校庭で色づいていた木々の葉っぱが散り始め、紅葉もそろそろ終わりの時期かという十二月上旬──。
普段であれば授業後の質問で訪れた生徒や、人気者の教師と他愛もない会話を交わすためにやってきた女子生徒などで賑やかなはずの職員室は、今日は不気味なほどに静まり返っている。それもそのはず、いまはテスト期間中で、その間は何があっても職員室に生徒が立ち入れないようになっているからだ。周辺から聞こえてくる音も、古くなってガタが来始めた暖房機器の稼働音や、答案用紙をめくる音。それに赤ペンで丸やバツを付ける音やキーボードを叩く音だけで、通常聞こえてくるような生徒の声や、教師同士の雑談さえもほとんど聞こえてこない。
「千葉先生、ちょっとこれ見てもらえるか?」
そんな息の詰まる静寂の中、柔道部の顧問であり体育教師でもある千葉孝義(ちばたかよし)は、テストの採点中に隣の席の同僚教師から声を掛けられ、小さなメモ帳のようなものを受け取った。サイズ的には受験生が良く使っている、英語の単語帳くらいだろうか。マジックで文字が書かれている以外は、何の変哲もないただの白い紙片だ。
「何ですかこれ、菅原先生?」
孝義の分厚く大きな掌に収まった紙切れには、ただ【菅原剛毅(すがわらごうき) 性癖】という文字だけが記されている。何らかの新手のジョークだろうか? 以前はどこかとっつき辛いところがあった剛毅だが、最近はノリが良くなったと孝義も同僚の職員たちも感じている。普段、近寄りがたいオーラを出していた人間が、コロッと変わったように人懐っこく接してこられると、これまで距離を置いていた同僚たちも興味が湧いてくるもので──。
それにしても、その紙に書かれている文字の意味が、孝義には理解ができなかった。質問に対する返答を待っても、剛毅は只々ニコニコしながら黙っているだけである。なんだか気味が悪くなった孝義は状況を理解するのを諦め、会話を打ち切って再び机の上の用紙に目を落とし、テストの採点に戻ることにした。
「何ですかこれっ、て訊かれてもなぁ……」
無視を決めようとした孝義の耳に、剛毅の愉快そうな声が入ってくる。彼は周囲に誰もいないことを確認すると、ヒソヒソと孝義にだけ聞こえるように小声で話し始めた。
「……これから俺の性癖をな、君にコピーするんだよ」
「??? 菅原先生の性癖を、オレにコピー?」
何を言っているのか分からない。同じ体育教師であり、野球部の監督として甲子園にも行ったことのある剛毅のことを、孝義は日々尊敬の眼差しで見ていた。しかしその瞳の奥は、徐々に失望の色に塗り潰されつつあった。理想としていた先輩像が、訳の分からないたったの一言で、瞬く間に音を立てて崩れていく。
「菅原先生……、冗談はやめて下さいよ。あの……、今テストの採点中なんで、お話はまた後で──」
孝義は頭を抱えたくなる気持ちを抑えつつ、深く溜息をついた。ただでさえ次から次へと毎日のように積み上げられるタスクで、体はクタクタなのだ。そこに、なぞなぞじみた理解不能な事柄を追加されては身が保たない。
視線を戻すと、彼は再びテストの採点を始めた。だが一人目の採点を終え、次の答案に移ろうと右へ左へ移動した視界が、ある一点で静止した。先ほど机の上に置いたはずの用紙が、開いた左の掌の中に収まっていたのだ。
「んえ゛っ?!」
自分の口から出た声があまりにも間抜けで、我ながら噴き出しそうになった。次の瞬間、全身に電流が走ったかのように孝義の体がビクついた。同時に、紙切れに書かれた【菅原剛毅 性癖】という文字が浮き出ると、彼の掌の中に吸い込まれ、ジワリと浸透していく。
「イ゛ッ……♥♥」
文字がひとつ、またひとつと自身の体内へと消えていくたびに、孝義の全身に痺れが走る。呼吸が浅くなり、体中からどっと汗が噴き出し、脳みそが蕩けて頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。股間に血液が集中し、ズボンの上からでも分かるくらいに、彼の陰茎はギンギンに勃起していた。徐々に異性愛者だった彼の性自認が、ゆっくりと時間をかけて男色へと歪んでいく。妻に対して抱いていた愛情が急速に薄れ、視界の端に映る剛毅のようなたくましい男性に性的興奮を覚えるようになる。
「はぁ……♥ あぁ……ッ♥♥」
剛毅だけではなく、職員室内には他にも多くの教師が残っている。そんな中でチンポをおっ勃てるなんて……。しかし、血液は脳と肉棒へと勢いよく流れていって、止めることができない。孝義の頭の中は、これまでに出会ってきた、屈強な男性たちとの思い出で埋め尽くされていた。彼らのゴツい手で体を触られたら? 彼らの太い腕で抱きすくめられたら? そして何より、彼らの股間にぶら下がっているであろう巨根を、自分の尻穴にぶち込まれたとしたら……?
想像をするだけで、孝義は達しそうになった。しかし、彼は踏ん張った。体育教師としての矜持が、辛うじて彼の理性を保たせていた。
「すッ……、菅原先生、オレに何をしたんです? 元に……戻してくださいッ!」
快楽でフワフワしてきた気持ちをなんとか奮い立たせ、孝義は必死に言い返した。脳内で、これまでに経験したことのないくらいの快楽物質が、ドバドバと放出されているのを感じる。気を失うが早いか、射精をするが早いかという瀬戸際。朦朧とする意識の中、閉じそうになる瞼をどうにか持ち上げて剛毅の方を見つめる。
「元に……戻すぅ?」
孝義の必死な形相とは対照的に、剛毅はきょとんとした表情で彼のことを見つめている。そして、何かに気づいたようにポンと手を叩くと、彼は自身のズボンを下ろし、張り詰めた陰茎を取り出した。剛毅の大きな掌いっぱいを使ってもなお、収まりきらない大きさ。彼が腕を動かすたびにぶるんぶるんと揺れる陰茎と玉袋は、男の孝義から見ても惚れ惚れするほど立派な代物だった。
「ほ〜れ、千葉先生。よ~く見なさい」
剛毅の大きい掌が、ゆっくりと彼の陰茎をしごき始める。右手で竿を握りこみ、上下へ何度も擦る。空いた左手はたわわに実った二つの玉を優しく包み込み、揉みしだく。孝義は、そんな剛毅の陰茎から目を逸らすことができなかった。極太のチンポにデカい体、それに雄臭い顔。剛毅の肉体すべてが愛おしい。もしも自分の肉体が、彼の肉体と【入れ替わったら】どれほどの快楽が得られるだろうか……。孝義の頭の中では、剛毅の肉体を乗っ取り、彼のチンポを自分の手でしごく己の姿が克明に浮かんでいる。
「はぁ……、ハァッ……♥」
剛毅の陰茎をしごくスピードが徐々に速くなっていく。ヌチャヌチャと音を立て、巨大な竿からは我慢汁が溢れ出していた。彼は孝義の事を見下ろしながら、一層激しく自分の性器を責めたてる。そして彼に応じるように、孝義もまた自分のズボンとパンツを下ろし、無意識の内に右手で自身のチンポをしごき始めていた。
「あぁ……、気持ちいいです。菅原先生ぇ」
「おうおう、そうだよな千葉先生。これから、もっと気持ちよくなるからな……」
剛毅が自身のチンポと孝義のチンポを重ね合わせ、兜合わせの体勢をとる。すでに限界まで勃起し、パンパンに膨らんだ亀頭が触れ合うと、お互いの鈴口から我慢汁が溢れ出し、混ざり合った濃い白濁液を竿から玉袋へと垂れ流した。剛毅が腰をくねらせ、孝義もそれに合わせてヘコヘコと腰を動かす。
「あぁ、千葉先生。もう出そうだ……ッ♥」
「だ、だめです、菅原先生……。ここは職員室ですよ……? ちゃんと、トイレで……。いや、そもそも学校で……んっ♥」
孝義の口からは拒否の言葉が出るものの、体は正直なもので、彼のチンポは剛毅のものに負けないくらいにギンギンに勃起してしまっていた。もう我慢できない! 剛毅が獣じみた叫びを上げたあと、二人分の白濁液が迸った。勢いよく噴出した精液は床に飛び散り、机や二人の衣服を白く汚していく。久しぶりの射精。しかも同僚たちのいる職員室内で、尊敬する教師と淫行に耽る背徳感。そのあまりにも倒錯的な快楽に、ビクビクと激しくチンポを痙攣させると、孝義は意識を失った。
***
「……んせい……。千葉先生。おいっ、千葉君ッ!」
「は、はいっ!!」
心地よい花畑の中を彷徨うような感覚から、孝義の意識は徐々に現実へと引き戻された。どうやらいつの間にか眠ってしまっていたようで、答案用紙には彼の涎の痕がべっとりと残っている。声のする方に目を向けると、剛毅が心配そうに彼の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫か? 千葉先生」
「菅原先生……。オレは……?」
孝義の記憶が確かならば、彼は剛毅に何かをされたはずだ。しかし、体に異常はないどころか、むしろ普段よりすこぶる調子が良い。
「あのぉ、菅原先生……。その、さっきオレ、先生に何かされませんでしたっけ?」
孝義は恐る恐る剛毅に尋ねた。彼は一瞬きょとんとした表情を浮かべたあと、いつものようにニカッと笑って見せた。
「何も? いや〜、千葉先生、疲れてるんじゃないか? ほら、他の先生方も、俺たちがなんか特別なことやってたら、もっとこっちを見ていてもいいもんだろ?」
顎をしゃくる剛毅に促されて職員室内を見回してみると、確かに周囲の教師たちは彼ら二人に対して特に関心を向けることもなく、淡々と自分たちの仕事をこなしている。あんなにも生々しかった体験が、あたかも孝義の白昼夢であったかのように。
だが顔や胸、足元へと手をやり、最後に股間に手を当てた瞬間、居心地の悪い感触に彼は背筋を凍らせた。日常的に穿いているケツワレの布地にはべったりとザーメンが付着しており、ジャージのズボンにもその液体が浸透しつつあるようで、湿り始めている。
「~~~~~?!!!」
血の気が引いていくのを、ありありと感じる。鼻をひくつかせなくても漂ってくる、己の精液の匂い。これまで一度も体験したことのないレベルの不安感が、一気に押し寄せてくる。周囲にいる同僚の教師たちに気付かれたら、一巻の終わりだ──。
顔面蒼白で頭を抱える孝義の肩を叩くと、剛毅が彼にこっそりと替えの下着を手渡してきた。
「千葉先生。ほら、これ使って」
「す……、菅原先生、ありがとうございます……」
天の恵みとばかりに剛毅から替えの下着を受け取ると、孝義はそそくさと職員室から抜け出し、トイレに駆け込んだ。鍵を閉めると、震える手でズボンとパンツを脱ぎ捨てる。
案の定、身に着けていた下着には、異臭を放つ液体がたっぷりと染み付いていた。
洗面台でザーメンまみれの下着を入念に手洗いすると、剛毅から受け取ったケツワレを身に着けようと手に取る。新品か、剛毅の穿き古したものかは分からないが、何も穿いていないよりも圧倒的にマシだ。
そんなことを考えていたはずなのに、気付けば彼は剛毅の下着を顔面に押し当てていた。チンポが当たる部分。そこに鼻をあてて、クンカクンカと鼻を鳴らさずにはいられなかった。布のくたびれた感じに、ほんの少し黄ばんだ色味。きっとここに、剛毅の亀頭が擦りつけられていたに違いない。
「はぁ……、すッごい匂いだ……」
先ほどの夢のような出来事がフラッシュバックして、孝義の興奮は高ぶっていく。妻も子もいるというのに、彼は剛毅の下着を顔に押し付けて勃起していた。チンポがみるみるうちにムクムクと膨らんでいき、亀頭の先から我慢汁が溢れ出す。
「はぁ……♥ んんッ♥」
すでに反り返っていたチンポが、ビクンビクンと脈打ちながらさらに肥大化していく。亀頭の先から溢れるカウパーの量が増していき、竿を伝って床へボタボタと流れ落ちる。
(菅原先生の顔、菅原先生の体、菅原先生のチンポ……。全部オレのモノにしたい……)
孝義は剛毅の下着を鼻に押し当てながら、左手で自身のチンポをしごき始めた。脳内で妄想するのは、先ほど彼と行った痴態。自分自身の手でやる自慰行為とは比べ物にならない程の快楽が、彼の肉体を駆け巡る。
「はぁッ♥ あ゛ぁぁっ♥ 菅原先生ぇ♥」
空いた方の手はケツワレの中へと伸びていき、自分の肛門を刺激する。これまで一度も触れたことのないはずの場所だというのに、太い指先を抜き差しするうちに、まるで何度も弄り倒してきたかのように感じられる。孝義はケツの穴に力を込めると、内部の粘膜で自身の指を締め付けた。
「ふぅぅぅん♥ あ゛っ! いぐっ♥」
剛毅に腸を蹂躙される妄想をしながら、孝義が射精するのとほぼ同時に、授業終了を告げるチャイムが鳴った。肉棒の先端からはビュウビュウと真っ白な精液が吐き出されては、音を立てて便器に溜まった水の中へと沈んでいく。頭の片隅では、教師として相応しくない行為に及んでしまった罪悪感が湧き上がってくる。
「はぁ、はぁ……。菅原先生……」
職員室に戻らないと──。しかし孝義は剛毅の下着を鼻に押し当てながら、再び自身のチンポをしごき始めていた。
*
剛毅から紙片を受け取ってから数日。孝義は毎日のように、剛毅の体を犯す妄想に浸っていた。いや正確に言えば、【菅原剛毅】の肉体を乗っ取って彼の肉体で【千葉孝義】を犯す妄想だ。あの不思議な白昼夢に襲われて以来、孝義は経験したことのない多くの性癖に目覚めていた。
──【入れ替わり】、【憑依】、【寄生】。
とりわけ、他人の肉体を乗っ取る、もしくは他人に自分の肉体を乗っ取られるという妄想が、孝義を恐ろしいほどに興奮させる。つい先ほども、彼は自身の肉体を乗っ取られ、彼そっくりの姿になった剛毅に尻穴を犯し尽くされるという淫夢を見ていた。
「あなた……、大丈夫? 最近、なんだか顔色が優れないわよ?」
不意にかけられた声に、ビクリと肩を震わせる。妻の瑞樹(みずき)と娘の美里(みさと)が、心配そうに孝義に目を向けている。ソファーに頭をもたげながら、彼はようやく彼女たちの存在を認識した。休日の午後。これまでは、その時間こそが、心を癒す時間だったはずなのに──。
「あぁ……。すまんな」
近頃、ずっとこんな調子だった。仕事中も上の空で、同僚や生徒から心配されることも増えつつある。瑞樹の淹れてくれた熱いコーヒーに口を付けながらも、孝義は再び剛毅の肉体が欲しいという願望に苛まれていた。妻と娘のことは愛しているが、以前とは何かが違う。いまは家族である彼女たち以上に、剛毅の肉体が愛おしい。
「私、あなたが仕事のせいで体を壊さないか心配で……」
瑞樹と視線が合う。彼女の不安そうな表情に、孝義は申し訳なさを感じた。もしかすると、自分のこの心変わりは妻には見透かされているのかもしれない。
「無理だけはしないって、約束して」
「……わかった」
瑞樹の言葉に頷くと、孝義は勃起したチンポを片手で抑えたままコーヒーカップを口元へと運び、妻のすぐそばで再び剛毅の肉体を犯す妄想に耽り始めた。
*
「さぁ~、かかってこい、千葉先生ッ!」
──なぜ、こんな状況になってしまったのだろうか。
孝義の目の前では、柔道着を身に着けた剛毅が両腕を肩幅に開きながら、堂々とした構えをとっている。昨晩も孝義は彼の全裸を脳裏で描きつつオナニーをしたというのに、そんな彼がいま、胴着の隙間からツンと立った乳首をちらつかせながら挑発するようにして、孝義のことを見つめている。
テスト期間中は部活動が禁止だから、体がなまっている。そう口にした剛毅に誘われるがまま、ついつい柔道場へと連れて来られてしまったが、どう考えても浅はかだった。変な気が起きないように、なるべく彼から距離を置こうと心に決めていたのに、柔道の手合わせなんかしたら興奮が抑えられる自信がない。
「ふっふっふ〜。どうした、千葉先生。俺に負けるのが怖いのか?」
剛毅の薄っぺらな挑発に乗るつもりはないが、肉付きの良いそのエロティックなボディーに、孝義の喉が音を立てる。
これは、好機かもしれない──。
部活の行われていない柔道場に、人が来ることはない。仮にここで孝義が剛毅を犯したとしても、誰にも気付かれることはないだろう。これまでずっと思い描いていた妄想を、現実にできるチャンスだ。
「わかりました、菅原先生……。では、胸をお借りします」
言うが早いか、孝義は剛毅の胴着の奥襟を掴もうと手を伸ばした。しかし、彼も腐っても体育教師。軽々とその手を受け流す。その弾かれた手を、胸倉へと移行しようとしたが、やはりひらりと素早く身を引いてそれをかわした。
「そんなんじゃ、俺には勝てんぞ、千葉君♥」
剛毅もすぐさま前に足を運んで孝義の襟元を掴もうとするが、今度は彼がそれを避ける番だ。柔道の経験がそれほど多くない剛毅の仕掛けてくる技を、体捌きでかわすのは孝義にとっては容易である。しかし、柔道着越しに感じる彼の体温や体臭が、孝義の興奮をさらに煽り、頭を回らなくさせる。
「ほらぁっ! どうした千葉君っ!」
注意が散漫になった孝義の襟元を掴むと、剛毅はそのまま彼を床へと押し倒した。そして孝義の顔面に、頬ずりをせんばかりに自身の顔を近づける。
「はぁ……♥」
孝義は思わず熱い吐息を漏らしてしまった。目の前には、憧れの菅原先生の顔がある。キリリとした眉、筋の通った鼻、キスをしたらきっと心地よい感触を与えてくれるであろう分厚い唇。ふとその顔に違和感を覚えたが、いまはそれよりも、硬くなったチンポから我慢汁が溢れ出すのに気を取られて、思考を巡らせることができない。
──やばい……、このままだと本当に襲ってしまいそうだ。
孝義は咄嗟に彼から離れようとしたが、剛毅はそんな彼の股間を揉み始めた。
「おやおや~、千葉先生……。こんなところに詰め物なんて入れたら駄目じゃないか♥」
ニヤニヤしながらそう言いつつも、彼は指先を器用に動かして孝義のズボンの股間部を撫で上げる。分厚い布越しとはいえ、憧れの教師の手によってチンポに与えられる刺激。どうにかこうにか血が集まるのを抑えていたそこは、ますます硬くなっていく。
どうしてこんなことになってしまったのか? なぜ自分はこれほどまでに、同僚の男性体育教師の肉体に欲情しているのか? 孝義は自身の混乱した思考を整理しようと試みようとしたが、その暇を与えまいとばかりに剛毅は馬乗りになったまま、自身のズボンとパンツを一気にずり下ろした。
「だ、ダメっす! 菅原先生ッ!!」
叫ぶ彼の意志とは裏腹に、股間部がビクンと脈打つ。露わになった剛毅のチンポはビンビンに勃起しており、先端からは我慢汁が滲んでいる。
「ほぉ〜ら、千葉君♥ よく見なさい。見覚えがあるだろう、このチンポ♥」
「えっ……?!」
この人はいったい、何を言っているのだろうか? そう考えた瞬間、孝義は脳みそが震えるのを感じた。同時に、先ほどから感じていた違和感の正体にも気付いた。目の前にいるのは、菅原先生ではない──。
「ようやく気付いたか……、【オレ】?」
──オレだ……、目の前にオレがいる。
さっきまで【菅原剛毅】としてしか認識できなかったその肉体は、三百六十度どこから見ても、【千葉孝義】にしか見えなくなっていた。柔道で幼いころから鍛えに鍛え抜いた、孝義のたくましい身体だ。しかしその体は、彼であれば絶対に身に着けないようなモノで着飾られている。
「そ……、その格好はいったいッ?!」
驚くのも無理はない。剛毅の乳首はピアスで貫かれ、首に掛けられたネックレスにはピアスから伸びたチェーンが繋がっており、股間はツルツルに剃り上げられている。しかも屈強な両足は、真っ黒なタイツで包まれていて、その姿はまるで変態そのものだ。
「へへっ、そんなに驚くなって♥」
精悍な顔を歪めつつ、剛毅は己の股間を揉み始めた。彼のチンポはなぜかコンドームで覆われており、その先端にはドロリとした白濁液が溜まっている。彼はコンドームの先端を摘まむと、それをゆっくりと自身のチンポから取り外した。ねっとりとした糸を引きながら床へと落ちていく粘液に、孝義の目が釘付けにされる。
コンドームを取り去った彼の股間は、すっかりと蒸れていて、モワッとした生暖かい空気と共に嗅ぎ覚えのある濃厚な雄の臭いが孝義の鼻へと流れ込んでくる。散々嗅いだことのある、自分のザーメンの香り。その匂いに反応してか、孝義のチンポもまたビクンッと大きく脈打った。
***
孝義は混乱していた。先ほどまで自分の上に馬乗りになっていたはずの【菅原剛毅】はどこに消えたのか。それになぜ自分は、自分と瓜二つの姿をした人間に興奮しているのか。これではまるでナルシストではないか。
「すまんなぁ、千葉君。あまりにもエッチだったから、君の身体をコピペさせてもらったんだよ♥ この顔、この体、このチンポ……、ザーメンの濃さや匂いまで、ぜ〜んぶ君のモノとそっくりだろう? うひっ♥ 君なら絶対着けないような乳首ピアスに、ぶっとい足を覆う黒タイツ♥ 君のこのエロすぎる身体を、自分好みに変えたことで我慢汁が止まらなくってね。コンドームを着けてないと、下着もズボンもビショビショになっちまうんだよ♥」
混乱する孝義に対して、目の前の【千葉孝義】は優しく語りかけた。大きな掌から解放された黒いコンドームが畳の上に落ち、その中身が溢れて広がっていく。呆然としつつも勃起したままの孝義の肉棒に、同じ形をした【千葉孝義】のチンポが重ね合わされる。
「そう、これは夢だ……。夢なんだから、一緒にイこうぜ♥」
覆い被さった状態で、孝義と同じ顔をした【千葉孝義】が腰を動かし始めた。初めて体験する感触に、彼の口から意図せず声が漏れ出てしまう。
「うぁッ♥ あ゛ぁぁっ!」
でかい掌で二本のチンポを握りながら、同じ顔をした男が手を上下に動かし続ける。そして【千葉孝義】は、自らの唇を孝義の唇へと重ね合わせた。歯をこじ開け、無遠慮に侵入してくる濡れた舌。ねっとりとしたそれは、まるで別の生き物のように孝義の口内を這いまわると、彼の舌と絡み合って卑猥な水音を立てる。
「はぁッ♥ んむ……♥ ちゅぱ……♥」
【千葉孝義】が腰を動かすたびに、互いのチンポがゴリゴリ擦れて気持ちが良い。学生時代に部活の先輩に命じられ、男同士でキスしたことはあったけれど、こんな感覚は初めてだ。
同じ形をしたチンポ。身長も体つきも双子のように瓜二つなうえに、顔までそっくりな相手とキスをしているという倒錯感が、孝義の興奮をさらに高めていく。息が上がって吐き出される声、汗ばんだ皮膚から放たれる濃厚な雄のフェロモン、そして何より同じ顔をした相手から感じる体温と鼓動……。
「んはぁッ♥ あ゛ぁぁっ♥」
「お゛ぉッ♥ おぉぉ~っ♥」
腰を振るスピードが上がるにつれて、二人の呼吸は荒くなり、チンポから吐き出される我慢汁も量を増していく。丸太のように太い腕を相手の背中へと回し、互いを締め上げるようにして抱きしめ合うと、熱くなったチンポが腹筋に挟まれて潰され、ぐちょぐちょと卑猥な水音を立てる。
「お゛ぉッ♥ お゛ぉぉ~っ♥ す、菅原せんせぇぇぇぇっ!!」
「んあ゛ぁぁッ♥ あ゛ぁッ! 千葉くぅぅんッ!」
二人のチンポから、同時に精液が吐き出された。ビュウビュウと音を立てて飛び出したザーメンが、二人の腹の溝を白く染めていく。生温かでドロっとした粘液の感触に、孝義はしばらくのあいだ腰を震わせながら放心した。上に覆い被さった彼そっくりの男は、トロンとした目付きで孝義のことを見つめる。
「ふぅ……♥ いっぱい出たねぇ、千葉君? じゃあ次は、お尻の穴でチンポを感じような♥」
「は、はぁ……?! おし……、お゛ぉッ♥ んひぃ~ッ!!」
軽々と体を持ち上げられ、壁に備え付けの大鏡に押し付けられたかと思った次の瞬間、孝義のケツ穴が焼けるように熱くなった。柔らかいと言うべきか硬いと言うべきか判断を下すよりも早く、その何かが肛門の中へと侵入してくる。
「ほぉら♥ 孝義のケツマンコ、もう俺のチンポの形を覚えたみたいだぞ?」
冗談を言うなと反論しようとしたものの、実際に孝義のアナルも腸壁も強引な挿入に不満を言うどころか悦んでさえいる様子で、【千葉孝義】のチンポが動く度にねっとりとした腸壁がキツく締まる。
「ん゛ッ♥ おぉぉ〜っ!! す、すがわらせんせぇ……ッ!!」
孝義は快感に身をよじらせながらも、どうにか顔を上げた。自分の肉体に犯されているという倒錯感に加えて、初めて味わうピストン運動に思わず腰が砕けそうになる。目の前の鏡には、勃起したチンポを激しく揺らしながら喘ぐ自分自身の姿がある。その背後では、まったく同じように顔を快楽に歪める【千葉孝義】の姿──。
(す、すがわらせんせぇっ! あぁッ♥ ど、どうして……っ?)
どうして菅原先生が自分と同じ姿をしているのか? 肉体をコピーするとはなんなのか? なんで彼は自分とセックスしているのか? 白昼夢だと思っていたあの時に渡された紙が、こんな状況に陥った要因なのだろうか?
そんな疑問が脳裏をよぎるも、腸壁をゴリゴリと擦りあげられる快感にうまく思考がまとまらない。尻穴の奥でチンポが脈打ち、太さと硬さが増していくのを感じる。あと何度、この甘美を耐え抜けば解放されるのだろう──。
意識を失うまいと歯を食いしばってみても、敏感な粘膜を穿たれるその快感がすぐに孝義の理性を奪っていく。腹筋に力を目一杯にいれて耐えようとしても、【千葉孝義】は容赦なく彼のアナルを犯し続ける。
「あ゛ぁぁ~ッ!! や、やめてぇ……っ! お゛ぉぉっ!!」
「ふはっ♥ い~い顔だぁ、千葉君♥ すっごいエロいぞ? そんな君には、これを与えないとなあ──」
もうすべてを諦めて快楽に身を委ねようかと考えていた孝義の肌に、剛毅がペタペタと複数の紙片を貼り付け始めた。
【菅原剛毅 顔】【菅原剛毅 上半身】【菅原剛毅 下半身】【菅原剛毅 記憶】
「お゛ぉぉ~ッ♥ な、なんだこれぇぇっ?!」
全身が燃えるように熱い。しかも、巨人か何かの手で頭をこねくり回されているかのようだ。しかし感じるのは痛みではなく、快感だった。脳を蝕む、チンポをアナルの奥に突き刺される以上の心地よさ。そんな感覚と共に、ぐにゃぐにゃと孝義の顔が変形していき、段々と別人のそれへと変化していく。
「あぁっ♥ あ゛ぁぁ~っ♥」
勝手に漏れ出す声が、少しまた少しと低くなる。鏡へと目を向ければ──、そこには【菅原剛毅】の顔があった。中年親父らしくシワの刻まれた、髭面の四角い顔。そのエラが張った無骨な顔が、動揺と恍惚で真っ赤に染まっている。
「す、すがわらせんせぇ……ッ! いったい、どうなってるんだぁぁ~っ?」
孝義はビクビクと体を震わせながら、鏡に向かって叫んだ。しかし剛毅は何も答えず、ただニヤニヤと笑いながら孝義の尻の穴を犯し続ける。アナルを乱暴に犯されれば犯されるほど、孝義の肉体が蠢き、【菅原剛毅】の肉体へと近づいていく。
「お゛ぉぉッ♥ も、もうやめてくれぇ……っ!」
舌がうまく回らない。口を開くと自分のモノとは思えない低い声が勝手に漏れ出て、チンポがビクビクする。前立腺を亀頭の先で一度、二度、三度とノックされるたびに、腕や足も骨格の変化に応じて、太くなっていく。どちらかといえば白かった肌は茶色く日焼けしていき、胸の筋肉も一瞬にして盛り上がった。
「あ゛ぁぁ~っ♥ あ、頭がおかしくなるぅぅ……ッ!」
もうすでに、孝義の肉体は【菅原剛毅】と瓜二つに変わっていた。鏡に映った厳つい顔はあまりにも情けなく歪み、涙と鼻水でぐしょぐしょになっている。ダメだ、もう……。何がどうダメなのかは分からないが、これ以上は──。
「あ゛ぁッ! も、もう……っ! イくぞぉぉ~ッ♥ 【菅原】先生~っ♥」
孝義のアナルを犯していた剛毅はそう叫ぶと、その肉棒を穴の奥深くへと突き入れて腸内射精した。同時に孝義もまた絶頂に達し、チンポからザーメンを噴出させる。鏡には白目を剥いてアヘ顔を晒す【菅原剛毅】と【千葉孝義】の顔、そして二人の肉体が映し出されている。
「あ゛……っ♥ あひぃ~……ッ♥」
淫水焼けによって真っ黒になった【菅原剛毅】のチンポへと変貌を遂げた孝義のチンポは、壊れた水道管のようにザーメンを畳の上に撒き散らし続け、精液が体外へと吐き出されるたびに【菅原剛毅】の記憶が否応なしに孝義の脳へと流れ込む。
「オ、オレェが……す、すがわらせんせぇぇ……ッ! お゛ぉぉっ♥」
射精しているのか、それともチンポから小便を漏らしているのか、もはや孝義自身には判断がつかなかった。ただ顔を蕩けさせて涎を垂らしながら、意味のない言葉と喘ぎ声を垂れ流すだけ。肉体を強制的に他人と入れ替えられ、精神を汚染される。性癖をすでに植え替えられた孝義にとって、それは至極の快楽だった。
「お゛ぉぉ~ッ♥ お、【俺】は……、【千葉孝義】じゃぁないぃ……っ! 菅原剛毅だぁぁ~~~っ♥♥♥」
ひときわ大きな嬌声を上げると孝義はケツ穴を閉め、ビュルルッと勢いよく射精した。
──もっと、もっと菅原先生になりたい。【俺】こそが、【菅原剛毅】になるんだ……!
股間にぶら下がった玉袋が忙しなく上下し、ありえないほどの量のザーメンが孝義のイチモツから吐き出され続ける中、背後で熱い吐息が漏れた。
「君の願い通り、今日から君は【菅原】先生だよ♥」
そう優しく声を掛けると、剛毅は最後に【菅原剛毅 存在】と書かれた紙を孝義の肌に、そして【千葉孝義 存在】と書かれた紙を自身の肌に貼り付けるのだった。
(了)