SS デレマス 城ヶ崎莉嘉、美嘉
{アタシもお姉ちゃんみたいに男の子にモテまくって素敵なお婿さんゲットして楽しく暮らしたいっ♪}
夏休みに入って数日が経過した7月末のある日の午前10時過ぎ。
実家の様子を見に来た私に対して妹の莉嘉は何だか困ったお願いをしてきた。
{あのねえ……私は人生をそんなにイージーモードで生きてるわけじゃないんだけど?}
{カリスマJK人妻アイドルなのに?}
妹は不思議そうに首を捻っている。
やはり、私の妹は肝心な部分が分かっていない。
{確かに私は一部でカリスマなんて持ち上げられてはいるけれど。結婚に関してはそんな冠は何の役にも立たなかった。駿輔のハートを射止めるのは本当に大変だったんだから}
大きなため息を吐き出しながら妹の勘違いを正す。
私と夫である武内駿輔は、妹が縁で知り合った。妹の担当プロデューサーが駿輔だったのだ。
妹の様子を見にちょくちょく顔を出している内に駿輔との距離は段々と縮まっていった。でも、オンナに興味なさそうなあの朴念仁を狙うライバルアイドルはいっぱいいた。ライバルアイドルたちを蹴散らしてお嫁さんの座に就くのは本当に大変だった。可愛い子ばかりなのでカリスマギャルの呼称とか何のプラスにもならない程に。奇跡的なバランスで、結婚後もJKもアイドルも続けていられる。でも、それは妹が思うような簡単なものじゃないのだ。
{大体ねえ……アンタ、男子との交際が発覚したらアイドル辞めなきゃいけなくなる可能性の方が高いんだよ}
{そうしたらアタシ、愛に生きることにするから。アイドルはそれまでかな♪}
妹は笑顔で言い切ってみせやがった。
目の前のことに全力を尽くすけれど、他にやりたいことができたら容赦なく今を捨てる。
今どきの若い者の考え方は恐ろしい。私が何年もかけて積み上げたものを失うことが怖いのとは正反対。
{交際から結婚、妊娠なんてことになったら……学校だって辞めないといけないかもしれないわよ}
{アタシ、勉強は好きじゃないから。子育てを理由に合法的に中学校を通わなくて良いなら大歓迎だよ♪}
{令和のJCこっわっ!}
私にはよく分からない恐ろしい倫理観の少女が目の前に笑顔でいた。
勉強嫌いな妹に、学校を辞めることになるかもは逆効果だった。私は、駿輔と結婚するに当たって高校を自主退学するべきか何日も悩んだというのに。
{お姉ちゃんのおかげでやるべきことは決まったよ♪}
{やるべきことって♪}
{この夏休み中に、Pクンみたいに格好良くて優しくて素敵で高収入な男の人をゲットして結婚して中学校を自主退学するの♪ 9月1日には人妻になってるからもう学校行かない♪}
{夏休みに入ってまだそんなに経っていないのに、いきなり不登校宣言するなっての}
妹のお馬鹿宣言に呆れるしかない。
{大体、お嫁入りするのに相手候補はいるの?}
{いないよ。だから、海でナンパしてきた男の子中から超優良物件を選ぼうかなって思ってるんだ♪}
{海のナンパ野郎の中に超優良物件なんていないでしょ……}
陽気に笑っている妹が怪しい違法動画に出演させられる未来しか見えてこない。
下手をすれば妊娠なんて恐ろしい事態になりそうだけど、きっと結婚はない。
このお馬鹿妹は私が正しく導かなくては。
{海でナンパしてくる男なんてろくなもんじゃないから止めておきなさい}
{いっぱいモテれば、Pクンみたいなイイ男が1人ぐらい混じってるよ♪}
{駿輔は海でナンパなんて絶対にしないっての♪}
お馬鹿なことを述べる妹に釘を刺しておく。駿輔が海でナンパする様な軽い男だったら、私は黒なんてしなかった。ううん、もっとギラギラしたメスどもに駿輔を搔っ攫われていたに違いない。結婚したくなる良い男が海でナンパしてくるなんてのは、白馬に乗った王子さまと同じぐらいの幻想でしかない。
{えっちな水着を着て大胆なポーズを取っていればさ。友達に無理やり海まで連れて来られた超優良物件の目に留まって一気に玉の輿は十分あり得るよ~♪}
莉嘉は相変わらずとても良い笑顔を浮かべている。
海にたまたまやって来た超優良物件な王子さまをゲットできる自信に満ち溢れている。
{12、3歳のちっぱいな子どもに優良物件が結婚を求めるわけがないでしょ。馬鹿も休み休みに言いなさい}
私だって駿輔に子ども扱いされない為に大変だったんだから。心の中で付け足す。
莉嘉は外見的には小学生で十分すぎる程に通用してしまう。結婚とか無理があり過ぎる。
{若さを全面に押し出すんだよ♪}
{若すぎるってのよ……}
{じゃあさ、スクール水着にして、男の子のマニアックな心をくすぐっちゃおうかな♪}
{ロリスク水で釣れる優良物件とか、漫画に出て来そうな変態しか思い描けない……}
こめかみを抑えてしまう。スク水ロリ少女にプロポーズするエリートとか性癖がヤバ過ぎる。
{なら、アタシの隣にスク水お姉ちゃんも付けちゃおう♪ そうすれば、お姉ちゃんも一緒にお嫁に貰えるって勘違いした男が求婚して来ること間違いないよ♪}
{…………そんな男と結婚してアンタの人生、絶対に幸せになれないわよ}
ハッキリと見定めた。妹にこの夏中の結婚も恋愛も無理だと。
騙されて夏コミの薄い本の題材になりそうな破廉恥なことをされる展開ぐらいが関の山だと。
{馬鹿なことを言ってないで、夏休みの宿題を今の内に少しでも進めておきなさい。今年は仕事があるんだから、夏休みの最後に纏めてやるってできないんだから}
{だから、その宿題をやらなくて良い様にお婿さんゲットを考えてるんだよぉ}
{良いから宿題しなさい}
{…………は~い}
莉嘉は本当にシブシブといった表情でノートを開き始めた。
結婚後も時々実家を訪れないといけないのは、妹がまだまだしっかり者には程遠いから。姉としての指導は欠かせないのだ。
{宿題なんてしてたら海に行ってナンパされないよ~っ!}
{されんで良いからさっさと勉強する}
愚図る妹が私を越えるアイドルになるにはまだまだ時間が掛かりそうだ。
その頃には私は子持ちになってるだろうから、アイドルは続けてないだろうけど。
子ども、かあ……
{……海はともかく、扇情的な水着を着て駿輔を誘惑するのは……アリよね}
何だか楽しい気分になってきた。
人妻なんだし、子作りにもっと本気になっても良いだろう♪
忙しい駿輔を一発でその気にさせるセクシーな衣装を模索するのも悪くない。
私の高校最後の夏休みはまだ始まったばかりだった。
「…………お姉ちゃん、妄想の世界から戻ってきて……」