SS スライム倒して 2話より 娘たちの“真実”
アズサさまはファルファとシャルシャについて全く覚えがないと語っていた。けれど、それは本当だろうか?
アズサさま自身も覚えていない悲恋と別離があったのではないだろうか?
「ライカ、何だか長い間俯いて考え事しているようだけど。悩みなら相談に乗るよ~。ねぇ、聞いてる?」
そう。50年前にアズサさまはとても悲しい目に遭われたのだ。
およそ50年ほど前、アズサさまはモンスター討伐の遠征に出ていた。
スローライフをこよなく愛するアズサさまだが、依頼を受ければ遠出しないこともない。
後衛魔法使いとしてパーティーの一員となっていた。
そのパーティーにはいつも頭にスライムの被り物をしている小麦色の肌のチャラ男がいた。
チャラ男は戦士としての腕前は大したことがなかった。ハッキリと言ってしまえば足手まとい。けれど、女を口説く話術には長け、スライムの被り物を脱ぐとイケメンという厄介な一発芸を持っていた。
警戒心に疎く、かつ、男と全く接してこない生活を300年近く送ってきたアズサさまはチャラ男に簡単に騙されてしまった。
煽てられ、その気にさせられ、気が付けばチャラ男の部屋のベッドの上で股を開いていた。300年間守ってきた純潔を下半身だけで生きている軽薄男に捧げてしまった。
アズサさまは初めての恋に夢中だった。スローライフを送ることのみに傾けてきた意識をチャラ男へと向けてしまった。恋に盲目だった。
だから気が付かなかった。聞こえなかった。
「高原の魔女が300年守ってきた処女ゲット~♪ みんなに自慢してやろ~♪」
チャラ男にアズサさまへの愛など微塵もなく、身体と、アズサさまと寝たというステータスだけが目当てだったことに。
純潔を失ったアズサさまはそれから毎日チャラ男に身体を弄ばれ続けた。毎日毎日精液を体内に流し込まれた。いやらしい格好も次々させられた。
最初は異物の体内への挿入に痛がってばかりだったアズサさまも、性的な調教が進んで性的快楽を覚えるようになった。更に進んでメスとして開花した。
チャラ男がアズサさまを性のおもちゃにし始めてから半年ほどが過ぎた。アズサさまは妊娠し、お腹が目立ち始めた。
アズサさまはチャラ男との結婚を真剣に望んでいた。けれど、その話を何度切り出してもチャラ男にははぐらかされていた。
一方でチャラ男はもうアズサさまの身体には飽きていた。お腹の子の責任を取るのも絶対に御免だった。だから、他の女を作って逃げようとした。
アズサさまはその時になってようやく、自分が騙され続けてきたことに気が付いた。
チャラ男に弄ばれただけだと気が付いたアズサさまは我を忘れて怒り狂った。
怯えながら逃げるチャラ男に余のメラを放ち、灰も残さずに焼き尽くしてしまった。
チャラ男は死んだ。でも、アズサさまが純潔を失い、メスとして目覚め、お腹に子を宿してしまった事実は消えない。アズサさまは落ち込むしかなかった。
繊細なアズサさまの心はこの1件に耐えることができなかった。もう堕ろせる時期を越えていたので、アズサさまは双子の女の子を出産した。でも、育てることができなかった。
アズサさまは当時滞在していた村の村長の息子に生まれたばかりの双子を預けた。村長の息子はアズサさまに惚れていた。けれど、勇気がなくて何も言えないでいる内にチャラ男にNTRてしまった。青年はそれでもアズサさまへの想いを捨て去らず、愛した女性の望みを聞き入れたのだった。
アズサさまは娘を青年に預けて村を去っていった。けれど、娘を捨ててしまったことがアズサさまの心を更に苦しめた。
結局、アズサさまは心の痛みに耐えることができず、この遠征で起きた全てのことをDIY魔法で忘れることにした。
魔法は見事に成功し、チャラ男のこと、純潔を失ったこと、双子の娘を出産したこと、その娘を村長の息子に託して捨てたことなど全てを忘れてしまった。そうすることでアズサさまは再びスローライフを営めるようになった。
だが、捨てられた娘の方は心穏やかに育つことはできなかった。青年は正直者過ぎて、自分が本当の父親ではないこと。本当の父親はアズサさまが殺してしまったこと。父親の遺品はスライムの被り物だけであること。心労に耐えられず、アズサさまは2人を置いて去ってしまったことをつい喋ってしまった。
魔女と人間の子で、いつまでも幼い容姿のままの姉妹たちはその話を自分たちなりに解釈し直した。そして妹のシャルシャはアズサさまを倒すことだけを目標に破邪の魔法の絵特に勤しみ、村長の息子が老衰で死んだのを契機にして接触を図ってきた。それが、今回の歪な親子の再会の真相、なのではないかと思う。
「お~い……ライカ?」
「アズサさまが、身体だけが目当てのチャラ男の甘言ではなく、不器用な村長の息子の想いに気付いて受け入れていればこんな悲しい再会なんてせずに済んだに違いないのに……」
「チャラ男とか村長の息子って一体誰さっ!? 心当たりが全然ないんですけどっ!?」
「ですが、アズサさまが村長の息子と結ばれて幸せ円満一家を築いていたら。我がアズサさまと出会うこともなかったのでしょう。我にとっての至上の幸運と幸福は、アズサさまの不幸によって成り立っている」
「どういうことっ!?」
「人の不幸の上に愉悦するとは。やはり我はまだまだですね」
「ライカが何を言ってるのか……ちっとも分からないよぉおおおおおおおぉっ!?」
我はまだまだ未熟。
それが、ファルファとシャルシャ姉妹がこの高原の家を訪れてきて起きた騒動の我なりの結論、なのでした。
ビッチ♡サグメ
2025-01-12 16:05:12 +0000 UTC