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枡久野恭(ますくのきょー)
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SSS アークザラッド リーザ 2025 


SSS アークザラッド リーザ 2025


 闇の四将軍やクライブさんたちとの戦いが終わり、とりあえず仮初でも平和になった世界でエルクと結婚して1年が経っていた。私は15歳、エルクは16歳になっていた。


「エルクはハンターの仕事で忙しくて最近は私をあまり構ってくれないんです。夫婦の危機なんです」


 私はシャンテさんがいるお店に行って愚痴っていた。まだお酒は飲めないのでリンゴジュースを飲みながら。


「そうね……シュウも同じね。しかもアイツの場合、そろそろ結婚してくれるのかなあと思ったら、何か月も姿を消して話をもみ消したり。その分では、闇の勢力との戦いが終わって早々に結婚にこぎ着けたリーザの方がよほど私より人生を上手く歩いているわ」

「…………でも、離婚の危機なんです。エルクはハンターの依頼にのめり込み過ぎなんです」


 私が頬を膨らませてムスッとしているとシャンテさんは大きく頷いてみせた。


「そうね。女のことを放っておいて自分のことに夢中になり過ぎている男にはお仕置きが必要よね」


 シャンテさんは一旦店の奥へと入ると、しばらく物音を立ててそれから戻って来た。手に不思議な衣装ととある得物を持って。


「リーザは旦那さんであるエルクにこれをプレゼントするからしっかりと分からせてあげなさい」

「はいっ♪ ありがとうございます」


 私はシャンテさんからの贈り物を喜んで受け取った。

 その衣装と道具を胸に抱いているだけで心が燃え上がって来るのを感じていた。



***


「シュウのヤツ、敵のアジトを囲んでから慎重すぎるんだよなあ。闇の勢力はもう貧弱な残党しかいないんだから力押しで十分勝てるっての」


 エルクは隣国での依頼を終えて1週間ぶりに自宅へと戻って来た。依頼内容は闇の勢力の残党が占拠する工場施設の解放。エルクを含む腕利きのハンターが数名で請け負った。

 元々は3日以内に片付く筈だった。だが、非合法な武器を製造していた工場が襲撃に備えて堅牢な造りになっており、ハンターたちのリーダー役であるシュウが慎重に事を進めた結果、当初の予定よりもだいぶ時間が掛かってしまったのだった。


「連絡も入れられなかったし、リーザ怒ってるだろうな。いや、でも、俺たちはラブラブ夫婦だし大丈夫だよな」


 エルクは楽観的に考えながらマンションの自室の玄関扉を開けた。その先に何が待っているのかも予測せずに。


「ただいま」


 エルクは声を掛けながら荷物を置きに真っ直ぐに寝室へと入っていった。


「お帰りなさい、エルク」


 俯きながら歩いていると幼な妻であるリーザの声が届いた。顔を上げる。


「ただいま、リーザ…………えぇええええええええええええぇっ!?」


 エルクは驚いて大声を上げた。絶叫するしかなかった。

 自分の愛する妻が、自分の知らない服装をしていたのだから。


「どうかしたの、エルク?」

「どっ、どうかしたって……それ、女王さまの服装じゃないかっ!? 鞭まで持ってるし」




 ほほ笑むリーザはとても際どいボンテージコスチュームに身を包んでいた。

 結婚しても水着になることさえ躊躇する純情な心を残した彼女とはおよそ似つかわしくない過激な服装。しかも両腕には鞭が握られていた。

 あり得ない。エルクの頭は混乱で訳が分からなくなった。

 だが、女王さまになったリーザは笑っていた。


「私、故郷のホルンの村では動物たちと仲良くしたり、牛や羊を調教するのがとっても上手かったのよ♪」


 リーザが鞭を振るってみせた。素人には出せない風を切るしなやかな音が鳴り響いてみせた。


「なっ、何故、リーザ、いや、リーザさんは女王さまの格好を?」

「エルクを調教するの♪」


 間髪入れずにリーザは微笑みを崩さないまま返してみせた。


「なっ、何故、何でしょうか……?」


 エルクは質問しながら震えていた。自分を待ち受けている運命を本能で感じ取っていた。


「エルクが新妻の私を放っておいて仕事にばかりかまけているから拗ねちゃったの♪」

「でっ、でっ、ですよね……」


 微笑みながらにじり寄ってくるリーザ。

 エルクは動かず荒い呼吸を繰り返しながら部屋の周囲を窺っていた。

 彼の後ろ、寝室の入口にはリーザの愛モンスターであるパンディッドがいて扉を塞いでいた。


「逃げ場はなし……誘い込まれたか」


 エルクは天井を見上げた。


「なあ、シュウ。闇の勢力の工場よりよっぽど怖いトラップがこの家にはあったぜ」


 シュウが慎重を期して偵察を繰り返して時間が掛かったせいでこの事態を招いたことを恨めしく思う。だが、悔いている時間も少年にはなかった。


「また、仕事のことを思い出してっ。もう……お仕置きなんだから」


 幼な妻女王さまは拗ねた表情で鞭を振るってみせた。

 幼い頃から鞭を扱ってきた少女の一撃は、ごく軽く振っただけに見えても強力だった。


「エルクのバカぁああああああああああああああぁっ!!」




「ぎゃぁああああああああああああああああぁっ!?」


 その日、エルクの悲鳴が絶えることはなかったという。

 そして、これ以降、エルクは仕事にのめり込み過ぎてリーザを疎かにすることがなくなった。


「えへへへ♪ エルク、大好き♡」




 夫の調教に成功し、リーザは幸せな結婚生活を送ったという。
















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