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枡久野恭(ますくのきょー)
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SS ダンまち ヘスティア ベルレフィ



SS ダンまち ヘスティア ベルレフィ


「ダンまちSSは元々ボクの、ボクだけの天下だったんだ……」




 真昼間、開店前の豊穣の女主人。ツインテールロリ巨乳女神は既に酔い潰れていた。潰れて泣きながらひっきりなしに愚痴っている。それを、色々あってこの店の女中として雇われることになったフレイアさまが聞かされていた。


「ボクとベルきゅんはいつだってカップル。どんな展開からでも結ばれる。ボクはベルきゅんのベイビーを産む為だけに存在する神、いや、ベルきゅんのお嫁さんになったのだから元神、現ベイビーパラダイス製造マシンと呼んだ方が正しい存在だったんだ」

「はいはい」


 フレイアさまは慣れない皿洗いに手を焼きながら適当に相槌だけを打っている。酔っぱらいの戯言に真剣に耳を貸す謂れはなかった。


「ボクだけがベルきゅんのヒロインだった。けれど、卑しか女杯で上位入賞間違いなしの下心に塗れたサポーターくんやヴァレン何某くんがベルくんを狙って止まないんだ。あの子どもたちには人の男を盗っちゃいけないっていう最低限のモラルさえもないんだよぉ~」




「…………そう」


 フレイヤさまはさり気なくそっぽを向いた。


「更にはエロ狐春姫くんも加わったりとベルきゅんを狙ういやらしいメス猫どもは増える一方だった」

「英雄が女を魅了するのは別に普通のことでしょ」

「そうっ! ベルきゅんほどの魅力があれば、助けられた女の子が自分に気があるんじゃないかと勘違いしてメス丸出しになってしまうのは当然あり得る話なんだぁっ!」


 ヘスティアさまはテーブルを叩きながら立ち上がってみせた。だが、酔っぱらっているのでまともに立っていられずすぐに沈んでしまった。


「そしてボクは神であるがゆえにこのオラリオでは制約が多い。例えば、毎日バイトが入っているせいでベルきゅんといつも一緒にいられない」

「戦争遊戯に勝っても借金がなくならない貴女の経済事情をみんな不思議に想っているわよ」

「黄金の、黄金の巨大ベルきゅん像がどうしても欲しかったんだあ~~~~っ! だけど、金の価格の高騰が昨今激しくて、手持ちの財産だけじゃどうにもならなかったんだぁ~っ!」


 ヘスティアさまは借金がなくならない理由を端的に述べてみせた。

 大きな屋敷を持ち、戦争遊戯の報酬で動かせるお金の額が大きくなると、それを担保に借金の額が更にかさむ。ヘスティア流経済術だった。


「貴女のその有り様、アポロンと変わらないじゃないの」

「失敬なっ! 気持ち悪いアポロンの像と、キュートでセクシーでプリティーなベルきゅん像を一緒にしないでおくれ」

「はいはい」

 

 フレイアさまは酔っ払いとまともに議論するのが無駄だと改めて悟った。


「更に、ボクは神である為にダンジョンには潜れない。一方で、ベルきゅんを狙う女豹どもはみんな冒険者という名の盗人たちだ」

「冒険者に対する評価が酷いわね」

「奴らはボクの目の届かないところで、純情無垢兎であるベルきゅんを獰猛な野獣の本性で食い散らかそうと目を光らせている。なのに、ボクはダンジョン内でベルきゅんの側にいてやれないんだっ!」

「ベルを護衛する冒険者を雇えば良いじゃない」


 フレイアさまは至極まともな意見を述べた。だが、それこそがヘスティアさまにとっては最大の後悔に繋がる失敗に直結するものだった。


「そうっ! だからこそボクはレフィーヤくんをベルきゅんのパートナーに指名したんだ。ベルくんを毛嫌いしている彼女なら、ベルくんを盗られることなくお邪魔虫を排除できる最適な人材だと思ってね」




「で、実際には妖精にベルを寝取られた、というわけね」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!」


 ツインテ女神は滝の涙を流して悲しんだ。


「最初はただのツンデレだったんだ。物語のオチにちょっと仲良くなるぐらいで……」


 ヘスティアさまはテーブルを何度も両手の拳で叩いてみせた。


「だけど、何度も繰り返している内にベルレフィエンドが当然みたいな流れに変わって。レフィーヤくん自身もベルくんと結ばれるのが当然みたいに思う様になってしまって。ベルレフィ結婚カップリング以外の世界線がなくなってしまったんだよぉ~~っ!」




「…………自業自得じゃない」

「サポーターくんやヴァレン何某くん、エルフくんたちがお馬鹿でへなちょこ過ぎてレフィーヤくんを止められないし、エロ狐春姫くんは裏切って向こう側に付くし。踏んだり蹴ったりなんだよぉ~っ!」





「貴女たち、よくこのお店でしょうもない悪だくみをしては楽しそうに過ごしてるじゃない……」


 フレイヤさまの意識は洗った皿を壊さない様に拭くことに9割がた向いていた。


「おっと、こうしちゃいられないっ!」


 ヘスティアさまは再び立ち上がった。少し酔いが抜けたのか今度は倒れなかった。


「アルバイト?」

「うんにゃ。今日はベルくんとレフィーヤくんが夫婦水入らずでデートに出掛けてるからね。2人の赤ん坊のベレくんをボクが面倒見ることになっているのさ♪」

「……この世界でも既に負けているのね」


 フレイヤさまの溜息交じりのツッコミはヘスティアさまの耳には届かなかった。


「卑しい女冒険者たちの浅ましさには際限がないからね。今日のベレくんの面倒だって、本当はボク1人でやる筈だったのに、90分ごとの交代制になってしまったのさ」

「仲良しなのね」

「とんでもないっ! サポーターくんたちはベレくんの15年後を狙って光源氏計画を発動中なのさ。母親、お姉さんの面を晒して接しておきながら、ベレくんが年頃になったら妻を名乗って情け容赦なく食い散らかすつもりなのさっ!」

「貴女もベルの息子の妻の座を狙っているのでしょ?」

「当然さ♪」


 ヘスティアさまはサムズアップして良い笑顔を見せた。


「さあ、サポーターくん。お世話係の交替の時間だっ! 1分の延長もさせないからなぁあああああああああぁっ!」


 ヘスティアは猛ダッシュして店から出て行った。


「……毎日楽しそうね、あの子」


 開店準備を邪魔されただけのフレイアさまは店の外を眺めながらとても大きなため息を吐いてみせたのだった。



「神さま、これ、レフィーヤさんと東京でデートした際に撮った“ぷりくら”です。いっぱい出てきたので、神さまにもお土産でプレゼントします」




「頭では分かっていても……ベルきゅんが他の女と結ばれた様を物的に見せ付けられるのはキツいぃいいいいいいいいいいいぃっ!!」


 ベルに“お土産”をもらったヘスティアさまたちは大絶叫を上げてオラリオの住民たちに迷惑がられたという。





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