SSS 涼宮ハルヒの憂鬱 長門有希他 エンドレスエイトのバグ
キョンは涼宮ハルヒの引き起こしたエンドレスエイトに嵌ってしまい、夏休みを何度も繰り返す事態に陥っていた。
「なあ、長門」
「何?」
プールイベントを翌日に控えた8月後半某日の夕方。キョンは近所の児童公園で長門有希と直接コンタクトを取っていた。
「今回でループを抜け出せる可能性は?」
「0ではない。しかし、涼宮ハルヒがループを解除する条件を私たちはいまだみつけていない。故に今回でループを脱する確率は限りなく0に近い」
「そうか」
予想した通りの解答にキョンは小さなため息を吐いてみせた。
「今回もまたループ脱出は望み薄という訳か。これで、何度目だ……」
「私が観測している限りでは12、345回目。もっとも貴方が夏休みのループに気付く可能性は5%ほどに過ぎず、これで通算620回目」
「夏休み600年分以上か。そう考えると、人生6回分以上は夏休みを満喫しているってわけか。なるほどな」
キョンは一旦頷いてみせた。だが、ここから先の反応は長門がよく知るものではなかった。
「ハルヒに振り回される日々はそれなりに面白くはある。だが、ラッキースケベが足りない」
「…………えっ?」
長門は思わずキョンを二度見してしまった。目の前にいるのは、どう分析してみてもキョンと呼ばれる男子高校生だった。だが、中身が彼女が知る人物とは異なっていた。
「朝日奈さんの豊満なおっぱいが、水着のブラという束縛を離れてポロリする瞬間が見たい」
「……目の前の識別個体は繰り返される夏休みという時空間の歪な繰り返しの中で生じたキョンのバグと仮定」
「この際、ハルヒの胸でも構わない。胸だけは高校生女子の平均をだいぶ上回っている筈だからな。実は俺は……おっぱい星人なんだ」
「目の前の識別個体はキョンのバグと断定」
長門は冷めた瞳のまま、繰り返される夏休みの中でキョンにもまた歪みが生じてしまうケースがあることを認識してみせた。
「…………私のは?」
「えっ?」
「私の胸部露出は見たいのかと質問している」
ノーと言われたら即座にバグを消去する。朝倉涼子にしたように完膚なきまでに徹底的に。長門は既に覚悟と計算を決めていた。
「おっぱい星人の俺ではあるが、長門のちっぱいももちろん見たいに決まっている。女子高生の胸は大きさ、形に関係なくみんな宝物なのさ。ふっ」
キョンは髪を掻き揚げて格好付けてみせた。
女子高生、それも同じ部活仲間の少女たちの胸をあけすけに見たがる。長門が識別するキョンと比較すればバグ以外の何物でもなかった。だが──
「分かった。協力する」
長門はバグであることに目を瞑り、キョンへの協力を申し出た。何故そのような行動に出たのかは自分でもよく分からなかった。
そして翌日──
「きゃぁああああああああああああああぁっ!? 水着が、水着が脱げちゃいましたぁああああああぁっ!? キョンくん、見ちゃ駄目ですぅうううううううぅっ!?」
「まったく、ラッキースケベは最高だぜっ!」
【みくる ポロリ
「ウォータースライダーをうつぶせに滑っていったら、いつの間にかブラが取れてしまった。実に興味深い現象だわ……あたしの目の前にアンタがいて、あたしの胸をガン見していること以外はねっ!」
「まったく、ラッキースケベは最高だぜっ!」
「殺すっ!」
バグキョンは長門の力と計算力を借りて順調に朝日奈みくるとハルヒのポロリを拝見することに成功。表情こそ普段とあまり変わらないもののご満悦だった。
「次は私の番」
長門はプールサイドにキョンを呼び出して立っていた。他のループで着ているワンピース型ではなく、ピンク色のビキニタイプの水着だった。
ポロリ、胸出しをし易い様にとわざわざ水着を別途用意して今日のプールに望んでいた。
「私が胸部を全面開放すれば貴方の望みは全て叶う」
長門は自らビキニを止めている背中の紐を解いてみせた。
キョンがプールを見つめている横で長門は裸の胸を晒してみせたのだった。
キョンに裸を見せ付ける。キョンの性的な興味を惹く。それこそが、長門がキョンに協力してみくるとハルヒのポロリを引き起こした理由だった。
何故キョンに性的な興味を抱いて欲しいのか。自分でも未解析な部分ではあったが、分析完了よりも実行の方が大事だった。
みくるとハルヒの裸でキョンの性的な興奮を高めてしまった。もう後には引けない。ところが──
「朝日奈さんの超高校級のみくるっぱいと、ツンデレで乳首もツンと尖ってたハルヒっぱいも堪能した。もう、十分だよ♪ ありがとうな」
キョンはプールを、その中で遊んでいるみくるとハルヒを見ながらうんうんと何度も頷いていた。大きくて形の良い胸を2人分も見てしまっては、長門のちっぱいには特に興味を惹かれなかった。乳房を晒している長門の方に顔も向けなかった。所詮はおっぱい星人だった。
「私は既に胸部開放している」
「そうか。だが、俺はもう十分に満足している。水着を着直してくれて大丈夫だぞ」
キョンはみくるとハルヒの水上で揺れる胸から目を離さなかった。長門の桜色の乳首を一瞥もしない。
「やはり貴方は繰り返される夏休みが生み出した時空間の歪み、バグ」
長門はキョンに向かって手を突き出してみせた。その瞳は蒼く発光していた。
「サヨウナラ」
「うわらばっ!?」
長門の口により、キョンが体調を崩してプールを先に出たことが告げられた。
以降、キョンは体調不良を理由にハルヒの提案するイベントに参加することはなかった。
夏休みが終わるまでキョンの姿を見たSOS団団員はなく、従ってループを脱出する鍵を見つけることはできなかった。
「……バグは排除する」
夏休み12、346周目への突入を確認しながら長門は前の周で得た結論を口にした。
もう会えない存在になってしまった前の周のキョンが大空から笑顔で彼女を見守っていた。