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池野くるめ
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【小説】突然家にやってきた謎の美少女が紙おむつの精霊だった件〜クリスマストイレ禁止デート編(前編)〜

「明日はデートに行くわよ!」

 ミツキがそう宣言したのは、俺と同居を始めて数ヶ月が経った十二月のある日の夜だった。

「急にどうした?」

 突然の宣言に、リビングでくつろいでいた俺はスマホから目を離しミツキの方を見る。

「いい?世間一般的にはクリスマスと言えばデートするものなのよ! 今年のクリスマスイブは日曜日、なにもしないほうがおかしいでしょう?」

「いや、まあそれはそうかもしれないけど…俺あんまり人が多い所は好きじゃないし」

 クリスマスにデート、ディナー、その後は。いわゆる「リア充」な過ごし方だ。いかにもミーハーっぽくてあまりいい印象は無かった。ミツキはそういうのが好きなタイプなのだろうか?

「そういうこと言ってるからいつまでも独り身なのよ!自分で言うのもちょっとおかしいけど、この数ヶ月でキミはワタシにみっちり教育されて割とマトモになってきているの。そろそろ次のレベルに上がってもいいと思うのよね」

 相変わらずのペースでまくし立ててくる。しかし確かに、彼女の言う通りこの数ヶ月で俺の日常生活は大きく変わった、もちろん良い方向に。

 まず部屋が片付いた。元々大きくはないアパートの部屋に二人で住んでいるのだ。物を減らしてスペースを作らないと狭くて仕方がなかった。そのおかげでこまめに部屋を片付けるようになったし、最近ではそれが習慣になりつつあり、物が溢れていると逆に落ち着かなくなってくるようになった。次に、ミツキは料理の仕方を教えてくれた。数ヶ月前は電子レンジで温めるかケトルでお湯を沸かす程度の生活力しか無かったが、今では目玉焼きや野菜炒めくらいは作れるようになった。昔の俺から見れば大変な進歩だ。

 そして、これは俺自身も意外に感じているが、おむつで遊ぶ機会は徐々に減ってきていた。確かに帰宅したらおむつに履き替えてはいるしミツキ自身も『おむつの生活を満喫させてあげる』とは言っているが、やはり精霊とは言え異性の前で我慢を開放するのには抵抗がある。そのため、最近は仕事から帰ってきたらおむつに履き替えて、そのまま履いているだけということも増えてきた。洋服ダンスの奥に隠すようにしまってあるコレクションも、持て余し気味である。もちろん今まで拗らせていた性癖が突然消え去ったわけではなく、時々はミツキの目を盗むように、その性欲をおむつの中に開放している。なにしろ、ミツキは時々おむつを替えてくれることはあっても、性欲に対処してくれることは一度もなかった。彼女曰く「そういうのは自分でなんとかしろ!」とのことで、時々湧き上がってくる欲求はミツキが買い物に出かけている時など家にいない間にひっそりと済ませていた。

 ちなみにミツキはおむつの精霊だけあって、おむつやそれに関連するもの知識量は俺の想像以上だった。国内の廃盤品から海外のもの、果てはうっかり買ってしまったペットシーツまで、全ての銘柄と特徴を完璧に把握していた。先月、このコレクションを見られたときには「キミさぁ、フリマアプリとオークションでいくら使ったの? っていうか何でペットシーツまで持ってるの?」と散々質問攻めにされタジタジになってしまった。

 ミツキは自信満々に言う。

「ワタシのこれまでの素晴らしい教育の結果、キミは最低限一人で生きていくスキルを身につけたわ。次は将来の事を考えて対人スキルを上げていくのが大事ね」

「スキルって、ゲームじゃないんだから」

 俺をなんだと思っているのか。

「そうねえ、幸いおむつの趣味のおかげで体型は細身を維持できてるから、やはり最初は服からかしら? ゲーム的に言うならそうね、棍棒から銅の剣って感じ?」

 残念ながらまだ俺のレベルは鋼鉄の剣には届いていないようだ。しかし、ミツキの言うように、これまで服に無頓着だったのは確かである。これまでの実績を鑑みると、ミツキの言う通りこれからは外見にも気をつけるようになることは、決して悪いことではないように思えた。

「まあ、ボーナスも出たし、服の数枚を買いに行くくらいなら…」

「じゃあ決まり!明日は買い物デートってことね!」

 ミツキはとても嬉しそうに言う。何かとっておきのプランでもあるのだろうか?


******


 翌朝、朝食を食べ終えた俺とミツキは街へ行くために着替えていた。ミツキは黒のタイツを履き、白いウールコートを着ている。手には薄いブルーグレーのハンドバック。彼女の見た目を考えるとやや大人っぽい印象だが、お世辞抜きでよく似合っている。白のコートは、やはりウサギを意識しているのであろうか。しかし、そのような服は一体どこに保管していたのだろう?

「すっごい似合ってるけど、それ、どっから出してきたの?」

「ふふ、ありがと。忘れていることはないと思うけど、私は精霊よ。服装くらい自由自在なの。いいでしょ」

 一方の俺はというと、下は量販店で買った細身のジーンズ、上はやはり量販店で買ったパーカとダウンジャケットを着ている。部屋の隅に置いてある姿見に写った自分は、少なくともオシャレとは言えないと思う。ちなみに改めて言うまでもないが、ジーンズの下は、おむつだ。

「ふんふん、思ったほど壊滅的でなくて良かった。最近の服屋さんは無難な服が多くて助かるわ」

「え? あ、もっとひどいこと言われるかと思った」

 俺は率直に感想を述べた。

「そんなに卑下しなくても大丈夫よ。もっとこう全身柄物だったり文字が入ってたりしたらどうしようかと思ってたけど、今の感じなら靴とアウター、要は上着のことね、を買い足せばそれなりによく見えると思うわ」

 それは助かる、俺の財布的にも。

「じゃあ早速出発! と行きたいところだけど、二つルールを決めたいと思います。一つ目、トイレは禁止。二つ目、私が手をギュッと握ったら我慢しない」

 唐突なレギュレーション変更だ。

「何そのルール? いるのそれ?」

「だって最近、私の事を気にして本当はおむつに出したいのに、我慢してるわよね?」

 図星だ。最近はおむつに出したくてもミツキの目を気にして、しないことが多い。

「もちろん、本当はその歪みきった性癖は治っていくことに越したこと無いんだけど。ストレス発散も必要でしょう?」

 改めてそう「歪みきった性癖」と言われると、少し心に刺さる。

「手を握ったら我慢しなくていい、の合図だからね。約束、守れる?」

「分かった、出来るだけ努力するよ」

 こうして俺とミツキのクリスマス買い物デートが始まった。

Comments

 返信ありがとうございます。  精霊としては気まぐれでも、ミツキ個人としては主人公の性癖を満たし、充足させることで、最後は健康的な生活に向かわせているものと(勝手に期待して)読んでいます。  キャラクターシートについてもあまり気負わず、気の向くままに書いてください。  気合の入れどころが他にあることは分かっていますので。  それではメリークリスマス(遅)

コメントありがとうございます!精霊なので主人公を成長させたいのかどうかすら気まぐれみたいなとこあります!!! あと人からどう見えるかとか触れられるとかも自由自在なのが裏設定です!ガバ設定でも許される精霊という存在、便利!!!(そろそろ脳内で覚えるのが限界になりつつあるのでキャラクターシートにまとめておきたいと思います笑)

池野くるめ

創作の世界では妄想が自由に膨らませられるの最高です!!

池野くるめ

更新ありがとうございます! 独り立ちを促しつつも甘えさせてくれるミツキはやっぱりいいなぁと思ったところで、主人公もやらなかった外でのプレイ提案とは。 生活力はレベルアップしても、人としてはレベルダウンしているような(笑) ミツキの言うストレス発散がどんなものか、後編がとても気になります。 それから設定の話で、今回は詳しく触れていませんでしたが、ミツキは周囲の認識を操作できるんですね。 「じゃないと私のこと見えない筈だもん。」 →ミツキが買い物に出かけている時など~ おむつの精霊という融通の利く設定に改めて脱帽です。 その気になれば魔法でも催眠術でも使えそうで、妄想の幅が広がってとても良いです。 続きも楽しみにしてます!

おむつの妖精と会えること自体羨ましい

快特


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