SS Kanon 川澄舞、倉田佐祐理
1月末の午前8時ごろ。美坂香里は来るべき本試験に向けて英単語帳をめくりながら歩いていた。だが、勉強に夢中になっていたせいで道を間違えてしまい、ラブホテル街へと足を踏み入れてしまった。
そして香里の前方に見知った顔の1人の男と2人の女が丁度ホテルから出てきた。
「あれは……相沢くんと川澄先輩、そして倉田先輩ね」
香里は足を止めてホテル前で立ち止まっていた3人を観察し始めた。
「どう見てもこれは3人で熱い夜を過ごして出てきたところね。ここは相沢くんが年上の女性2人とねんごろな関係になっている世界線なのね」
香里は自分がどんなルート上にいるのか再確認した。
「名雪、もう笑えないよってなっていたかしら? それとも、だおーだったかしら?」
香里はまだ自分が他の並行世界の自分の記憶に釣られていることを自覚せずにはいられなかった。だから、3人から目が離せなかった。
「あはは~♪ 舞の19歳の誕生日のお祝いに、祐一さんに一睡もせずに朝まで愛してもらえて良かったよね、舞~♪」
「はちみつくまさん。祐一の赤ちゃんの素を何度も何度もお腹に注いでもらった」
「俺は、干からびる寸前ですよ……」
3人はホテルの前に立ったまま、誰にはばかることもなくエロトークをしていた。
「やっぱり、女子大生というのは大人だけあってえっちなことにもオープンね。私も受験に合格して大学生になったら、あんな風に変わるのかしら?」
香里は東京で大学生になった自分の近未来の夜の姿を想像してみた。
「ないないないっ! 私は立派な会社に入る為に大学でも一生懸命勉強するんだからっ! 男に色目なんか使ったりしてる暇はないんだからっ!」
香里は首を横に振って妄想を吹き飛ばした。
そして再びエロ三昧な時間を過したらしい3人組へと注目した。
「舞がネコさんで祐一さんを誘惑したの。とってもかわいかったよ♪」
「みまみま。祐一は私たちが動物の耳や尻尾を付けているのをとても好む」
「祐一さんはコスプレ好きですもんね~♪ あっはっは~♪」
「コスプレ好きじゃなくて、美人が更に可愛くなるのが好きなんですよ。佐祐理さんのバニーもとてもムラムラしましたし」
「お褒め頂いて光栄です♡」
佐祐理が照れてみせていた。
「…………幾ら3人で恋人同士だからって。そういう会話を往来でするなっての」
香里は立ち止まって話を熱心に聞きながら愚痴ってみせた。
「だけど、その……俺、避妊もしないで2人に中出ししまくって。妊娠とかしちゃったら、マズいんじゃ……」
2人の美女に散々種付けを行ってから祐一は今になって不安に駆られていた。
「大丈夫ですよ~♪」
「本当ですか?」
「祐一さんに倉田姓になって頂くことにはなりますが。私も舞もいつでも妊娠問題なしです♡」
祐一が期待したのとは少し違う大丈夫が返ってきたのが香里にはその表情からよく分かった。
「祐一さんが推薦入学する、私と舞が通っている大学はお父さまの影響力がそれなりにあるところでして。大学生同士の夫婦も、子持ちで通うことも何の問題もないんです♪」
「佐祐理と授業の時間帯を分ければ、授業がない方が2人分の赤ん坊の面倒を見る手筈は整えている」
「ず、随分と先を見越して動いているんですね……」
香里の目には祐一の全身が微かに震えている様に見えていた。
「あっはっは~♪ 去年の舞の誕生日に2人して祐一さんに処女を捧げて以来ずっと子宮に精液を注ぎ込まれ続けていますから。学生結婚も子連れ通学も当然視野に入れますよ~」
「もし、祐一が子連れで大学に行くのを望まないのなら。私と佐祐理は家庭に残って子育てに専念する」
「私たちが将来的に3人で幸せに暮らしていく為には祐一さんが大学を卒業してくれることが一番大切なんです。私と舞の卒業よりも優先されることなんです」
「うぐっ」
祐一は言葉に詰まって何も言えなくなってしまった。
「相沢くんは完璧に倉田先輩の術中に嵌っているわね。まあ、自業自得なんだし。それに、あんな美人でスタイルの良い女子を2人もお嫁さんにもらえて。しかも一生安泰だなんて……超逆玉の輿で、何も悪いことがないじゃないの」
香里は祐一に薄皮一枚持っていた同情心を捨てた。
「とにかく、祐一さんは何の心配もせずに私と舞をどんどん孕ませてしまってください♪」
「はちみつくまさん。祐一の赤ちゃんを早くこの手で抱きたい」
「…………そう、ですね」
苦しそうな表情で頷いてみせる祐一。もはやこの男に話の主導権がないのは明白だった。
「あっはっは~♪ これで将来に対する不安も払しょくされましたね~♪」
佐祐理は大きな声で笑うと昨夜コスプレで祐一を誘惑したうさ耳を装着してみせた。
「知ってますか、祐一さん?」
「何をですか?」
「兎さんは性欲旺盛で、幾らでもえっちができちゃうんですよ~♪」
「はちみつくまさん……兎さん」
舞もまたうさ耳を付けてみせた。
「さあ、祐一さん♪ 兎さんになった私たちをいっぱいいっぱい愛してくださいね~♪」
「いや、さすがに無理ですってっ! 俺、もう干からびる寸前なんですよっ!?」
「祐一に拒否権はない」
佐祐理と舞は左右から祐一の腕を掴んで拘束すると出て来たばかりのホテルの中へと再び戻っていった。そのまま出て来なかった。
「…………受験本番前の貴重な時間を無駄にしてしまったわ。勉強に集中しないとね」
香里は再び英単語帳に目を落とすと歩き始めたのだった。