SS 俺いも 五更瑠璃他 覗き
「ナイスバディのあたしが誰かにお風呂を覗かれたんだよぉ~っ!」
高坂家に遊びに来て風呂に入っていた五更日向は裸のまま姉夫婦の寝室へと駆け込んできた。
「何をはしたない格好を晒しているのよ」
姉であるJK嫁の高坂瑠璃は瞳を細めて妹を窘めた。
「大体、何がナイスバディよ。貴女は大人になってもちっぱい確定でしょ」
「失敬なことを言わないでよっ!」
日向は頬を膨らませて抗議の意を表した。だが、姉は軽く流してみせた。
「それに、貧弱な貴女の身体を覗こうとする輩なんて1人しかいないでしょ。犯人は桐乃で決まりだわ」
「まあ、確かにその確率が一番高いんだけどねえ。99%ぐらいは……」
瑠璃の言葉に日向が納得、仕掛けたその時だった。
「アタシじゃないってのっ!」
大声を上げながら最有力容疑者の桐乃が室内に入ってきた。
「……何で貴女まで全裸なのよ?」
瑠璃は義妹を見ながら目を細めた。桐乃は全裸だった。
「そんなの日向ちゃんのお風呂に乱入するつもりだったからに決まってるでしょっ!」
桐乃は少しも悪びれることなくへらへらしながら断言してみせた。
「日向ちゃんのちっぱいが目の前で露にぃ~♡ ハァハァ」
「ひっ、ひぃいいいいいいぃっ!?」
日向は涙目になって慌てて両腕で胸とアソコを隠してみせた。
「覗きの犯人は桐乃、貴女で決まりということでしょ。これで事件解決ね」
瑠璃はもう興味を失ったとばかりに目を背けた。だが──
「アタシじゃないってのっ! お風呂に突撃しようと自室で全裸待機していたら日向ちゃんが全裸でアタシをいやらしく誘いながら廊下に現れたのっ!」
桐乃は全裸のまま大きな身振り手振りで自分が犯人ではないと訴えた。その必死な様を見て瑠璃はふと思い出した。
「…………確かに、隣の部屋でずっとハァハァする変態の鼻息が聞こえていたわね。日向が登ってくるまで」
日向が入浴していた間中、桐乃は隣の部屋にいたことを。
「じゃあ、犯人は別にいるってこと? 一体、誰?」
日向は自問しながら息をハッと止めてみせた。
「もしかして……犯人は京介くん?」
「そんなわけがないでしょ」
「京介くんはルリ姉に飽きて、若いアタシを後妻に娶ろうとお風呂に乱入を……」
「若いじゃなくて子どもの間違いでしょ」
「子どもだから良いんじゃないのっ! 小学生の、しかもまだ4年生の日向ちゃんをお嫁に貰おうだなんて京介のヤツ……日向ちゃんはアタシが嫁に欲しいってのっ!」
日向と桐乃はやたらと鼻息を荒くしている。
「京介は今バイト中だから日向の、ちっぱい妹のお風呂を覗くなんてあり得ないのよ」
瑠璃は把握していた。京介は今、沙織に紹介されたバイトで東京で開催中のイベントの手伝っていることを。
「じゃあ、一体誰が? 今の私は宝生麗子互換で推理力はポンコツでございますね程度しかないというのに……」
今の瑠璃は何だかんだ言ってごく僅かな情報から真相に辿り着いてしまうカトリーエイル互換ではなかった。正規の刑事だが操作能力は凡人、犯人に至る力に至ってはポンコツ。有能執事の影山がみんな解いてしまうという新感覚主人公互換だった。
「…………そう言えば、異世界から誰かがうちに来ると言っていたような……」
麗子互換のぼやっとした知能で瑠璃はふと来客の予定を思い出していた。
「現代日本とはだいぶ違う世界から来るみたいだから……チャイムを押して玄関から入って来るって思想がないかもしれないわね。あの子は……」
瑠璃は来客が誰であるのか思い出した。そして──
「瑠璃と同じ声がお風呂場からしたから行ってみたのだけど……妹、だったのね」
全裸の白髪少女が部屋に入ってきた。
「やはり貴女だったのね……ジョゼ」
「ええ、邪魔しているわ。瑠璃」
現れたのは、ハナザーボイスの持ち主で、人類が亜人と激しい生存競争を繰り広げている古代テイストな異世界のラグ村領主の持ち主で、加護と呼ばれる特別な力を有した少女ジョゼだった。
「どうして貴女まで裸なの?」
「長旅で汚れた体で瑠璃に会うのも失礼かと思って。お風呂を借りたわ。水が湧き出る装置、とても不思議だけど便利ね」
ジョゼは朗らかに笑っていた。
入浴を済ませた後、この家には女しかいないことを事前に確かめていたので裸のまま歩いて瑠璃の部屋までやって来たのだった。