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枡久野恭(ますくのきょー)
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SS かぐや様 2024石ミコ 夏休み2


SS かぐや様 2024石ミコ 夏休み2


「悪い子になりたいから。どこかに遊びに連れて行ってよ」




 夏休みが始まって1週間ほどが経った。みこはほとんど毎日の様に僕の家に来ていた。とはいえ、色気づいた展開があるわけではなく、彼女はひたすら夏休みの宿題をやっていた。彼女だけ勉強させるのも何なので僕も夏休みの宿題に取り組んでいた。その結果、僕の人生で初の7月中に夏休みの宿題コンプリートというあり得ない状況になった。

 だが僕が宿題を終えたということは、成績優秀なミコはもっと早くに宿題が終わっているということ。現在彼女が取り組んでいるのは2学期、いや、3学期の予習だった。

 学年首席の凄さを今になって思い知る。僕と同棲していた前の時間軸ではいつ勉強していたのかよく分からなかった。でも、僕に見えないところではしていたのだろう。なんせ、色ボケても学年トップを守り続けたのだから。

 そんなミコが今日は打って変わって遊びに連れて行くことを要求してきた。これは何かあったに決まっていた。


「えっと……ご両親と、何か、あったの?」


 ミコが『悪い子』という単語を使う時。それは、ご両親と何かトラブルが起きたことを意味していた。前の時間軸の時、ミコは実家でのトラブルについてほとんど話そうとしなかった。だから、今回になって初めて知ったキーワードだった。


「別に。今日、朝起きたらまだお父さんが家に居たから……」


 ミコは嫌そうな表情を浮かべながら言葉を途中で切った。多分、言い争い。または、一方的に『正義』を勧められて辟易したか。

 世間一般的に解釈すると、今、ミコはちょっと遅めの反抗期というヤツなのだろう。そして娘の育て方に絶対の自信を持ってきたご両親は対応に難儀しているのだろう。

ありふれた話と言えばそれまで。ただ、違うのは親娘共に頭が良過ぎること。信念が強すぎること。普通の家庭なら対立しない事柄でもミコたちにとっては大問題なのだ。そういう面が最近になってやっと分かってきた。


「とにかく、今日の私は悪い子になりたいの。だから、どこかに遊びに連れて行ってよ」


 ミコは頬を膨らませている。今朝の不満は大きいらしい。


「僕と遊びに出掛けると悪い子になるのか。その辺の真偽はともかくとして。今日、外出するの?」


 僕は窓の外を見た。太陽が燦燦と輝いている。


「まだ午前9時過ぎなのに既に気温は35度超。不要不急の外出は控える様に注意報も出ている」


 僕に言わせれば、ミコはこのクソ暑い中をよくも毎日石上家まで来られるものだと思う。暑さを物ともせずにルーティーンワークをこなす。そういう点にも彼女の、そして伊井野家の意志の強さ、頑なさが見えている。


「それでも、外出するの?」


 とりあえず意思を再確認してみることにした。生粋のインドア派の僕にとってはお上が外出するなと言うのなら僕は喜んで従う。でも、ミコは違っていた。


「暑いんだから、涼しくなれる場所に連れて行ってよ」


 外出という前提が覆ることはなかった。ミコは揺るぎない信念をもって外に遊びに出ることをお願いしていた。

 なら、僕としてはその信念を折ろう。こんな暑い日に、出掛けたくない。


「涼しくなれる場所……なら、プールに行こうか」


 ミコは今日水着を持ってきていない。水着がなければいけない場所を敢えて提案する。それに今のミコは不特定多数、しかも男も含むに対して水着姿を晒すのは嫌かもしれない。


「分かった。水着を取りに一度うちに来て」


 ミコは間髪入れずに僕の提案を受け入れてしまった。


「…………うん。分かった」


 僕にできるのは彼女の承諾を受け入れることだけだった。


***

**


 ミコの家に一度より、それからかなり早めの昼食を某ハンバーガーショップで取って。僕たちは某レジャープールに到着したのだった。

 本来ならば高校生が気軽に立ち寄るにはちょっとお高めの施設。けれど、ソシャゲのポイ活でペア招待券を事前に入手していたのでそれを使うことにした。当選したものの、行くことはないんだろうなと思っていたチケットを使うことになって僕もビックリだ。


「こうしてミコを待っていると……去年、というか前の時間軸を思い出すな」


 僕の記憶的には1年前の夏、僕とミコは海の家で住み込みでアルバイトをしていた。




 働いて、海で遊んで、夜にはセックスして。そんな夏休みを約1か月に渡って過ごしていた。





 僕らしくもない青春というかピンク色に染まった夏休みだった。それに比べて今年の夏休み、というか今年も高1の夏休みなわけだけど、随分と違う。


「ミコとは友達。色っぽい出来事はない。夏休みの宿題は終わってる……前回も今回も全然僕っぽくないって点では同じか」


 改めて考えてみるとどっちも僕らしくない。僕の夏休みはひたすら家に籠って暗い部屋の中でゲームと漫画三昧。夏休み最終日を迎えても宿題は手付かず。そうであるべきなのにそうなっていない。全部、ミコと関わっているからだ……


「お待たせ」


 素っ気ない声が背後から掛かってきた。僕は心臓の高鳴りを感じながら慌てて振り返った。


「別に待ってな…………あっ」


 お決まりのセリフを口にしながら僕は途中で息を飲んでしまった。

 ミコの水着姿に見惚れてしまった。

 前回の時間軸の夏休みでミコの裸を見なかった日はなかったというのに。僕は彼女の半裸に胸をときめかせていた。


「水着姿を見せてるんだから……何か、言ったらどうなの?」




 ビキニ水着姿のミコは恥ずかしがってみせた。

 そんな彼女を見て、僕はミコに恋していたことを胸の高鳴りで思い出したのだった。







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