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池野くるめ
池野くるめ

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【小説】異世界最強の魔法使いエルフは紙おむつが手放せません!? 第三話 漏れるのは嫌なので吸収力に極振りしたいと思います!【試し読み】

 俺は「あれ」の調達のため再び電車に乗っていた。この世界では、さっき電車を降りてから僅かに一時間ほどしか経っていないのだが、なんだか長い旅行から帰ってきた時のように感じられた。  薬局に向かうというものの、どこの薬局でもいいと言うわけではない。さながらダンジョンに向かう時の作戦会議のように、綿密な脳内シミュレーションを行ってしまう。  まずは品揃え。実は俺でも履けるような子ども用の大きなサイズを取り扱っている店はそう多くない。大体はビッグより大きいサイズまでで、店によってはビッグまでしか置いていない。この時点で全体の七割くらいは候補から外れる。  次に家と職場からの距離。これもかなり重要だ。今の情報社会、誰が見ているか分かったものでは無いから、可能な限り知り合いが少なそうな店で買いたい。ダンジョンで排泄物の漏れ出しが脅威であるように、この世界では情報の漏れ出しほど恐ろしいものはないのだ。その点今は、スマホで店舗在庫を調べられる製品もあり、大変助かる。  それに加え今回は、いつものように一パックだけ買えばいいというものではない。長く向こうの世界にいようと思うので、家に残っているコレクションも含め、多めに持っていったほうがいい。  思案の末、俺はこれまで行ったことの無い薬局で一パックだけ買い、それを家に置いてから再度買い出しに出直すことに決めた。その行き先は薬局では無く、郊外にあるショッピングモールだ。  電車から降り、まずは薬局に向かう。もちろん、そこに狙った商品の在庫があることはスマホで確認済みだ。   薬局の自動ドアが開く。俺は万が一にも知り合いに遭遇しないよう、周囲の警戒を怠らないもののしかし、それを行動には示さず、あくまで普通に買い物に来た体を装う。今の俺をゲーム内の職業で表すなら、恐らく盗賊(シーフ)だろう。もちろん万引きをするわけではないが。  まずはレジの込み具合を確認し、次に店内の天井に設置された鏡を確認する。よし、大丈夫だ。レジにも目的のコーナーにも誰もいない。  初めて来る薬局ではあったが、俺の目的とする「夜専用の八回分吸収」のおむつはすぐに見つかった。このサイズは、大抵陳列棚の一番下に置かれているのだ。ブルーとピンク、二つのパッケージが並べられているが、俺は迷わずピンクの方を手に取った。これは家にいる、もしくは今は異世界にいる、歳の離れたまだおねしょの治らない妹のために買うのだと自己暗示をかけながら。  手に取ったら後は会計するだけだ。レジに並ぶときが一番緊張する。この店員さんは自分の同級生の母親であることはなかろうな? 「ポイントカードはございますか?」 「いえ、大丈夫です」  ただの買い物なら何ということもない会話も、今の俺には羞恥そのものだ。できれば話しかけないでほしい。  支払いは現金で行う。クレジットカードや電子マネーでは会計と同時に使用履歴が送られてくるが、可能な限り買い物の痕跡は残したくないからだ。  会計を済ませたら、それをすぐにリュックサックにしまう。これで任務完了だ。  家に急いで帰り、部屋のカーテンを閉めてから、たった今手に入れた戦利品を取り出す。青地に大きな黄色の星がデザインされたそのパッケージは、いかにも「夜専用」といった趣きで俺好みだ。ブルーもピンクも好きなのだが、俺は昔からピンク専門だし、恐らく履くことになるであろうピノも女性だ。だからこの選択は間違いではない。戦利品を眺めるのも早々に、俺は中が透けないようグレーに着色された大きなビニール袋と、デニム生地で作られたトートバッグをリュックサックへ詰め込み、再び家を後にした。  ショッピングモールでもやることは基本的に同じだ。ここで第一の目的は、お知らせサインの付いたビッグより大きいサイズのピンク色のおむつだ。今の俺には履けないが、異世界に行って小さくなった俺ならギリギリ入るはずだ。可愛さが全面に出たピンク色のデザインに、自分では失敗したことを周りに教えることができないことを示すおしっこお知らせサイン。これを履いて、その黄色いラインを青色に染め上げるのが俺の叶わぬ夢だった。  なぜこのショッピングモールを選んだか、それは単純な理由で、ここには食料品売り場と同じフロアに日用品コーナーがあり、会計をセルフレジで行うことが出来るからだ。  まずは薬局と同じように、自然な素振りでおむつコーナーへ入る。いかにも「ただちょっと通路をショートカットしただけですよ」という体を装って。  ここでも目的の物はすぐに見つかった。そのパッケージは数年ごとにリニューアルされるが、今は清潔感のある水色に、可愛らしい女の子が跳ねるデザインだ。ここでも架空の妹の事を思い浮かべ、それをカゴに入れた。これで目的は達成のはずだが、すぐ横にはビッグより大きいサイズにも関わらず、何故かスーパービッグサイズよりも履きやすいことで、その界隈では有名なおむつが売られていた。家にまだ在庫はあるし、なんなら今履いているのもこれだけど、ついでに買っておこう。  不運なことにセルフレジには何人かの列が出来ていた。二つのおむつを持った俺は、ただ早く順番が来ることを祈るように待つしか無かった。  ようやくレジが空き、俺の会計が出来る。ポイントカードも電子マネーも使わず、レジに紙幣を三枚入れ、お釣りの小銭を無造作に上着へしまい込んだ。一刻も早く戦利品を袋の中に入れてしまいたかったからだ。  こうして俺は無事に買い物を済ませ、家へと帰還した。  俺は異世界冒険のための装備を改めて見直した。夜専用おむつに、昔から履きたかったおむつ、それに俺が常用している一番履きやすいおむつ。まだ何か運べそうだ、と俺は思案した。 (そうだ、前に物の弾みで買ったやつも持っていこう)  俺はクローゼットの中から簡単なビニール包装がされたおむつを取り出した。一見したそれは子ども用のようなデザインで大きな動物の絵にお知らせサインがついたデザインだが、サイズが明らかに大きく、どう見ても大人用だ。  これはいわゆる「そういう」趣味性癖を持った人専用のアイテムで、実用性よりも趣味性に重きが置かれている。だから薬局にもスーパーにも売られていないし、そもそもほとんどの人々はその存在すら知らない。ファンタジー的に言えばまるで勇者の剣のようだが、何のことはない、インターネットで探せば誰でも買うことが出来る。この大人用の子ども用風のおむつの特筆すべきはその吸収量で、一般的な子供用ならペットボトル一本分、介護用でもその倍くらいであるところ、実にその五倍は軽く吸収してしまう。ここまでの吸収量だと、もはや吸収量の限界まで使い切ることの方が困難なレベルである。あの世界でここまでの物が必要とされるかは分からないが、無いよりはあった方がいい。  こうして沢山の戦利品もとい装備品を準備した俺は、カーテンを締め切った昼間でも薄暗い部屋の中で深呼吸をした。よし、と覚悟を決め、魔法を詠唱する。 「全知全能の神よ、我を時空を超えた世界へいざなえ、リーンカーネイト!」  魔法陣が現れ、白い光で部屋が満たされる。現世よ、しばしの別れだ。俺は光に包まれ、再び異世界へ飛び込んだ。

Comments

コメントありがとうございます!現世パートで絶対書きたかったとこなので頑張りました!!界隈あるあるネタを沢山入れていきたいので引き続きよろしくお願いいたします!

池野くるめ

 更新ありがとうございます!  おむつを買うときの緊張感がリアル、というかもはやあるある話になっているのが面白いです。  ピンクが専門で余計に知人に知られるわけにはいかず、行動が慎重になるケンには共感しかありません。  ただ唯一私と違う点は、自己暗示が半分本当なところですね。主人公がうらやましいです。    Xのアンケートでは夜専用8回吸収に投票したものの、3位では使われないかもと思っていましたが、無事ケンに買われて安心しました。  何種類も持っていくのは流石界隈民です。   ケンがどんなシチュエーションで長年の夢を叶えるのか、楽しみにしてます。  夜専用のお世話になるピノにも期待してます。  続きをお待ちしています!!

ありがとうございます!!今頑張って続きを書いているので今しばらくお待ちください!!

池野くるめ

支援して一話から通しで読みました。 続き楽しみにしてます! おむつを異世界に持ち込んで、ここから とっっても捗る展開になりそうですね!

霜月


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