SS 俺ガイル 由比ヶ浜結衣 雑旅4 埼玉編1
「ハッチ~っ! ここどこ~?」
「……所沢、だろうな」
6月後半の土曜日の午前9時過ぎ。俺と愛妻結衣は埼玉県の所沢を訪れていた。
埼玉への出陣ということで早朝に家を出た。千葉から東京へと移動し、更に今度は埼玉へと移動。現在は所沢駅にいるのは間違いないのだが自信がない。それには理由があった。
「西武池袋線じゃなくて西武新宿線に乗って来たからな。駅名が聞き慣れないものばかりで所沢で降りるまで自信がなかった」
『終末トレインどこへ行く?』の視聴によって埼玉県ではあるが、池袋線の駅名は全部覚えた。だが、その知識が活かされることはなかった。
「ハッチーが西武池袋線を怖がって他の路線を利用したんだから自業自得だよ~」
結衣は呆れ顔をこちらに向けている。だが、俺としては当然のリスク回避だった。
「終末トレインを見れば分かるだろう。西武池袋線に乗って命の危機に遭うのは御免だ。最終的には吾野に行くにしても、池袋線を利用する区間はできるだけ減らしたかったんだ」
「ハッチーは現実とテレビ番組をごちゃ混ぜにし過ぎだよ。大体、池袋線は今でも毎日大勢のお客さんを運んでいるんだよ。死にそうな目に遭う訳がないでしょ」
俺の訴えはまたしても却下されてしまった。結衣は7G事件を描いた大作である終末トレインで描かれた内容をまるで相手にしていなかった。
「それよりも、所沢まで来たところで疲れちゃったよ~」
普段学校に行くよりも早起きして出発したので結衣は眠そうだった。
「所沢で降りたのは遅めの朝食を兼ねた休憩の為でもある。吾野には午後に到着すれば良いし、のんびりしようぜ」
愛妻を朝食に誘う。
ぶっちゃけてしまうと、西武ライオンズの本拠地でもある所沢市。その中心である所沢駅。それなりに有名な駅に降りないと飯を食う場所を探すのに困るんじゃないかと危惧した結果でもあった。なんせ千葉県民は埼玉県のことをよく知らんから。終末トレインに出てきた吾野駅みたいに、適当に降りた駅が寂れたところだったらどうしようとか不安だった。
「じゃあ、モーニングの美味しいお店を聞き込みしよう~♪」
嫁はなかなかにアナログな提案を片手を振り上げながらしてきた。
ただ、分からなくもない。嫁はスイーツ系以外の口コミをあまり信用していない。スイーツは見た目と味が大体一致するが、それ以外は食べてみるまで分からないというのが理由。そして口コミ評価には政治的な操作意図を感じている。だから、実際に人の口から発せられた紹介の方を信じていた。
結衣は早速、俺たちと同年代の若いカップルに近付いて行った。だが、目的は果たせなかった。
「あっ! 直葉ちゃんだ~♪ どたぷ~ん」
「あっ、結衣さん、おはようございます。たぷたぷ~ん」
偶然出会ったショートカット少女は結衣のどたぷ~ん仲間のJC妹妻である桐ヶ谷直葉だった。つまり、直葉に支えられながらやっと歩いているやつれている男は兄夫の桐ヶ谷和人、SAOをクリアして大勢の命を救った無敵のキリトさまだった。
「直葉ちゃん、どこに行くの?」
「今日は良い天気なのでたまにはお兄ちゃんを外に連れ出して……休憩がてら、これからホテルに入ろうかなって思ってるんです」
人妻とはいえまだJCは、朝の内から堂々とラブホテルに入ることを述べてみせた。
スゲェ。なんかスゲェと思ったが、うちの結衣も負けてなかった。
「そっか♪ ホテルのルームサービスで朝食を頼んじゃえば良いんだ♪ あたしたちもホテルに行こうよ♪」
結衣は俺の腕を引っ張りながら笑ってみせた。
友達に会いに吾野まで電車に乗って行く。その途中でラブホテルで休憩する。我が妻もパネェ女傑だった。
いや、美味い朝食を求めて情報を集めるんでなかったんかい?
「じゃあ、一緒にホテルに行きましょう♪ アメニティもルームサービスも充実してる良いところがあるんですよ♪」
直葉はキリトを引っ張って嬉しそうに先導を始めた。引き摺られる様にして歩いて行く無敵のキリトさまがとても切なく見えた。
「良い休憩場所が見つかって良かったね♪ あたしたちも行こう~♪」
結衣に引っ張られて桐ヶ谷夫婦の後を付いていく。今の俺もまた、キリトさまと同じ様に第三者には見えているのだろうな……
***
**
『お兄ちゃん……本当は従兄妹、義妹妻JCマンコに思い切り精液を注ぎ込んで孕ませてぇえええええぇっ!! あぁあああああああああああああああぁっ♡♡』
俺たちが入ったラブホテルがアメニティも充実、ルームサービスも豊富、おまけに料金もやたら安い。そのからくりがよく分かった。
隣の部屋のエロボイスが聞こえてくる。壁の防音効果が不十分なのだ。建築上の欠陥。それが、このホテルが安いというか安くせざるを得ない理由に違いなかった。
「直葉ちゃん、まだ入ったばかりなのにえっちを愉しんでるね~♪」
シャワーを浴びて出てきた結衣は何だかとても嬉しそうだった。
隣の部屋のエロボイスを何とも思わない。むしろプラスに捉える。そういう感性の持ち主だからこそこのホテルをお得と思えるのだろう。
「ハッチーもシャワー、浴びれば良かったのに」
「俺はベッドでゴロッとしている方が体力が回復できるんだよ」
結衣は女の子だけあって汗臭さの方を気にして最初にシャワーを浴びた。俺は汗臭さとか気にしないので千葉からの移動で疲れた体を少しでも休ませておいた。どうせこれから──
「じゃあ、せっかくホテルに来てるんだし……えっち、しようよ♡」
結衣はタオルを脱ぎ捨てて全裸になった。
愛妻の行動は予想通りだった。でも、気になることはある。
「朝食は?」
「デリバリーでハンバーガーのセットを部屋の外に置いてもらうことになってるから。ホテルを出て駅ででも食べよ♪」
「今からホテルの“休憩”を終えて駅に向かう頃には完璧に昼食になっちまうんじゃないか?」
「お昼ご飯を2回食べれば良いんだよ♪」
愛妻は食いしん坊キャラみたいなことを言い出した。ただ、分からないでもない。
これから結衣は、とんでもない量のカロリーを消費するのだろうから……
「ハッチ~♪ 直葉ちゃんに負けないぐらいに激しいえっちをしようね~♡」
結衣は俺に飛び掛かってベッドに押し倒してきた。
そして──
「ハッチーと朝からホテルでえっち……いつも以上に興奮して気持ち良いよぉおおおおおおおおおおおぉっ♡♡」
結衣は騎乗位の体勢で俺を散々に搾り尽くしてとても気持ち良さそうだった。
結局俺たちは、結衣はエネルギーを回復し、俺は干からびる寸前まで絞り尽くされて所沢駅まで戻っていったのだった。
2人とも腹がとても減っていたのでデリバリーのハンバーガーを食って、それから駅近くの店に入って改めてスイーツ中心の食事を採った。
西武池袋線を前にして俺は死に掛けたが、ようやく人心地つくことができたのだった。