「はあーーっ!? 宗原おまえ、明日の花見、来ないのかよ!?」
自分より年上の部下である、煙崎炎路(たばさき・えんじ)がむさ苦しい顔を驚きに歪めて叫ぶ。
企画部の部長である俺、宗原勇護(むねはら・ゆうご)はその声量に頬をひくつかせて反論した。
「うるさい、やかましい、ヒゲが汚い! なんで俺が貴重な休日をお前らとの花見に消費せんといかんのだ…!」
「ヒゲはイケオジのたしなみだ! なんだよ、社長のおごりで酒飲み放題なのによう。後悔したって知らねぇぞう。ちぇーっ」
拗ねたように唇を尖らせる煙崎。
もし弟の優太が同じ動作で拗ねたら抱きしめてほっぺたにかぶりつきたくなるくらいキュートなのに比べて、煙崎のそれはぜんぜん可愛くなくてハラワタが煮えくり返る。
「まあ、いいや。青木は花見来るもんな? 俺ちゃんと一緒に呑み明かすもんなあ?」
腕毛のびっしり生え揃った煙崎の太い腕で首を抱かれた、同じ部署の青木水薫(あおき・すいくん)がすごい嫌そうな顔をする。
「行きますけど、お酒はほどほどにしてくださいね? 炎路さん、酔っ払うと見境なくなるでしょ。僕、明日は炎路さんを隣で見張るつもりですから」
「な、なんだそりゃあ! 花見で酒セーブなんて無理だろぃ、ちぇーっ!」
「その拗ねた顔、不快だからやめてください」
ズバズバと青木に口撃されて、煙崎はたじたじだ。
こいつら、本当にずいぶん仲良くなったもんだな。
……煙崎の言った、我が社の「お花見」。
目の前のこいつらはのんきに楽しみにしているけど、実際はとんでもない場になることを俺は知っている。
毎年、我が社のお花見では“蒼桜”という酒が社長から配られる。
それは表向きにはただの高級酒。
だがその実態、その酒は――――口にした人間の性欲を爆発的に増大させるという効能があるのだ。
そんなものが大勢の社員に振る舞われる花見なんて、どうなるかわかりきっている。
――――花見とは名ばかりの、乱交パーティ会場の出来上がりだ。
しかも酔いが醒めたあとは、酒を飲んでいた間の記憶をみんな一切なくしている。
怪しいドラッグも真っ青の稀少酒、それが“蒼桜”だ。
だけど、蒼桜の性質を知っている人間は社内でも一握り。
社長から箝口令が出されていて、知っている者も口外することが禁じられている。
(だから俺は、そんな花見には行かない…!)
そんなことよりも、家に帰って優太と一分一秒でも長くイチャイチャしていたい。
目の前でだるい会話を繰り広げている煙崎と青木を見ているとなおさらそう思う。
「なあ青木~、明日はちょっとくらい羽目外してもいいだろぉ~。どうせ酔ったって、俺ちゃんはお前にしか絡まねぇからよぉ」
「え……ならいいかな……じゃなくて! そういう問題じゃないです!」
「んなこと言ってぇ、酔っぱらった俺ちゃんのサービスシーン、見たくねぇのか?」
「そ、それは……ごくり……」
ごくりじゃないだろ、青木! 家でやれ、家で!
感情的にそう怒鳴りそうになるのを、上司の理性で踏みとどまる。
「というわけでそこのバカップル、定時なので俺は帰る。あと、社長からの高級酒は飲みすぎに注意しろよ! それじゃ、お先!」
一応忠告しといてやるけど、イチャイチャと互いをつつき合っている煙崎と青木はへらへらとこっちに手を振るだけだ。
うーん……ま、蒼桜を呑んだところで別に死ぬわけじゃないし、ほっといてもなんとかなるだろ。
俺は周囲に挨拶を投げかけると、鞄を持って競歩でオフィスを後にするのだった……。
――――放課後の校庭で、桜の木が淡いピンクに染まっている。
「じゃあバイバイ、ノエルくん。お父さんとお花見、楽しんできてね」
「うん、ありがと。優太も気をつけてな」
クラスメイトのノエルくんと校門で別れて。
四月の春風が暖かく頬をくすぐるのを心地よく感じながら、僕、宗原優太はおうちまでの道をてくてくと帰っていた。
「ただいまあ」
誰もいないおうちに帰り着いて、お母さんとお父さんの仏壇にただいまを伝える。
お兄ちゃんが仕事から帰ってくるのを待つあいだ、宿題と、ご飯の支度をする。
ちょっと時間が出来たのでお兄ちゃんのパソコンを点けてみた。
適当に暇つぶしがしたくて、動画配信サイトにアクセスしてみる。
すると、お兄ちゃんの検索履歴から導き出されたオススメの動画が自動的にサイトのトップに出てきた。
お兄ちゃんの検索履歴……『蒼きカデンツァ』、『騎士団ビンビン物語』、『千客万来♂男根鍛冶屋』、『いたずらケルベロス』。
これは……僕はやったことないけど、お兄ちゃんがお仕事で作ったゲームのタイトルだったと思う。
なぜかお兄ちゃんは僕にはそのゲームの映像を見せてくれたことがない。
(だったら、お兄ちゃんがいない隙に見ちゃおうか……)
ちょっとした好奇心。なんとなくいけないことだと分かってるけど、それを抑えられない。
僕はマウスを操作して、動画群の中から『騎士団ビンビン物語』というゲームの映像をクリックしてみた。
(どんなゲームなんだろう……)
読み込まれた高解像度の動画が、モニターに表示される。
「わ……男の人がいっぱい……?」
ムキムキのかっこいい男のキャラクターたちが次々と出てくる。
ファンタジーな、剣を持って鎧を着込んでいて、「騎士」とか「剣士」ってこういう人のことなんだなと思う。
そのムキムキな男の人たちが、剣と剣をぶつけあって戦ってたり、くっつきそうなくらい顔を近づけたり、ベッドの上で二人で重なり合ってたりする映像がリズミカルに画面を流れていく。
あれ? いま出てきた映像、男の人たち、服を着てなくて、ちんちんが丸見え……
「だあ~~っ!子供は見ちゃダメ~~っ!」
「わっ!?」
いきなり背後から目隠しをされた!
大きな手のひらをどけて振り返ると、そこにスーツ姿のお兄ちゃんが息を切らして立っていた。
「お兄ちゃんお帰り!」
全身で飛びつくように抱きつくと、お兄ちゃんは片手で僕を抱えながら、パソコンのマウスを操作してまだ途中だった映像を消す。
「ただいま優太……今後、PCの履歴は消しておこう……」
「えへ~?」
お兄ちゃんが何かを呟いているけど、僕はお構いなしにお兄ちゃんの胸板に頭をぐりぐりする。
お兄ちゃんが頭を撫でて背中をぽんぽんしてくれる。それだけで僕は嬉しい気持ちになって安心する。
お兄ちゃんの腕に収まりながら、僕は大好きなお兄ちゃんの顔を見上げる。
「さっきの動画、お兄ちゃんの会社で作ってるゲームのでしょ? 僕知ってるよ」
「な……!? これは年齢制限があるゲームだから、優太にはひた隠しにしてたのに!? 兄ちゃんの仕事っぷりをアピールしたくても歯を食いしばってガマンしてたのに!?」
「前にね、煙崎のおじさんが教えてくれたから」
僕があっさりと告げると、お兄ちゃんはどこかに向かって舌打ちする。
「なるほどな。あいつ減給にしとくか」
「あう……」
今頃どこかでくしゃみをしてるかもしれない煙崎のおじさんに、僕は心の中で謝った。
お兄ちゃんとお風呂に入っていると、湯船の上に薄ピンクの何かが一枚、頼りなく浮いていた。
それは桜の花びら。
風に舞い散ったものが僕の頭とかに乗っかったままだったのかもしれない。
乳白色のお湯の水面に浮かぶ小さなピンクが綺麗で、お兄ちゃんと僕は思わず眺める。
同じ湯船の中で僕は兄ちゃんの両足の間に入り込んで背中を預けている。
「桜か。そういや、兄ちゃんの会社でも今度、花見があるんだったなあ」
背後からのお兄ちゃんの声に僕は振り向いた。
でもそれは嬉しそうな声じゃなくて、溜め息交じりだったけれど。
「お花見、いいな~。お兄ちゃん行きたくないの?」
「ん? 俺は職場の花見には行かないよ。兄ちゃんは、桜見るより優太を見てるほうが楽しいからさ」
お兄ちゃんは僕のつるつるのおでこに自然に口づける。
僕はおでこへのチューと、言われた言葉とに喜ぶ。
「えへへ、じゃあ、今度二人でお花見しよっ」
僕がはしゃいだことで、ばちゃん、とお湯が跳ねた。
「そうだな……」
お兄ちゃんは僕の言葉に、アゴに手をかけて何かをゆっくり思案していた。
少しすると、柔らかい声で僕に告げた。
「いいよ? 今夜しよっか、お花見」
そう言ってお兄ちゃんがニッコリと笑う。
「えっ、今夜?」
僕は思わずびっくりしてしまう。
今夜って……夜、桜を見るってことかな。
そっか。オトナの人たちは夜桜を見に行ったりするって、テレビで見たことある。
「そうと決まれば、さっさと風呂、上がるぞっ」
ざばあ、とお兄ちゃんが湯船の中で立ち上がる。
僕の顔の前にお兄ちゃんの長いのがぶらんと揺れて、胸がドキン!と跳ねた。
(お兄ちゃんの…今日もおっきい…)
思わず見蕩れてしまったけど、
「あっ、待って待ってっ、僕も出るっ」
男らしく裸でお風呂を出て行くお兄ちゃんを慌てて追いかけた。
お風呂上がりに髪をドライヤーで乾かして、すっかりパジャマを着てしまった僕。
きょとんとする僕に、お兄ちゃんはニヤリと口の端を上げて車の鍵をくるくると指で回した
「お兄ちゃん……車で行くの?」
僕の問いかけにお兄ちゃんが目を細めて頷く。
時計を見ると、もう21時をとっくに過ぎていた。
こんな遅い時間にお出かけすることなんて滅多にないなら、なんだかワクワクする。
上着を着て玄関を出て、車の助手席に乗り込む。
窓から見える外は真っ暗で、外灯以外の光がなくてちょっと恐い。
お兄ちゃんがエンジンをかけて車が出発する。
いつもは出歩かない夜の町を、車の窓から眺めるのは、まるで遊園地のアトラクションみたいに新鮮だった。
毎日歩いてる学校までの通学路も、閉店してるスーパーも、見慣れているはずなのになんだか違って見えて楽しい。
それは隣で運転しているお兄ちゃんの横顔もおんなじ。
「車運転してるお兄ちゃん、かっこいいね」
いつものお兄ちゃんも大好きだけど、車を運転してる横顔はいつもよりオトナって感じがしてかっこいい。
僕がからかうように言うと、お兄ちゃんは頬を赤く染める。
「こらこら、運転中に可愛いの禁止! 撫でたくても撫でられないんだから!」
「えへへ」
学校のこととか友達のことを話しながら、夜の町をお兄ちゃんとドライブする。
パジャマでドライブ……ちょっといけないことをしてるみたいでドキドキする。
「それでね、友達のノエルくんはね、クリスマスにお父さんからすっごく嬉しいプレゼントを貰ったんだって。でも何を貰ったのか教えてくれないんだあ。気になるよね」
僕の話に、お兄ちゃんは笑顔で相づちを打ってくれる。
こんな風にゆっくり色んな話を出来るのもドライブの醍醐味だね。
ふと気づくと、車は小高い山の斜面を上っていることに気づいた。
「もうすぐ着くよ」
そう言ってお兄ちゃんが横目でこちらを見る。
ほどなくして、車は山頂の広場に出た。
「わあ……」
満開の桜の木に囲まれた広場。
僕たち以外誰もいないその場所の全景を見渡せるように、お兄ちゃんが車を停めてくれる。
初めてわかった。
夜中なのに、桜って存在感がすごい。
暗闇の中で、ぼんやり光ってるみたいな大量の桜色に思わず目を奪われてしまう。
桜の木々のあいだから見える夜空に、大きな満月が出ていてそれもすごく綺麗。
車の中から目を輝かせて桜を眺める僕を、お兄ちゃんが優しい瞳で見つめている。
「綺麗だろ。ここ、穴場なんだ」
「うん! すごーい!」
お兄ちゃんの優しい声に僕は笑顔で頷いた。
「優太に見せてやりたかったんだ」
お兄ちゃんが連れてきてくれなかったら、こんな光景がこの町にあるなんてこともわからなかった。
夜に見る桜が、こんなに綺麗だってことも、知らなかった。
やっぱり、お兄ちゃんってすごい。
「ありがとう、お兄ちゃん」
それにたぶん、一人で桜を見たって、こんな気持ちにはならない。
お兄ちゃんと一緒に見たことで、もっと素敵な思い出になる気がした。
「くしゅん!」
窓の外の景色に見蕩れていると、少し肌寒さを感じてくしゃみが出た。
パジャマの上に上着を着ているだけだからしょうがない。
「優太、寒いか? パジャマで連れ出すべきじゃなかったか……」
お兄ちゃんが車のエアコンを操作してくれる。
「ううん、平気だよ……わっ」
ひょいと、僕のカラダを運転席のお兄ちゃんの両腕が抱き上げた。
そのまま軽々と、お兄ちゃんの膝の上に乗せられたかと思うと、背後からお兄ちゃんの着ているダウンジャケットで全身をすっぽりとくるまれる。
まるでカンガルーみたい。
「これでどうだ? あったかいだろ」
お兄ちゃんに背後から抱きすくめられて、僕のほっぺたが、かあと赤く染まっちゃう。
「う、うん。あったかい……」
背中に密着するお兄ちゃんの広い胸板からぬくもりが伝わる。
僕を受けとめてくれる大きな身体から伝わってくる、お兄ちゃんの熱、心臓の鼓動、息遣い……それらが心地よくて、ぬくもりを甘んじて重ね合う。
(あうう……)
そんな僕のドキドキが、お兄ちゃんにも伝わっている気がして、なんだか恥ずかしくなる。耳が赤く火照っていくのを抑えられない。
僕がお兄ちゃんの腕の中でもじもじしていると、
「優太……」
お兄ちゃんの太い腕が僕のお腹のところで組まれて、ぎゅうと背後から力を強められた。
耳元で、さっきまでより掠れた声がして、びくんと震えてしまう。
「お兄ちゃん……?」
そっと振り向くと、優しく微笑むお兄ちゃんの顔が、すぐ近くにあった。
覗き込んだお兄ちゃんの瞳も、桜とおなじだ。
暗闇の中でも、光ってる。
だからいつだって見失わない。
どんなに暗い夜の中でも、お兄ちゃんだけが僕の光だった。
どちらからともなく唇を重ねると、お風呂上がりのふにふにした感触が心地よかった。
「ふふ…んっ、んん……っ」
じゃれあうように、柔らかくくっ付けたり、離して微笑みあったり、また押しつけたりしていると、お兄ちゃんの舌が僕の唇の隙間からぬるりと入ってきた。
口の中をお兄ちゃんがゆっくり掻き回してくる。
「んふ…っ、んうぅ…っ」
お兄ちゃんの舌の大きさと僕の口の小ささが釣り合わなくて、お兄ちゃんが優しく蠢くだけで僕は口の端から唾液をこぼしてしまう。
うっすらと涙目でハアハアと息を吸い込む僕が垂らした舌と、お兄ちゃんが突き出した舌のあいだに、つーっと透明な糸が引いていた。
「兄ちゃんは、こっちの夜桜見物しちゃおっかな…♪」
ちょっといたずらっぽい顔で、お兄ちゃんがそんなことを言ってくる。
夜桜ならもう目の前にあるのに、何言ってるんだろう…?
「あっ……」
僕の手と違って、お兄ちゃんの大きな手のひらが僕のパジャマのすそから入ってきて脇腹を撫でる。
素肌に直接触れられて、ぴくりと反応してしまう僕を見て、お兄ちゃんがからかうような目を向けてくる。
「あっ、ん、あ…っ」
脇腹をなでなでされて、そのまま上へとお兄ちゃんの手のひらが滑ってくる。
それと同時に、僕のパジャマもどんどんめくり上がって、僕のカラダがさらけ出されてゆく。あらわになった僕の薄い胸を、お兄ちゃんが覗き込んでニヤニヤと笑う。
「優太の桜、みっけ」
白い素肌にぽつんと咲いた二つの淡い突起。
その桜色の小粒を、お兄ちゃんが中指で下からくすぐった。
「はぁん…っ!」
敏感なそこに触れられて、思わず高い声が出ちゃう。
「へへ、こっちの夜桜も最高に綺麗だな」
いじわるな顔で、お兄ちゃんは中指で二つの粒を弾いてくる。
「あっあっ、そこ、桜じゃない…っ」
「桜だろ~? 暗くたってピンクなのわかるぞ」
「ああんっ!」
人差し指と中指で、きゅう、と粒を摘ままれると、甘く鋭い刺激に背中が丸まった。
淡く咲いていた粒が、だんだんと淫らなしこりになっていく。
「ほらあ、優太の桜、どんどん見頃になっちゃうぞ?」
「あっあっ、おにいちゃ……ふぁあっ♡」
いじめるように指で丸められたり、痛くない程度に優しく引っ張られたりするたびに、僕は子犬のような声で鳴いてしまう。
それと同時に首筋に熱い舌を這わされて、ぞくぞくと心がしびれる。
僕のお尻の下で、お兄ちゃんの熱い塊がむくむくと硬く膨らんでいくのも感じていた。
「あ……っ」
お兄ちゃんの右手が、僕のおへその上をゆっくり滑って、僕のパンツの中をまさぐる。
未成熟だけど勃ち上がっていたそこを大きな手で握り込まれて、上下に擦られる。
「やあっ、あっ、ひっ、はぅう…っ」
直接的な甘い刺激に、僕はさらにカラダをくねらせた。
だけど、お兄ちゃんに全身を預ける僕は、お兄ちゃんの手の中から離れることはできない。
乳首とあそこを同時に撫で回されて、断続的に喘ぐ僕を見下ろして、兄ちゃんは興奮した表情で舌なめずりする。
「あっ、まっ、おにいちゃっ、まって、あっ、でちゃ…っ」
「もうイっちゃうのか…?」
「ひぐっ、あひっ、だめ、あっ、よごしちゃう…っ」
「大丈夫、イってもいいよ」
ぐち、ぐち、優しく動くお兄ちゃんの手の中で僕のあそこがはちきれそうになっている。
僕を責め立てるお兄ちゃんの手首をつかんで抵抗してみるけど、まったく意味はない。
止まらないどころか、さらに早くなるお兄ちゃんの手の動き。
「あっあっぁあっあぁっあうぁあぅっ」
とろんと細めた目で、喘ぐ口の端から唾液を垂らしながら、僕は甘い声をひっきりなしに漏らす。
「でうっあうぅっでるうぅうっでちゃぅうぅ…っ!」
お兄ちゃんの手首をぎゅうううと握りしめて、後頭部をお兄ちゃんの胸板に押しつけて、迫り上がってくる熱に備えた。
反り返った胸の先端を、お兄ちゃんが中指で押し込んだ。
びくんっ! びくんっ!
腰が勝手に跳ねて、僕の中心から熱くて白いのが飛び出る。
それは車のフロントガラスの内側まで飛び散った。
「ふぁあぁっああっあっあっあぅぅん」
痙攣する下半身の反動で、ぐりぐりと後頭部をお兄ちゃんに押しつけてしまう。
「ははは、よしよし」
お兄ちゃんは穏やかな声で僕をなだめながら、白い汁をぴゅくぴゅく吐き出すちんちんをしごき上げる手を止めてくれない。乳首も指でコリコリ挟まれたまま。
「あっあぁっ、おにいちゃっ、ふぁあ……っ」
白い飛沫が勢いを弱めて、とろとろと竿を流れてくだけになって、ようやくお兄ちゃんが手を止めてくれた。
「はあっ、はあっ、はあっ」
激しく射精して、全身を預けたままぐったりと肩で息をする僕。
「お外でイっちゃって……悪い子だなあ」
そんな僕のカラダを、お兄ちゃんはまたひょいと抱える。
お兄ちゃんと対面になるように座り直されて、お兄ちゃんの火照った顔が目の前に来る。
汗ばんで目を細めた、興奮したときのお兄ちゃんの顔……。
「あ…っ!」
お兄ちゃんは僕のズボンを全て下げると、丸見えになったお尻に指を伸ばしてきた。
僕の白濁で濡れたままの指が数本、割れ目の奥まで到達する。
ぬめる精液で僕の穴がぬちゅぬちゅとほぐされていく。
「あっ、んっ、んん…っ」
僕はお兄ちゃんの肩につかまって声を上げるしかできない。
そんな僕をじっとりした眼差しで眺めて、お兄ちゃんがにやにや呟く。
「へへ、いい眺め……」
そしておもむろに、僕の胸へと顔を寄せる。
「ひあんっ!」
胸に実った粒にお兄ちゃんの舌がべっとりと触れた。
その熱さにびっくりする。
「んはあ…やっと、優太の桜、味わえる……」
お兄ちゃんが話すたびにかかる熱い吐息さえ、僕の素肌に快感を落とす。
べろん、と味を確かめるように乳首を舐め上げられた。
「んはぁ…っ♡」
べろん、べろん、べろお…っ。
丹念にゆっくりと、厚い舌でねっとりと何度も舐め上げられて、その気持ちよさに震える。
お尻からも、お兄ちゃんの指がくぷくぷと中に入って僕を拡げていく。
「あっ、ひっ、ひんっ、はひ」
「優太、乳首舐めるたびにきゅうきゅう締まってやらしいな」
嬉しそうにそんなことを言われて全身が燃えるように恥ずかしかった。
かり、と乳首を甘噛みされる。
「んあんっ!」
大袈裟なくらいに甘い声が出てしまう。
甘く食んだあとに粒を癒やすようにれろれろと舐められるのまでがセットだ。
「おにいちゃっ、だめ、あぁ…っ」
「優太の桜、もうピンクから真っ赤になってるぞ……」
お兄ちゃんはニヤリと開いた口から出した舌を素早く動かして粒を弾く。
「あっあっあぁっ、だってっ、おにいちゃんがっ、舐めるから…っ」
「そうだなあ。兄ちゃんのせいでこんなにいやらしく実っちゃったなあ」
ちゅっ、ちゅっ、かりっ、れろ、れろれろれろっ、じゅぅうっ!
「はあんっはあぁっああぁっ!」
吸ったり噛んだり舐め回したり、強めに吸い上げられたり、二つの粒を交互に味わわれて、僕はお兄ちゃんの両肩をきつく掴んで喘いだ。
何度も何度も胸をいたぶられたあと、
「兄ちゃん、入るぞ……」
ビキビキと硬く膨れ上がったお兄ちゃんが、僕の中に入ってきた。
「んんんっ! はぁああぁ…っ!!」
メリメリとカラダが裂かれるような感触。だけど痛くはない。
お兄ちゃんと何度も何度もエッチをするうちに、もうカラダが順応してしまった。
お兄ちゃんのために自分のカラダが変わってくことが嬉しかった。
「優太のナカ、狭くて、熱すぎ……っ」
気持ちよさそうなお兄ちゃんの声に、僕の胸が満たされていく。
ずっぽりと根元までお兄ちゃんを埋め込んで、お腹の奥がじんじんと熱を持つ。
ぱんっ! ぱんっ! ぱちゅっ!
「あんっ!あんっ!」
腰を掴まれてゆっくりと突き上げられて、僕は目尻に涙を浮かべた。
お兄ちゃんにしがみついて、甘く激しい衝撃に翻弄される。
「すげえ気持ちいい…っ、優太、優太…っ」
完全に勃起したちんちんを僕の奥まで突き入れながら、いやらしく腰を動かすお兄ちゃん。
「ぼく、もっ、きもちいぃっ!あんっ!あんっ!」
息も絶え絶えに告げると、お兄ちゃんはたまらない顔をして僕の額に優しくキスを落とす。
だけど、そうして僕をあやしながらも下半身は荒々しさを増していく。
ずんっ! ずちゅっ! ずんっ! ぬぶっ!
「あっあっあっああ~~っ!」
オトナの肉棒でめちゃくちゃに掻き回されると、もう何も言えなくなってしまう。
お兄ちゃんにしがみついて、涙を散らしながら首を振った。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ!」
お兄ちゃんの荒い息が頭上から降ってきて、お兄ちゃんも限界が近いのだと感じる。
車ごとガタガタ揺れちゃってるんじゃないかと思うくらい、僕のナカで性急に暴れるお兄ちゃんの熱が、苦しさも、気持ちよさも、ぐちゃぐちゃにかきまぜていく。
ずぶっ! どすっ! どちゅんっ!
「出すぞ、優太…っ!」
「にいちゃっ、あうぅっ、うんっ、うんんっ!」
揺さぶられながら、ぎゅうとお兄ちゃんを抱きしめた。
それを受けて、お兄ちゃんがさらに奥へと突き進んでくる。
どびゅっ! びゅぐんっ! どぷっ! どくどくっどくんっ!
お腹の一番奥で受けとめる、お兄ちゃんの迸り。
内側が焼けるくらい熱くて、とんでもない衝撃と刺激で、きっと僕はだらしない顔になってしまっているけど、それでもいい。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ……優太……」
涙と鼻水と唾液を流して、股間からは精液も流して、色んな汁にまみれた僕を心底愛しそうに眺めて、お兄ちゃんがキスをくれる。
そんな僕たちの夜を、満開の桜だけが眺めていた。
それだけで、いい。
「ふう……」
エッチのせいで汚れた社内や身なりを綺麗にし終えて、お兄ちゃんは一息つく。
僕は助手席でぐったりとしながら窓の外に視線を向けた。
「……あれ?」
僕たちの車とは少し離れた場所、一台の大きなトラックが停まっていることに気づいた。
「俺たちだけだと思ってたけど、いつのまにか誰か来てたんだな。優太に夢中で気づかなかった」
お兄ちゃんもトラックに気づいたみたいで、そういっておどける。
確かにエッチしてたら、トラックが来てても気づかないよね。
「あのトラックの人たちも、桜を見に来たのかなあ」
僕が訊ねると、お兄ちゃんが微笑む。
「きっとそうだろうな。だってこんなに綺麗なんだから、もっとたくさんの人が見に来るべきなんだよ、ほんとは」
そう言うお兄ちゃんと同じように、僕も桜を眺める。
暗闇を淡く切り取るようにざわざわと夜風に揺らぐ桜色は本当に綺麗で、ほんの少しだけ――――なんだか切なかった。
そろそろ帰ろうかとお兄ちゃんが言って、僕たちは車を発進させる。
途中、停まっていたトラックとゆっくりすれ違う。
そのまま通り過ぎようと思っていると、不意にトラックのドアが開いて、気のよさそうなムキムキのおじさんが苦笑しながら後ろ頭を掻いてこちらに近づいてきた。
どうも何か言っているようだ。
お兄ちゃんは驚いて窓を開ける。
「どうかしました?」
「ああ、兄ちゃん、車停めちまってすまん!」
ヒゲがたくさん生えて、タンクトップから二の腕が剥き出しで、長距離トラックの運転手さん、といった風貌のおじさんが両手を合わせてこちらに頼んでくる。
「いやあ、なんつーか、オタクの車がさっきからガタガタ揺れてたのを見越して、ちょいと頼みがあるんだが……」
ギクリとお兄ちゃんが冷や汗をかく。
そんなお兄ちゃんの焦りとは裏腹に、おじさんは「へへ」とおどけた顔で。
「ゴム余ってねぇかなあ?」
そんなことを言ってきたのだった。
「へ……?」
お兄ちゃんがぽかんとしていると、おじさんが慌ててまくし立てる。
「いやさあ、俺たちもしっぽりカーセックスに励もうかと思ってここに来たんだけど、うっかりゴム用意し忘れたことに気づいちまってよぉ。ま、無いなら無いでイイかと思ったんだが、一応兄ちゃんたちに聞いてみっかなと思ってな!」
だはは、と豪快に笑うおじさん。
対するうちのお兄ちゃんは、毒気を抜かれたように脱力する。
「は、はあ……。でもすいません。俺もゴムの手持ちはなくて」
申し訳なさそうに告げるお兄ちゃんに、おじさんはぶんぶんと手を振る。
「いやいや、謝んないでくれよ! そうだよなあ、男なら中出しだよなあ! いやあ、お楽しみ中に悪かったな! だはは」
おじさんは気のよさそうな豪快な笑顔でこちらに手を振ってトラックへ戻る。
「おーい、ノエル! ってことでゴム無しでヤんぞぉ!!」
おじさんは思いっきり大きな声で、おそらくトラックの中にいるお相手に呼びかけている。
「なんか……面白いおじさんだな」
「ふふふ。そうだね」
お兄ちゃんと僕はそんなおじさんがトラックに乗り込むのを見送って、車を発進させた。
「お兄ちゃん、桜、きれいだったね。僕、また来年も見たいな」
僕が呼びかけると、お兄ちゃんがおどけて微笑む。
「もちろんですとも、王子様。来年もとっておきの桜を、兄ちゃんにお任せあれ」
「ふふ、やったあ」
桜の広場がぐんぐんと遠ざかって、家まで続く見知った道を車は走っていく。
お兄ちゃんと、僕と、夜桜の思い出を乗せて。
僕とお兄ちゃんは二人暮し。
でも、毎日とっても仲良しなので、僕は寂しくないよ。
これからもずーっと、お兄ちゃんと一緒にいたいなぁ。
【END】