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枡久野恭(ますくのきょー)
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SS 好きな子がめがねを忘れた 三重あい キスの日


SS 好きな子がめがねを忘れた 三重あい キスの日


「明日は5月23日キスの日。俺は……三重さんとキスがしたいっ!」


 小村楓は自室の窓から月に向かって語り掛けながら中学生らしい欲望を口にしてみせた。

 中学3年生を迎えた少年は2年生の時からずっと気になっている少女三重あいとキスがしたかった。

 三重さんは、大変視力が悪い。だが、それにも関わらず、めがねを忘れたまま外出してしまうことが日常茶飯事と化していた。加えて忘れるのはめがねだけでなく、衣服を着るのを忘れて裸で出掛け、そのまま教室に来ることも少なくなかった。




 美少女が全裸で外を出歩くことには世間の風当たりがとても厳しい。全裸隊の活動によって、美少女の全裸野外活動は性的な興奮よりも嫌悪感、忌避感を人々に認識させるようになっていた。




 小村は度々全裸で登校してくる三重さんを周囲の非難の目から守るために奮闘を重ねてきた。その過程を通じて小村は三重さんへの想いをどんどん深めていった。


「三重さんだって、俺のことを少しは、意識してくれてるんじゃないだろうか……? いや、してくれている筈だっ!」


 小村は首を激しく縦に横に振りながら、自説兼妄想を肯定しようと頑張っていた。

 想い人である三重さんが恋愛や恋愛感情に疎いことは小村も含めてよく周知されている。けれど、彼女が気を許している男子は非常に少ない。

 小村が三重さんが最も気を許しているクラスメイト男子であることは少年の自惚れではなくみなが認めているところ。けれど、それが恋愛感情なのか、それともお父さんポジションの獲得なのか。小村にはよく分からなかった。三重さん自身、恋愛に関する意見表明は消極的で自分でもよく分かっていない可能性はあった。

 だが、中学3年生の情熱はよく分からないままを是では収まりきらなかった。


「そうだ、ラブレターだっ! 5月23日はラブレターの日でもあるっ!」


 小村は明日がラブレターの日でもあることを思い出して表情を華やかせた。


「ラブレターを書いて三重さんに渡せば俺たちは両想い。恋人同士になれるっ!」


 想定はすぐに妄想へと変化した。


「恋人同士になればキスだって可能。恥ずかしがってキス待ち姿勢を取る三重さん。彼女にロマンチックに口づけする俺。なんだ、簡単なことじゃないか♪」




 小村はとても嬉しそうな表情で月を見上げている。自室なのでツッコミを入れてくれる相手もいない。

 そして少年の妄想は留まることなくもっと先へと進んでしまった。


「キスをして雰囲気がとっても盛り上がってしまった俺たちは……そのまま一気に大人の階段を上がって……」


 小村の妄想が過激に膨らんでいく。

 妄想の中の三重さんは普段通りに全裸だった。だが、場所がいつもとは違った。

 教室でもなければ通学路でもない。何故か小村の部屋だった。

 部屋の中で男女が2人きり。しかも、少女は裸。そんな2人がキスをした。その後で何が起きるのかは自明の理とも言えた。


「俺は、優しく抱き締めながら彼女をこのベッドに寝かせる。三重さんはいつも通りに裸。ぜっ、前戯も、その、し易い筈だ……」


 妄想の中の少女は少年の愛撫で簡単に秘所を濡らしていた。


「じゅっ、準備が整ったら……俺と、三重さんは……一緒に、大人になるんだっ!!」


 少年は真っ赤になりながら声を振り絞った。


{小村くんなら……良いよ♡ でも、初めてだから……優しくしてね♡}


 少年にとって都合の良い台詞を吐きながら少女は自ら股を広げてみせた。




 小村は友人から回ってきたアダルト動画を思い浮かべながら妄想の三重さんに挿入を試みた。だが──


「…………って、いくら何でも、付き合ってもいないのにその妄想は三重さんのお父さんに死刑求刑されてしまうだろうがぁあああああああぁっ!!」


 いよいよ挿入というタイミングで絶叫。小村の心の中の警察が動き出して妄想を強制中断させたのだった。

 会ったこともない三重さんの父親を理由にして妄想を中断させる。小村にとってはいつものことだった。だが、今回は普段よりも妄想が過激に進み過ぎていた。


「……あっ、頭がクラクラする。あっ、これっ、駄目っぽい……」


 興奮し過ぎて頭に血がのぼってしまった小村は勢いを殺しながらベッドに寝転がるのが精いっぱいだった。ベッドに収まるや意識を失ってしまう。

 次に気付いたのはもう朝を迎えていた。


「…………って、ラブレターを書く暇がなかったっ! これじゃあ、駄目じゃ~~んっ!」


 ラブレター書けず。

 小村の妄想を基にした作戦は失敗に終わり、キスの日は特に何も性的なイベントが起きずに終わりを告げたのだった。














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