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枡久野恭(ますくのきょー)
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SS 俺いも 2024長編7 ゲーム研究会4


SS 俺いも 2024長編7 ゲーム研究会4

「私が、部長となってゲーム研究会を復活させたいと思います」


 4月16日火曜日朝、高坂瑠璃は職員室の一角でゲーム研究会の部長になることを宣言していた。後ろには初期メンバーとして名前を連ねた高坂京介と田村麻奈実を従えて。




 槇島沙織との対話を経て決心を付けた瑠璃。




彼女は部長の地位に就任することでゲーム研究会を取り戻す、いや、創造することに決めたのだった。


「同好会の申請には確かに3名いれば可能ではあるが……部長の高坂はともかく、後の2人は3年生。受験生だからなあ……」


 前回までの時間軸ではゲーム研究会の顧問を務めていた中年男性教師は、同好会の設立申請書を見ながら首を捻っていた。


「申請を受理して頂ければすぐにでも2年生、1年生部員を増やしてみせます」


 瑠璃は力強く断言してみせた。

 日曜日の夜に帰宅した瑠璃は京介に部長に就くことを話した。夫は快く妻の決断を受け入れ、協力を申し出た。

 だが、夫婦2人きりでは同好会は申請できない。そこで高校に在籍する共通の知り合いである田村麻奈実にとりあえず名前を貸してもらうことにした。

 申請が通ってゲーム研究会という器が復活すれば、以前の時間軸のかつての部員たちも戻ってきてくれる。瑠璃は確信を持っていた。


「瑠璃が部長に就任したことで、真壁くんも研究会に戻ってきてくれると思います」

「そうか、お前たちは真壁の知り合いか」

「前部長も、コーチとして技術指導に来てくれることを確約もらってますよ」

「…………アイツは、風呂に入らないで臭いから。あんまり学校に来て欲しくないんだがな。でも、体制はしっかりしていることは分かった」


 それから数分。幾つかの受け答えの末に瑠璃は申請書類を受け取らせることに成功したのだった。


「良かったね~♪ 瑠璃ちゃん♪」


 職員室を出てホッとしながら歩いていると、麻奈実から労いの声を掛けられた。


「田村先輩が名義を貸してくれたおかげです。ありがとうございました」


 瑠璃は歩みを止めて麻奈実に向かって頭を下げた。麻奈実はまぁまぁと両腕を振ってみせた。


「瑠璃ちゃんはPC用ゲームを創る以外の活動も増やしていくと言っていたけど。具体的には何をするつもりなの?」


 麻奈実の質問は教師相手に説明した時には敢えてぼかしたものだった。


「新生ゲーム研究会には実績が必要となっていくわ」

「実績? えっと……ゲームの大会で何か入賞するってこと?」


 瑠璃は頷いて見せた。


「ゲー研の場合には2つの方面の大会があるわね。一つはオリジナルゲームの出来を競うもの。もう一つは……所謂e-sports。格ゲーやスポーツゲームの大会で優秀な成績を収めることよ」

「瑠璃の格ゲーの腕前はプロ級だからな。ちょっとした格ゲー大会なら優勝も容易い筈だ」

「あまりにも私的な大会過ぎると、学校側が部活動の成果とは認めない可能性もあるので、何でもかんでも出れば良いというものではなさそうだけど」


 部長になった瑠璃は、研究会の存続について早くも考えるようになっていた。

 目立つのを嫌い、格闘ゲームの大会参加は極力距離を置いていた。だが、部長としては自分の類まれなる特技を生かす方向に頭を切り替えていた。


 それから3人は2年生の教室に行き、早速真壁楓をゲーム研究会に誘った。


「…………本当に申請を認めさせるなんて。高坂さんが部長をやってくれるというのなら。僕も一部員として参加させてもらいますよ」


 真壁、それから太めの双子が入部を承諾してくれた。

 人数的にはこれで部としての体裁は完全に整えられた。けれど、高坂夫婦にとってはまだ足りなかった。


「後は赤城妹だけだな」

「あの娘には、私の実力を示してから誘った方が後々のことを考えて良いでしょうね」


 瑠璃は部長として、研究会としての実力を示すことにした。



 放課後、閉鎖が解かれたゲーム研究会部室にて新生部のデモンストレーションが開かれた。

 とはいえ、放課後になってこの時間軸で初めて入ったばかりに部室の中には新作手作りゲームなど存在しない。瑠璃が披露したのは格ゲーの腕前の方だった。


「すっ、凄いっ! ネット対戦の上位ランカーを次々に撃破していく」

「高坂さんが使ってるパソコン、旧式だから相手と比べて不利な筈なのに……」


 瑠璃はオンライン格ゲーバトルをプロジェクターにも投影してその腕前を存分に見せ付けた。真壁たち“新入部員”たちは瑠璃の脅威的な腕前に呆然としながら見つめていた。


「高坂さん……凄い……」




 数少ない見学者の一人である赤城瀬菜もまた瑠璃のプレイに魅入られていた。

 ゲーム研究会のメインはあくまでもオリジナルゲーム作り。市販やフリーゲームをプレイすることは副次的な活動に過ぎない。

 だが、瑠璃が1年生部長として自分の実力を示すのに、信頼を得るのにオンライン格ゲープレイは丁度良い材料だった。

 トップテンプレイヤーの一人を撃破したところで、瑠璃はデモプレイを止めた。普段ゲームはしなくなっていたので連勝もそろそろ限界だった。だが、部室内にいた全員から万雷の拍手を送られたのだった。

 その拍手は、部長に就任したことで実のところ強く緊張していた瑠璃の心を和らげてくれたのだった。



「…………赤城瀬菜も入浴してくれて本当に良かったわ」




 帰宅後、瑠璃は夫と共に入浴しながら安堵に浸っていた。

 

「瀬菜のヤツ、瑠璃の評価がやたら高かったな。俺にとってもちょっとビックリだったぞ」

「……貴方は知らないでしょうけど。あの子の1周目の私への評価はそれは酷いものだったのよ」


 瑠璃は夫に聞こえない小声で呟きながら昔のことを思い出していた。

 1周目の春。赤城瀬菜は瑠璃のことを協調性のない中二病オタクな問題児として非常に嫌っていた。瑠璃もまた瀬菜を嫌っていた。ゲーム研究部の数少ない1年生部員同士として仲良くする様に京介が気を揉んだものだった。それを覚えているのはもう瑠璃しかいない。


「まあ、何はともあれ、これで去年というか前回とほぼ同じ布陣でゲーム研究会の活動ができるってもんだ。めでたいな。アハハハ」

「私は部長に就任してしまったのだから、やるべきことは前回と比べて段違いに増えてしまったわけだけど……就任してしまった以上、やってみせるわよ」


 瑠璃は湯の中で拳を握り締めてみせたのだった。

 こうして瑠璃は部長に就任することでゲーム研究会を復活させてみせたのだった。













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