「ふぅ〜、なかなか厄介な相手だったな。ヴィランどもなんかより、よっぽどこいつらの方が相手しづらかったぜ。怪我はないか、エンパシスト?」
怪力ヒーロー【ブラストハンマー】は、虫の息と化したガラクタの胴体を足の裏で踏みつけると、一呼吸おいて強張った筋肉を緩めた。鋼鉄のように引き締まった体躯。まるで彫刻のような筋肉美を誇る彼のヒーロースーツは、ところどころ裂け目ができており、その隙間からは血が流れた痕跡が見て取れる。
「大丈夫っす。先輩のおかげで、なんとか生き残れました……」
「そうか。ならよかった」
頰や膝にかすり傷をつくった支援系ヒーロー【エンパシスト】は、バクバクと鼓動する心臓を落ち着かせるように胸に手を当て、息を整えている。
そんな彼らの傍らでは、先ほどまで二人を執拗に襲い続けていたロボットたちが、残骸の山と化していた。壊れた機械の破片や、周囲にある金属を吸収して自己修復する小型無人機『ネクロドローン』。機械の部品と、人間やヴィランの遺体を融合させた、非人道的とも言える凶悪兵器、『デッドウォーカー』。それらすべてが、常人ならざるパワーの持ち主であるヒーロー、ブラストハンマーによって修復不可能になるまで破壊され尽くしていた。
「安心するのはまだ早いぞ。最後の大捕り物が控えてるからな!」
硬く握りしめた両の拳をガツンとぶつけ合わせると、彼は顎をしゃくって、階下へと繋がる階段を指し示した。全身から湯気を放つブラストハンマーの力強い瞳に視線を合わせると、エンパシストが無言で頷く。
待ち受けるのは、世紀の大発明者【エドガー・ネクロメカ】。マッドサイエンティストであり、これまで数多くのヒーローたちを、たった一人で苦しめてきたヴィラン連合随一の天才科学者だ。
足音も立てぬよう静かに一段一段、ヴィランのアジトの階下へと歩みを進めると、巨大な金属扉が彼らの前に立ち塞がった。
「俺が先に行く。お前はいつも通り、能力を使用しての俺の力の底上げと、周囲への警戒を頼む。……できるな?」
「はいっ……!」
帰ったら酒盛りするぞ。そう告げたブラストハンマーに、フラグを立てるのは止めてくれと言いたくなったエンパシストだが、その言葉をどうにか吞み込んで、扉の中へと入っていく彼の後に続いた。
***
(ん? 誰も……いない……?)
薄暗い室内には数多くのコンピューターや実験用の奇妙な装置があるが、そこに人影はない。ガラスでできた巨大な容器には、人間ともヴィランとも判別のつかないような肉塊が浮かんでおり、そこから伸びた管があらゆる機械に繋がっている。一瞬。その異様ともいえる光景に、一瞬だが二人は戦闘態勢を解いてしまった。その時、物陰に隠れていたネクロメカが構えた光線銃の銃口が、ブラストハンマーの心臓を捉えた。
(先輩、避けてくださいっ!!)
周囲に注意を払っていたエンパシストは、いち早く敵の存在に気付き、共感能力を使用してブラストハンマーに危険を知らせた。テレパシーほど詳しい情報を相手には送れないものの、エンパシストの呼び掛けに反応したブラストハンマーは、その体格に見合わないほどの反射神経で、上体をグリンと反らした。
──バチィッ!!
心臓への直撃は免れたものの、銃から放たれた光線が彼の肩口に当たって音を立てる。しかし怪力自慢のブラストハンマーが、そんな攻撃で怯むはずもない。すぐさま体勢を立て直すと、彼は肩から煙を上げたまま、その拳を振り上げた。
「この程度の攻撃で俺が倒れると思ったか、ネクロメカ!! 卑怯者め、物陰に隠れるとは情けない奴だ! 俺の拳を喰らえっ……、おれ、の、こぶし……を?」
腹の底まで響くほどの声から力が失われていくと、筋肉の塊であるはずのブラストハンマーの肉体が、重力に逆らうように一陣の風でふわりと浮いた。そこからは一瞬の出来事だった。男でも見惚れるほどの体格の持ち主であるはずの彼の身体が、まるで空気の抜けた浮き輪のようにペラペラになっていったのだ。
「ケハーッ! ケハッケハッケハッ……ゲホゲホゲホーッ!!! んん゛っ!! 馬鹿めっ、バーカーめ。な〜にが、卑怯者じゃ! お前さんみたいな馬鹿力を持った相手に、まともにやり合って勝てるほどワシは強くないわい。脳筋馬鹿には、それ相応の対応をせんとな!」
薄っぺらい皮のようになってしまったブラストハンマーの首根っこを掴むと、ネクロメカは彼の全身を軽々と持ち上げた。手足をだらんと脱力させたまま宙ぶらりんになってしまったブラストハンマーは、苦悶の表情を浮かべることしかできなかった。
「どいつもこいつも、バカの一つ覚えのように正々堂々戦おうとするから、こんな羽目になるんじゃ。さ〜て、お主のことはどんな実験に使用してやるかのぉ? ケハハハハ!!」
*
再び大笑いを上げた後、彼が咽たところをエンパシストが軽やかな一撃を浴びせ、ロープで縛りあげた。
「こ、この卑怯者~~。いたいけな老いぼれ相手に二人がかりで、しかも殴るなんてヒーローの風上にもおけん奴らめ! お主らのような若いやつらはいつもそうじゃ! え~んえ~ん、ワシはただ新しい発明品をお披露目しただけじゃというのに」
悪の親玉ともいえる男のあまりの幼稚な姿に、二人のヒーローは力が抜けたようになったものの、皮にされてしまったブラストハンマーの怒りは収まらない。
「何がお披露目だ! こんなとんでもないことをしておいて、よくもぬけぬけと……!」
「ひぃぃ、助けてくれえ。助けてくれたらなんでもするからぁ……、シクシク」
どうやらこいつは、機械を作ることには長けているが、戦闘能力は皆無のようだ。今も戦闘用ではないメイドロボにハンカチで目元を拭われ、子供のように泣きじゃくっている。
「はぁ……。ネクロメカの野郎が降参したのはいいが……。おい、エンパシスト。俺のこの姿、どうにかならねぇのか? これじゃあ完全に戦力外だぞ」
ブラストハンマーが萎んだ腕を持ち上げようとするが、冷たい床の上でぶらぶらと頼りなく揺らめくだけだ。
「ったく……。こうなると、いつも頼れる相棒が支えてくれるのが、どれだけ助けになるのかってのを痛感するぜ。お前がいなきゃどうなってたことか……、なあエンパシスト。ん? おい、エンパシスト……。なんだ、その顔は? なんか妙に興味深そうな目で俺を見てるじゃねぇか。まさかとは思うが、何か変なこと考えてないよな?」
「なあ、ネクロメカ。皮になった人間を、他の人間が着るなんてことできたりしないか?」
しばらく口を噤んでいたエンパシストが発した、意味不明の質問。その意図を理解できず、ネクロメカは首を傾げ、ブラストハンマーは目を剥いた。
「そ、そんな非人道的なこと、マッドサイエンティストであるワシでも試したことないわっ!」
ただでさえ大きな瞳をパチパチと瞬かせ、ネクロメカは金切り声を上げる。
「そうか……。じゃあ試すしかないな」
「はあ? 待て待て。ハハ……、お前が俺を着る? そんな悪いジョーク、笑えんぞ」
不謹慎な冗談としか思えないエンパシストのセリフに、ブラストハンマーの口角がヒクつく。これまでずっと慕ってくれていた後輩が、突然こんなことを言い出すなんて。きっと空気を読めずに、悪質なジョークを言ってしまっただけに違いない。
しかし、その考えは無残にも打ち破られた。エンパシストは、ペラペラの皮になったブラストハンマーの背中に手刀でスーッと切れこみを入れると、無造作にその裂け目を開いたのだ。
「んっ♥ んおっ♥♥ ちょ、待て待て! まさかとは思うが……、本当に俺を……着るつもりか!? いや、やめろ! それだけはやめろォォ!!」
「わぁっ、すごいっす! 先輩の中、丸見え。って言っても、内臓とかは無いし、なんか人の皮っていうより着ぐるみみたいっすよ」
エンパシストの言う通り、ブラストハンマーの中は空洞で、生きた人間の身体には到底見えない。彼は先輩ヒーローの背中に開いたその穴に、自分の手足を通していく。エンパシストの肌がブラストハンマーの内側に擦れるたび、ブラストハンマーの肉体はビクビクと痙攣し、その口からは情けない声が漏れた。
「あひっ♥ あひぃっ♥ お、お前、やめっ、や……やめろぉっ……!」
全身を先輩ヒーローの皮で覆ったエンパシストが、最後にブラストハンマーの頭部をすっぽりと被ると、まるで皮が意思を持つかのように蠢き、エンパシストの頭を呑み込み始めた。そしてそのままグニュグニュと変化に変化を重ねた皮が、元の形状に戻るように縮まったことで、ブラストハンマーの皮とエンパシストの肉体は完全に融合を果たした。
「はぁ……♥ はあぁ~……♥♥」
ブラストハンマーの胴体が、手足が、そして頭部が自分の肉体と同化したことを実感したエンパシストは、恍惚とした表情で身体を震わせた。全身にじんわりと広がる熱。ブラストハンマーの体温を感じれば感じるほど、彼の肉体に蕩けるような快感が広がっていく。
「ああっ♥ これが【俺】の肉体……。すげぇな。たくましくて、格好良くて──、最高のボディーじゃねえか……♥」
皮として着込んだブラストハンマーの肌をくまなく撫でまわしていくと、その硬さと温かさがより鮮明に伝わってきて、エンパシストの股間は痛いほど張り詰めていった。
「お、おい、エンパシスト! ちょっと待ってくれ、こんなこと、正気かよ?! 俺の身体が……、くぅ……お前の体にフィットしてるなんて……!」
(中身が空っぽの状態で、完全にエンパシストに『着られ』ちまってる。なのに感覚は残ってて、こいつの体と俺の内側の皮膚が擦れるたびに頭ン中が痺れそうになりやがる……!)
気付けばエンパシストは、ヒーロースーツ越しにブラストハンマーのチンポを揉みしだき、それによって全身を突き抜ける強烈な快感に襲われたブラストハンマーは、ただの木偶人形と化していた。自分で行うマスターベーションなど比にならぬほどの刺激が全身で暴れ、腰が砕けそうになる。
「ああ゛っ♥ たまんねぇ! んあっ♥ ああ゛あ~っ♥♥」
(ヤバい!! こんな快感を覚えちまったら、元の生活になんて戻れねえ!)
そんな葛藤を知る由もないエンパシストは、無我夢中でブラストハンマーの身体を堪能していく。そして、彼の指先が自分のケツ穴に触れた瞬間、その衝撃的な感覚に思わず仰け反り、大きな声が冷たい室内に響き渡った。皮を着たエンパシストが上げた嬌声か、はたまたブラストハンマーが上げた悲鳴か。もう彼にも分からなかった。
「ふ、ふぅ〜っ♥ たまんねぇ……。このままずっとこうしていたいぜ……」
ブラストハンマーの皮を着たエンパシストが、指で尻穴を擦って快楽を貪っていると、そんな悩ましい彼の姿を見たネクロメカは、ゴクリと音を立てて唾を飲み込んだ。
「なんちゅうこっちゃ……。まさかこんな形で、皮になってしまった人間を使うとは。この光線銃を開発したワシも想像しておらんかった。お前さんら、とんでもない変態野郎じゃのう……」
ネクロメカの言葉に、ブラストハンマーは内心頷きそうになった。エンパシストの馬鹿に付き合っていたらこうなっただけだ。断じて俺のせいじゃないと、自分自身に言い聞かせる。しかし、彼の興奮が伝わるほどに、自分は皮として『着られている』ことを実感する。そして、そんな変態野郎に自身の肉体を自由自在に操られていることで、自分の心の内に倒錯的な感情が芽生え始めてしまっていることに、ブラストハンマーは気付いてしまった。
(クソッ! 俺がこんな変態野郎に……。まさか、俺の肉体がエンパシストを興奮させてるっていうのか? しかもそれが嬉しいだなんて思っちまってる……。そんな馬鹿なことあるかよ!!)
「ああっ♥ 先輩っ、俺もう我慢できません♥♥」
ヒーロースーツを脱ぎ捨てると、エンパシストは【ブラストハンマー】のチンポをしごき始めた。体の内から伝わるエンパシストの激しい鼓動や息遣い、皮に覆われた彼の肉棒の脈動、彼の共感能力によって同期する多幸感という名の快楽が、ブラストハンマーの心を毒のように蝕んでいく。
「んああっ♥ き、気持ちイイッ♥♥」
エンパシストが先走りをダラダラと垂らしまくりながらチンポをしごく様を見て、ネクロメカはご満悦だ。どうやら奴はヒーローの痴態が大好物らしい。
「ブラストハンマーのチンポ♥ 【俺】のおチンポ最高だぜっ! 仮性デカマラシコシコして、イッちまううぅ♥♥♥」
──ぶぴゅうぅっ! どぷどぷぶりゅりゅ!! ビュービューッ!!!
エンパシストの激しい手淫に、ブラストハンマーは酔い痴れた。これまで、己よりも強大な敵に幾度となく立ち向かってきたヒーロー。そんな自分が、今はただの性欲に溺れた変態野郎と化している。屈辱感と幸福感が交じり合い、頭がおかしくなりそうだ。
女性とのセックスでも得たことのないような、鮮烈な快楽。脳味噌をチンポでグチャグチャにされているような感覚に、意識を手放しそうになる。
「おおおおっ♥♥ んお゛っ♥ いぐっ♥ おほぉぉぉっ!!?」
エンパシストは、【ブラストハンマー】の身体で白目を剥いたまま激しく痙攣し、そのチンポの先からザーメンを噴射した。さすがはヒーローといったところか。数多のヒーローの中でも、ブラストハンマーは特に性欲旺盛なため、飛び出す精液の量は並ではなく、ネクロメカの顔面にぶっかけたり床に撒き散らしたりと大惨事になっていた。
*
「ふうっ♥ せ、先輩……♥ オレ、満足しました……。実はオレ、先輩のことがめちゃくちゃ好きだったんです。性的な意味で。それで、こんな状況になったのをいいことに先輩のこと着てみましたけど、やっぱり自分が先輩みたいになりたいんじゃなくて、先輩にオレのこと好きになって欲しいんだって気づきました。だから──」
そう告白したエンパシストが、ブラストハンマーの皮を脱いでいく。
「そ、そうか。お前に好きって言ってもらえて、俺も嬉しい……ぞ! とにかく、お前はお前でいるのが一番だ。だから、とりあえず俺を元に戻して、ネクロメカを連れてヒーロー基地に戻ろうな! なぁ?」
(くそっ、今はへりくだった態度をとってやるがなぁ……。基地に戻ったら覚えとけよ、エンパシストのクソ野郎!!)
「──ってことで、親父がブラストハンマー先輩の皮を着てくれよ」
エンパシストはネクロメカの縄を解くと、脱ぎ終えたブラストハンマーの皮を彼に渡した。
「ん? んんんっ?! おま、お前……、いま何て言って……?! 親父だと? ネクロメカが、お前の父親ッ?! 冗談も休み休み言いやがれっ!!」
「……すみません、先輩。実はオレ、ヴィランなんです。それで上司の命令で、ヒーロー連合にスパイとして潜入してました。んでもって、このちょっと……っていうか、かなりお馬鹿なおっさんが、オレの育ての親ってわけっす」
(エンパシストがヴィラン? しかもネクロメカが、こいつの養父だと? 冗談じゃねぇ……、冗談じゃねぇぞ?!)
ブラストハンマーは混乱していた。後輩であるエンパシストから愛の告白を受け、照れと困惑の入り混じる感情に翻弄されていた矢先に、この急展開だ。
(俺の皮を着るなんてぶっ飛んだことをした時点で、こいつが普通じゃないとは分かっちゃいたが……。まさか、スパイだったなんて……)
どうにかして基地に戻り、この事実を司令官に伝えなければ……。しかし、いったいどうすればいいのか? 脳まで筋肉でできているのだろうなどと、他のヒーローたちから揶揄されてきた彼が必死に思考を巡らしていたのも束の間、今度はネクロメカが彼の皮の中へと手足を通し始めた。
再び体の内側を刺激されたブラストハンマーの意識は、先ほど以上に快楽によって支配を受けていた。身長187センチで体重110キロの、ボディービルダー体型の彼。それに対して、ネクロメカはブラストハンマーよりも頭一つ分以上背の低い、小太り体型だ。エンパシストも、ブラストハンマーに比べれば体は小さかったが、それとは比べ物にならない。あまりにも肉体の構造が違う人間が、自分の体内で変化していく感覚にブラストハンマーは悶えた。皮になった自身の指先に、細く骨張った指を挿入され、分厚かった大胸筋や腹筋に洗濯板のような胸板と突き出た腹を押し付けられる。そして最後に入ってきたのは、貧相な真性包茎のチンポとシワシワの玉袋だった。
「お゛っ♥ おごっ♥♥ ふぅーっ、むふううぅぅぅぅぅ!?!?」
(こ……股間が熱い! 熱すぎるっ!!)
ネクロメカの肉体変化によって包皮を引っ張られることで露出した亀頭付近には血管が浮き上がり、浅黒く淫水焼けした陰茎がドクンドクンと脈打ち始める。同時に冷え切っていた玉袋にも熱が巡りだし、ブラストハンマーの極太マラが再び屹立する。それ以外の部位の変化も、彼に容赦なく襲いかかった。
手足の指先が彼の意思とは関係なく動き始め、鼻や唇が内側から犯されるようにしながら形を変える。その快感はエンパシストに着られたときの非ではなく、まさに身体を内側から造り変えられているかのようだった。
「うぐうっ♥ あひいいぃィッ♥♥」
腰をくねくねとくねらせつつ、これまでの三十数年の人生で、ブラストハンマーが出したことの無いような快楽の悲鳴が、ヒンヤリとした研究室内に木霊する。
──身体を乗っ取られる。こんな気色悪いクソ爺に……!
なのにそれを気持ちいいと感じてしまう。自身の肉体が、別の誰かに奪われる絶望感。しかし、そんな感情を上回るほどに、体内から湧き上がる快感がブラストハンマーの思考をめちゃくちゃにしてしまう。
わずかに残った力を結集すると、ガッシリとしたその巨体を丸めて蹲り、まるで胎児のように体を丸まらせながら抗った。これは俺の身体。生まれてからずっと、三十年以上も付き合ってきた俺の肉体なんだ。絶対に誰にも渡さない……。
しかしそんな彼の抵抗も虚しく、無情にも肉体の変化は続いていく。皮の状態だった彼の全身は数分前までの状態を取り戻し、ボディービルダーさながらに鍛え上げられた筋骨隆々の肉体へと変貌を遂げた。汗で覆われた肌から放たれた、むせかえるような雄の臭いが室内に立ち込める。
「あっ……♥ あはぁっ♥♥」
デロンと舌を垂らしたブラストハンマーは、呆けた様子で自身の肉体を撫で回した。頬から首筋へ、盛り上がった胸筋を通って、割れた腹筋へと指を滑らせる。それだけでも電撃のような快感が駆け巡って、垂れていたチンポがビクンと大きく震えた。
全身が性感帯に変わってしまったかのようだ。動いている手は、もはや自分の意思で動かしているのか、それともネクロメカによって操られているのか定かでない。ただ分かるのは、脳が麻薬を欲するかのように、快感を求めているということ。これまで丹精を込めて育て上げてきた、この筋肉たっぷりの肉体を堪能したい。勃起した非凡なこの肉棒を、思う存分しごきたい。そして睾丸の中に貯蔵された熱く、濃いヒーローザーメンを放出したいという強い衝動だけだ。
(ダメだ……、チンポをしごいたらきっと俺が俺じゃなくなっちまう……。俺はヒーロー、ブラストハンマー……。こんな……、んっ♥ 皮にされて変態爺に着られたからって、身体を乗っ取られなんかしねえ……。はうぅ♥ 絶対に、絶対に俺は、俺のままで……。でも、もう限界だっ! もう無理なんだよぉ!!)
ブラストハンマーは冷たい石畳の上に膝まづくと、右手で乱暴にチンポを鷲掴みにした。
「んあっ♥ あひっ♥♥」
これまで何百回と繰り返してきたはずの単なるオナニーのはずなのに、イチモツに伝わる刺激に脳が蕩けそうになる。そしてそのまま激しく手を上下に動かし始めた彼は、空いた左手で自分の胸を揉みしだき、乳首をこねくり回した。その快感で射精してしまいそうになる。
(ああっ♥ 俺、ヒーローなのに……、こんなっ♥)
こんな快感、女とのセックスでも味わったことがない。知らなかった。他人に自分の尊厳を奪われることが、こんなにも気持ちのいいことだなんて。こんなみっともない姿、誰にも見られたくない。いや、見られたいのかもしれない。ヒーローとして共に死線を潜り抜けてきた、大切な仲間達に見られて失望されてしまいたい──。
ブラストハンマーは、もう自分が何を望んでいるのかも分からなくなっていた。ヒーローとして鍛え上げた肉体を淫らにくねらせる。もうどうなってもいい──。
無我夢中でチンポをしごき上げると、彼は白目を剥きながら天を仰ぎ、野太い雄叫びを上げた。
「ああ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁ!! イクッ♥♥ イグゥ~~~ッ♥♥♥♥♥」
イチモツから伝播し、背骨を伝って脳に至るまでの全身に響く快楽の衝撃は、ブラストハンマーに今まで経験したこともない未知の感覚を植え付ける。弓なりに身体を仰け反らせると、彼はたくましい五体をビクンビクンと震わせ、天井に向かって濃厚な精液をぶちまけた。それはまるで噴水のように高く舞い上がり、彼の体へ雨となって降り注ぐ。火傷しそうなほどに熱を持った体液。その量は尋常ではなく、床に水溜まりができるほどに飛び出たザーメンの濃い匂いは、ほんのわずかな内に研究室の中を満たしたのだった──。
*
「くっ……。ぬあ゛ぁぁぁぁ!!!」
ブラストハンマーは肌に纏わりついた汗を辺りに撒き散らすと、上半身を勢いよく起き上がらせた。
「はぁ……、はぁ…………」
(夢? さっきまでのことは全部夢だったのか……?)
思い出すだけで怖気が走る。鼻息を荒くして、ブラストハンマーが辺りを見回すと、そこには彼を見下ろしてニヤニヤと笑みを浮かべるエンパシストがいた。悪夢はまだ続いているようだ。だが、意識ははっきりとしていて、肉体をネクロメカに乗っ取られた感じはしない。
彼は乱れた呼吸を整えると、自分の意思で手足の指先を動かした。右手、左手、そして右足に左足。鋼のような肉体が、しっかりと自身の思い通りに動くことに彼はひとまず安堵した。
(俺の皮はネクロメカに着られちまってるが、この俺があんなクソ爺に身体を乗っ取られるわけがねえんだ。だが──、やけに身体が重たく感じる気がする。いつもとは違うような……)
「親父、ブラストハンマー先輩の身体はどうだ? 気持ちいいか?」
「ぐふふ♥ そりゃぁ、すっごくいいぞい♥ ワシの身体が、こんなにもごつくなっちまうなんてなぁ!! 嬉しい限りじゃ!」
(な、何を言ってるんだ俺は! 俺はヒーロー【ブラストハンマー】……の肉体を乗っ取った、ネクロメカじゃ。ひっひっひ……。違うッ、違うちがうチガウ!!! 俺は【ワシ】じゃねえっ!! あっ、あ゛おぉう♥ 【俺】の記憶が、ワシの中に流れ込んでくるぅ♥ たまらんっ♥ ブラストハンマーの人生、すみずみまで堪能させてもらうぞぃッッ♥♥♥ ……やめろっ! やめてくれえぇぇぇぇ!!!)
地面に蹲ると、ブラストハンマーは頭を抱えて悶え苦しんだ。石畳に叩き付けた額から、うっすらと血が滲む。
──出ていけ出ていけ、でていけぇぇぇッ!!! 俺はブラストハンマー……、頼むぅ、俺は……ヒーローなんだ……。ヴィランなんかじゃ……やめてっくれぇッ、やめっ……ああ゛ぁぁぁ……♥♥
甘く痺れるような刺激に、アイデンティティーが崩れようとしていく。これまで自分を構成してきた価値観や倫理観が書き換えられていくのが分かる。追い打ちをかけるように、【ネクロメカ】として生きてきた記憶が脳裏に刻まれ始めると、段々と元の自分という存在が希薄になっていくのを感じた。ヒーローの誰よりも正義を尊び、悪を憎み、そして人民を守護することに命を燃やしてきたはずなのに……、なぜそんなくだらないことを大切だと思っていたのかが思い出せない。
なぜならワシはヴィラン──、ネクロメカだからだ。いや、これからはヒーロー【ブラストハンマー】として【俺】は生きていくのじゃ♥ このエロエロボディーに男前な顔、ぶっといおチンチン♥ 何もかも最高で、非の打ちどころのない肉体じゃ。これこそワシの求めてきた、理想的なボディー。いや違った。この体は、【俺】が長年かけて鍛え上げてきた肉体だったな、くっくっく……。
「お前こそ、俺の中から出ていけっ!! 俺がヒーロー、ブラストハンマーだあぁぁぁぁっ!!! イクぞ、イクイクイク~~~ッ♥♥♥」
叫ぶようにして、ブラストハンマーは再び射精した。ドロドロとしたザーメンがところかまわず飛び散るなか、研究室内は地震に見舞われたかのように激しく揺れ動き、ガラスでできた機器がことごとく砕け散る。床のあちこちに罅が入り、そこら中に土埃が舞った。
「ハアッ、はぁ……、はぁ…………」
「大丈夫か、親父? そ、それとも先輩……ですか?」
地面に頭を擦り付け、大きな掌で顔をすっぽりと覆うように隠していたブラストハンマーは、中指と薬指の間から大きな瞳を覗かせた。
「お前はどっちだと思う? なあ、相棒──?」
苦悶の表情を浮かべていたはずの彼は素早く移動すると、完全に警戒を緩めていたエンパシストを壁に押し付けて、彼の唇に自分の唇を近づけた。鼻と鼻が擦れ合い、吐き出される熱い鼻息が顔にかかる。それだけで、エンパシストは今自分の目の前にいる相手が誰なのか察することができた。目の前にいる男は、さっきまでとは違うブラストハンマーなのだと──。
「先輩……♥」
ブラストハンマーに身を任せるようにしてエンパシストが目を閉じると、その唇に彼の厚い唇が重なった。
「んっ♥ ちゅっ♥♥」
互いに愛しい者を求め合うかのように舌を絡ませ合い、二人の唾液が混ざり合う。がっちりむっちりとした肉体で行う抱擁は、相手と一つになったような錯覚を起こさせる。エンパシストの股間がもっこりと大きく膨らむのを確認すると、ブラストハンマーはその膨らみを優しく撫でまわした。
「本物の【ブラストハンマー】のやつめ、【ネクロメカ】に着られたのがよっぽど気持ちよかったらしい。イッたのと同時に、無防備になった奴からこの肉体のすべての支配権をワシが奪ってやったぞい。おかげで脳味噌の中も、奴の記憶で満たされに満たされて……。はひっ……、【ブラストハンマー】の記憶思い出すの、気持ちよすぎるっ♥ ヒーローとして数多くの人間どもを救ってきた記憶、それに女とのセックスの思い出が蘇ってきて……、ノンケヒーローになっちまいそうだぜ♥♥ 何十人ものメスをヒィヒィ言わせてきた、正義の味方様にこのワシがなれるなんてなぁ……、興奮して我慢汁が止まらねえよ♥♥♥」
彼の言葉通り、カーブを描いた極太バナナのようなその竿の先端からは、なみなみとカウパー液が溢れ出し、赤く染まった亀頭をテカテカにコーティングしている。
「この野郎、チンポだけは乗っ取られまいと最後まで抵抗してやがったが、ん゛っ♥ もうこのデカマラも、完璧に乗っ取り完了だぜ♥♥ おっと、さすがはヒーロー様だ。回復力が高いおかげで、背中の裂け目も元通りになっちまった。これで誰にも疑われることなく、【ブラストハンマー】に成りすませるな。ほら、お前も脱げエンパシスト。今日から、俺と愛し合うんだろ? この最高にエロイ体の持ち主の、ブラストハンマー様とな♥」
「はい、先輩っ!」
待ってましたとばかりに頷くと、エンパシストはすぐにヒーロースーツを脱ぎ捨てた。途端にブルンッと音を立てて飛び出した彼の男根。並みの成人男性を遥かに凌駕するほどのサイズを誇る、非凡な肉棒。雄臭を放つ巨大なチンポに、ブラストハンマーは嫌な顔もせず、勢いよくしゃぶりついた。そして、ジュポジュポと大きな音を立てながら、丹念に愛撫を施していく。
「おほっ♥ お゛っ♥ 先輩がオレのチンポをっ!! 気持ちいいっ♥♥」
大口を開けて口に含んだかと思うと、次には分厚い舌でねっとりと舐め上げる。そうして舌で刺激を与えているうちに、エンパシストのイチモツはあっという間に勃起してしまった。先走りをたっぷりと垂れ流しながらビクビクと脈打つ竿の反応に、ブラストハンマーは嬉々とした表情を浮かべる。
「じゅるる……、ふぅ……。でっけえなぁエンパシスト、お前のチンポはよぉ♥ 準備は万端ってとこか……。くっくっく……♥♥」
ブラストハンマーはニヤリと笑うと自分の指を舐め回し、その手を自身の尻へと持っていったかと思うと、そのまま指をアナルに突き入れて動かし始めた。
──ぐちゅっ、ぐちゅぐぽぬぷぬぷぅ♥♥
「お゛ぉっ♥ はぁぁ、ぬ゛んっ!! ふぅぅ……いいぞっ、俺のケツ穴も準備ばっちりだ♥ さあ、来やがれッ! ノンケヒーローの俺のマンコに、お前のヒーローチンポ咥えさせてくれッ♥♥♥」
「ああ先輩、嬉しいですっ……。オレ、もう我慢できませんっ!!」
エンパシストはブラストハンマーに抱きつくと、彼の体内の奥深くまで、自身の巨根を挿入していった。
──ずっぷんッ♥ ずぼずぼっ、ずぼぼぼぼっ♥♥
「ふん゛ぬお゛ぉ~~♥♥♥ お゛ぅっ♥ ぬ゛うぅ~~~っ♥♥」
熱い肉の塊がブラストハンマーの尻穴を穿ち、アナルを押し広げて蹂躙していく。巨大な異物の侵入に降伏した肛門の筋肉が徐々に緩み、その侵入者に合わせて形を変える。その圧迫感と強烈な開放感はブラストハンマーをのけ反らせ、野太い嬌声を上げさせた。
「先輩ッ! オレのチンポ、全部入りましたよ!」
「あ、ああ゛……♥ エンパシスト……、愛する後輩のチンポが俺の中に……♥♥」
頬を紅潮させたエンパシストが腰を振り始める。最初はゆっくりだったストロークも徐々に速まり、肉同士がぶつかる音が研究室内に響き渡るまでになった。その激しいピストンに呼応するように、ブラストハンマーの反り返ったイチモツの先端からピュピュッとカウパー液が飛び散っては、埃まみれの床に暗いシミを作っていく。ヒーローチンポが激しく出入りするアナルからは、グポッグポッと下品な水音が鳴り続け、溢れ出た腸液が結合部に纏わりついて泡立っている。
ブラストハンマーは自身の尻を鷲掴みにしてケツの穴をおっぴろげ、エンパシストはブラストハンマーの盛り上がった雄っぱいを揉みしだき、乳首を指ではじきながら荒々しく腰を振り続けた。
「うおぉっ! 先輩……、オレ、もうイキそうです!!」
「んん゛ッ……。俺も、イクぞ……。一緒に、イこうな、エンパシストォッ♥♥」
ケツ穴を掘られることで頭がいっぱいになったブラストハンマーの竿が燃えるほど熱くなり、金玉がキュッとせり上がる。次の瞬間には、大量のザーメンがその先端から勢いよく解き放たれた。
「お゛っ♥ お゛ぉっ♥♥ ブラストハンマーのヒーローチンポでっ! 【俺】のチンポでイクッ! ザー汁止まらんっ!! イグイグ、イ゛ッグウゥゥ~~ッ♥♥」
その後を追うように、エンパシストもまた射精した。ブラストハンマーの尻の中でビクビクと震える巨根から放たれたザーメンは彼の腸内を白く染め上げ、大量に注ぎ込まれた粘度の高い子種汁は逆流して、結合部からドロリと滴り落ちた。
***
「あ゛っ♥♥ あ……、んああ゛ぁぁっ♥」
絶頂の余韻に浸るブラストハンマーの口から、言葉にならない声が紡がれる。焦点の定まらない目、だらしなく開けられた口からは、だらりと舌が垂れて涎がこぼれている。激しい行為によって玉のような汗をかき、鍛え上げられた肉体の表面には艶めかしい光沢が生まれていた。
萎えたイチモツがズボリと音を立てて引き抜かれると、ブラストハンマーは切なげな声を漏らした。栓を失った穴はぽっかりと広がり、充血して赤く染まった肉壁が露わになっている。その穴から大量の精液が流れ落ち、床に白い水溜まりを作った。
「ハァ……。先輩! 先輩のケツマンコ最高でした。もっと……、もっと先輩とヤりたいっす!」
無邪気な子供のように笑うエンパシスト。するとブラストハンマーも優しく微笑み返し、彼を抱き寄せたかと思うと、再び唇を重ねた。
「安心しろ、エンパシスト……♥ 俺のこのヒーローケツマンコはこれからはずっと、お前専用の肉便器だ。だが──」
蕩けた表情をスッと神妙な面持ちに変えると、ブラストハンマーは全身を覆ったザーメンを拭い取り、脱ぎ散らかされていたヒーロースーツを手に取って着直した。そんな彼の表情を見て察したエンパシストも、慌ててスーツに身を包む。
「さすがは俺の相棒。分かってくれたみたいだな。これから、ヒーロー連合の基地に帰還するぞ。そしてこの光線銃を使って、ヒーローどもをみんな皮に変え、俺たちのコレクションにするんだ。まずは司令官。苦み走ったいぶし銀、格好いいオジサマって感じの野郎だったか……。この身体もなかなかだが、地位と権力を持った、さらにたくましい雄のボディーを乗っ取れば、さぞや気持ちいいだろうよ♥」
主要な機器を隠し部屋へと避難させると、二人はアジトを破壊して基地へと帰還した。ヒーロー基地に戻り、油断しているヒーローたちを皮にして、彼らの肉体を一人ずつ乗っ取っていってやる。まずは司令官、それから各部署のリーダーを順番に……。ヒーローたちの皮を集めるという作業に、ブラストハンマーとエンパシストの心が高鳴る。
基地の内部へと足を踏み入れた二人は手始めに、椅子にふんぞり返った司令官の隙をつくと、光線銃を彼の脇腹に発射したのだった。
(了)