SS かぐや様 白銀圭 組閣
「会長選挙に当選したは良いけど……役員人事が決まらないよぉ~っ!」
秀知院学園中等部生徒会長選挙が終わった翌日の夜。生徒会長就任が決まった白銀圭は兄夫の御行と共に入浴しながら悩んでいた。
「役員人事? 選挙前の生徒会役員に続投をお願いすれば良いんじゃないのか?」
目を瞑って混乱する妹妻に御行は自分を例に打開策を述べてみせた。御行は選挙が終わっても基本的に役員メンバーを変えない。伊井野ミコが新たなメンバーとして加わったことはあっても、副会長、会計、書記の人選は一切弄らなかった。
自分と苦楽を共にした役員たちを信頼して続投させる。それが御行のやり方であり同時に信念でもあったが、圭の場合にはそれができなかった。
「生徒会メンバーたちはほとんどが萌葉側に付いちゃったから。誘うってのも微妙なんだよねえ……」
「バニーコスでやらかして辞退直前までは藤原妹の方がだいぶ先行していたからな。向こうに付いてしまうってのも分からなくはないな」
御行は見たこともない中学生徒会現役役員たちに対して理解を示した。
萌葉の性格を考えれば、選挙が終わるまでに媚びを売っておかないと役職から外される可能性は高い。仮に自分は留任となっても、他のメンバーが全くのド素人だった場合には職務遂行が滞って苦労することになる。ならば、みんなで萌葉を応援した方が都合が良いとなる。萌葉支持も無理からぬことではあった。
一方で、御行には圭の気持ちも良く分かっていた。
「だが、敵に寝返った者とまたすぐに組むってのもできる話じゃないわな」
生徒会室がギスギスした空間になるのは目に見えていた。
「しかしだ。幾ら中等部とはいえ、秀知院学園の生徒会を、素人の友達に任せるというのも無理な相談だ」
御行は首を横に振ってみせた。
自分の数少ない友人たちの誰かに生徒会業務を任せるのか自問自動すれば答えはノーだった。任せられないし、無理に仕事をさせれば友情が崩壊しかねない。そういう類の仕事であり、頼みになることを御行は身をもってよく知っていた。
「じゃあ、どうすれば良いの?」
「答えは簡単だ。敵のボスごと丸抱えにするんだ。それなら圭ちゃんの器のデカさを示せて、各役員とのゴタゴタも生じにくい」
御行は妹妻に向かって指をビシッとさしてみせた。
「いや、でも、それは……」
圭は兄夫の提案を素直に受け入れることができない。口ごもってしまう。
「まあ、その辺は、高等部生徒会書記の初期の手腕に期待ってことになるな」
御行の脳裏に萌葉の姉の顔が思い浮かんだ。
いい加減な所が多い書記だが、それでも御行は多大な信頼を寄せている。個性的で協調性に欠ける生徒会メンバーを繋ぎ留めて来たのは彼女であることをよく知っていた。
「…………確かに、千花姉なら、この事態を何とかしてくれるかも」
「だろ」
「おにぃよりも信頼できるしね」
「おいっ」
御行からのツッコミが飛ぶ。
けれど、風呂場に到着してから圭は初めて笑みを浮かべてみせたのだった。