SamSuka
ハセトム(旧:HI)
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春の生徒指導

 聡介は学ランの内ポケットからタバコの箱をとりだしたが、中身が空っぽなことに気づいた。 「チッ」  舌打ちして空き箱を握りつぶし、非常階段に捨てた。  いつもなら一緒に授業をサボっていた仲間たちは、もう誰もいない。  4月からこの学校に赴任してきて、新たに聡介のクラスの担任となった教師・山田はいわゆる「カリスマ」と呼ばれる教員らしく、問題のある学校に次々と派遣されては、その状況を改善する名物教師なのだという。 「ドラマかってーの」  その噂を聞いたとき、そう言って仲間たちと笑いあったのが数週間前のことだとは信じられない。  いまでは彼らはみな山田の手先のようになり、改造した制服を校則通りにあらため、頭髪を短い黒髪に揃え、全員がまじめに授業を受けているのだ。  校舎裏の日の当たるベンチに横たわり、聡介は目を閉じた。  毎日放課後に個人面談が1人ずつおこなわれ、その面談が終わった者は次の日から真面目な学生に変貌しているのだった。  そして、今日が聡介の面談予定日だった。 「ばっくれちまおうかな」と聡介は考えた。「どうせおれが行かなかったところで山田が何かするとも思えねえし。っていうか、面談なんかで話すこともねえし。なんであいつらはあんなふうになっちまったんだろう。面談で何が行われるんだろう。明日になればおれもあいつらみたいになっちまうのか?」  金髪のメッシュを入れたツーブロックの髪が日差しでぽかぽかとしてくる。  聡介は眠たくなった。いつしかそのまま眠りへと落ちていった。  終業のチャイムが聞こえてくる。聡介はゆっくりと目を開けた。 「山村」  名前を呼ばれて顔をあげた。山田がベンチのそばに立っていた。 「もう放課後だぞ」  山田は微笑んでいた。三十半ばくらいの、男盛りへとさしかかる顔を精悍に輝かせ、すらりと長い足でベンチの足を軽く蹴った。 「おまえは猫みたいなやつだなあ」  聡介は苛立った。山田のこうした余裕のようなものにからめとられて、洗脳されたかのように従順になっているかつての仲間たちへの苛立ちと、山田そのものへの苛立ちが頭の中でごちゃ混ぜになっていた。  無言で立ち上がり、そこを去ろうとする。  その腕を、山田の手がすばやく捕まえた。 「いけないな」  聡介が振り返ると山田と目があった。 「今日はおまえの個人面談だろう?」  相変わらず微笑む山田の顔があった。それが唐突にブラックアウトするみたいに見えなくなった。何が起きたのかわからなかった。口元にハンカチを押し付けられていることだけが、かろうじて最後にわかった。  ああ、こいつもしかしたらマジでヤバいやつかもしれねえ。  それが聡介が意識を失う直前に思ったことだった。  聡介は目を覚ますと、両手が高く持ち上げられているのを感じた。  まだ眠気にも似ただるさが残る頭であたりをみまわしてみると、そこは古い準備室のようだった。  長いこと使われていなさそうな巨大な地球儀に、下りたブラインドからのかすかな夕暮れ色の光が当たっていた。 「おっ、目が覚めたかあ」  山田がいた。ネクタイをしたワイシャツにサマーセーターを着て、腕を組んで聡介を見つめていた。 「ふふぅっ! ふぅぅっ! ふぅぅっ!」  てめえ何しやがる。聡介はそう口にしたつもりだったが、口からは情けない音が漏れるばかりだった。そこでタオルのようなものでさるぐつわをされているのに気づいた。 「静かにしろよー…と言いたいところだけど、好きなだけ叫んでもいいからな。ここはもう誰も来ない校舎のハズレの方だし、誰かに見つかりっこなんてないんだから」  そう言いながら山田は聡介の方へと歩み寄り、頬を愛撫するように撫でた。聡介は鳥肌が立ち逃れようと体をよじったが、両手は頭上でなにかに拘束されているらしく、足も背後の棚に手錠で繋がれていて、抵抗することはできなかった。  聡介は怒りをむき出しにして山田をにらみつけた。それでも山田は「かわいいなあ」とうっとりしたような口調で答えるばかりだった。  聡介は屈辱で全身をこわばらせ、なんとかして一矢むくいてやろうと全身を激しく揺すって抵抗をこころみたが、背後のがんじょうな棚がガチャガチャと音を立てただけで終わった。 「それじゃあ特別面談をはじめるぞー」  山田はそう言うと聡介の学ランを脱がせ、ワイシャツのボタンをひとつずつはずしはじめた。  聡介は驚きで目を見開き、山田のその手先を凝視して全身を揺すってさらに抵抗しようとした。 「ふふんっ! ふんっ! ふぅんっ!」  怒鳴り声をあげてもムダだった。すべて口に咬まされたタオルに吸収され、山田はクスクスと笑いながら手慣れた様子でつぎつぎと聡介のワイシャツのボタンをはずしていくばかりだった。  やがてボタンはすべて外され、聡介の胸から腹が山田のまえにさらけだされた。 「若いなー。きれいな肌してるよ」  山田の指が聡介の胸元に触れた。爪先が乳首をこすった。 「ふうんっ!」  単純な刺激への反応で聡介の体は反応した。 「なんだ。おまえそんなヤンチャななりして乳首で感じるのか?」  山田が笑う。聡介は抗議するように足を蹴り出すが、手錠に邪魔されてガチャガチャ音を鳴らす以外になにもできない。 「つぎはこっちな」  山田の手がズボンの股間のチャックへと伸びた。聡介はますます暴れたが、それらはすべてなんの成果も出さなかった。  山田の指がスーッと聡介のズボンのファスナーをおろす。片手で器用にベルトを緩め、そのまま包装を剥ぐように聡介の下半身をあらわにしていく。  聡介は下半身は灰色のボクサーブリーフ、うえははだけたシャツという情けない姿にされて、恥ずかしさから顔と目を赤らめて上目使いに山田を睨みつけた。 「まだまだこれからだぞー」  山田はボクサーブリーフに手をかけた。聡介は腰を激しく揺すって抵抗をしめした。 「ははっ。なんだかセックスしてるみたいな腰の動きだなあ。でもそんなめちゃくちゃじゃあ相手を気持ち良くはできないぞ? おまえ童貞だろ?」  山田は愉快そうにそう言って、容赦なく聡介のボクサーブリーフを膝までおろした。皮が剥けてまもない、薄ピンクの亀頭をした聡介のイチモツが暴かれた。 「おお、皮は剥けてるんだな。えらいぞ。ちゃんと剥いたんだな」  山田が指先で亀頭を撫でた。生理的な反応で聡介は腰を引いてぴくぴくと全身をけいれんさせた。 「でもまだまだ弱いな。まっ、まだこれからだから安心しろ」  そう言った山田は自分のスーツのスラックスのベルトをゆるめて脱ぎはじめた。 「これが一番手っ取り早いからな。おまえも明日からはみんなと一緒になれるぞー」  聡介はクラスの不良仲間たちがつぎつぎと優等生へと変貌を遂げたこの1ヶ月を思い出した。自分はいまこんな姿にされて、山田もズボンを脱ごうとしている。もしや、彼らは強姦されたのではないか。それで山田になにか弱みのようなものを握られて、従順になるしかなかったのではないか。  それなら好きなようにしてみろ。聡介は考えた。おれはケツ掘られたくらいじゃ絶対おまえに従ったりなんかしねえからな。  しかし、聡介の予想とは違う方向に事態は進んだ。  山田がパンツを脱ぎ捨てると、聡介よりもはるかに密度の濃い陰毛の茂みと、重厚で黒々とした大人の陰茎があらわれ、山田はそれを数回しごいてムクムクと勃起させたものの、それを聡介の肛門ではなく陰茎へと擦り合わせたのだった。 「!?」  聡介は混乱した。こういった行為への知識も免疫も彼にはなかった。 「大丈夫。大丈夫だぞー。痛いのはすぐ終わるからなー」  山田は息を荒げながら陰茎をしごいている。鶏卵くらいありそうな大きな睾丸がびくんびくんと脈動し、射精が近づいていることを知らせている。  まさか、精子をぶっかけるつもりか? 聡介は青ざめた。ただただ気味が悪かった。意味もわからなかった。そうこうしているうちに、山田は聡介の萎えた陰茎を手にして、自身の膨張した亀頭の先端とキスするように合わせた。 「…よしっ、いくぞっ!」  山田が射精した。と、聡介の陰茎のなかに、山田が放った精子がそのまま逆流するように流れこんでくるのがわかった。 「んんんんんっ!!」  尿道を刺激される痛みが聡介の全身を走った。しかし山田の手で力強く押さえつけられた聡介は、それから逃れることもできなかった。  山田の射精は数十秒に及んだ。 「ふーっ」  と呼吸を整えながら山田が聡介から離れると、聡介の陰茎の先端から入りきらなかった精液がどろりと垂れ落ちた。  聡介は放心していた。強姦よりも酷いことをされたようなショックで、なにも思いつかなかったし、動くこともできなかった。 「馴染むのに数分かかるんだ。でももうあと少しだからな、しばらく待ってろよ」  山田の声も、聡介は聞いていなかった。  そのままなにも変わらずに数分が過ぎた。校庭でサッカー部と野球部が練習しているらしい音が、遠くからこの部屋まで聞こえていた。 「ん!?」  聡介は唐突に尿意に襲われた。内股をこするようにすると、「ああ、はじまるな」と山田が言った。山田はすでにズボンも履きなおし、身支度を整えていっぱしの教員らしく部屋の壁にもたれながら聡介を眺めていた。  聡介の陰茎は天井に向かってムクムクとそそり立ちはじめた。聡介は自分の意に沿わない勃起に驚き、恥ずかしさでそれを隠そうと体をもぞもぞと動かした。だが拘束された体ではそれは意味もなく、聡介の若い屹立は山田の目にもしっかりととらえられる形でさらけだされた。  つぎに睾丸の違和感が聡介を襲った。なにかがうごめいているような、玉のなかでかき混ぜられてでもいるような不快な感覚だった。 「んん! んんっ!」  射精の快感とは違う、尿意に似た感覚がだんだんと高まっていった。こんな場所で粗相をすることは聡介のプライドが許さなかった。 「我慢しなくていいんだぞ」  聡介の羞恥を見抜いたかのように山田が言った。「ここには先生しかいないんだからな」  それからしばらく聡介は耐えた。山田は何度も「我慢するな」「楽になっていいんだぞ」と声かけをしたが、聡介は絶対にそれに従わなかった。  とうとう、山田が根負けしたように口を開いた。 「おまえはすごいよ」  そう言って聡介の方へと歩み寄ってきた。 「ほかのやつらはとっくに堕ちてたんだけどなあ。でもおまえはすごい。だから特別に俺が手を貸してやろう」  山田の手が聡介の股間をわしづかみにした。その刺激で聡介は失禁と射精を同時に味わったような感触にとらわれた。 「んんんんんんんんんっ!!!」  一瞬の間のあと、山田が「いけ」と命令調で耳元で囁き、指を睾丸へとグリリとめり込ませた。 「んっ! んっ! んんんっっっ!!!」  聡介は達した。ありえないほどの量の、白いゼリー状の物体が、部屋中に撒き散らされていった。 「ん! ん! んんん???」  精液に似たそれが、実は精液ではないことに聡介は気づかなかった。それは粘液質にされた聡介そのものと言ってもよかった。  聡介の信念、人格、性質。そういったものたちが、山田から注入された特殊な精液によって睾丸のなかで液状化し、いま聡介の破裂しそうにはりつめた陰茎からほとばしっているのだった。  聡介は連続する射精のたびに自分が自分ではなくなっていくのがわかった。けれどそれを惜しいとも思わなかった。あらかじめ山田から注がれた快活で真面目な人格精液がすでに聡介の睾丸のなかに定着して、聡介を聡介ではない存在へと変えていた。  聡介はもはや山田の分身だった。それに違和感を覚えることもなかった。自分が山田と一緒になれたことに喜びさえ感じた。    射精が終わった。部屋は青臭い栗の花の香りで満たされていた。 「どうだ?」  聡介のさるぐつわを外す山田に問いかけられて、聡介だった男子生徒は目を輝かせて答えた。 「うん! 最高だよ! おれはもう先生なんだな。先生みたいに真面目に勉強して、スポーツもして、おれたちをもっと繁殖させて増やしていけばいいんだよな!」 「そうだよ」  山田は聡介だった男子生徒の額にキスをした。男子生徒は喜びで笑った。それは数時間前までヤンキーだったとは思えないほど、可愛らしく誰もに好感を与える種類の笑みだった。  男子生徒が去った後、撒き散らされた精液を山田は掃除していた。 「ヤンキーの人格ってのもまあまあ高値で売れるからなあ」  そう言って彼がフラスコのなかに聡介から吐き出された人格精液を集めていたことは誰も知らない。  聡介という名の男子生徒は、今日の帰りに理髪店に行って男子高校生らしい髪型にしてくると言っていた。明日の授業の予習もしてくると言っていた。  これでいまの担当クラスの全生徒の改造が完了した。山田の成果は学校に認められるだろう。どのような指導が行われたかなどは秘密のままで、やがて山田は私立学校の一つや二つ任されるくらいの理事や教育者になるのかもしれない。そのときその学校にいた生徒たちもまた、皆おなじように改造されるのかもしれない。


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