SS 俺ガイル 三浦優美子他 クリスマスの予定
「あたしのクリスマスの予定はハッチーと一日中えっちして過ごすだよ♡」
「……あっ、そう」
もうすぐ冬休みが始まるという12月の下旬のある放課後。三浦優美子はクラス内グループのメンバーであり、高校生夫婦な女子高生として校内でよく知れ渡っている比企谷結衣(旧姓:由比ヶ浜)にクリスマスの予定を聞いて後悔していた。あまりにもストレートに惚気た、というかピンク色に塗れ過ぎて参考にならない回答だった。
「あたしとハッチーって高校生夫婦でお金ないでしょ。だから、出費がかさみがちなクリスマスデートはお家で過ごすの♪ えっちしてるだけならタダだもん♪」
「単に結衣の性欲が底なしで、外出している時間も惜しんでセックスしたいだけでしょ」
呆れた声を出したのは同じくグループの一員である海老名姫菜だった。姫菜は結衣の言葉の裏の意味をきちんと読み取っていた。
「まあ、そういう面があるのも事実には違いないんだけど。クリスマスは外出しないってハッチーと2人で決めたんだからね。ぶぅ」
エロ女扱いされて結衣は頬を膨らませて抗議した。
「…………ヒキタニくんはリア充になった今でもクリスマスのチャラチャラした雰囲気とか嫌ってそうね」
「じゃあ、姫菜はどんなクラスマスを過すの?」
結衣の逆襲。だが、由美子に言わせればそれは悪手だった。
「それはもちろん、志を同じくする清らかな心を持つ乙女たちとホモトークに明け暮れるのよ♪」
高らかに宣言する姫菜の瞳は澄んでいた。よくよく見れば腐りきって発酵していた。
「私の持ちネタはもちろんヒキタニくんと隼人くんのはやはち♪ ヒキタニくんには女子高生の可愛い幼な妻という存在がいながら、学校内では隼人くんの専属肉便器となって快楽に耽ってるのよ~♪ やっぱり男同士の爛れた関係に勝るものなんてこの世にはないわね~♪」
「ハッチーはあたしの旦那さまなんだからね。あんまり変な話に使わないでよ」
「清らかな乙女たちの会合では身近な男子をホモに捧げるのが定番なの。はやはちが捧げられるのはある種当然のことなのよ♪」
姫菜は自重するつもりが毛頭なかった。発酵して腐りきって澄んだ瞳ではやはちを語ることに夢中になっている。
結衣は姫菜との対話を諦めて元々話を振ってきた優美子へと顔を向けてきた。
「優美子は? 隼人くんとクリスマスデートしないの?」
結衣は人妻というリア充ゆえの余裕か奢りか。最も敏感な質問を何の気なしにぶつけてきた。
「それは……」
それができるなら苦労ないし。優美子は口の中でだけ反論のツッコミを入れた。
「優美子も隼人くんとデートすれば良いじゃん♪ それで上手くいったらそのままお嫁入りしちゃえば良いし♪ 一生の進路が決まるってすっごく安心感と幸福感を得られるんだよ♪」
結衣は高校生夫婦という校内でも他に例を見ない稀有な存在であることを忘れて爛漫な笑顔で学生結婚を勧めてきた。
「…………行けるのならあーしだって隼人の元に今すぐにでも嫁ぎたいし」
できない相談だってぇのっ!
優美子は心の中で愚痴るしかなかった。だが、リア充を極めた女子とホモにしか興味のない凶悪タッグは優美子の繊細な乙女心を理解してはくれなかった。
「共に可愛い幼な妻を持つ妻帯者同士が夕暮れの教室で野獣となって絡み合うっ♪ くぅ~♡ 背徳的で耽美で燃える~♡♡」
優美子が葉山隼人と結ばれるという前提のもとに盛り上がっていた。
それは優美子としては困った展開だった。
「あーしが隼人と結ばれる可能性がどれだけあると思ってるんだし……」
クラスの女王さまに似つかわしくない弱気が漏れ出ていた。
2人の関係をよく知らない者は優美子と隼人が付き合っていると勘違いしている者も少なくない。
だが、もう一歩踏み込んで観察できる立場の者となると2人が付き合っていないことはすぐにわかる。みんなの王子さまは特定の女子と彼氏彼女にはなったりしない。
だが、結衣や姫菜という更に更に突っ込んだ間柄になるとまた見解が違ってくる。隼人は優美子のことを特別視している。恋愛感情とは断言できないものの、仮に葉山隼人が彼女を作るのならその第一候補は優美子であると確信を持っている。だから決して無根拠にはやし立てているわけでもなかった。
とはいえ、2人がくっ付くことを本気で考えているわけでもなかった。
「優美子は美人さんなんだし。サンタの格好をしておっぱいをびろ~んと見せちゃえばきっと隼人くんもその気になってくれるって♪」
結衣は笑いながら隼人必勝法を語ってみせた。
「あーしが……おっぱい見せ付けて隼人を誘惑っ!?」
優美子は胸が丸出しになっているサンタ衣装を着て葉山の前に立つ自分を想像してみた。
「…………そんな痴女みたいな真似、できるわけないし~っ!!」
遊んでそうなギャルに見えて、このクラスで誰よりも純情な少女の顔は真っ赤だった。
だが、結婚してセックスの経験が誰よりも豊富になった少女。二次元の男同士のドッキングを至高とする少女には優美子の純情ぶりが理解されない。
「馬鹿ね、結衣。隼人くんを誘惑するなら胸じゃなくてお尻でしょ。優美子のお尻をヒキタニくんのお尻と重ねてみてもらえれば。優美子にもワンチャンあるかもしれないわよ」
好き勝手言っている。本当に自由過ぎる発言だった。
「とにかく、おっぱい見せて隼人くんがその気になってくれたら後はもう男の子にみんな任せちゃえば良いの。天井を見つめている間に優美子は初えっちを体験した大人の女になってるんだから♪」
結衣は新婚初夜まで処女だった自身の経験を基にあっさりめの初体験を勧めてみせた。
ちなみに結衣自身の初体験は、途中から火が点いてしまった彼女が積極的に八幡に合わせて腰を振るという事態になっていた。
「はっ、はっ、隼人と……初えっちぃいいいいいいいいいいいぃっ!?」
初体験の衝撃は純情な優美子の脳内キャパシティーの限界を遥かに超える刺激と負荷を脳に与えたのだった。
「あああっ!? 優美子が急に意識を失っちゃったよぉっ!?」
「外面女王様にセックスの話は早すぎたかぁ」
崩れ落ちる優美子を結衣と姫菜が何とか支えて床に激突という事態を避けることができた。
「あっ、アレっ?」
優美子が意識を取り戻したのはそれからすぐのことだった。優美子が周囲を見回して驚いた表情を浮かべていた。その様子を見て友人2人はもう大丈夫だと判断。“おせっかい”の続きを促すことにした。
「善は急げって言うし。隼人くんとクリスマスデートの約束を取り付けちゃおうよ♪」
「へっ?」
優美子はまだ頭が半分麻痺していたが、結衣はそんなことにお構いなしに彼女の腕を引っ張って葉山の元へと連れて行った。
「隼人く~ん♪ クリスマスの予定を教えてよぉ~♪」
優美子のデート話だからか、結衣は一切物怖じすることなくストレートに予定を尋ねてみせた。学園の王子さまが空いていると言った瞬間に優美子を推す。女子特有の推しの強さを見せ付けて隼人と由美子のデートの約束を取り付けてしまう。それが結衣の作戦だった。
だが、同様なやり方で葉山とデートを取り付けようとした女子は数多い。それ故に葉山の方でも対策は何年も前から講じていた。
「クリスマス・イヴとクリスマスはサッカー部有志でミニ合宿を張るのが毎年恒例になっているんだ」
大勢の男同士でスポーツして過ごす。学園の王子さまは下心見え見えな女子を一掃するために手の込んだ男だらけのイベントを企画していた。
「隼人くんとは去年のクリスマス・イヴも夜通しで300本PKシュート大会したっしょ♪ 疲れるけどめっちゃ面白いっしょ♪ 戸部るっしょ♪」
戸部翔が話に割り込んできた。生き生きとした表情で1年前のことを語ってみせている。特定の女子とロマンチックなひと時を過ごさない為の仕込みは完璧だった。
「………………優美子が差し入れ持って様子見に行くって♪」
結衣は一瞬怯んだが、他人事なので豪快に踏み込んでみせた。
「へっ?」
自分ではない自分に対する提案に優美子は唖然とした。
「女子の泊りを認めるわけにはいかない。だけど、差し入れをみんなに持ってきてくれるのなら大歓迎さ」
葉山は踏み込んできた女子に対する応答もまた心得ていた。
自分ではなく合宿参加の不特定多数への差し入れならオーケー。泊まりは許さないけれど見学なら許可。彼なりにルールはきちんと定まっていた。
「じゃあ、合宿当日。優美子がみんなの分の差し入れを持って応援に行くから♪」
優美子がきちんとした意思表示を何もしないまま結衣は友達のクリスマス・イヴの予定を決めてしまったのだった。
「やったね、優美子♪」
結衣は得意満面の笑みを浮かべていた。
「男同士で夜通し汗だくだとか……サッカー部はホモの集まりかよ~~っ♡♡」
姫菜は葉山の話を部分的に繋ぎ合わせて大興奮していた。
友人2人はどこまでもマイペースだった。
「…………差し入れに相応しいメニュー。考えて、練習して持って行かなくちゃ……」
デートでなくてもクリスマスに葉山と接点ができて。優美子は乙女な表情を浮かべながら差し入れのメニューに頭を捻らせ始めたのだった。
そして迎えたクリスマス・イヴ。
「これ、差し入れの肉じゃが……みんなで食べればいーし」
「ありがとう。優美子に差し入れしてもらってみんな喜んでいるよ。もちろん、俺も嬉しいよ」
「…………まあ、約束したし」
葉山に褒められて優美子はそっぽを向きながら照れ顔を浮かべた。
世間的に見れば奥手過ぎてもどかしいが、優美子本人的には満足のいくクリスマスになったという。