2つの神
Added 2019-07-12 11:41:44 +0000 UTCこの世界では、ムケチン教とホウケイ教の2つの宗教が長年にわたる争いを続けてきた。しかし、その宗教戦争にも、今日歴史的な終止符が打たれることとなったのである。 「汚いホウケイ野郎どもめ!」 「ムケチンの教えに染めあげろー!!」 「臭いチンポなんかいつまでもぶら下げてんじゃねえぞ!」 広場には男たちにヤジが飛び交っていた。 ここはムケチン教の聖地と言われる、ロシュツキトウの街の広場である。広場の中心には数十人の男たちがX字に組まれた丸太に、万歳をする形で張り付けられていた。 「フンっ。さすが、生まれたばかりのガキのチンポの皮を切って、無理やり剥きあげるような野蛮な国の男どもだ。威勢だけはずいぶんといいな。」 張り付けにされた男たちの中心にいるのは、ホウケイ教の教えを遵守していた、センタンカブリの国の元王である。 「元」というからには、彼はもう王ではないということだ。センタンカブリの国は長年の争いに負けた。城を守る王宮騎士と、自らも剣を持ち戦いの最前線に立ったセンタンカブリ王は捕虜にされ、今日、ロシュツキトウの広場でムケチン教の正当性をより先鋭化するための駒として、張り付けにされたのである。 センタンカブリ元王は、40歳になったばかりの比較的若く、男盛りの王であった。蓄えられた髭と、彫りの深い顔立ちが、全裸にされて敵前に張り付けられても威厳を失っていなかった。屈強な筋肉は白い肌で包まれ、長めの髪は緩くウェーブがかかっており、金色をしていた。それはまるで石膏で作られた芸術作品のような姿であるが、その股間からぶら下がるイチモツはスッポリと真っ白な包皮で包まれている。その上に茂る陰毛も金色をしており、その姿はある種の神秘性を感じさせるものであったが「ホウケイである」というだけで、その内の一つも讃えることはできないほど、ロシュツキトウの民たちにはムケチン至上主義の教えが貫かれていた。 「これより、邪教の教徒であるセンタンカブリの王を始め、その直属の王宮騎士たちの公開処刑を始める。」 荘厳な声が広場に響き、ロシュツキトウの男たちのヤジはピタリと止んだ。そして、一転して静寂に包まれた広場の中心に、1人の男が剣を持って現れた。 「ロシュツキトウじゃ処刑も王が自ら行うのか?さすが野蛮な流儀をお持ちのようで。」 センタンカブリ王は鼻で笑った。そう、剣を手に持ち、張り付けにされた男たちの前に現れたのは、ロシュツキトウの男たちのヤジを、鶴の一声で止めることができる唯一の人物。ロシュツキトウ王であった。 白い肌のセンタンカブリ王と正反対に、日に焼けた肌に包まれたロシュツキトウ王もまた全身に筋肉の鎧を纏っており、照りつける太陽の光に吹き出した、汗で全身を怪しく黒光りさせていた。男らしさを際立たせるためであるかのような黒髪は坊主のに刈り上げられており、ロシュツキトウは熱帯が続く国であることと、角ばった男らしさこそが美徳とされる国土を反映してのことだろう。 神秘の白い肌に金色の長い髪を持つセンタンカブリ王の色素の薄い様と対照し、広場に集うものたちは皆息を飲んだ。 「センタンカブリ王として、最後に何か言い残したことはあるか?」 「王宮騎士の者たちへの感謝と、民への謝罪だ。」 「その言葉、しかと受け取った。では速やかに処刑に入る。」 そういうとロシュツキトウ王は剣の切っ先をセンタンカブリ王へと向けた。 「王様!」 王の後ろで張り付けにされたセンタンカブリ王宮騎士たちが泣きそうな声をあげる。 センタンカブリ王は目をつぶって自身に降りかかる運命を受け入れようとした。 シュパンッ 静寂の中に剣が鋭く動いた音がする。 「ああぁ…。」 張り付けにされた王宮騎士たちの嘆く声がする。 そこでセンタンカブリ王は違和感に気づいた。 なぜ私は未だ意識を持っているのか? 恐る恐る目を開くと、そこにはロシュツキトウ王がニヤリと微笑みを浮かべて立っていた。 「処刑するのでは…。」 「何を言っている。もうとうに処刑は済んだ。センタンカブリ王のな。」 「何を言って…。」 その時、急に下半身に痛みが走り、センタンカブリ王は自身の下腹部を見た。 そこには桃色の亀頭を露わにした自身のイチモツと、その下に放り投げた布切れのように白い肌の包皮が落ちていて、ゆっくりと鮮血が滴っていた。 「あっ…。」 「ようこそ。北の国の民の元王よ。我らは同じムケチン神の教えを遵守し、ペニスの先端を露わにした君を同族としてむかえ入れよう。当然、君の後ろにいる元王宮騎士の諸君も、な。」 「っ…、なっ…。」 「っそ、そんなの嫌だっ!」 呆然とするセンタンカブリ王の後ろで騎士たちが騒ぎ始める。 「うるさい奴らだ。すぐに慣れる。もっとも、生まれてから数十年の間、純白の皮に守られ続けていた貴様らの亀頭と、産まれた日から陽の光の下に照らされて、鍛錬を続けた我らムケチン教徒たちのイチモツでは雲泥の差が出るかもしれんがな。この国では成人と同時に試練がある。「ムケチン神の手」と呼ばれる岩の穴に油を注ぎ、自身の勃起させたイチモツを入れ、情けなく即射精をした者は奴隷へと身を落とすこととなる。近年は、皆生まれた時から必死の鍛錬を積むから奴隷になるものなどいなくなったがな。…貴様らのような元邪教徒で、亀頭の鍛錬を怒ったっていた不届き者たちのことは知らないが。これから貴様らの北の国まで進軍し、全ての男たちのチンポを剥き上げてやるから安心したまえ。成人しているものには、割礼の傷が塞がり次第試練を受けてもらい、情けなく種を零す者たちは奴隷となってもらうがな。」 王が言い終わると同時に、静寂が包んでいた広場には、ロシュツキトウの男たちの歓声が響いた。 いやだぁ…こっちにくるな… かつての部下たちの阿鼻絶叫をセンタンカブリ王は背後から聞いた。しかし今や自身の根幹であったホウケイの教えを強制的に奪われたことへの放心と、その向こうにある奴隷への転落という未来が彼から考える力を全て奪っていた。 「そうだ。この国では男は長い髪などしない。それは奴隷も市民も、王族でさえ関係ないんだ。」そういうとロシュツキトウ王は、先程イチモツの先端を切り落とした剣で、センタンカブリ王の長くウェーブのかかった髪を容赦なく切り捨てた。 センタンカブリ王の処刑と、それによる事実上のホウケイ教の喪失、ロシュツキトウ国の台頭と歴史はめまぐるしく動いた。 広場での処刑から3年後の夏の夜、ロシュツキトウ王は、再び広場に立ち、ロシュツキトウ国の民たちと共に祝杯を挙げていた。 「今回の帰還で、センタンカブリ国の全制圧が完了した。ムケチン神の教えにそい、同士として互いに研鑽し合った全ての国民たちに謝辞を伝えたい。」 ムケチン王万歳ー!! ムケチンの教えよ永遠なれー!! 広場中に男たちの声が響いた。 3年前と違うのは、かつては黒髪に日に焼けた肌ばかりだったムケチン国の民たちの中に、金色の髪を坊主にして、白い肌を持った男たちがわずかに混ざっていることである。 ロシュツキトウ国は、実力主義の国であった。それ故に、「ムケチン神の手」の試練を耐え抜いたものであれば、生まれた場所や肌の色も問わず、ムケチン国の国民として迎え入れてきたのである。それこそがムケチン国がここまで強大になった理由でもあった。 センタンカブリ国はロシュツキトウ国の侵攻を受け、全ての男はイチモツの皮を切り落とされた。そして「ムケチン神の手」による試練を受けて、数十人に1人の男はその試練を耐え抜き、ムケチン国の民として、市民権を得たのである。奴隷にならずに済んだ者たちは、過去のホウケイの教えを容易く捨て去り、自分たちに命を残す施策を取ったロシュツキトウ王への忠誠心を高めた。 今では隣人であり、親友だったはずの男を、奴隷として飼う元センタンカブリ国の民である男もいるのである。 奴隷たちの仕事は家事労働だけではなく、ムケチン神の教えにより、男同士での性行為も鍛錬の一つとみなされ、男色の盛んなロシュツキトウ国での性産業への従事と多彩であった。神秘的な白い肌に金の髪をした男たちは、好奇の対象となり、それ専門の売春宿が首都では軒を連ねるほどであった。 売春夫の息子であっても、ムケチン神の手の試練を耐え抜いたなら、市民として受け入れられる。そこに希望を見出し、幼い息子のイチモツの先端を切り落としたり、剥きあげて擦り、鍛え上げる大人たちで溢れていた。元センタンカブリ国の民たちの中で、ホウケイ教の教えを思い出す者など誰一人としていなくなっていた。 広場で演説をするロシュツキトウ王の後ろにも白い肌に金髪の男が立っている。逞しい筋肉を白い肌で包み、糸のようであった金の髪を短髪に刈り上げられた男は、元センタンカブリ王その人であった。 しかし今の彼にかつて王であった名残は微塵も感じられない。自国を侵攻したロシュツキトウ王の演説に目を潤ませて聞き入り、共に盃を挙げているのだ。 センタンカブリ王はムケチン神の手に耐えることができなかった。 剥きあげられたばかりの亀頭は、1ヶ月ほど傷の治りを待っての試練となったが、デコボコとした筒状の岩の中にヌルヌルする油を流し込まれ、そこに興奮剤でビンビンになったイチモツを問答無用でぶちこまされるのである。長らく外気に触れておらず、処刑以来の1ヶ月でようやく肌着との擦れに慣れてきたばかりの肌には強すぎた刺激であった。コケ蒸した岩の間は、今まで経験したどんな女陰よりも艶かしく、センタンカブリ元王を高みへと導いた。 あっけなく噴出した王の精液を見て、ロシュツキトウ王は高らかに笑い、その場で金貨一袋を奴隷商に手渡しセンタンカブリ元王を連れて王宮へと帰還した。 顔を赤面させて移行しようとするセンタンカブリ元王を無理やり寝台に乗せて、その後はひたすらに懐柔した結果、3日も待たずにセンタンカブリ元王はロシュツキトウ王の男妾となったのである。 それまで尻穴を使った性交など知識すらなかったセンタンカブリ王を、たった数晩で手篭めにできたのは、男色の盛んなロシュツキトウ国で何百人ものハレムを持つロシュツキトウ王でなければできなかったであろう。 ホウケイ神の教えはこうして時の彼方に消えていったのである。 もしやムケチン神の教えも、同じようにいつか消えゆく日が来るのかもしれないが、そんなことはまるで有り得ないことのように、かつての異教徒の王であった男が固く持ったロシュツキトウ王への忠誠心と恋慕は、ムケチン神の教えと、その筆頭であるロシュツキトウ国王に今や骨まで陶酔していた。