「アズサさま、最近この辺りでスライムを見掛けなくなったと思いませんか?」
最初に異変に気が付いたのはライカだった。
ショートカットがよく似合う13、4歳ぐらいに見える彼女の正体はレッドドラゴンという強力種。実際の年齢は300歳前後で普通の人間から見れば悠久の時を生きる存在。
だが、その性格は生真面目でどちらかと言えば神経質。些細な変化でも気が付いてしまい、それがどうしても気になってしまう。彼女の視界からここ数日、スライムの姿が見えなくなっているのは懸念材料だった。
「そうかなあ~? たまたま視界に入ってこないだけじゃないの~? 問題ないって♪」
のんびりとした口調で笑って答えたのは隣を歩くアズサさまと呼ばれた魔女ルックの少女だった。17歳前後で帽子で半分隠れたブロンドのロングヘアが特徴の彼女だが、その正体は転生魔女。若くして過労死した日本のOL相沢梓が生まれ変わったもので、不老不死の肉体を得ている。過労死の苦い思い出からスローライフを心に決めて、フラタ村付近の高原の家に住んで300年が過ぎていた。ずっと独りで生きてきたが、近年になってライカをはじめとする長寿種や精霊の“家族”を持つようになっていた。
「我の視界から外れるように隠れたならば、その気配で分かります。隠れたのではなくいないのですっ」
「スライムだって発生する地域とそうでない場所があるんだから。この辺のスライムはみんな他のところにお引越ししたんじゃないかな~?」
喋るほどに危機感を募らせていくライカに対してアズサはのんびりした態度を崩さないまま。アズサは過労死した前世の経験から過度の危機感や気配りが仕事を無限に増やしていくだけだと心に深く刻み込んでいる。レベルMAXの魔女らしからぬ危機感の積極的な欠如。それこそがアズサ・アイザワのパーソナリティーだった。
「スライムだったらその内にここら辺にも戻ってくるだろうからさ。今はそれよりも山に行ってタルトの具材になるフルーツを取って来ないとだよ~♪」
「…………そうですね。今やるべきはフルーツ採取です」
アズサが朗らかに笑ってみせるのでライカは頷いて考察を止めてみせた。
結局この件は、ライカの心配し過ぎということで一旦収まりをみせた。けれど、後になってみれば、ライカはスライムが姿を見せなくなったことについてもっと深く考えておくべきだった。そうすれば、これから起きる最悪な災厄を未然に防ぐことが、もしかするとできたのかもしれなかったのだから。
ビッチ♡サグメ
2024-10-01 10:27:27 +0000 UTC