SamSuka
ムチユキ
ムチユキ

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エクスチェンジ

 鼻を摘まみたくなるような臭気。屈強な男たちの乱戦によって散らばった血液と、地面や建物が崩壊した土ぼこりの匂いが混じり合い、辺りには鉄錆のような血の香りが漂っている。幾人もの猛勇の将たちの命の灯が、ほんのいっときの間に消え去った。その痕跡が、否が応でもあちらこちらに見て取れてしまう。


「ぶひっぶひっ……。これで終わりだァ、ヒーロージャスティスぅぅっ!!」


「なめるなぁっ!! 貴様のような外道、正義の名のもとに、今ここで打ち倒してみせるっ──」


 二メートルはあろうかという巨体に、全身黒ずくめのタイツ姿。ヴィランの名前は、『ワイルドボア』。その名の通り、図体こそイノシシ並みにデカいものの、弛んだ腹をした男の鋭く大きな牙が、ジャスティスの首筋を捉える寸前、彼は身を屈めて回避した。そして、そのままカウンターで、渾身の右ストレートを叩き込んだ。


「ごぶぁッ!?」


「ハァァァアッ!!!」


 そのまま、流れるように左拳による追撃を放つ。しかし──。


(くっ……、浅いか……っ!)


 渾身の一撃は、ワイルドボアの頬を僅かに掠めただけであり、その隙を狙った彼の牙が、ジャスティスの肩に突き立てられてしまった。


「ぐぅ……っ!」


「ぶひィ! もらっひゃあァッ!」


 ワイルドボアは、イノシシの牙のごとく尖った犬歯をジャスティスの皮膚に食い込ませたまま、その巨大な体躯を激しく揺らす。


「ひーろーじゃふてぃふ! きしゃまはここでしぬんだぁッ!! ぶひっ、うひっ

、うひぃ──」


(マズい……!)


 あと数秒で、ワイルドボアの牙はジャスティスの肩の骨を砕き、動脈を噛み千切るだろう。


「がぁ、ぐ……っ、このぉぉぉっ!!!」


 牙をその身に受けたまま野太い声を吐き出したあと、抵抗も空しく、ジャスティスは喉からゴポリと血の塊を溢れさせた。もうダメだ──。彼が意識を手放そうとした瞬間、少し離れた場所で若い男性の声が響き渡った。


「エ……、エクスチェンジィッ!!!」


 声の主は、ヒーロージャスティスの後輩、ヒーローキッドであった。彼の身体はその声を合図に眩い光で包まれ、やがてその光がジャスティスとワイルドボアに飛び火して、周辺が光に包まれる。


「ブヒぬぁああッ!?」


「うぉおッ!? な、なんだァ……っ」


 ヒーローキッドの能力、【エクスチェンジ】。彼の視界の範囲内にある物体と物体の位置を交換させる能力である。人間と人間の位置を交換することは、現段階では不可能であるということを分かっていながらも、危機に瀕したジャスティスを前に、キッドは咄嗟に叫んでしまった。もし万が一能力が発動し、ジャスティスの身代わりとして自分が果てようとかまわない。そう思って──。


 しかしやはり、人間と物体では勝手が違うようで、彼らの位置が入れ替わることはなく、ワイルドボアとジャスティスは互いに弾き飛ばされてしまった。とはいえ、最悪の状況からは脱することができたようだ。


「ジャスティス先輩ッ! 大丈夫ですか……!?」


「すまないキッド……っ、助かった!」


 体勢を立て直しながら、三者はすぐさま身構える。ワイルドボアに噛みつかれたジャスティスの肩の傷はヒーローパワーによって治癒が始まっており、しばらくすれば完全に回復するだろう。


(しかし……、かなり体力を消耗してしまったようだ)


──ドクンッ……!!!


 突如として顔面が蒼白になるキッド。あり得ないほどの吐き気に襲われた彼は、しゃがみ込んで嗚咽した。そしてそれは、ジャスティスやワイルドボアも同様であった。



「うぉえぇぇ……っ、ゲホッ、ゴホォッ……! なんだぁ……? なンだコれはァ……?」


「ぐぶぇ……、げぼぉぉお……ッ! おえぇぇっ……!」


 突然襲ってきた強烈な吐き気に、彼らは身悶えた。まるで、内臓がひっくり返ったような不快感。そしてそれは次第に増していき、やがて彼らの口からは、白いモヤのようなモノが吐き出された。


(これは……っ!?)


 気が付けば三人は、上空から自分たちの肉体を見下ろしていた。先ほど彼らの口から飛び出したのは、どうやら魂のようなモノらしい。早く元の肉体に戻らないと……。焦るキッドに、力を使い果たして項垂れるジャスティス。ワイルドボアだけは元気な様子で、彼の魂が真っ先に【ヒーロージャスティス】のポカンと大きく開いた口へと吸い込まれていった。


(ぶひッ、オラは今日からジャスティスだァァァ……っ!!)


 ワイルドボアの魂が霧散し、ビクンと激しく痙攣した【ヒーロージャスティス】が上半身を起こした。


「ぐひひっ! やったぞォ……。これでオラ──、いや今日から俺は、ヒーロージャスティス! 困った人たちをヴィランの魔の手から救う、正義の味方だァッ!!」


 残った『空き』の肉体は、【ヒーローキッド】と【ワイルドボア】のモノ。意識を失ったジャスティスの魂はゆっくりと【ヒーローキッド】の肉体に重なり、キッドの魂は【ワイルドボア】の身体へと乗り移ることが決まったようで、どれだけ抗おうとしても彼の魂は汚らわしいケダモノの肉体へと吸い込まれてしまうのだった。



***


「こちら、救援部隊A1。ヒーロージャスティスと、ヒーローキッドの身柄を確保。残ったヴィラン、ワイルドボアを捕縛したのち、本部へと護送する」


『了解しました。こちら、A2部隊も間もなく到着します。くれぐれもご注意ください』


 無線の声で意識を取り戻したキッドは、救援に来た男性になりふり構わずに縋り付いた。


「そ、そいつらの一人は、ヴィランです! オレはヒーローキッ……、ぶきぃぃ!!」


 固く握られた拳が、キッドの横っ面に叩きつけられ、彼はひっくり返り地面に倒れた。


「くそっ、気色悪い野郎だ……。おい。不本意だが、この豚も連れて帰還するぞ!」


 応援に来たヒーローの一人。彼は豚面になったキッドの顎をしたたかに殴りつけて昏倒させると、手際よく意識を失った【ワイルドボア】に手枷と足枷を嵌めていく。その光景を、【ヒーロージャスティス】の肉体を得たワイルドボアが薄目を開き、ニタニタと眺めていた。


(ぶひひ……。どうやらヒーローどもは、オラのことを【ヒーロージャスティス】だと信じて疑わないようぶひ。人間の脳を使用することになったおかげで、頭の中もスッキリして心地よくなってきた。あんな醜悪な身体など、もうこりごりだ。今後は、この肉体を存分に使わせてもらうとしよう♥)




「ぶぴっ……、 ぶひぃ~~~!!!」


 ヒーローである仲間たちに罵られ、顔面の形が変わるくらいまで殴打される夢を見たキッドは、悲鳴を上げながら目を覚ました。


(ここは……っ)


 薄暗くヒンヤリとした部屋の中。ヒーロー連合の基地内に設けられた牢である。


 キッドは両手足に枷を着けられた状態で、固い鉄板で覆われた床の上に転がされていた。むくりと上半身を起こすと、意識を失う前の出来事を思い出し、涙が頬を伝った。何かの間違いであってほしい。そう願いながら、凶悪犯罪者たちを閉じ込めるために硬度の高い合金で造られた壁に目を向けた。

 だがそんな彼の願いもむなしく、磨かれたように光り輝く壁面に映ったのは、真っ黒なタイツを着込んだ醜悪な見た目の男。でっぷりとしたお腹に、タイツで覆っていても一目瞭然のブサイクな豚面。それは、紛れもない【ワイルドボア】の姿であった。


 頭の中は疑問符で埋め尽くされているが、悲観しているわけにはいかない。彼が【ヒーローキッド】であるということを証明するには、あの場にいたヒーロージャスティスの証言に頼るしかない。


(先輩、大丈夫かな……)


 意識を失う前に見た光景では、確かジャスティスの魂は【ヒーローキッド】の肉体へと吸い込まれたはずだ。


「ふんぐぐぐっ……!!!」


 幸いとも言うべきか。ワイルドボアの肉体は、通常の人間よりも身体能力が高い。彼は筋力を遺憾なく発揮すると、手枷と足枷を破壊してジャスティスの元へと急いだ。




「先輩、起きてください……!」


 ヒソヒソと声を潜めながら囁くと、キッドはかつての自分の肉体を乱暴に揺さぶった。どうにかこうにか、誰にも気づかれないようヒーロー基地内部を移動し、キッドはようやくジャスティスと思われる人物を発見することに成功した。ただ、治療室のベッドに横たわっているのは、【ヒーローキッド】の見た目をした男性なのだが──。


「う……ん?」


 少しの身じろぎと微かな唸り声。それからしばらくして、男は目を開いた。しかし、その瞳はどこか虚ろで焦点が合っていない。


「あれ……? お、俺は……」


 キョロキョロと視線を彷徨わせながら上半身を起こすジャスティスに駆け寄り、キッドは彼に抱き着いた。


「先輩っ! よかった、無事だったんですね……!」


「な、なんだぁ?! おまっ、ワイルドボアめ! く、くそっ!? 俺から離れろっ!!」


「ブヒッ!?」


 乱暴に蹴り飛ばされたキッドは、盛大な音を立てて尻餅をついた。慌ててベッドから飛び降りたジャスティスが、後ずさって部屋の壁に背を預ける。


「せ、先輩……?」


「は、はぁッ?! テメエみたいなヴィランに、先輩なんて言われる筋合いねえんだよ!! んっ……? いや、なんだこの声……?」


 自身が発した声に違和感を覚えたジャスティスが、両手を目の前にかざし、それから掌を開いたり閉じたりしている。何が起きているのか分からない。目の動きだけでも、そんな心境が見て取れる。夢遊病者のようにフラフラと立ち上がり、鏡の前に立った彼は、信じられないといった様子で顔を歪めた。


「ど、どうなってやがんだ……っ。この見た目、キッドじゃねえか……。俺は一体……?」


「先輩、落ち着いてください! その身体はオレ──、【ヒーローキッド】のモノです。オレは今こんな豚みたいな姿ですけど、ヒーロー、ヒーローキッドなんです……。先輩ッ、信じてください!!」


 自分でも情けないと思うほどに声を荒げると、キッドは滂沱のごとく涙を流した。


「お、お前……、マジでキッドなのか……? そんなバカな……」


 警戒を解くことはないものの、醜悪な男が放つあまりにも悲壮感たっぷりなその様子を目にしたジャスティスは、無意識にキッドの目元を指で拭っていた。


「先輩ィィィッ!」


 涙と鼻水まみれの顔面をジャスティスの頬に擦り付け、キッドは万力のごとくジャスティスを抱きしめ、締め付ける。いったい何日風呂に入っていなかったのだろうか? 反射的にそう思わずにはいられない臭気が、ジャスティスの鼻を刺激する。


「や、止めろぉ……! 分かったから、臭……っ!!」


 嫌悪に満ちた声を上げながらもジャスティスはキッドを拒絶することもできず、上げた両手をだらんと下すと、ただただその臭いに顔をしかめるばかりであった。




「……つまり、お前はキッドで、【ワイルドボア】の肉体に魂が乗り移っている状態。そして俺の魂は、【ヒーローキッド】の肉体に乗り移っている状態ってことでいいんだな……?」


「はい……」


 ジャスティスとキッドは、現在置かれている状況を整理していた。ワイルドボアの牙がジャスティスの命を絶つ直前、せめて自分がジャスティスの身代わりになろうとキッドが使用した能力、【エクスチェンジ】。どうやらその能力の影響で、三者の肉体が入れ替わってしまったらしい。


「とんでもないことになっちまったが、いま俺が生きていられるのもお前のおかげだ。感謝するぜ、キッド!」


「先輩……!」


 感動に目を潤ませるキッドにジャスティスは微笑みかけると、すぐに真剣で険しい表情へと変化した。


「俺たち三人の身体が入れ替わったってことは、いま俺の──、【ヒーロージャスティス】の肉体を操っているのは、ヴィランであるワイルドボアってことだろ? お前のことは俺が守ってやるから、とにかく長官の元に行くぞ、キッド!」


「は、はい……!」


 ジャスティスはキッドを引き連れて部屋を出ると、急ぎ長官室へと足を運んだ。




「失礼します、長官。ヒーロージャスティス、長官に至急ご報告したいことがあり、参上いたしました!」


 ジャスティスとキッドは敬礼のポーズを取り、ヒーロー連合の長官である男性に向き直る。


「うむ。……しかし、その豚のような出で立ち。ヴィランであるワイルドボアではないのか? それに君は、【ヒーロージャスティス】ではなく、ヒーローキッドではないかね?」


 豪奢な机から身を乗り出した長官が、怪訝な表情で問いかける。


「ぶひっ! じ……ッ、自分は……!」


 先ほどジャスティスにしたのと同じ説明をすればいい。そう分かっていても、キッドは汗だくになって視線を泳がせた。もしも信じてもらえなければ? そんな彼の動揺を見抜いたジャスティスは、彼の肩を軽く叩きながら一歩前に出ると、スラスラと淀みなく長官を説き伏せた。



「ふむぅ、なるほど……。ジャスティスの危機を目にして、キッドの能力が覚醒したということか……。あい分かった」


 深く追及してこない長官に、二人は安堵の溜息を吐いた。


 長官は俯くと、顎髭をジョリジョリといじりながら難しい顔をしたあと、ジャスティスとキッドを交互に眺めた。


「【ヒーロージャスティス】に成り代わったというワイルドボアは、すでに捕らえるように手配しておいた故、君たちは安心したまえ。ただ、このことは内密にしてほしい。ヒーロー連合内部に亀裂をもたらす可能性があり、我々の信頼にも傷がつくからな」


「心得ております! そもそも今回の事態は、全て俺に責任があります。我々三人の肉体が入れ替わってしまったのも、元はと言えば俺が弱かったせいです。すまなかった、キッド……」


 うっすらと涙を浮かべたジャスティスにそう言われてしまえば、キッドはそれ以上何も言えなかった。




 彼らの肉体が入れ替わってから数日。拘束こそされてはいなかったものの、ヒーローたちの誤解を招かないためにと、キッドは地下の施設に隔離されていた。食事は一日に二度。【ワイルドボア】の肉体は食欲旺盛で、食事の量はかつてのキッドの数倍にも上る。


「ブヒッ……、ブヒィ……」


 今日もまた、彼は豚のように鼻を鳴らすと、大皿に盛られた料理に手をつけた。尋常ならざる性欲を性交で発散できないというストレスによって、まるで力士のような食事を摂り続けている。口いっぱいに食べ物を詰め込み、咀嚼するたびに脳内では快楽物質が分泌されているのを感じる。キッドの豚面は緩み切り、箸やフォークを使うことも忘れ、いつしか手掴みで料理を貪るようになっていた。


(あぁ……♥ 美味い、美味いブヒ……!)


 口の中に広がる肉の脂を味わいながら、キッドは無意識のうちに尻に指を突っ込んだ。竿はすでに臨戦態勢で、我慢汁がダラダラと床に垂れている。どういうわけかは分からないが、彼が今いる部屋には、そこここにディルドやオナホールといった大人の玩具が転がっている。


「ぶひ……っ♥」


 ブルリと身体を震わせると、キッドは醜悪な笑みを浮かべた。頭の片隅では理性の欠片が小さく悲鳴を上げているが、それ以上に【ワイルドボア】の肉体に宿る熱い迸りが、脳味噌の中を容易く塗り潰していく。そしてだらしなく鼻の下を伸ばすと、彼は床に固定された極太のチンポの形をしたディルドの上に跨り、ゆっくりと腰を下ろしていった。


「ふぉ゛ッ♥ お゛~~っ♥♥」


──もう何度目だろうか?


 もともと弄り倒していたであろう【ワイルドボア】の尻の穴は、もはやバラのように真っ赤に染まり、大きく拡がってしまっている。挿入した瞬間に勢いよくザーメンを噴射したキッドは、床に爪を立てては悶絶を繰り返した。毎日のように大量のザーメンを撒き散らすため、彼の部屋は雄臭さを通り越した凄まじい臭気に包まれている。


(あぁ……、もっともっともっとぉぉッ! この身体を使って、もっと気持ちよくなりたい……!)


 ヴィランの肉体で過ごすことになった彼は、ほんの数日のうちにその肉体の虜になってしまっていた。あらゆる刺激に敏感な体、性欲に溺れることで得も言われぬほどの快楽を与えてくれる脳。それがキッドを魅了して止まない。


「う゛ぉぉッ♥ お゛っ♥ ブヒッ♥」


(先輩……っ、これが先輩のチンポだったらっ、いいのにッッ!)


 こんな状況に陥る前、キッドはたしかに異性愛者だった。【ヒーロージャスティス】も尊敬する先輩たちのうちの一人でしかなかったはずなのに、今ではなぜか性の対象になっていた。おそらく【ワイルドボア】は、筋肉質な男性を好むゲイだったのだろう。愛するジャスティスに対する淫らな欲望が、どうしても抑えられない。

 シリコンでできた、グロテスクな張形に跨り続けるキッド。その姿にはもはや、ヒーローの面影など欠片も残ってなどいない。脂肪で弛んだ瞼によって半ば覆われた瞳には光など宿っておらず、口の端からは泡まみれの涎が垂れていた。つい先日までヒーローとして活躍していたという事実が、まるで嘘だったかのように──。


(先輩……、【ヒーロージャスティス】! もっと……、もっと【オラ】を犯してくれぇッ!!)


 駄肉を震わせるキッドの上下する肉棒からは、粘り気のある液体が糸を引いている。心を肉欲で満たされたキッドは、今や完全に【ワイルドボア】の肉体に蝕まれていた。




「キッド、長官がお呼びだ!」


 四六時中ザーメンをぶっ放し、惰眠を貪っていたキッドは、男性ヒーローの野太い声で目を覚ました。もうこのまま、【ワイルドボア】として生きていくしかないのだろうか? そんな思いを抱き始めていた彼にとって、その声はまさに救いの声であった。


 薄暗い隔離施設の階段を駆け上がった先で待ち受けていたのは、屈強なヒーローたち。馴染みのある有名ヒーローから、新人のヒーローまでがいるなか、彼らはまるでゴミでも見るかのような目付きでキッドを見下ろしていた。これから処罰が下されるに違いない。


「このたびの失態は、すべてオレのせいです!! お……、オレにできることがあればなんでもお申し付けくださいっ、長官ッ!」


 冷たい視線に耐えられなくなり、床に額を擦り付けるキッド。


「そうか。いい心掛けだぞ、ヒーローキッド」


 目線で合図を送る長官。それを受けてキッドに歩み寄ったのは、筋骨隆々な体躯を誇る中年ヒーローだった。彼はフンッと鼻息を鳴らすと、自身のヒーロースーツの股間部を破り捨て、怒張したイチモツを露にした。そして、何日も洗っていないのか強烈な臭いを放つそれを、キッドの顔に擦り付ける。


「ぶひっ! はぁ……、はぁぁ~んッ♥♥」


 以前の彼ならその臭いに顔をしかめ、男のチンポに拒絶反応を示していただろう。だが今の彼はそうすることはなく、むしろそれに夢中で舌を這わせずにはいられなかった。


(あぁ……! 雄ヒーローのチンポ……!)


 ガチムチヒーローのデカい胸にケツ、極太の両腕両足に、血管の浮き出た厳つい顔。そして野性味溢れる蒸れたチンポ。今のキッドにとっては、そのどれもがご馳走だった。


「ふごっ♥ ん……っ♥ じゅるッ♥♥」


 鼻の下を伸ばしながら勃起したチンポを咥えた彼は、やがて目をとろんとさせて喘ぐようになった。そんな様子に我慢できなくなったのか、周りを取り囲むヒーローたちも次々とチンポを取り出す。チンポ、チンポ、チンポ……! 鼻が曲がりそうになりながらも、彼はそれを一本また一本とすべて口に含み、しゃぶり、そして溢れ出る蜜を飲み干していった。


「んぶッ♥ じゅぼッ♥♥ じゅるるるるっ♥♥」


 まるで掃除機のようにバキュームフェラで幾本ものチンポを吸い上げると、キッドは恍惚の表情を浮かべて腰を震わせた。


(最高ぶひっ……!)


 ヒーローたちの性処理係へと変貌を遂げたキッドは、自ら四つん這いになってヒクヒクと痙攣する穴を見せつけた。これまでディルドでしかケツ穴を慰めたことのなかったキッドだが、開発しきった【ワイルドボア】のアナルは、発情した女性器のようにパクパクとその口を開閉してしまっている。


「ヒーローの皆様ぁッ、【オラ】の中に……っ♥♥ どうか、この豚の汚いおマンコの中にぃッ♥ 立派な皆様のおチンポをブチ込んでくださいぃぃぃッッ♥♥♥」


 キッドは、唾を撒き散らしながら肛門を指で広げた。その光景を見たヒーローたちの怒張したチンポが、彼のアナルに一本、二本……。そして喘ぎ声を上げる口の中にも、何本ものチンポが突っ込まれる。


「んぶっ♥ お゛ッ♥ んん~~っ♥♥」


 まるで串刺しにされるかのような勢いで、ヒーローたちのデカマラがキッドの身体を貫く。凄まじい衝撃。ケツの穴が壊れてしまうのではないか。そんな恐怖も、すぐに快楽で塗り替えられる。


(もっと……、もっろ突いてくれぇぇ~~~~~ッ!!)


 夢中で腰を振るキッド。肛門は休む暇もなく犯され続け、次々と注がれるザーメンによって腸の中はグチャグチャに汚されていく。口内もまた、おびただしい量の精液で満たされ、鼻の穴からは逆流したザーメンが飛び出して呼吸困難に陥りそうだ。だが、それでも彼は幸せだった。

 忙しなく痙攣を繰り返すキッドのチンポからも幾度もザーメンが発射され、床の上にはザーメンの水たまりが出来上がっている。やがて、すべての精液をキッドの体内に注ぎ終えたヒーローたちは、満足げに彼の身体から離れた。


「あ゛……っ♥ あ゛ぁ~……ッ♥♥」


 腸内に広がり続ける熱い感覚。もっと熱いザーメンで満たされたい──。そう考えていた矢先、彼の目の前にジャスティスが姿を現した。


(せ、先輩……?)


 意識が朦朧とするような恍惚感の中、彼は愛しいヒーローの姿を見つけると、ふらふらと駆け寄った。ジャスティスはそんな彼の姿を冷めた瞳で見下ろすと、無言のまま彼の腹部を蹴り上げた。その衝撃でまたイってしまったのか、キッドのチンポからはザーメンが噴き出した。


「ブヒィ……ッッ♥♥」


 白目を剥きそうになりながら絶頂するキッドに、ジャスティスが告げる。


「すまんな、キッド……。実は俺は、【ヒーロージャスティス】じゃあないんだよ。ねえ、ジャスティス先輩♥」


 その声を合図に長官室の扉が開き、室内に入ってきたのは【ヒーロージャスティス】だった。見た目こそ【ヒーロージャスティス】だが、その中身はヴィランであるワイルドボアのはず。


──なぜ、彼が野放しになっているのか?


 そう口にするべく、キッドは無我夢中で体を起こそうとした。だがそんな彼の目に映ったのは、【ヒーロージャスティス】と【ヒーローキッド】が唇を重ね、互いの肉棒を擦り合わせているという衝撃的な光景だった。その後も周りのヒーローたちに見守られながら、彼らはヒーロースーツを脱いでたくましい体を絡め、窮屈な穴の中に尋常ならざる肉棒をねじ込んで、盛り合っている。


「お゛っ♥ お゛ぉっ♥ せ、センパイィィ♥♥」


「最高だぞッ!! お前のマンコは、キッドォォッ♥♥♥」


 かつての自分の肉体に、憧れの先輩であるヒーロージャスティスがチンポを挿入し、中出しをしている。理解のできない光景に戸惑いながらも、キッドは【ワイルドボア】のチンポを握り締め、夢中でシコり始めていた。


(ぶひぃッ♥ ブヒッ♥ オレのケツマンコが、先輩に犯されてっ……!! あ゛っ、アアア゛ッ、イグ~~ッッ♥♥)



***


 夢見心地のキッドの耳元に、【ヒーロージャスティス】の声が届いた。


「あのとき、お前のおかげで俺たち三人の肉体は入れ替わった。おまけにお前のモノであるはずの【エクスチェンジ】の能力は、神様のいたずらで俺の肉体へと宿った。そしてその能力を使用し、一人また一人と、このヒーロー連合基地に従事するヒーローどもと、ヴィランたちの肉体を入れ替えさせてもらったんだ。もしものときのためにと、ヒーローたちの記憶がデータ化されてバックアップされていたのも助かったぜ。その保管されていた記憶を脳内にインストールさせてもらったおかげで、俺たちは誰にも疑われることもなく、ヒーローとしてやっていけるってわけだからなあ♥」


「ありがとな、キッド♥ お前の能力のおかげで、オレたちヴィランはヒーローたちのすべてを乗っ取ることに成功したんだからな♥ あ、あぁん、先輩♥♥」


 男根を挿入された状態の【ヒーローキッド】が、トロンとした目でキッドのことを見つめている。


「ヒーローどもの嫁も、旦那が別人に変わったことにも気付かないで、ベッドの上で股をおっぴろげやがる。俺も【ヒーロージャスティス】の嫁のマンコに初めてチンポをブチ込んだときは、最高に興奮したぜ♥ 俺が中出ししたら、ヒーローのガキが産まれるんだ。すごいと思わねえか? まあ一番気持ちよくなれるのは、マッチョな野郎どもとのセックスのときだがな♥ なぁ、みんな?」


 イチモツの先端から精を垂れ流しつつ同意を求める【ヒーロージャスティス】の言葉に、周囲から喝采が起こる。キッドの目の前は真っ暗になった。自分の失態によって己の肉体をヴィランに明け渡しただけでなく、ヒーローたち全員をも巻き込んでしまったという自責の念に、胸が押し潰されそうだ。だがそんな状況に陥っても、【ワイルドボア】のチンポからは涙の代わりにザーメンが溢れて止まらない。


「そう悲しむなよ、キッド。見ろよ、お前の尊敬する【ヒーロージャスティス】のケツ穴だ。俺たちの救世主であるお前に一番にハメさせてやるために、このケツマンコだけは誰にも犯されないよう、大事に守っておいてやったんだぜ♥」



 『未開発』とマジックで記されたその窄まりは、確かにまだ性交で使われた形跡がない。しかし、彼の全身にはセックスによる数多くの男たちのキスマークや歯形が記され、大量のザーメンがこびりついている。そして彼もまた男の尻の中で射精したのだろう。その男根は、淫靡な液体によって濡れている。


「ぶひぃ……ッ♥♥」


 ずっと憧れだったヒーロー。【ヒーロージャスティス】が大理石のテーブルに乗っかり、ケツ穴を広げながら誘っている。その光景にキッドは我慢汁を垂れ流しながら、一心不乱に自分の指を彼の尻穴に突き入れた。


「あ゛っ♥ お゛ぉ~~ッ♥♥」


(先輩……! せ、先輩……ッ♥♥)


 尊敬する先輩ヒーローの肛門を、指でほじくり返す愉悦。当然それだけで満足できるはずもなく、キッドは【ヒーロージャスティス】を押し倒し、彼の両足を広げながら自分の──、【ワイルドボア】のチンポを穴の中へとゆっくりと沈めていった。


(これが、先輩の中……っ♥)


 男のアナルへの初めての挿入。全身が溶けてしまいそうなほどの快感。メリメリと音を立て、硬く締まっていた穴を押し広げる【ワイルドボア】のチンポは、【ヒーロージャスティス】の直腸をあっという間に満たし、その形を覚えさせるようにねっとりと腸壁に絡みついた。


「ちくしょオ゛ッ♥ この俺、ヒーロージャスティスのケツに何しやがる! わ、わいるどぼぁぁ……っ♥♥」


 酷い演技だ。あからさまに胡散臭い悪態をつきながらも、【ヒーロージャスティス】は噛みしめた唇の隙間から、熱い吐息を洩らしている。そんな彼は自らの両脚を持ち上げ、その体勢で自らケツを前後に振り始めた。


「あぁんッ♥ お゛っ、あ゛ぁっ♥ くそぉ、許さんッ、許さんぞぉ、ワイルドボアぁッ♥♥」


 【ワイルドボア】のチンポが出し入れされるたびに、【ヒーロージャスティス】の口からは甘い喘ぎ声が漏れ出る。彼の野太い嬌声、快楽に浸る表情、股間から漂ってくるイチモツのイカ臭い匂いに、キッドの興奮は限界を迎えつつあった。


「グオオオッ!! お゛っ♥♥ ま、負けるかぁぁっ! 俺はヒーロージャスティスだッ!! お゛ぉぉンッ♥♥」


(先輩……! あぁ……、ブヒィ!! ヒーロージャスティスぅ……ッ!!!)


 かつての憧れを屈服させながら犯す背徳感、ヴィランとなった肉体でヒーローとセックスする倒錯感に、頭の中が真っ白になる。もはや絶頂に達すること以外何も考えられなくなったキッドは、狂ったように腰を動かし続けた。


「お゛ッ♥ おぉっ♥♥ ヒーローチンポでイグッ~~~♥♥♥」


「オラもイクぞぉっ、ジャスティス……ッ♥♥ ん゛あ゛ぁぁ~~ッッ♥♥♥」


 かつてないほどの興奮に、【ワイルドボア】のチンポが激しく震えた。鶏卵を想起させるほどの巨大な睾丸は、忙しなく上下に動き、濃縮された精子を作り上げては尿道へと送り続ける。煮え滾るような迸りを尻の穴で受けとめつつも、キッドの堕ちきった顔を目にした【ヒーロージャスティス】は満面の笑みを浮かべ、感謝の言葉を口にした。


「ありがとな、キッド♥ 気持ち良かったぞぉ……♥ 恩人のお前には、最高のプレゼントをやるからな。ほ~ら、エクスチェンジィッ!!」


「ひっ!? ぶひぃぃッッ♥♥」


 絶頂の余韻に浸る間もなく、【ヒーロージャスティス】が能力を発動する。途端に【ワイルドボア】のでっぷりとした体に見合うほどの大きさだったイチモツが、近くにいたヒーローの粗末なチンポと交換され、親指ほどのサイズにまで小さくなった。つるりとしていた白い肌には体毛がびっしりと生え広がり、ジャングルのようになった腋からは悪臭が放たれる。おまけにただでさえ広がっていた尻の穴は、瞬く間に男性の二の腕が入るほどまでに拡張され、その刺激がキッドの理性を吹き飛ばしてしまった。


 次から次へと、自分の肉体が別の何かへと変えられる。その事実に恐怖し、抵抗しようとしたキッドだったが、そのときにはもう遅かった。頭にヘッドギアが嵌められ、こめかみに小さな刺激が走った瞬間、脳内に【ワイルドボア】の記憶が急速にインストールされ始めたのだ。


「あ゛っ♥ お゛ぉっ♥♥」


(これはっ……、ワイルドボアの記憶が……っ! オレの中に流れ込んでくる……ッ!!)


 【ワイルドボア】が経験してきたことや感じてきたこと。それらすべてが、瞬時に彼の脳に深く深く刻み込まれる。自分ではない誰かの体験した人生が、感情が、愉悦が、快楽が、何もかもが脳内で渦を巻いている。ケツ穴にはチンポを挿入され、チンポはしゃぶられながら、キッドは身悶えた。屈しない、負けたくない。抗えば抗うほど、精神は快楽に飲み込まれていく。

 己のせいで、ヒーローたちの肉体がすべてヴィランたちに乗っ取られてしまった。だがきっと、魔の手から逃れた仲間が一人はいるはず。そして、他のヒーローたちを率いて自分たちを助けに……。


 その思いを打ち砕くように、長官室の壁に備え付けられた巨大スクリーンに、かつてのヒーローたちのあられもない姿が映し出された。


「う゛お゛ぉ……ッ♥♥」「お゛っ♥」「おほっ、お゛ぉんッッ♥♥」


 タイトなスーツに身を包んだ屈強なヒーローたちに犯される、黒タイツ姿の男たち。彼らは皆、まるで犬のように四つん這いになり、ケツを高く持ち上げた状態で情けの無い喘ぎ声を上げている。その様を見て、その場にいたヒーローの姿をした男たち全員が、口角を吊り上げて下品な笑い声を上げた。


「フハハハハッ!! 見ろよ、あの無様な姿を!」


「あ~あ。ご立派なヒーローたちの精神も、すっかりヴィランの肉体に染まっちまったなあ。可哀そうに♥」


 もはや今となっては、あの黒タイツ姿の男たちの誰がヒーロージャスティスなのか長官なのか、見分ける術もない。皆が皆、肉欲に心を支配され、快楽を追い求めるだけのケダモノと化しているのだから──。


 どうにか保っていたキッドの理性の糸が、プツリと切れた。


「イクぞぉッ、ワイルドボア!! ジャスティス様のザーメン、その汚いケツの穴で全部受け止めやがれぇっっ!!!」


「ぶひィィィッッ♥♥♥」


 頭が割れそうになるほどの快感の波が押し寄せる。小さな陰茎が小刻みに震え、丹田に熱いものが込み上げてくる。ああ……、出る。出てしまう……! 助けが来ることは決してない。もう自分はヒーローには戻れないのだ──。


 【ヒーロージャスティス】の硬くなった肉棒がひときわ大きく震え、彼の熱い精液を体内に注ぎ込まれたその瞬間、【ワイルドボア】は絶叫とともによがり狂い、これまでで一番濃いザーメンを噴射するのだった。


(了)

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