──ピンポーン。
「サガラ急便でーす。小野英造(おのえいぞう)さんにお届け物っす!」
(やっと来たか……)
待ち望んでいた商品が届いたことに小躍りしたくなる気持ちを抑えつつ、私は玄関の扉を開けた。
「あっ、どーも。小野英造様ですね? 受け取りのサイン、いただけますか? ……あざっす! あとですね、商品が間違ってないか確認が必要らしくて──」
男性の褐色に焼けた厳つい顔がほころんで、白い歯がこぼれる。さわやかな笑顔に、長身で筋肉質な偉丈夫。上半身の筋肉や足腰は見るからに頑丈そうでたくましく、配達員というよりもプロの格闘家といった風貌だ。そんないかにもスポーツマンといった風体の男の、有名配送業者のポロシャツ制服姿が、なんとも色っぽい。
小包を受け取りながら、値踏みするように彼の肉体を観察し終えると、私は再び彼の顔へと視線を戻した。猪のような太い首に、顎のがっしりとした四角い顔。針金のように硬そうな、ツンツンとした短い黒髪。無表情なら威圧感を与えそうでもあるが、愛想のいい笑顔のおかげか、印象はかなり違って見える。
正直言ってエロイ。ガタイの良い男がメガネをかけている姿は色気があるし、もみあげ同士を繋ぐように生えたヒゲもセクシーだ。強面のせいで少し老けて見えるが、肌の具合や筋肉の張りを見るに、二十代半ばといったところだろう。
「ガムテープは俺が切るんで、お荷物持っててもらえますか?」
私は平静を装いながら、彼がカッターで小包に貼られたガムテープを切り裂く様を見つめた。ポロシャツの腋部分は汗染みで黒ずんでおり、胸の谷間や額には汗がにじんでいる。至近距離にいるせいで、制汗剤では隠しきれない若い雄特有の何とも言えない匂いが、私の鼻の奥をこれでもかというほどに刺激してくる。勃起に気付かれないように股に挟んだ私のチンポの先からは、おそらく先走りが溢れ出しているだろう。
「はい、どーぞ!」
犬コロのような彼の笑顔に促され、私は小包の中身を取り出した。中から出てきたのは、黒檀でできた弁当箱サイズの箱。嘘か真か、この箱を開けば私の願いが叶うかもしれない。私は高鳴る鼓動に気付かれないよう平静を装うと、その箱の蓋をゆっくりと開いた。
「あれ? 何も入ってないっすね……」
配達員の言う通り、箱の中には何も入っていなかった。だが蓋を開けたのをきっかけに、箱の底から真っ白な煙がもくもくと湧き出し、それは私たち二人の鼻の中へと吸い込まれていった。鼻腔を突き抜けるアロマのような香り。それは私にとって、濃密な雄のフェロモンを想起させた。
──なんて甘美で、蠱惑的な匂いなんだ……。
鮮烈でありながら、身も心も蕩かせるような芳しい香りを放つ煙に頭の中まで蝕まれた私たちは、男根を勃起させながら無意識のうちに抱き合うと、口から溢れる『何か』を唇を通して交換し合った。
***
「う、う~ん……」
体がだるい。目を開きたくない。まるで二日酔いにでもなったときのように頭が重い。私はぼんやりとする意識の中で、抵抗するまぶたに力を込め、ゆるゆると目を開いた。掌が触れている地面が、ひんやりとして冷たい。その感覚は私に、望んでいたことが叶ったことを教えてくれた。
「や、やったぞ! 成功したんだ!!」
自分の口から漏れ出た低い声が耳に届き、脳が震えるのを感じた。眼下の両手を見つめ、それから体をペタペタと触る。目に映るのは青色の軍手をはめた大きな手に、血管の浮き出た、丸太を連想させるかのように太い両腕。股間へと視線を移動させると、肌にピッタリと張り付いたハーフパンツが窮屈そうにテントを張っていて、その中に隠された男性のモノが非凡な大きさをしているということが触らずとも理解できた。
(ハハハ! 凄い! 凄いぞ!!)
興奮する気持ちを抑えつつ、私はその場で静かに狂喜乱舞した。夢が叶った。【入れ替わり】の餌食になった相手は、ここ二、三年ずっと私の家を担当してくれている、配達員の内田竜馬(うちだりょうま)。竜馬の肉体は、私の理想に限りなく近いモノだった。雄々しい顔立ち、豊富な筋肉を持つ体躯。玄関の靴箱に備え付けられた鏡に己の肉体を映すと、改めて肉体交換が成功したのだという実感が湧いてきた。
ずっと触れたいと思っていたデコボコとしたマッチョな体を、指で自由になぞることのできる悦び。チンポが痛いくらいに勃起して治まらない。
(このたくましい雄の肉体から溢れ出るフェロモン、チンポが勃起していく時の感覚……たまらんっ♥♥)
脳内では、ドーパミンがドバドバと出ているのを感じる。おそらくパンツの中は、我慢汁でびっしょりだろう。今すぐ素っ裸になり、【今の自分】をおかずにチンポをしごいて、オナニーに耽りたい。しかし、浮かれてはいられない。私と肉体が入れ替わってしまった竜馬が目を覚ましてしまう。
「う~ん……」
ちょうど呻き声を上げた竜馬が、起き上がってきた。
「君……。だ、大丈夫か?」
私はしおらしげに困惑したような表情を浮かべると、か細い声で竜馬に話しかけた。目の前にいるのは、頭の天辺から足の先までさっきまでの自分の姿をした男。そんな光景に、勃起しないよう耐えていた私のチンポが、再び疼きそうになる。思わず頬が緩みそうになったのを我慢し、どうにかこうにか口を引き結んだ。
「えーと……、あれ? 俺、なにしてたっけ……?」
彼の頭はまだ朦朧としているようだ。私はキョロキョロと辺りを見回す竜馬を太い腕で抱え起こすと、矢継ぎ早に言った。
「ここは私の家だ。あの……、驚かないで聞いてくれ。私たち、どうやら身体が入れ替わってしまったみたいなんだ」
「えっ? うぉっ!! お、俺……っ?!」
私の顔や体を両手でまさぐった彼は、そのぷにぷにとした丸い手で自身のつるりとしたハゲ頭を撫で回すと、愕然とした表情を浮かべた。ようやく自分の置かれた状況を察したようだ。我々二人の肉体が入れ替わったという、この異常な事態に。
「入れ替わってしまったって、何?! ど、どうして……!? 一体どうなっちまったんだよぉ?!!」
「わ、私にも分からないんだ。目が覚めたら、こんなことに……」
何が何だか分からない。そういう態度を取った後、私はわざとらしくハッとした表情を作ると、原因となった箱を手に取った。
「これだっ! この箱のせいかもしれん!! 実は私は、変わった骨董品を集めるのが趣味なんだが……。この箱は【魂の匣(たましいのはこ)】と呼ばれるもので、中世ヨーロッパで『人間の肉体を交換する儀式』に使われていたアイテムらしいんだ。特定の条件下じゃないと【入れ替わり】が起こることは決してないと記されていたから、安易に箱の蓋を開いてしまって……。申し訳ない! 私のせいだッ!!」
私の必死な説明に理解が及ばない竜馬は、あんぐりと口を開けたままでいる。うっすらと涙を浮かべて彼の足元に縋りつくと、私は床に額を擦り付けた。
「すまん! 私のせいで、君に迷惑をかけてしまって……」
背中を丸めて泣いているような演技をし、落ち着いた頃に顔を上げると、【私】の顔をした竜馬はまるで毒気を抜かれたような表情をしていた。泣き落とし作戦が成功したらしい。
「顔、上げてください……。驚きはしたっすけど、小野さんは悪くないっすよ。俺が中身を確認するように言ったから、箱を開けただけなんですもんね?」
私を気遣ってくれている竜馬。罪悪感は感じるが、同時に馬鹿笑いしそうになる。なんて無垢な若者なのだろうか。涙と鼻水でグチャグチャになった顔をごつい手で拭うと、私は彼ににっこりと笑顔を作って見せた。
「ぐすっ……、ありがとう内田くん! 君は優しいな……。あ、そうだ! 仕事の方は大丈夫かい? このあとも配達があるんじゃないか?」
「あ、それは……」
顔面を蒼白にし、不安気な表情を浮かべる竜馬。くっくっく……。申し訳ないが彼に漬け込もう。恩を売って、彼と仲を深めるのだ。
「その……、まだ荷物が残っているんなら私が……、私に運ばせてくれないか? お詫びと言ってはなんだが、君のために罪滅ぼしをさせてくれ!」
「い、いや……。そんなこと……」
押し黙る竜馬に、私はたたみかけた。
「頼むッ! どうか詫びをさせてくれ! 終わった後は、煮るなり焼くなり君の好きにしてくれて構わんからっ!!」
タックルするようにして彼の腰に抱き着き、脂肪で弛んだ腹に頬を擦り付ける。必死に訴える私の様子に根負けしたのか、竜馬は口を開いた。
「……はぁ〜っ、分かりました。それじゃあ、お願いできますか? どうせこの姿だと仕事には戻れませんし、助手席でナビしますんで配達の方、お願いします」
*
「上手くいったな、内田くんっ!」
「んむっ……。ちょ、ちょっと小野さんっ! 何するんすか?!」
「わわっ、すまんっ!」
二人して私の自宅に帰り着いた私たちだったが、我慢しきれずに、私は竜馬の唇に吸い付いてしまった。突然の出来事に嫌がる素振りをみせた竜馬だが、その顔はまんざらでもなさそうだ。
「俺……、男とキスするの初めてだったんすけど……」
「私もだ……」
ふと股間に妙な感触を感じ目線を落とすと、竜馬のズボンもまた私同様もっこりと膨らんでいた。どうやらチンポの先から先走り汁を垂れ流し、染みまで作っているようだ。
「俺たち、これからどうしたらいいんすかね? 職場に報告したら、信じてもらえると思いますか?」
興奮しているのを悟られないように話を振ってきた竜馬に、私は合わせるようにして神妙な顔を作り、低い声で答えた。
「そうだな……。秘密にしておくのが無難だと思う。身体が入れ替わったなんて言って、信じてくれる人間が果たしているかどうか。頭がおかしくなったと思われて、即刻クビにされる未来しか見えないな……」
「クビ……。そ、そうっすよね……。はぁ~……」
想定通りだ。再びがっくりと首を垂れた竜馬に、私は助け船を出すように提案をした。
「と、とりあえず……。内田くんにとっては不本意かもしれんが、知人たちには【入れ替わり】のことは内緒にしておいて、お互いの振りをしつつ、元に戻れる手立てを少しずつ探していけばいいと思う。あっ、そうだ……!」
ドタバタと部屋の奥に駆けていくと、私はチューブで繋がった状態の二本の透明の筒を手に持って、竜馬の元へと戻ってきた。
「これを使ってみないか? これも不思議な骨董品の一つで【記憶共有装置】と言うんだが、この筒に互いの男性器を入れると、チューブを通して二人の記憶を共有できるんだ。内田くんの記憶を私が得られれば、君の代わりに配送の仕事ができるし、職場の方々も私たちが入れ替わったことに気付かないと思うぞ!」
「ええっ、男性器ってチンポっすか?! なんか不安しかないんすけど……。でも、それで互いの振りをできるようになるんなら、それを使うしかないっすよね。入れ替わってしまったのは、俺のせいでもありますし」
透明の筒を受け取った竜馬は諦めたように深いため息を吐くと、ズボンと下着を脱いで、それを自分のチンポへとあてがった。脂肪だらけなうえに、短小包茎チンポである【小野英造】の身体に戸惑っている彼を見ていると、背中にゾクゾクとしたものが込み上げてくる。
彼が装置を付け終えるまで、視姦するように眺めていた私もまた下着を脱ぎ捨てると、自身のモノを覆うように筒を取り付けた。そして互いに向かい合った状態で、【記憶共有装置】のスイッチをオンにした。途端にバキューム音が室内に響くと、我々の股座に筒がギュッと密着し、その中で刺激を受けた二本の肉棒がぐんぐんと肥大する。私たちはブリッジをするようにしてチンポを天に向けると、全身を痙攣させながら、筒の中へと大量の精液を放出した。
「あうっ! ひあっ!!」
「うおっ!? あがぁっ!」
フェラチオをされた経験などないが、おそらくこの充足感はそれ以上だろう。筒の中でチンポが刺激されることで射精が促され、吐き出した精液がチューブへとドンドンと吸い込まれていくのを感じる。その感覚は今まで感じたことがないほど強烈で、私は白目を剥きながら絶叫を繰り返した。竜馬も同じような様子で、アヘ顔を晒して悶えている。
陰嚢の中では二つの睾丸が忙しなく動き続け、射精が止まらない。私たちは背中を反らしたまま、全身を震わせ続けた。そしてついに、最後の一滴まで絞り出した私たちは、同時に床へと崩れ落ちた。
「はぁ……♥ はぁ……♥ すごかった……♥」
口の端から涎を垂らしながら呟く私に対し、竜馬もまた全身を汗びっしょりに濡らしながら答えた。
「す、すげーっすね……。はぅ?! んおぉぉ♥♥」
終わったかと思われた【記憶共有装置】の本番が訪れる。我々の肉棒から解き放たれたザーメンが、チューブを行き交い、互いの鈴口の中へと飛び込んでいく。精液が尿道を逆流し、睾丸を犯される快感たるや、言葉にならない。視界には火花が散り、手足の指先を動かしてなんとかこの快感から逃れようともがいたものの、それも無駄。全く逃げ場のない快楽の渦が理性を蝕み、脳がドロドロに溶けていく。
「あひいいぃぃ♥♥」
「おほおおぉぉぉ♥♥」
私たちは獣のような咆哮を上げながら、互いに抱き合った。額と鼻を擦り合わせ、唇の位置を探り当てると、舌を絡め合う。口とチンポの両方から響く快楽に、視界が明滅する。竜馬のザーメンが細かい粒子となって、私の体内に広がった血管の一つ一つを愛撫しながら、血と肉に同化していくのを感じる。私の魂が、【内田竜馬】という雄の肉体へと馴染んでいく。竜馬もまた同じ状況に陥っているのだろう。瞳はトロンと蕩け、不細工な面の口元は、盛りのついた犬のようにだらしなく緩んでいる。
私たちは白目を剥き、鼻水を垂らしながら、無様なアヘ顔を晒し続けた。そしてついに、筒の中の精液が空っぽになったとき、私たちの意識はぷつりと途切れてしまった。
*
「へっくしょん!」
肌寒さを感じた俺は、大きなくしゃみをかましながら、目を覚ました。股間の違和感に、思わず顔をしかめる。チンポ丸出しなうえに、透明の筒が股間の根元に吸い付いた、なんともマヌケな格好だ。上半身を起こすと、さっきまでの俺と同じように仰向けに倒れて気を失っている男の姿が目に入った。
「あのっ、大丈夫っすか?!」
俺は男に駆け寄り、肩を揺すった。すると彼はゆっくりと目を開き、辺りを見回した。そして俺と目が合うと、その目を大きく見開きながら口を開いた。
「内田くん……?」
反射的にそう呟いた彼だが、すぐに眉間にシワを寄せ、唸り声を上げた。
「いや違う……、【内田竜馬】は……俺だ!」
頭を抱えながら苦痛に顔を歪ませる彼の言葉のおかげで、俺もまた自分が【小野英造】だったのだということを思い出した。【記憶共有装置】の効果は凄まじく、彼が否定の言葉を口にしなければ当分の間、我々の肉体が入れ替わったということを忘れ去ったままでいただろう。【内田竜馬】の記憶を手に入れ、そっくりそのまま彼に成り代わろうと画策していた俺だが、自分が【小野英造】だということを忘れてしまえば、彼のすべてを手に入れても何の意味もない。かつての自分の記憶を保持したままでないと、肉体を入れ替えた意味などないのだから。
「そう……、だったすね。そんでもって、俺が【小野英造】っすよね……」
気まずい雰囲気の中、しばらく沈黙が続いた後、彼が口を開いた。
「とりあえず、配達員としての【俺】の仕事は君に任せる。仕事が終わった後はここでまた、お互いの身体がどうすれば元に戻せるのかを検討しよう。【入れ替わり】が発覚して職場に迷惑をかけないように、周囲に知られずに元に戻るためにも……」
「は、はい……。了解っす……」
あまりにも深刻そうな顔の彼に、罪悪感が湧いてくる。【内田竜馬】の記憶を手に入れたせいだろうか? しかし彼はそんな俺の心情を察してか、気丈な声で俺に言った。
「身体はきっと元に戻るから、気にするなよ」
*
──パンッ、パンッ、パンッ……!!
俺たちの身体が入れ替わってから一週間。純粋な竜馬には悪いと思いながらも、俺はずっと肉体を交換した相手とやりたいと思っていたことを、彼の耳元で囁いた。
──特殊な双頭ディルドを互いのケツ穴にハメながら、兜合わせでのオナニーをすれば元の身体に戻れるかもしれない。
──シックスナインで互いのチンポをしゃぶれば、元の身体に戻れるかもしれない。
──かつての自分のチンポから出たザーメンを飲み込みながらアナルオナニーをすれば、元の身体に戻れるかもしれない。
あからさまに怪しいその話も、元の身体に戻らなければならないという大義名分があれば、彼も納得せざるをえなかった。
「んむううっ♥ んっ……♥」
俺は彼の口にチンポを突っ込みながら、その頭を両手で固定して腰を振ると、喉奥に精液を流し込んだ。ケツ穴にディルドを挿入した状態で、かつての自分のチンポをフェラしながら射精する。そんな俺の考えたとても馬鹿げたルールを鵜吞みにした彼が、その通りにすべてをこなしてザーメンを辺りかまわずに撒き散らした。
「ふぅ~っ……♥」
射精後の倦怠感に浸りながら、俺は竜馬を見下ろした。チンポをしゃぶったことで半分開いた口からはザーメンを垂らし、弛緩したアナルからはディルドが抜け、低くくぐもった喘ぎ声を上げる竜馬。その無様で情けない姿に、俺の胸は高鳴った。あまりにも彼は人が良すぎる。このたくましくも美しい肉体を我が物顔で好き勝手に扱い、俺好みに変えるという行為に負い目を感じるほどに。
「あのっ、そろそろ元に戻れるかもっす……」
その言葉に、彼は口から溢れたザーメンを袖で拭いながら「本当か?」と質問を投げ返してきた。きっと喜ぶだろうと思っていたはずの彼の顔はどこか曇っていて、俺に対して猜疑心を抱いているのか、ジッとこちらを睨み付けている。疑うのは当然だ。これまで散々、胡散臭い俺の提案を受け入れては落胆し続けたのだから。俺が彼の立場だったとしても、同じ反応になるだろう。
しかしそんな状況に陥っても俺を責めない彼の優しさに、【入れ替わり】以前には持ち合わせていなかったサディスティックな部分が刺激された。彼の人間性や、俺に対する信頼を徹底的に踏みにじりたい。そんな感情が頭の中を埋め尽くし、無意識のうちに口の端が吊り上がっていくのを感じる。我々の肉体が元に戻ると信じ切った彼が安堵の表情を浮かべた瞬間に、彼のすべてを奪いたい──。
「なあ……、大丈夫か?」
訝しむような彼の声に、俺はハッと我に返った。危ない危ない。涎は垂れていなかっただろうか? 俺は口元を拭いながら慌てて取り繕うと、彼に言った。
「すみません、ちょっと考え事してて! その……、元に戻れるのは本当っす! ただ……、ちょっと問題があって……」
「問題? なんだ、それは……?」
怪訝そうな顔でそう尋ねる竜馬に、俺は言葉を濁しながら答えた。
「……えっと、つまりっすね。元の身体に戻るには、セックスをしながらもう一度あの箱の煙を吸う必要があるんです……」
「あぁ、なんだ。そんなこと、別に問題じゃないじゃないか。セックスだろ、う〜ん、セックスな~。……って、はあぁっ?! セックスだとっ?!」
これまでさんざんセックスにも近い行為をしておきながら、なにを今更慌てる必要があるのか。とはいえ、ノンケである彼にとっては、男性同士のセックスは馴染みのない未知の領域に違いない。俺は出来る限り不安を煽らぬよう、優しい口調で彼に語りかけた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫っすよ。ちょっとチンポをケツの中に出し入れするだけっすから。ねっ?」
「ま、まあ……そうか? それで今度こそ元に戻るんだもんな。だったら、試してみる価値はあるか……?」
(納得するの早っ……!)
強張っていた表情を緩め、ホッとしたようにそう呟く彼に半ば呆れつつも、そんな彼の姿に愛おしさを感じながら俺はその身体を押し倒した。抵抗するかと警戒していたものの、彼は目と口を堅く閉じたまま、これから起こる未知の事態に緊張して身を強張らせている。
俺は彼のアナルを指で弄りながら尋ねた。
「中出ししてもいいっすか……?」
「はあっ?!」
彼はそう叫ぶと、口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。【小野英造】の尻の穴はディルドで散々弄り倒してきたおかげで、巨根である【内田竜馬】のチンポを挿入しても問題ないだろう。しかしやはり聞き分けの良い彼でも、体内に射精されるのには抵抗があるようだ。俺は彼の反応に少し傷ついた素振りを見せながら、「無理なら、他の方法を探さないと……」と言いかけた。しかし彼はそんな俺の言葉を遮って、強い口調で言い放った。
「いやっ! いい! 大丈夫だ! 君のチンポ、私の中にぶち込んでくれっ!!」
「えっ……?」
その勢いに気圧されながらも、俺は恐る恐る彼に尋ねた。
「あの……。本当にいいんすか?」
「ああ、もちろんだとも! 口にするのは恥ずかしいが、その……、この身体になってから、ずっと犯されたくてたまらなかったんだ……。君みたいにたくましい男のチンポが欲しくて疼くんだよ、この体が……!」
「え……、【英造】さんっ!」
待ち望んでいた彼からの許しを得た俺は、勢いよくその太ましい身体を抱き寄せた。彼もまた、俺の背中に腕を回して強く抱き締めてくる。禿げていて俺より頭一つ分は背が低いし、贅肉もたっぷりなおっさんだが、なんて愛くるしいんだ。
「【竜馬】くぅん……!」
頬を紅潮させた俺たちは、どちらからともなく顔を寄せると、唇を重ねた。ねっとりとした濃厚なキスだ。舌と舌が絡み合っては唾液が交換され、その快楽に頭がとろけそうになる。しばらくキスをしたあと、俺たちは唾液の糸を引かせながら唇を離した。
「【英造】さん……俺、もう我慢できません……!」
彼の尻に手を伸ばし、緩くなった肛門に無骨な指を挿入してまさぐると、彼もまた上目遣いで俺のチンポを撫でながら呟いた。
「私もだ……【竜馬】くん! 早く君のおっきなチンポで、私をヒィヒィ言わせてくれぇ……♥♥♥」
俺のチンポはすでに先走りでビショビショになり、キンタマは溜まりに溜まった精子でパンパンだ。ようやく訪れたのだ。醜悪な見た目の【私】と肉体を入れ替えられたうえに、性欲に屈して広げた彼のケツ穴の中に、ノンケでマッチョな彼の肉体を乗っ取った俺がチンポをぶち込む時が。その倒錯的なシチュエーションに、俺の興奮は最高潮に達していた。
「じゃっ……、入れるっすよ……」
「ああ! もう準備万端だ、【竜馬】くん! 早く君のチンポを突っ込んでくれッ!!」
その言葉に背中を押された俺は腰を前に突き出し、彼の肛門に軽く当てていたチンポをその穴の中へと押し込んだ。ズブズブと突き進んだ俺の肉棒は、瞬く間に根元まで吞み込まれた。
「んおおぉっ♥ すげっ……♥♥♥」
自分の身体が嫌いだった。幼い頃から背が低く、運動をしてもデブで動きが鈍い。おまけに歳をとった今は頭髪も薄くなり、肌からは加齢臭を放つ始末。だがそんな【私】の肉体にも、良いところがあったのだ。柔らかで、温かで、チンポを挿入すると包み込んでくれるかのように締め付けてくるケツの穴。それは、この肉体の最大の美点だった。
「最高っす♥ 【英造】さんのマンコ、すっげぇ気持ちいいっす……♥」
俺は快楽に酔いしれるように、激しく腰を動かした。ハメ込んだチンポに、ねっとりと絡み付いてくる肉の壁。無数の襞の一枚一枚が、チンポの敏感なところを丁寧に舐め上げてくれる。俺たちはその快感を享受しながら、舌先と舌先をチロチロと舐め合わせ、唇を重ねた。
「んっ……♥ ちゅぷっ……♥」
こんなチビでデブでハゲのおっさんの身体の中に、【内田竜馬】の魂が宿っている。そしてそんな彼の肉体を今は俺が支配し、思う存分利用している。肉体が入れ替わったからこそのこの状況に、俺は胸が躍った。自然と腰の動きも速くなる。彼はそんな俺に応えるように、贅肉だらけの足を俺の腰に絡めてきた。
「【英造】さんっ……♥ 俺、そろそろ射精そうです……♥」
「私もだっ……! 一緒にイこう♥ 私の中に、思いっきり君の子種を出してくれッ♥♥」
顔を真っ赤にした彼の甘ったるい言葉に触発されたのか、俺のチンポがいっそう硬く張り詰める。ラストスパートだ! 俺はすっかり滑りの良くなった彼のケツマンコに、チンポを勢いよく叩き込んだ。
(イク! イキそうだッ!!)
絶頂に達しようとした瞬間、俺は近くに控えさせて置いた【魂の匣】の蓋を再び開いた。あの日と同じように箱の底から湧き出した煙が、俺たちの鼻の中に吸いこまれていく。鼻腔を通り抜けた煙はすぐさま脳に達し、俺たちはその快楽に激しく身悶えた。酔った時のように心地よい浮遊感、そして何ものにも代えがたい幸福感。チンポが破裂しそうなくらいに膨らんで、気が狂いそうだ。
「「うひぃぃぃぃっ♥♥ イぐぅぅ~~~っ♥♥」」
情けない声を発しながら、俺たちはゼリーのように濃い精液を吐き出した。射精するたびに、魂が肉体に馴染んでいくのを感じる。【魂の匣】を使えば、近くにいる二人の人間の肉体が入れ替わる。しかし、その効果は一時的なもので、きっかり一週間で戻るらしい。ただ、元に戻るまでの期間内に再び箱の中の煙を共有した二人の肉体は、入れ替わったままになるのだ。
(フハハハハ、お前の身体、お前の人生、お前のすべてをいただくぞ竜馬ぁッ!!)
これからは俺が、【内田竜馬】として生きていくのだ。この厳つい顔、筋肉たっぷりのエロくて雄くさい肉体を使って──。
***
「お互いに元の身体に戻りましたね、英造さん!」
壁に掛かった鏡に自分の姿を映した竜馬は、分厚い掌で自身の顔や体を確かめるように撫でまわすと、安堵と喜びの声を上げた。
「あぁ、本当に戻って良かった。すまなかったな。この数日間、君の身体を好き勝手に使ってしまって……」
隣に並んだ英造が名残惜し気に、鏡越しの竜馬の姿を目に焼き付けながらそう呟くと、竜馬はその巨躯を屈めて英造の耳元に口を寄せた。
「いいんすよ。最初は驚いたけど、俺も気持ちよかったですし……♥」
申し訳なさそうな表情を浮かべる英造の姿に、竜馬は吹き出さんばかりになったが、なんとかそれを堪えて自然に見えるように白い歯をこぼした。【入れ替わり】の事象を覚えているのは、もはや【魂の匣】の所有者と認められた竜馬だけ。所有者ではない英造は、【魂の匣】の影響で、すっかり自分が【小野英造】だと思い込んでいる。なんとも滑稽で、ゾクゾクするではないか。
「それよりも、英造さんが俺の体を好き放題に使ってくれたおかげで、一週間前までは俺ノンケだったのに、ホモセックスに目覚めちゃったっすよ。当然ですけど英造さん、責任取ってくれるっすよね?」
「あ……、あぁ! もちろんだとも! 君の言うことならなんでも聞くよっ!!」
彼はそう叫ぶように答えると、竜馬の足に縋りついた。その無様な姿に竜馬は笑いを堪えながら、さらに続けた。
「じゃあ早速ですけど、俺のチンポ、舐めてお掃除してもらおっかな♥」
グリグリと英造の額を踏みつけながら、竜馬は囁いた。頬を真っ赤に染めた、豚のような英造の表情。竜馬はそんなチビでデブで不細工で哀れな男を見下ろすと、勃起したチンポから透明の汁をなみなみと垂れ流した。
(了)
ムチユキ
2025-01-19 07:29:35 +0000 UTC黒竜Leo
2025-01-18 17:38:41 +0000 UTC