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ムチユキ
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魔の公衆便所

【訪れると、魂と肉体が分離されるスポット】


 そんないわくつきの場所が、住宅街のどこにでもあるような公園の公衆便所にある。ブランコと鉄棒、すべり台があるだけのこじんまりとした公園で、公衆便所もそれほど大きくなく、中には小便器が二つと個室が一つ。そのうちの小便器二つは、常に故障中の札が掛けられているため、実質使用できるのは個室のみである。そして件のスポットというのは、その個室のことだった。


 その個室の便座に腰を下ろして用を足すと、使用者の肉体から魂が解き放たれる。そしてその空っぽになった肉体には、その一つ前に個室を利用した人間の魂が、穴埋めするように入り込んでしまうのだという。

 そんな話、怪談話に興味を持ったばかりの小学生でさえ信じないだろう。実際、その公衆便所の噂は一般的な人々の間ではまったく浸透せず、【他者と肉体を入れ替えたい】という異質な性癖を持った者だけが、記憶の片隅に留めていた。



***


「あ~、小便してぇ! 漏れちまうッ!! トイレッ、そこの公園の公衆便所に寄ってくださいよ!」


 パトカーの後部座席に座った男は、わざとらしくじたばたと足を動かすと、ウンウンと唸ってみせた。手錠をはめられた両手を股間に持っていって、今にも小便が漏れるといった演技をしながら全身を震わせる。


「お、おい我慢しろ、佐橋っ……! 遼輔、しょうがねえからそこの公園に車を停めてくれ!」


 巡査部長の駒谷光弘(こまたにみつひろ)が、慌てた様子で運転席に身を乗り出して叫ぶと、すぐさま巡査長の秋月遼輔(あきつきりょうすけ)がパトカーを路肩に寄せて停車させた。


 十月に入り、暦の上ではもう秋と呼んでもいい頃合いだというのに、深夜の外気は蒸し暑い。車のエンジンを切ると、車内にいる全員の額に、いっせいに玉のような汗が浮かんだ。


「お~い! 早くしてくれよ! 漏れちまうよ!!」


 佐橋と呼ばれた男は、再び股間をもぞもぞと動かして、切羽詰まった演技をしている。横に座っている光弘が、額に血管を浮かべて彼を睨み付けた。だが彼は素知らぬ振りをして、その視線から目を背けた。光弘は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、男の腕を掴んでパトカーから引きずり下ろすと、そのまま公衆便所にゆっくりと向かっていった。その前を、遼輔が周囲を警戒しながら歩き、先導する。

 普通に歩けば一分ほどの距離だろうか。その数倍の時間をかけて三人がようやく目的地へと辿り着くと、彼らとすれ違うようにして、グレーのパーカーに身を包んだ男性が中から飛び出してきた。一瞬、その男はたじろいだように見えたが、深夜にこんな場所で警察官に出くわせば誰でも驚くだろう。そう判断した遼輔と光弘は、彼を無言で見送ると便所へと足を踏み入れ、それから小便器に垂れ下がった注意書きに呆れ声を上げた。


「【故障中】だと〜? しかも、二つともか! 我慢してたが、私もまあまあ漏れそうだっていうのに……。遼輔、お前はどうだ──?」


「すっ、すみません、先輩!! オレもう無理っす! 容疑者が入る前に、事前確認するってことで、先にトイレ使わせてくださいっ!!」


 上司の返事を待たず、脇目もふらずでトイレの個室に駆け込むと、遼輔は勢いよく扉を閉めた。その様子に、男が厳つい顔を歪めて、ほくそ笑んだ。


(想定通りだ。これで『俺たち』は──)




 佐橋晋也(さはししんや)、三十二歳、同性愛者。暴力団、諏訪組の構成員。日常的に鍛えているため筋肉質ではあるものの、身長は日本人男性の平均ほどである。早熟タイプで、中学で成長が止まってしまったことによる、身長に対してのコンプレックスあり。そのコンプレックスのせいで、彼には自分よりも大きくたくましい人間になりたいと強く願う、変わった性癖があった。屈強で精悍な顔つきの男性──、特に自分とは正反対の職種である清廉潔白な警察官などが好みで、毎晩のように、自分とガタイのいい警察官の肉体が入れ替わったところを想像しては自慰に耽っていた。


 そんなある日、彼が耳にしたのが、魂と肉体を分離させるという公衆便所の噂だった。いかにもうさんくさくて、眉唾レベルの話だ。しかし、もし本当だったら……。

 そう妄想した彼は、居ても立ってもいられなくなり、先輩である諏訪組の若頭に声をかけた。若頭もまたゲイであり、組織のナンバー2まで上り詰めたものの、ヤクザとは違う存在になりたがっていたのだ。


 その日から彼らは、リサーチを行った。運よく彼らの生活圏にある交番に勤務する男性警察官二人が、高身長でたくましい、理想的な肉体の持ち主であることを突き止めると、狙いをその二人に定めて観察を続けた。

 二十六歳の巡査長と、三十四歳の巡査部長。ともに元ラガーマン。身長は180センチを優に超え、鋼のような分厚い筋肉の上にむっちりとした薄い脂肪が乗った、たまらない肉体の持ち主だ。そして顔の方も素晴らしい。短く刈った髪に、四角い顔。いかにも正義感たっぷりといった太い眉と大きな瞳、がっしりとした鼻筋に濃いヒゲ。眼光鋭く野性味に溢れる男たち二人が並んで交番で職務に就いている姿など、まさに至極の光景だった。


 そして、その二人が同時に夜勤にあたる日が、今日だったというわけである。


 打合せどおり晋也と若頭は、計画を進めることにした。『不審者がいる』と匿名で直接交番に電話をかけ、意中の警察官たちを呼び寄せる。それからは、とんとん拍子に事が進んでいった。もしも便所の噂がただの都市伝説だったとしても、きっと晋也は何事もなく解放されるはずだ。暴力団員だということは十中八九ばれるだろうが、彼が悪事を働いたという証拠はどこにもないのだから。


 これまでのこと、これからのことを晋也が考えていると、個室の扉を開いて遼輔が出てきた。どこかすっきりとした表情を浮かべた彼は、光弘が便所の外を窺っている隙を狙って、晋也の耳元に口元を近づけて何事かを呟いた。その言葉に、晋也がニンマリと顔をほころばせる。


「あ~、漏れる漏れる。すみません、それじゃお先に、駒谷巡査部長……」


 訝しむ光弘を横目に扉を閉めた彼は、両手の指を絡めてトイレの神に祈りを捧げた。その行為こそ、肉体と魂が分離された後でも、記憶を保ったままでいられる裏技。もちろん、この技を記憶に留めているのも、彼のようにこのトイレの噂を信じている人間だけだ──。

 十分に祈りを捧げ終えた晋也は、ズボンと下着を下ろして便座に腰を下ろした。そして用を足した瞬間、彼の肉体からは魂が抜け、その空になった肉体に今度は【秋月遼輔】の魂が吸い込まれた。


「う〜ん……。あれ? なんでオレの手に手錠がかかってるんだ? ……それにこの服、この体……?!」


 【佐橋晋也】が着ていたはずの服を、自分が着ている。そして股間には見慣れないイチモツがぶら下がっていて……。奇妙な状況に目を白黒させた晋也は、ズボンを穿くのも忘れ、個室から外に飛び出すと、光弘に縋りついた。


「せ、先輩っ! このトイレおかしいっす!! なんでかオレが佐橋になって、もがぁっ──?!」


 後ろから遼輔に羽交い絞めにされて、口を塞がれた晋也に、光弘が戸惑いの視線を向ける。


「さっきからなんなんだよ、お前はっ?! 話があるなら、あとで聞いてやるから。私も漏れそうなんだよ! とりあえず、先に小便させてくれっ!!」


 晋也と入れ替わりに個室に入ると、光弘は扉の鍵をかけた。もう膀胱はパンパンで、漏れる寸前だ。カチャカチャとベルトのバックルを外して、ズボンと下着を下ろすと便座に腰掛ける。そして安堵のため息を吐きながら、彼がチョロチョロと小便をし始めた瞬間、その肉体から彼の魂が解放された。そしてその抜け殻になった肉体に入るのは、【佐橋晋也】の魂だ。ねっとりとした彼のどす黒い魂が、屈強で精悍な顔をした光弘の口内へと無遠慮に潜り込むと、その魂は光弘の肉体に瞬時にして馴染んだ。鈴口から尿を出し終えた彼はうっとりとした表情で己の肉棒を撫でさすると、何事もなかったように下着とズボンを上げ、個室から颯爽と姿を現した。


「んふ……♥ さあ、お前ら。すっきりしたよな? じゃあ、派出所に戻るとするか」




 交番へと戻るなか、パトカーの中で晋也がヒソヒソと光弘に語りかける。


「先輩、オレ遼輔っす! 【秋月遼輔】です。なんでか分からないんすけど、トイレで用を足してたって思ったら、いつの間にかこの身体になってて……」


 涙目になって訴えかける晋也。しかしその肉体はどこからどう見ても【佐橋晋也】のモノである。そんな彼の耳元に口を近づけると、光弘は囁いた。


「残念だったな、遼輔。お前の尊敬する光弘先輩はもういない。この肉体を操っているのは、俺──、【佐橋晋也】だ♥ そして今日からはお前が、俺の代わりにその肉体の持ち主になる。お前こそが、佐橋晋也になるんだよっ!!」


 晋也の耳の中で、光弘の野太い声がぐわんぐわんと木霊する。魂の器となっている肉体の名で呼ばれたのをきっかけに、彼が警察官だったころの記憶が朧気になっていく。【秋月遼輔】としての記憶が【佐橋晋也】の記憶で塗り潰され、消失していく感覚──。それはあまりにも甘美で、中毒性のある陶酔感だった。その快楽に身を委ねれば、取り返しのつかない事態になるというのが分かっているのだが、それでも彼はさらなる深みへと嵌っていく──。


「佐橋晋也……、オレが……さはし……しんや……」


 うわ言のように呟くと、晋也は光弘の身体に寄りかかった。あまりの心地よさで、股間はギンギンに勃起している。そんな彼の膨らみを揉んでやると、光弘は再び彼に耳打ちした。


「おっと、しっかりしろよ、遼輔。お前は、【秋月遼輔】なんだぞっ♥」


 己の存在を失いかけていた晋也が、その一言で全身をビクリと震わせた。快感に負けて、別の人間として生きていくことを受け入れようとしていたことを思い返して、背筋に幾筋もの冷や汗が垂れ落ちる。


「いったいどういうつもりなんすか、光弘先輩……、いや佐橋?!」


「どうもこうもねえよ。お前が慌てふためいている姿が面白くて、ついからかっちまっただけだ。悪かったな。だがな、あのトイレの秘密を知っている俺と違って、何も知らないやつらは憑依した肉体の名で呼ばれると、あっさりと過去の自分のことを忘れちまう。お前も【秋月遼輔】だったこと、忘れたいか? 気持ち良くなりたいんだったら、呼んでやるぞ。お前は佐橋──」


「違う! オレは……、秋月遼輔だ!!」


「ちょっ、何言ってるんすか? 秋月遼輔はオレっすけど、どうしたんです、この人?」


 どうやらいつの間にか、パトカーは派出所に着いていたらしい。後部座席の扉を外から開いた遼輔が、おかしなモノでも見るような目付きで、晋也と光弘を交互に見つめる。


「気にするな、遼輔。こいつ、自分は【秋月遼輔】だ~ってさっきから喚いていてな。トイレで私たちの魂が入れ替わっただとかなんとか、おかしなことを言ってやがるんだよ。ヤクでもやってるのかもしれん。気を付けろ、何をするか分かったもんじゃないからな」


 遼輔に気付かれないように晋也の首筋に息を吹きかけると、光弘は口角を上げて笑みを浮かべた。


「さあ、交番に着いたぞ。いつまでお前が、【お前】らしくいられるかな?」




 派出所の中に入り、椅子に座ると、晋也は手錠を掛けられた両手で頭を抱えた。自分が【秋月遼輔】だと、繰り返し念仏のように頭の中で唱えていないと、かつての記憶が欠け落ちていきそうになる。


「オレの名前は、秋月遼輔……。オレは……」


 何度も自分に言い聞かせるように彼が呟いていると、その背を光弘が軽く叩いた。その目は三日月型を描いていて、唇は薄っすらと吊り上がっている。晋也の必死な様子が楽しくて仕方がないという表情だ。光弘は晋也の両肩を大きな掌で揉むと、驚くべき提案を彼に投げかけた。


「元に戻りたければ、お前はかつての自分──、【秋月遼輔】とセックスをしろ。そうすれば、お前が元に戻れるように手伝ってやる。他人とじゃない。相手は以前の【お前】なんだから、簡単だろ?」


「そんな……、【オレ】とセックスなんて……」


 なぜ、以前の【自分】とセックスをしなければならないのか? いったいどういう仕組みで、入れ替わった肉体を元に戻すつもりなのか? 自分の魂が元の肉体に戻れば、今【秋月遼輔】の肉体に入っている魂はどうなるのか? そもそも、この男の言うことを信じていいのだろうか?

 頭の中では次から次へと疑問が浮かぶものの、そんな不安とは裏腹に彼の脳内を最も満たしていたのは、かつての自分のアナルにチンポをハメたいという願望だった。


「まあ~、別に私はどっちでもいいんだぞ? 私自身はすでに理想の肉体を手に入れたからな♥ だがな、お前は元の自分に戻りたいんだろ? だったら選択肢は一つだ」


 晋也が顔を上げると、壁に掛けられた鏡に光弘の口元が映っていた。それはまるで、悪魔のような微笑みに見えた。




「ちょっ、先輩っ! なんでこんなことするんですか?! おかしいっすよ!!」


 交番の奥にある仮眠室に遼輔を連れ込み、両手を手錠で拘束すると、光弘は彼のズボンと下着を下ろして跪かせた。そしておもむろに晋也の鞄から取り出したローションを自身の指に垂らし、遼輔の肛門の中に一気に三本突き入れると、穴を広げるかのように中でぐるぐると指を回して弄り倒した。


「あ゛っふうぅ……、せんぱいっ! や、やめてくださっ……お゛っ♥」


 遼輔は唇をきつく噛んで口を噤もうとしたが、我慢できずに熱い吐息が漏れ出した。光弘の無骨で太い指が腸壁を蹂躙するたびに、遼輔の脳天に電撃のような快感が迸る。男色の気などいっさいない彼だが、まるで身体が心を裏切るかのように腰を震わせて反応を返してしまう。その反応を面白がった光弘は、指の動きをさらに激しくした。遼輔自身は抗おうと必死なのだが、彼の肛門は光弘の指を離すまいときゅうきゅう締め付ける。


「はぁん♥ やめ……、お゛っ♥ んお゛ぉ~~っ♥♥」


「おいおい、遼輔ェ。警察官がそんな下品な声を出すもんじゃないぞ。いくらケツ穴を弄られるのが好きだからっていってもよぉ。こんなに俺の指を咥えて離したくなさそうにするなんて、とんでもない変態マンコだな♥」


「ちがっ……そんな、お゛っ?! あ゛あぁッ!!」


 反論する間も与えず光弘が前立腺を指先で押し潰す感触に、遼輔が額に汗を滲ませて身悶えた。全身はすっかりと弛緩して、ヒクヒクと震える肛門の穴は、異物を受け入れる準備を万端にしている。


「くふっ♥ ほら、佐橋ィ……。見てみろよ、このケツマンコ。ピンク色の極上のアナルが、お待ちかねだぞ? この穴にお前のチンポを入れて、ズボズボやったら気持ちいいぞぉ。いずれ元の身体に戻れるんだ。なら、この【入れ替わり】の状況を楽しもうぜ。お前も素直になれ♥」


 光弘は晋也の尻に自身の膨らんだ股間を擦り付けると、分厚い掌でシコシコと彼のチンポをしごいてやった。どこを刺激すれば気持ち良くなれるか熟知した指の動きに、晋也の亀頭から瞬く間に透明の汁が溢れ出る。

 快感に打ち震える彼の耳元で、追い打ちをかけるように悪魔が甘い囁きをして誘惑する。穴の中にチンポを入れるだけ。それだけで極上の快楽を味わえる。その甘言が、朦朧とした晋也の意識をぐずぐずに溶かしていく。痛くなるほどに硬くなった肉棒が、燃えるように熱い──。


 フワフワと夢見心地のようになった彼は、とうとう遼輔の尻の谷間に開いた穴の中へと、自分の大事な一部を挿入してしまった。


「あ゛ぁっ、入ってく……♥ 気持ち……、イイ゛ッ♥♥」


「んぎっ、あ゛あぁぁぁっ♥♥ さ……佐橋ィっ! 何してるっ?! やめろお゛っ!! け……ケツが、壊れちまうぅぅっ……!」


 肉の塊を受け入れて、ミチミチと広がっていく遼輔の尻の穴。晋也が腰を振るたびに、遼輔の肛門からぐちゅぐちゅと卑猥な水音が漏れ聞こえる。初めて体験する刺激に、彼の腸壁は熱くうねってその原因となる異物に絡み付いた。

 その快感に、晋也は思わず涎を垂らした。同性のケツの穴への挿入。さらには、かつての自分を犯すという倒錯的な行為に、彼は酔いしれずにはいられなかった。通常では得られない背徳感が彼をより興奮させ、腰を振る動きを加速させる。チンポが腸壁を擦るたびに、脳細胞が多幸感で焼き切れそうになる。


 あと少し、もう少しだ……。どうにかこうにか正気を保ち続けていた彼は、一心不乱にチンポをかつての自分の肛門の中に出し入れし続けた。これが終われば、元の肉体に戻れる。そうすれば、この気が狂いそうになるような、異常な事象からも解放されるのだ──。


「出るっ! イ゛ック……、うお゛ぁぁぁぁッ♥♥♥」


「んごぉ゛っ!! お゛ッ♥ あ゛っ♥ はあぁ……、いいぞ。射精してくれ、佐橋ィ。オレの中にお前が中出しすれば、すべてがうまくいく。あ゛っ♥ あ゛んっ♥♥」


 口元を緩ませた遼輔のアナルが、晋也の男根をギュウギュウと締め付ける。その心地よさに、彼は遼輔の腸内の深奥で射精を繰り返した。どろりとした黄ばみがかった濃厚な精液が、遼輔の直腸にたっぷりと注がれる。そのたびに反り返った彼のチンポが、びゅるびゅると精液を吐き出して止まらなかった。




「はあぁぁ……♥♥ 佐橋、興奮したぜ♥」


 彼らのセックスを横で見ていた光弘もぶるりと全身を震わせると、手淫に導かれてだらしなく射精した。彼のチンポの先端から飛び出た精液が、遼輔のガタイの良い胸板を汚す。頬を紅潮させた遼輔は、先ほどまでの困惑した表情を一変させ、口角を吊り上げた。


「さて、これで万事オーケーってこったな♥」


 どこかけだるげな声音で呟くと、遼輔は彼にもたれかかる晋也を押しのけて上半身を起こした。そして光弘が手錠の鍵を使って彼の拘束を解くと、胸に纏わりついた精液を指ですくって舌で舐め取った。


 魂と肉体を分離する公衆便所。その個室を利用する前に神に祈りを捧げることで、『過去の記憶』を保ち続けることができるものの、それには二十四時間という制限がある。だが、その二十四時間以内に、【以前の自分の肉体を使用している人間】もしくは【今自分が使用している肉体の本来の持ち主】のどちらかと性行為を行えば、永遠に『過去の記憶』を失うことがなくなるのである。つまり、警察官の肉体となった二人は、どちらもが晋也とセックスをすれば、これからもヤクザだった頃の記憶を維持したまま警察官として新しい人生を歩んでいけるのだ。



「若頭、どうでした? ノンケ野郎の身体でケツ掘られた感想は?」


「へっへっへ♥ あぁ、最高だったぜ……。若いマッポに成り切って、無理やり犯されるプレイはよぉ♥ こんな快感、味わったことがねえ。チンポがギンギンに勃起するわ、ケツ穴掘られるたびに、【秋月遼輔】の記憶が脳味噌の中に蘇ってくるわで、薬キメたときの何十倍も気持ち良かったぞ♥♥」


 眼下を見下ろしながら、分厚い両掌で胸から割れた腹筋へと手を滑らせ、熱い吐息を漏らすと、遼輔は再びイチモツを震わせた。粘ついた白濁液が彼のガタイをドロドロに汚していく光景を見て、光弘は満足そうな笑みを浮かべる。


「そりゃあ良かったです。今日からは【私】のほうが、上司という立場になるが、許してくれよな【遼輔】?」


「おう、当たり前だ──。全然気にしないでください、先輩っ! むしろ、【俺】の後輩だった人が、今日からは先輩になるだなんて、興奮して興奮して……あぁ♥ 勃起が治まりそうにありませんよ、光弘先輩♥♥」


「おい、手前らっ!! 望み通り、セックスしてやったんだから早く俺の身体を元に戻しやがれッ!!」


 二人の会話に割って入り、大声でがなりたてる晋也。そんな彼を一瞥すると、光弘はクスリと小馬鹿にするかのように微笑んだ。


「落ち着けよ、佐橋。こいつとセックスをすれば元に戻れるように手伝ってやるとは言ったが、すぐにとは言ってないだろう? ちょっとは警察官としての生活を楽しませてやってくれよ。それに鏡見て見ろよ、お前、鬼みたいな面してるぞ。お前が元は警察官だったなんて、誰も信じないだろうな。頭の中身も前とは違って、ガチムチ野郎どもとセックスしたくてしょうがなくなっちまってるんじゃないか? ほら、チンポが勃起しっぱなしだ♥」


「ふざっ、ふざけんなっ!! 俺は、男でなんか興奮しねえっ! これは俺の意思じゃ……。くっ、見るんじゃねえ!!」


 晋也は光弘の視線から股間を隠そうと、両手で覆い隠した。しかし彼のチンポは、そんな努力も空しくムクムクと大きくなって天に向かってそそり立ってしまう。


「ほら、やっぱりお前は【佐橋晋也】だ。男好きなのがバレバレだぞ? まあ安心しろ。お前のやらかした悪事はすべて知ってるが、逮捕はしないからよ。お前も、一度堕ちちまえばいい♥ チンポハメるだけじゃなくて、突っ込まれたくて仕方ないんだろ? その滾った性欲、私たちが解消してやるからよぉ♥♥」


「うるせえ! お前らみたいな変態と一緒にするんじゃねえっ!! 俺は……、俺は……あぁっ!?」


 思わず大きな声を上げた晋也の口内に何かが押し入ってきた。光弘が彼の喉奥目掛けて思いっきり突っ込んだのだ。吐き気と息苦しさで目を見開き、抵抗する暇も与えられずに晋也は喉の筋肉で光弘のチンポを締め上げてしまう。


「おうぅっ! 喉マンコ、すっげぇ締まるぞ。苦しそうな表情もなかなかそそるな♥♥ おい、遼輔交代してくれ! 今度は私が、バックからチンポハメてやるからよ。こいつのケツマンコ、ディルドで弄りまくっててすっかり解れてるから、すんなり入るだろうよ♥」


「了解です、先輩! ほら、佐橋ィ。さっさと四つん這いになって先輩にケツ向けやがれ。喉の方は、オレが犯してやるからよぉ♥」



*


「ん゛っ……、あがぁっ!! はぁん♥ あ゛ぁ~~ッ!!」


 肛門を穿られながら、晋也は涎を垂らした口から野太い嬌声を漏らしていた。警察官として正義の使命感に燃えていた彼のたくましいボディーは他人に奪われ、彼自身は今やかつての先輩の肉体を乗っ取った男に犯されながら、口内には【さっきまでの自分】の肉棒を喉奥まで咥え込まされている。ケツ穴にチンポを出し入れされるたび、喉奥をチンポで犯されるたび、抗おうとする意志が快楽によって呑み込まれていく。彼の肛門は、まるで愛液塗れになった女陰のように、腸液でぐしょ濡れになっていた。

 そして腸壁がチンポに絡みつき、きゅうきゅうと締め付ける感触に、光弘も堪らず声を漏らした。


「くぅっ! うむ、いいぞ、佐橋ィ♥ お前のケツマン、最高だッ! ん゛っ……、あ゛ぁっ!! チンポが吸い取られるッ♥♥」


 晋也の腸内の具合の良さに思わず声を上げた光弘は、彼の直腸の最奥で絶頂に達した。前立腺をごりごりと押し潰され、腸壁を熱いザーメンが満たす感覚は、晋也の脳天にまで快感となって駆け抜ける。それに合わせるようにして、彼の口内に大量の精液が流し込まれる。その青臭く粘ついた液体をゴクゴクと喉を鳴らして飲み干しながら、晋也は恍惚とした表情を浮かべていた。自分自身の精液を摂取するという現実離れした行為に、彼はどうしようもなく興奮を覚えてしまっていたのだ。だが同時に、自分が自分ではなくなっていくという喪失感も、彼の心の中には芽生えつつあった。


「ん゛っ♥ んごぉ……、おぼぉぉっ! げほっ!」


 遼輔のチンポが口内から引き抜かれると、晋也は咳き込みながら床に崩れ落ちた。ケツ穴からはどろりとした精液が漏れ落ち、肛門の筋肉が収縮と弛緩を繰り返すたびに、全身を電流が駆け巡って脳が震える。汗と涎に塗れた顔面は快感に緩み、筋肉質な肉体はぶるぶると痙攣して、全身で悦びを表現している。屈服してはいけない。ヤクザとして生きていくことなど、望まない。だがいくら彼がそう強く願ったところで、彼の心はすでに肉体に蝕まれていた。


「あ゛っ♥ お゛ぉッ♥♥ 佐橋ィ……、お前は本当に最高の肉便器だっ♥ どんだけケツ穴、弄ってやがんだぁ?」


 バックで掘られながら喘ぐ晋也の尻タブを見下ろしながら、光弘は前後に腰を動かして肛門の感触を貪り続ける。他人の肉体を乗っ取ってのセックス。力も性欲も漲るガチムチ警察官となっての性行為。異性愛者の肉体で男のアナルにチンポを挿入する快感は、彼が想像していた以上のものだった。


「くぅっ、もう出そうだッ! このホモ野郎! お望みのノンケ親父の種付けザーメンくれてやるっ!!」


 腰を振りながら唾を撒き散らすと、光弘は股ぐらを晋也の尻にパンッと激しく叩き付け、腸内に精液を流し込んだ。直腸を満たす熱で、晋也の瞳にハートマークが浮かび上がる。


「ん゛ほぉぉっ♥♥ お゛っ♥ お゛~ッ♥♥」


 涎と鼻水を垂らし、アヘ顔を浮かべながら晋也はガクガクとチンポとケツマンコを痙攣させた。警察官として正義のために身を挺してきたというのに、今は自分を罠に嵌めた男にチンポをハメられて悦んでいる。もはや思考能力すらも吹っ飛んでしまいそうな快感が彼の全身を駆け巡り、脳髄でバチッと火花が散って、大切な何かが焼き切れたのを感じた。


「どうだぁ? 私のチンポは最高だろぉ♥ ん゛っ、ふぅ~~♥♥」


「あっ♥ あひっ♥♥ さ、最高れす、お巡りさんッ!! お゛ぉっ♥ お゛~っ♥♥」


 ケツイキを繰り返すたびに、晋也の肛門がキツく締まって光弘のチンポを締め上げる。その快感につられてまた彼もケツ穴の中で射精を繰り返し、幾度と無く直腸を白濁液で満たしていった。


「佐橋ィ……、良い顔になったじゃないか♥」


 晋也の首筋に、光弘がねっとりと舌を這わせる。その刺激に、晋也は全身をぶるりと震わせた。警察官だったという記憶は、消えることなくありありと残っている。己の肉体を奪われたという屈辱もだ。いつか元の肉体へと戻り、こんな状況を生み出したこいつらを断罪してやる──!

 ついさっきまでのそんな復讐心とは裏腹に、今の彼の肉体はチンポを貪り続けていた。どろりとした粘液が溢れ出るほど腸内に種付けされたというのに、まだ足りないとばかりに肛門の筋肉はヒクつき、イチモツの形を覚えようと必死に疼いている。


「あ゛ぁっ♥ 【俺】の名前は……、ん゛ぉぉっ♥」


 快楽に流され、堕ちていく。人生最大の幸福感を味わいながら、彼はぼんやりとした意識で自分の新たな名前を呟いた。



***


「パトロールお疲れ様っす、光弘先輩!」


「あぁ、お疲れ。お前ら、もうヤッてるのか? 外まで匂いが漏れてきてるぞ。気を付けろ!」


 後ろ手で仮眠室の引き戸をピシャリと閉めると、光弘はただいまの挨拶とばかりに遼輔に口づけた。軽いバードキスでお互いの唇を愛撫し合い、二人は舌先を絡ませて唾液を交換する。


「こいつがもうオレに夢中で、チンポしごいてやったらすぐにイッちまうんすよ」


 狭くて暗い、小さなテーブルと仮眠用の布団以外はこれといって何もない部屋。光弘がパトロールから帰ってくる前から、そこには佐橋晋也がいた。二人よりも十センチ以上背の低い彼をサンドイッチのように間に挟むと、雄のフェロモンで満たされた室内で三人で抱き合う。


「ああっ、良い匂いだっ♥」


 肌を触れ合わせるなり、光弘は我慢汁まみれのチンポをズボンから取り出し、晋也の男根に擦り付けた。一日中雄セックスに思いを馳せていたせいで、彼の下着はカウパーで白いシミができている。光弘はそんな下着を、遼輔の口に押し当てた。


「んむっ……、あふぅ♥」


 むせ返るような性臭を嗅いだ途端、遼輔の股間が熱く滾りだす。濃厚な雄の香りにクラクラと眩暈を起こしながら、光弘の下着を堪能し終えると、彼は無骨な両掌で自身の尻の穴を広げながらチンポを震わせた。昨晩は【秋月遼輔】に成り切って、彼の妻が満足するまでセックスをし続けた。おかげで今は、ノンケの振りをした反動で、ケツマンコの疼きが止まらなくなってしまっている。


「チンポっ♥ 佐橋っ、早くオレに、お前のヤクザおちんぽくれよっ♥♥」


 晋也に背を向けた遼輔は、彼を誘惑するように尻を左右に揺すった。顔を顰める晋也に対し、光弘は待ちきれないとばかりにペニスをそそり立たせた。あまりにも大きなズル剥けの男根は、血管を浮き上がらせてビクンビクンと脈打ちながら先走りの汁を垂らしている。その雄々しい姿を目にするだけで、遼輔の秘部が疼いた。


「へへっ♥ 遼輔ェ……。ちょっと前まではノンケの警官だったってのに、すっかり淫乱な身体になっちまってよぉ♥♥ 佐橋も遼輔のこと、エロいって思ってんだろ? こいつも【秋月遼輔】の肉体に飽きたら、お前に身体を返してやるって言ってんだからよ、今のこの状況を楽しめばいいんだよ。ほら、ピンク色の雄マンコがお前のチンポを待ってるぞ♥」


 晋也はフラフラと遼輔の元へと歩み寄ると、光弘に促されるままに肉厚な尻に自身のチンポを押し当てた。そしてゆっくりと腰を突き出すと、彼の亀頭が閉じていた穴を押し広げて、中へと侵入する。


「ん゛っ♥ お゛ぉっ♥♥ 佐橋のおチンポ……、入ってくるぅっ♥♥」


 腸壁越しに伝わる熱と脈動に反応し、遼輔は野太い嬌声を漏らしながら腰を震わせた。もはや日常的にディルドで責め続けた肛門は、あっさりと晋也のマラを受け入れていく。太く長い肉幹が腸壁を抉り、擦り上げるたびに快感が走り抜けて腰が砕けそうになる。チンポとケツマンコを繋げ合うその感覚は、まさしく至高の快楽だった。


「んひっ♥ 最高だぜ、佐橋ィ♥♥ オレ、嫁が妊娠したってのに、この身体の本来の持ち主であるお前のチンポで、ケツマンコ感じちまってるっ♥♥」


「お゛っ♥ 奇遇だなあ、遼輔ェ。私の妻も妊娠したらしいんだ。始めは女とのセックスなんてできる自信はなかったが、【駒谷光弘】に成り切ってみたら、奴の妻を寝取ってるみたいで興奮して射精が止まらなくてなあ♥♥ チンポから出るザーメンも濃くて、子種がたっぷり含まれてる感じがしたしな♥」


「あ、それ分かるっす! オレもこいつ──、本物の【秋月遼輔】が絶望したところを想像しながら嫁のおマンコを犯すのが気持ち良くて、一発で孕ませちゃいましたもん♥♥」


「はははっ! お前もなかなか悪い奴だな。こいつに、飽きたら身体を戻してやるって言ったのも、実は嘘なんだろう?」


「あはっ、バレましたぁ? もうオレ、このガチムチ警官の身体じゃないと満足できそうにないっす♥♥ ノンケのマッポとして嫁を愛する振りしながら、裏では同僚である先輩ともセックスするっていうこのシチュエーション、めちゃくちゃ興奮するんですよね♥ こんな最高の身体、他にありますか?」


 遼輔のアナルに夢中になって腰を前後させる晋也の背後に回ると、光弘は彼の尻の穴にチンポを近づけた。


「まあ、当分は現れないだろうな! ガキのいるノンケの父親同士で、こんな濃厚雄セックスができることなんて、この先無いかもしれんぞっ♥ ほらっ、佐橋! お前は私のチンポをその淫乱なおマンコで咥えろっ♥♥」


 ずぷりと、光弘の極太マラが晋也の尻の穴に埋め込まれる。もはや男根の形に変わるほどにアナルを開発されてしまった晋也は、その快感に涎を垂らしながら酔いしれた。肛門は光弘のチンポに吸い付き、腸壁が蠢いて締め上げるたび、彼の射精を促すような快感が走る。



「ん゛ぉっ! お゛っ♥ 絞まるッ♥♥」


「お゛ぉッ♥ おほっ♥♥ あ゛っ……あ゛ぁ~~ッ♥♥」


 挿入の刺激だけで絶頂に達してしまい、晋也のチンポからはどろりと濃い精液が垂れ流れていた。もはや尻の穴は、彼が無意識のうちにも男のチンポの形を記憶するように、ギュウギュウと締まり続ける。


「もうイッちまったのか? とんだ早漏野郎だな、佐橋ィ! そんなんじゃもう、女を満足させるなんて無理だろ? これからもお前が男を相手にできるように、私たちが直々に調教してやるからな!」


 光弘はニヤッと笑うと腰を振り始めた。彼が腸壁をゴリゴリと抉りながらチンポを出し入れするたび、晋也の視界に火花が散って意識を失いそうになる。だが、その感覚すらも心地よい。先ほどの彼らの会話で、もう二度と自分が【秋月遼輔】に戻れないのだということを悟った。しかし今の彼は、そんなことさえもどうでもよかった。ただ目先の快楽に溺れて、今はこの肉体を堪能するだけだ。

 かつての自分の姿をした男のアナルを犯し、先輩警官の肉体を奪った男の極太チンポで掘られるのが堪らなく気持ちいい。肉体を乗っ取られ、妻を寝取られた挙句に妊娠させられ、人生すらも奪われてしまった。なのに、その事実が晋也の身体の芯を熱くさせる。


「ん゛おぉっ♥♥ ああぁっ♥ チンポ気持ちいいッ♥♥」


 光弘にケツマンコを抉られながら、晋也もまた腰を振る。尻の穴を犯されることにすっかり慣れ親しんでしまった彼は、本能のまま淫らに乱れる肉便器と化していた。


「オラッ! ノンケパパのザーメン注いでやるからな、佐橋ィ♥♥ ん゛っ♥ あ゛ぁっ♥ お゛ほぉっ♥♥」


「あがぁぁっ♥ あっ、あぁっ、イ、イグゥッ!! おまわりさんッ♥♥」


 そして三人は同時に絶頂に達した。尻の穴に精液をどぷどぷと注がれる快感に酔いしれながら、晋也と遼輔もまた自身のチンポから白濁液を垂れ流している。

 光弘の極太マラがぬぷりとケツマンコから引き抜かれると、晋也は快感の余韻に体を震わせながら、遼輔に覆い被さった。魂と肉体を汚された彼の脳味噌の中はぐちゃぐちゃで、もはや正常な思考を保てなくなっていた。


 彼の頭の片隅に残っていた『元の肉体に戻りたい』という感情は、『他人の肉体を奪いたい』という【佐橋晋也】本来の感情で上書きされている。自分よりもガタイのいい雄の肉体を乗っ取りたい。雄臭いノンケのボディーを手に入れて、その男の人生を味わいたい──


 筋肉隆々の警察官二人に挟まれた晋也は、あの公衆便所のことを考えながら、ニヤニヤと不気味な笑みをたたえるのだった。


(了)

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