SSS 俺ガイル 由比ヶ浜結衣 エンドレスエイト
「ハッチ~っ! あたしたちにはエンドレスエイトな展開が必要だと思うのっ!」
夏休みも残り1週間となった千葉県内の某海水浴場。JK愛妻結衣と海水浴を楽しんでいる最中のこと。
夏休みを徹頭徹尾満喫しまくっている結衣は変なことを言い出した。今も膝下まで海水に浸かりながら残暑厳しい夏を楽しんでいるにも関わらずだ。
「どうした? 宿題をやっていないから夏休みをやり直したいのか?」
「その通りだよ♪」
深い理由なんて何もなかった。
宿題をしていないから、夏休みが終わったら先生に怒られる。特に平塚先生にはめっちゃ怒られる。学校をクビにされるかもしれない。だから夏休みをやり直して宿題に手を付けたいのだ、妻は。
「夏休みはまだ1週間残っている。帰ってから頑張れば何とか終わるだろ」
安易なループ突入展開を却下する。
涼宮ハルヒのエンドレスエイトは物語っている。
夏休みを繰り返したってそんな良いことない。そもそも、繰り返していることにキョンが気付く確率自体が非常に低い。ループ脱出の鍵も思っている通りのものとは限らない。クリアしたところで、それを理解するのはキョンと長門ぐらいのもので、他の者にとっては単なる1回きりの夏休みに過ぎない。
要するに宿題をしていないからという理由で夏休みの繰り返しを望んでも、今の俺たちにとって良いことなんて何もないのだ。
「ハッチーこそ、宿題、良いの?」
「何を言っている? 俺はもう、自由工作以外の宿題は済ませてあるぞ……」
俺は夏休みの宿題は早めに手を付けていた。
夏休みの終わりごろは、ゲームの限定イベントが多いのだ。宿題なんぞに時間を取られていたら、豪華特典を貰い損ねてしまう。プリキュアのアホ枠担当の子たちみたいに夏休み最終日にひ~ひ~いう訳にはいかないのだ。
「平塚先生に出されたハッチー限定の特別宿題があったでしょ」
「何だ、それ?」
「朝顔の観察絵日記」
結衣の言葉に背筋がいきなり凍り付いた。
「しっ、しまったぁああああああああああああああぁっ!!」
海に向かって大声で叫んでいた。
「朝顔なんて栽培してなかったから、今更どうにもならないぃいいいいいいいいぃっ!!」
静ちゃんから俺だけに特別に命じられた宿題をどうやっても完遂することができない。
俺の心を絶望が満たしていく。今の俺ならプリキュアの敵にだってなれそうだ。
「新学期になって朝顔絵日記を提出できなかったら……俺は確実に静ちゃんに殺される……」
9月1日が俺の命日になることは間違いなかった。汚い花火が1つ、総武高校内に咲くことになるだろう。
「だから……ハッチーも一緒に願おうよ。エンドレスエイトが起きることを」
妻は優しく微笑みながら俺に向かって手を差し出してくれた。
結衣の優しさに思わず涙が零れた。
「ああっ、エンドレスエイト、起こそうな」
震える身体で妻の手を握り締めた。この手は決して放さない。改めて心に誓った。
「エンドレスエイトが起きるには、どんな条件が必要かな?」
「そんなことは決まっている。最後まで全力で夏休みを満喫することだっ!」
涼宮ハルヒを見習って夏休み最終日まで全力で遊び尽くすことを心に誓う。
そうすればきっと、もう一度夏休みを味わえるはずだっ!
「行こうぜ、結衣っ! もう一度夏休みを最初から迎える為にっ!」
俺は結衣の手を引きながら海のもっと奥を目指して歩き始めた。
それから俺たちは残暑厳しい海を全力で楽しんだ。
「あはははっ♪ 楽しいね、ハッチ~♪」
「当然だっ! 遊び尽くさなければ俺たちは夏を乗り切れないっ!」
「ハッチ~……あたし、ハッチーと触れ合っている内に……えっちな気分になっちゃった♡」
「涼宮ハルヒよりも過激な過ごし方をすれば、エンドレスエイトはもっと起き易くなるかもしれない。誰にもみつからないところに移動するぞっ!」
「えへへへ♡ ハッチー大好き♡」
俺たちは8月も残り1週間の海を全力で堪能した。堪能しまくった。
汗だらけ、汁塗れの青春を送った。
「後は……8月31日の夜が終わったら、夏休み最初に戻っていることを期待するだけだな」
「うん♪」
沈みゆく夕日を見ながらの俺の呟きに、結衣は大きく頷いてみせた。
俺たちの本当の夏休みは……これからだっ!