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枡久野恭(ますくのきょー)
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SS 俺いも 五更瑠璃 瑠璃の宝石


SS 俺いも 五更瑠璃 瑠璃の宝石


「どうして暑い日に遺跡発掘調査のアルバイトなんてしてるんだ、俺たち……」


 7月某日土曜日の午前11時頃の千葉県某所の林の中の大規模工事現場の一角。京介とJK妻の瑠璃は自分たちの身長よりも深く掘られた地面に降り立って土をふるいに掛けていた。京介は汗だくでへばり、暑さには強い瑠璃もまた額から汗を流していた。


「『瑠璃の宝石』に倣って珍しい鉱石を見つける為のバイトでしょ」

「俺たちが探しているのは鉱石じゃなくて、昔の集落の痕跡だけどな」


 京介は無心でふるいを振って、金網の上に戦国時代やそれ以前にここに人々が生活していた痕跡が残っていないか確かめる。金網の上に残るのは小石ばかりで人工物は何もない。

 もっとも、この発掘調査は法律と条令に従ってとりあえず義務的に行われているもの。貴重な遺跡を本気で探す為のものではなかった。


「瑠璃が影響を受けるのは、同じ声仲間の活動に影響されてのことが多いから今回は珍しいな」

「主人公の名前が谷川“瑠璃”だもの。影響を受けるのも当然というものだわ。ましてそれが経済活動に絡めそうなら尚更だわ」




 瑠璃は比較的大きな石を割って出てきた光る鉱石を見ながら微笑んでいた。


「まあ、山の斜面を掘ったり、川の中の石を漁る鉱石発掘アルバイトが見つからなかったのは画龍点睛だったけれど」

「この辺で砂金集めのバイトなんて募集しても。絶対に収益よりも俺たちに払うバイト代の方が高くつくだろうしな」


 京介は更に汗を流して作業しながら、遺跡発掘調査倍としかなかった理由を説いた。


 珍しい鉱物を自分で採取し売買して利潤を得ている者も少数存在する。しかし、集団、或いは組織的にやろうと思えば人件費の方が高くついてしまう。故に2人のバイトは鉱物探しではなく、義務で行われている発掘調査となったのだった。


「しかし、テレビの瑠璃って子は、こんな暑い中でお金にならない鉱物と向き合っているんだから凄いよな」

「元々は水晶や金といった高価な鉱石を見つけて金銭的な利潤を得ようと始めた行動だったのだけど。いつの間にか綺麗な鉱石を見つけること自体に嵌ってしまったのよ。ふふ」




 瑠璃は谷川瑠璃が鉱石採取オタクと化していく過程を思い出しながら微笑んでいた。

 オタクである彼女にとっては、ジャンルを問わずにオタクが増えること。生き甲斐になるほどに夢中になる何かに出会えること。それもただ座って消費するのではなく、能動的に頭と体を使っていること。アクティブなオタク仲間が増えたことが嬉しかった。


「そして俺たちはそんな彼女に影響を受けて暑い最中に土漁りをしているわけだが……これ、何か見つかるのか?」

「多分見つからないでしょうね。昔の記録や地図を見ても、この辺りに集落があったという話はないわ」

「つまり、徒労になる可能性が極めて高いと」

「谷川瑠璃の鉱物採取だって、ヒットの確率が高そうな場所で何時間も掛けてお目当てのものは数粒程度。闇雲に何を探しているのかも分からない私たちが貴重な物にヒットする可能性なんてほぼないわよ」

「代わりに日当という報酬を得られるか。まあ、仕方ないな」


 京介は小さく頷くと作業へと戻る。高校生夫婦は午前午後と土を漁ってはふるいに掛けて何かないか調べるを繰り返したのだった。



***

**



「発掘調査の一番の難点。それは時期じゃないかと思う。夏じゃなければもっと快適なバイトだっただろうな」

「その点に関しては全面的に同意だわ」




 バイト終了後。帰宅した2人は早速水風呂に入っていた。


「暑いし臭ってしまう。おまけに移動距離が長い」

「消臭スプレーと香水を掛けても誰かに嫌な顔をされるのではないかと帰宅途中は気が気でなかったわ」


 瑠璃はバスと電車内での不安を吐露した。

 工事現場での発掘調査はその立地上、どうしても日差しをもろに受けてしまう。炎天下の中で一日作業となるので辛い。加えて高坂家からだいぶ離れた現場だったのでバスや電車での移動、待ち時間がどうしても長くなる。16歳の思春期少女としては体臭が気になって仕方なかった。


「暑さ、臭い、長時間移動。番組では見え辛い厄介な部分だな」

「女子高生にアウトドアなおじさん趣味をさせる番組はみんなそうよ。だからこそ自動車を出してくれる大人を確保する過程が必要になるわけよ」

「俺も免許取ろうかな。もう18歳だし」

「受験が終わったら考えて欲しいわね。もっとも……アウトドア体験をした後での体力的に相当大変でしょうけど」

「女子高生のアウトドア趣味を追体験するのは大変だな。ははは」

「そうね。ふふふ」




 高校生夫婦は今日1日の苦労を思い出しながら楽しく笑い合ってみせたのだった。






























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