SS 俺いも 正月バイト
「年末年始は何かと物入り。時間が空いている時は稼いで穴埋めするわよ」
1月2日。俺は瑠璃と共に神社でご奉仕バイトに精を出していた。
瑠璃は巫女装束姿がよく似合っている。
初めて会った時は黒ゴスロリと赤いカラーコンタクトで度肝を抜かれた。だが、彼女は元々黒髪パッツンロングで和風美人だ。巫女装束がよく似合っていた。
中二病な対応はすっかり鳴りを潜め、落ち着いた物腰で対応する彼女は巫女の雰囲気にピッタリだった。女子高生でありながら人妻である点で巫女として相応しいかは全くの別問題だったが。
「ほらっ、京介。貴方も私に見惚れていないでお掃除と参拝客の誘導に励みなさい」
「ああっ、そうだな」
愛妻に叱られて自分の仕事に戻る。このバイトは瑠璃によく合っていると言えるだろう。正月三が日の2日間限定なのがちょっと勿体ないぐらいだ。
***
1月4日土曜日。今日は沙織の紹介で1日だけ秋葉原のメイド喫茶でバイトすることになった。俺は黒いチョッキに白いシャツという漫画で定番の給仕服。瑠璃は……
「お帰りなさいませ、ご主人さまだにゃん♪」
猫耳メイドというひと昔の秋葉原を象徴する衣装だった。しかも、猫の手グローブを付けて語尾ににゃんを付ける2000年代アキバスタイルのまんまな仕様だった。
瑠璃だって相当に恥ずかしいだろう。にも拘わらず、顔には全く出さない。プロだなって思う。臨時バイトだけど。
「お席までご案内しますにゃん♪」
瑠璃はジーンズとチェック柄シャツで頭にはバンダナという干支を一周巻き戻したオールドスタイルのおっさん客を席まで案内する。今日は古き良きオタク文化を懐かしむデーということで店員も客も平成に戻った出で立ちが推奨されているのだ。
猫グローブを嵌めている為に何も持てない瑠璃は再び入口に戻って、お客の席誘導に戻る。笑顔を絶やさずに次々と古参のオタクたちを相手にしている訳だ。だが、俺から見てもキモい感じのオタクたちと最前線で接し続けるのだから内心は穏やかではないだろう。
「…………私の黒ゴスロリもこのキモオタクどもと同様に見られていたのかしら? さすがに屈辱だわ……」
うん。本当に内心の色々な物を隠して笑顔で接客する。瑠璃の意外な対人適応力を確認した一日となった。
***
1月5日日曜日。今日も沙織の紹介での臨時バイト。槇島家主催のイベントのスタッフとして雇われたわけだが……今日のバイトは昨日にも増して奇妙なものだった。
「酸素のお届けに参りました~」
瑠璃は『はたらく細胞』の赤血球のコスプレをして、酸素缶が入った段ボールを持ってホール内を回っていた。ステージ上の有名人たちに興奮し過ぎて倒れた観客に酸素を運んで吸引させるのが愛妻の仕事だった。
「……オタク向けのイベントにしても。観客は倒れ過ぎだし、興奮し過ぎだろ」
瑠璃が酸素を持ってひっきりなしに動かなければならない程に参加客はバタバタとよく倒れていく。この会場の酸素が足りていないのか、それともヤバイガスでも撒き散らされているんじゃないかと思うぐらいに。
そして、俺もまた忙しかった。
「ステージ上には昇らないでくださいっ! 危ないから下がってくださいっ!」
白血球のコスプレをした俺は、他の白血球スタッフと共にステージ上に上って来ようとする客を押し返すのに必死だった。何でこんなに興奮しているのか分からない。そもそも今日のイベントは俺も瑠璃も馴染みのない人たちのもの。何かの分野のスターたちの夢の共演らしいが、俺たちにはピンとこない。それでも仕事の大変さだけは身に染みるものだった。
「酸素をお届けに参りました。しっかり吸ってくださいね」
訳の分からない状況でも自分の仕事をこなし続ける嫁を見て、尊敬の念を抱くと共に誇らしい気分になるのだった。
***
イベントが終わり冬休みの臨時バイトは全て終了となり、俺たちは帰宅の途に着いた。疲れた体を癒すべく一緒に風呂に入っていた。
「瑠璃は奇妙なバイトでもちゃんと最後までこなしたんだから。偉いよな」
「仕事なんだから当然だわ」
声は澄ましていたが、顔は嬉しそう。昨日今日と変な客を相手にするバイトだったので、それをこなせたことは自信に繋がったのだろう。
「けれど、お正月という特別な時間を貴方と2人で一緒に過ごす機会がほとんどなかったことは少し残念だったわ」
瑠璃が意味ありげな流し目を送ってきた。
お正月に入ってからは忙しかったこともあって夫婦の夜の営みは元日の姫はじめを除いて淡白なものとなっていた。
夫として妻を満足させてやらねばならないだろう。うん。
「俺に経済力がなくて瑠璃には迷惑を掛けている」
「私たちは高校生夫婦なのだからお金がないのは仕方ないでしょう」
「だが、俺は瑠璃を満足させたい。というわけで、この身体を使って瑠璃に満足を提供したいと思うっ!」
湯船から立ち上がって、裸身を、特にいきり立った股間部分を瑠璃の顔に向かって見せ付ける。セクハラと言われても仕方がない行為だが、俺と瑠璃は正式な夫婦。セクハラには当たらないのさ。多分。
「…………まったく。貴方はTPOも弁えずに盛ってみせて。本当に困ったオスだわ♡」
瑠璃は口調こそ怒っていたが、俺の逞しいメガ粒子砲を見てうっとりしている。女性なら誰でも見惚れてしまうであろう超ド級大砲だからな。当然だろう。ちなみに俺のメガ粒子砲は瑠璃専用なので他の女子に披露したことはない。
「精々が人並みの大きさ、太さ、硬さしかないのでしょうけど。貴方のソレは私を幸せに導いてくれるわ」
瑠璃は愛しそうにそそり立った俺のモノを撫でてくれた。なんかディスられていた気がしないでもないが、妻は俺のキャノンを愛してくれている様で何よりだ。
「明日の冬休み最終日は何も予定を入れていない。今夜はいっぱい愛して頂戴ね」
「もちろんさっ♪」
サムズアップして白い歯を綻ばせながら嫁の要望に応えることを約束する。連日のバイトで疲れているこの身体だが、美少女妻との甘く熱い夜を想像すると体の奥底から力が湧き上がってくる。
「今夜は寝かさないからな」
「ええ。貴方が満足し尽くすまでいっぱい愛して頂戴」
抱き合って熱いキスをする。唇を通じて瑠璃の俺への愛情が伝わってくる。
無茶苦茶気分が盛り上がる。
俺は彼女を裸のままお姫さま抱っこして部屋へと運んだ。そしてベッドに寝かせると覆いかぶさって。
元日以来の熱い熱い熱い夫婦の営みが始まったのだった。