SS Kanon 月宮あゆ、沢渡真琴
「FANBOXでは名雪さんばっかり贔屓されてズルいってボクは思うんだよ。うぐぅ」
「本当に贔屓されているのはツッコミ役として毎回出番を得ている香里だと思うけど。あうぅ」
月宮あゆと沢渡真琴は天野家のリビングで愚痴り合っていた。真琴が天野美汐に世話になって居候中であるために天野家が女子トークの会場になっていた。
「大体、名雪さんは公式アニメ的には負けヒロインの代表格として扱われているぐらいなのにぃ、うぐぅ」
「名雪が負けヒロインなのは良いけれど。あゆがメイン扱いされているのは納得いかない。真琴が一番可愛いんだからっ!」
2人にとって共通の敵は相沢祐一の恋人であり同居人でありエロい関係であることを隠そうともしない水瀬名雪だった。もっとも誰が祐一の一番かを巡っては2人の間で大きな見解の差が存在していた。
「大体、鬼畜変態な祐一くんの愛情と性欲を名雪さんが独占しているのはおかしいんだよ。原作では正体が狐だって気付いている真琴ちゃんにウコチャヌプコロしちゃうんだから見境なしの下半身マンの筈だよ」
「そうよっ! 祐一は一人の女じゃ満足できない性欲の塊なんだからっ! 外見も中身も小学生にしか見えないあゆをウコチャヌプコロしちゃう変態犯罪者なんだからっ!」
「ボクは獣っ子じゃないよっ!」
「妊娠できるかも分からないロリっ子でしょうがっ!」
「ロリっ子ってことなら、栞ちゃんの方だよっ! ボクのバストは巨乳の証と言える80cm台の80cm。一方で栞ちゃんは貧乳の証と言える70cm台の79cm。ボクは大人だよっ!」
「それ、単なる公称の話でしょ。しかも1cmしか違わないし……」
「栞ちゃんはU149のメンバーたちと一緒でも何の違和感もない。けれど、ボクは保護者側に回った方が自然なぐらいに大人なのっ!」
「あゆがもう一人加わっても違和感ないわよ……」
2人のトークは白熱していた。白熱し過ぎて話題はどんどんとズレてしまっていた。
「…………ここでボクたちのどちらが魅力的な女性か言い合っても何にもならないよ」
「そうね。実際に祐一を落とせないと意味がないんだから」
肩で息をする2人は疲れ切った果てにようやく話の軌道を戻した。
「祐一くんを名雪さんから寝取ってお嫁さんの座を確保しないとボクの人生危うい」
「アンタ、高校生なんでしょ? 高校卒業して自活して生きて行けば良いじゃないのよ」
「小学校でもお馬鹿だったボクが、それ以降眠りっ放しで目覚めたら制服だけ渡されて形だけ高校生になって卒業できると思うの? 真琴ちゃんこそ、美汐ちゃんにお世話されているんだから一生安泰でしょ?」
「真琴はこの家でペット扱いなのよっ! ペットだからお金の心配はしなくて良い。けれど、人間扱いはされないっ! 真琴は人間になったんだから、人間として生きたいのっ! それは祐一のお嫁さんにならないと叶えられないのっ!」
「美汐ちゃんって澄ました顔して意外と鬼畜なんだね。えっちな漫画みたいな設定……」
2人は互いの境遇にちょっとだけ同情した。そして自らの境遇を語ったことで祐一の妻の座を名雪から奪い取る決心を固めてみせた。
「祐一くんは天使なボクでも落ちない。なら、新しい魅力を追加するまでだよ♪」
あゆは自信満々に宣言すると着ている衣服を脱いで裸になってしまった。そして羽リュックの中に入っていたある物を取り出して装着してみせた。
「じゃ~ん♪ 狐っ子になったボクだよ~♪」
あゆは裸にケモグローブに狐耳、狐尻尾を付けた姿を披露していた。
「祐一くんは清楚な天使なボクよりもワイルドな獣っ子なボクの方が好きかもしれない。原作では真琴ちゃんにウコチャヌプコロしちゃうぐらいだからね。この姿で祐一くんに迫って妊娠してお嫁さんの座をゲット♪ ボクの一生は安泰だよ~♡」
あゆは勝利を確信して不敵な笑みを浮かべていた。
だが、真琴も負けていなかった。
「あゆがそう出るんなら、真琴だって新たな姿をお披露目してあげるんだからっ!」
真琴は大声で対抗の意思を表すとその場に衣服を脱ぎ捨てた。そしてリビングの隅に置かれていた紙袋の中からある物を装着してみせたのだった。
「天使モードの真琴なんだから♪」
「いつもとは違う真琴の魅力に祐一はメロメロですぐにお嫁さんになってくれって土下座して頼んできちゃうんだから♪ これで真琴は人間として生きられる~♪」
真琴は背中に大きな白い翼を生やし、頭には輪っかを付けて天使スタイルになっていた。
いつもとは違う魅力で祐一を悩殺する。真琴の決意の表れだった。
だが、2人の少女が意中の男を落とす為の新コスチュームを披露した場所が良くなかった。
「ただいま戻りました。真琴、良い子にしてましたか? トイレは定められた場所でできましたか? ……あっ」
美汐が学校から帰ってきた。彼女は自宅のリビング内でコスプレした裸を晒した2人の美少女を発見しまった。
「なるほど。月宮先輩も私のペットとして飼われることをご所望だったのですね」
美汐はあゆから狐耳と尻尾が生えていることを凝視しながら微笑んでみせた。
「へっ?」
あゆは美汐の言葉が理解できずに呆然と立っていた。だが、それが致命的な遅れとなってしまったのだった。
「分かりました。月宮先輩は私のペットとして一生安泰を保証しましょう♪」
「ええっ?」
言うが早いか美汐は目にも映らぬ高速移動であゆに近付いて、その首に首輪を嵌めてみせた。首輪には鎖が繋がれており、その先端は美汐の手に握られていた。
「心配しなくても先住ペットの真琴も平等に可愛がりますからね♡」
「へっ?」
美汐はまたしても超高速異動で真琴に近付いて天使コスプレ娘に首輪を嵌めてみせた。
「2人……いいえ、2匹とも。この天野美汐が責任をもって生涯お世話しますからペットライフを楽しんでくださいね」
「うぐぅううううぅっ! どうせペットになるなら飼い主は祐一くんが良いよぉおおおおぉっ!」
「あぅうううううぅっ! 真琴は早く人間になりたいわよぉおおおおおおおおぉっ!」
あゆと真琴は嘆いたが、首輪が外れることはなかった。
こうして2人は美汐のペットとして安泰な生活を手にしたのだった。