅の脳内には【岩崎昌弘】の記憶が、怒涛のように流れ込んでくる。他人の人生を追体験する刺激に昌弘は舌を垂らして喘いだが、どうやら風雅は物足りなかったようだ。
「あ゛~……♥ すっげぇのキたぜ。でもよ、まだ終わるには早いよな? もっと気持ち良くなろうぜ、お兄さん♥」
風雅は昌弘を後ろ向きにさせると、唐突に後ろから彼のケツの穴に指を突っ込んだ。
「ん゛お゛ぉぉっ♥♥」
予想だにしなかった刺激に、野太い昌弘の嬌声が車両内に木霊する。風雅の太い指は瞬く間に三本まで昌弘の尻の穴の中に潜り込み、彼の前立腺を探し当てると、そこを集中的に責め立ててきた。
「ん゛あ゛っ♥♥ あ゛っ♥ あ゛んっ♥」
昌弘は初めてのような、懐かしいような感触に思わず腰をくねらせた。だが、風雅はお構いなしに彼の中をかき混ぜ続ける。
「いい声出すじゃないか! もう辛抱たまらんっ!! どうせ入れ替わるんなら、ただの射精なんてまだるっこしいもんじゃなくて、ガン掘り雄交尾で入れ替わろうじゃないか【風雅】くんっ♥♥」
ヌポッと音を立てて昌弘のアナルから指が引き抜かれると、その空虚になった穴を埋めるべく、極太のソーセージがミチミチと肉壁を押し分けてめり込んでいく。元々男性と幾度もまぐわった経験がある【柴垣風雅】の尻穴は、まるで女性器のように易々と男のソレを受け入れる。ケツ穴の中いっぱいに感じる異物感に、昌弘は身を捩った。
──ズププッ、ズボッ、ズボズボズボボォッ!!!
「ん゛お゛ぉぉぉっ♥♥ い゛っ……、【オレ】のケツがっ、壊れちまうぅぅっ~~~!!」
「わっはっは、すごい締まり具合だなぁ♥ さっきまでノンケだったっていうのに、男のチンポの咥え方もすっかり覚えてしまっているじゃないか! 才能あるぞ、君ィ♥」
風雅が激しいピストンを始める。股の付け根と尻タブがぶつかり合う音が車両内に大きく響く。昌弘が反射的に扉に両手をついて後ろにケツを突き出すと、自然ともっと奥まで突いてくれと誘うような格好になった。
「どうだっ……、【風雅】くんっ、男のチンポの味は?! 奥さんのマンコにチンポ突っ込むより、ケツの穴をズボズボされたほうが何倍も気持ちいいだろう?! 私もなぁ……気持ちいいぞッ♥ このチンポ、太くて長くて、感度抜群だぁ♥♥」
野太い声で高らかに吠えると、風雅はさらに強く昌弘のケツへと自分のモノを突っ込み、荒々しく腰を動かした。先ほどまで昌弘の股間にぶら下がっていた巨大な肉棒が、今は彼のケツにずっぽりとハメられている。そんな倒錯的な状況が、昌弘をおかしくさせる。
「お゛っ♥ お゛ぉっ♥ き、気持ちいぃ♥♥」
昌弘はもうすっかり風雅の──、かつての自分のチンポに夢中だった。硬い肉棒が肛門の中を行き来するたびに、昌弘のチンポもまた呼応するようにしてヒクヒクと痙攣し、歓喜の涙をトロトロと流す。風雅の巨根が昌弘の中で一気に膨れあがったかと思うと、彼の中にあった異物感が急速に膨張した。同時に、昌弘の頭の中を無数の映像が駆け巡る。【柴垣風雅】の記憶や経験、知識が一気に彼の脳に焼き付けられると、昌弘の脳みそは快楽物質で溢れかえった。全身の筋肉が痺れ、皮膚の内側を通る血管すべてに、風雅の記憶が刻み込まれていく。
微かに頭の内に残っていた拒絶感から助けを求めるように視線を動かすと、昌弘が最初に目をつけていた高校球児と新卒サラリーマンの肉体は、完全に変貌を遂げていた。高校球児はユニフォームを着たままグラマラスなOLに、新卒サラリーマンは真新しいスーツに身を纏った中年サラリーマンに。そして彼らはともに、かつての自分の姿をした相手によって犯されていた。
処女はすでに喪失しているであろうOLが、今度は【高校球児】の肉体を得た状態で、かつての自分の姿をした相手に童貞を捨てようとしている。横では同じように女性経験の少なそうな顔をした【新卒サラリーマン】が、巧みな腰づかいで【中年サラリーマン】を犯していた。
「ふんっ、ふんっ! 若いってのは素晴らしいなっ♥ こんなにも性欲が湧いたのは久しぶりだ! 身体も軽くて、今なら何発でもやれそうですよ♥♥」
「あんっ、すっごい! これがおチンチンをマンコに出し入れする感覚なのね! わたし、男の人のお尻の穴にチンポハメるの初めてだったっすけど、チンポ気持ち良くて男になっていってるの、分かるぜ♥ でへっ♥ お姉さんのマンコが、オレのチンポ締め付けてたまんねぇ……、もうイきそうっす♥♥」
【高校球児】と【中年サラリーマン】はかつての自分の肉体に覆い被さると、息を合わせたように彼らのセックス相手の体内へと熱い精液を放った。
「あ゛っ、イグッ♥ もうイ゛グッ♥♥」
「お? 君もやっとイクか? 一緒にイクぞっ! 中に出してやるから、しっかり受け止めろよ、【風雅】くんっ!!」
ラストスパートをかけるように、風雅がさらに激しく腰を打ち付ける。昌弘はその衝撃と快楽に耐えきれず、ついに絶頂を迎えた。
ドピュッドピュッと勢いよく昌弘のチンポからザーメンが溢れ出る。同時に、風雅のチンポを逃すまいとケツマンコがギュッと締まった。
(あ゛ぁ……♥ 【昌弘】さんのチンポ、最高だ♥♥)
射精を繰り返すたびに、昌弘の脳みその大部分を、大量の風雅の記憶が侵食していく。別の人間になっていくことに対しての恐怖と期待。そして、この【入れ替わり】をもっと楽しみたいという気持ちが入り乱れて、昌弘のチンポからザーメンが溢れて止まらない。
どうやら風雅も昌弘と同じように心に変化が表れているのか、乱暴だった腰の動きも、次第に優しくなっていた。そして風雅のチンポが昌弘の中でビクビクッと脈打ち、温かいものがケツの中に注がれるのを昌弘が感じた瞬間、彼の前立腺に当たっていた異物の感触が消え、全身を激しい痛みと快感が襲った。前後不覚になりそうなほどの幸福感に包まれながら、昌弘は肌にタトゥーが刻まれ、乳首やイチモツに小さな穴が開いて、そこにピアスが突き刺さるのを目の当たりにした。
「ぬあ゛っああぁぁぁ♥ 【オレ】のチンポ、乳首が~~♥♥」
昌弘は長椅子に倒れ込み、肛門からザーメンを垂れ流しながら、快楽の余韻に浸っていた。ヒクヒクと震える彼のチンポからは、白く濁った雄汁が床へと糸を引いている。
「ふぅ……。やはり思っていた通り、すべてが入れ替わったことで、タトゥーやピアスもそちらの肉体に移ったか。これで、【入れ替わり】は完了だな」
「……おう、そうだな」
(本当に入れ替わっちまったんだ……。こんな頭の悪そうなやつになんてなりたくなかったってのに、最高に気持ちいい♥♥)
「身体も完全に入れ替わったことだし、服も交換するとしようか」
そう提案してきた風雅に応じて、昌弘はワイシャツを脱ごうとしたが、着慣れていたはずの服なのに苦戦してしまった。ネクタイを外そうとしても、指先の感覚がぎこちなく、どうやって結んでいたのかすら思い出せない。結び目を探る手がもどかしく動き、結局、強引に引き抜いてしまう羽目になった。
(おっかしいな……。普段なら、こんなに手間取るはずねぇのによ)
一方、風雅もまた、肌にぴったりと貼り付いたコンプレッションウェアを脱いだり、ネックレスを外したりするのに悪戦苦闘しているようだ。「毎日着けてるネックレスだっていうのに、まるで初めて触るみたいだ……」と、ぶつぶつと呟きながら額に汗を滲ませている。
ようやく服を脱ぎ終えた彼らは、それを相手に手渡して交換を行った。サラリーマンとして過ごしてきた昌弘にとっては、縁遠い薄っぺらいコンプレッションウェアに、ベスト。土埃や汗の匂いが染み付いており、正直言って臭い。しかし彼はそんな悪臭を放つ作業服に、愛着すら覚えていた。
(あぁ、これが【オレ】がいつも着ていた作業服なんだな……。このくっせえのを着て、毎日しんどい肉体労働に励んでたんだよな?)
これが【柴垣風雅】が着ていた服であり、同時にこれから自分が毎日これを着ることになるのだと考えると、興奮してたまらない。指先もスムーズに動いて、先ほどまでの手間が嘘のようだ。昌弘は作業用のズボンに足を通し、腰まで引き上げた。そのままベストを羽織り、ボタンを留める頃には、まるでこの服を毎日着ていたかのような感覚に包まれていた。
(なんてしっくりしやがんだ。この服が、オレに一番似合うって気がするぜ!)
風雅も同じように、昌弘が渡したスーツの一式を手早く着終えたようで、【岩崎昌弘】の姿そっくりになって昌弘の方へとやってきた。
「スーツなんて着たのは初めてだが、【岩崎昌弘】の記憶のおかげですんなり着られたし、違和感もないよ。君もその土方姿、良く似合ってるじゃないか」
昌弘のことを爪先から頭の天辺まで舐めるように見つめると、【岩崎昌弘】になった風雅が優しく微笑んだ。昌弘もまた同じように、彼の新しい肉体の持ち主となった風雅の身体を改めて見回した。
「お……おぅ♥ あんたの身体も、最高にエロいぜっ♥♥」
昌弘は思わず涎を垂らした。それは本心から出た言葉だった。バイセクシャルの【柴垣風雅】になった昌弘にとって、目の前にいる男はドストライクだ。男らしい顔に、健康的で分厚い肉体は、まさに今の彼好み。何より尻と竿がデカい巨漢。そんなドスケベボディの男がスーツ姿で立っているのだから、見蕩れないわけがない。その身体は、ついさっきまでの彼のモノだったっというのに──。
『ご乗車ありがとうございました。終点、X駅に到着です。どなたさまもお忘れ物、落とし物のございませんようお降りください』
***
駅に到着すると、当然のことながら車両の扉が音を立てて開いた。車両内の全員が【入れ替わり】という行為に没頭していたせいで、蒸し風呂のようになっていた空間に、涼やかな風が吹き込んでくる。
「はぁぁ……♥」
思わずそんな声が漏れてしまうほど、心地よい風だった。そう感じたのは昌弘だけではないようで、他の乗客たちも一斉にため息を吐いている。辺りを見回すと、高校球児とグラマラスな女性も、新卒サラリーマンとバーコード禿げの中年サラリーマンも衣服を交換し終えており、全員がそれぞれの新しい姿になったことに満足そうな笑みを浮かべている。互いに軽くあいさつし、手荷物を持った彼らは、車両内では何事も起きなかったかのような顔で次々と下車していった。
『ドアが閉まります、ご注意ください』
昌弘と風雅も他の乗客の後を追うようにして車両を降りると、発車する電車を見送った。
「ここでお別れだな、風雅くん。君の妻と娘は、私が代わりに愛していくから安心してくれ。それと……、また会えるかな? 【入れ替わり】のせいで私はノンケになってしまったが、君だけは別だ。今後も私のチンポと相性の良い君のケツの穴を、使わせてくれたら嬉しいんだが……。君とのセックスは、浮気じゃなくオナニーみたいなもんだしな」
「へへ、上手いこと言うな♥ いいぜ、エッチなお兄さん。オレのケツでよきゃ、いつでも使わせてやるよ。あんたのチンポ、また味わいたいしなっ♥♥ また、二人でしっぽりと『オナニー』しようぜッ!!」
「ありがとな! それじゃあ私は、この辺で失礼するよ。娘のためにケーキ屋に寄らないといけないんだ……」
腕時計に目をやると、風雅は慌てたように街中へと消えていった。昌弘はその後ろ姿を目で追いながら、これからの生活について思いを馳せた。
(そうだ。オレにはもう、家で待つ家族はいねえんだ……)
妻も娘もいない。ほんの少し喪失感を覚えたものの、すでに彼の頭の中は、別れたばかりのかつての自分のような姿をした屈強な男に、肛門を犯されたいという気持ちでいっぱいだった。
(この駅には確か、有名なハッテン場があったはずだよな……♥)
昌弘は【柴垣風雅】の脳味噌をフル回転させると、ズボンの中で勃起したイチモツを握りながら、頭に浮かんだその場所へと足を向けた。
(了)
ムチユキ
2025-02-08 06:28:22 +0000 UTCbubu
2025-02-08 01:36:23 +0000 UTCムチユキ
2025-02-04 06:19:08 +0000 UTCムチユキ
2025-02-04 06:15:28 +0000 UTCしかて
2025-02-03 20:57:33 +0000 UTC黒竜Leo
2025-02-03 16:49:18 +0000 UTC