SSS わた天 星野みやこ キュアリリアン(仮)
「明日は兎山悟くんの誕生日なんです。冬コミで過激な悟いろ本を出す為にもいろはちゃんと兎山くんを中学生夫婦にさせたいんです。悟いろ支援に全力を尽くしたいのでみやこさんにキュアリリアンの代役をお願いしたいんです」
9月6日土曜日昼過ぎ。引きこもり気味女子大生星野みやこの元を同じ声友達である猫屋敷まゆが訪れていた。
まゆのお願いは、しばらく忙しいのでキュアリリアンの代役をみやこに頼みたいというものだった。
「キュアリリアンの代役って……あのヒラヒラフリフリコスチュームを着て、敵と戦うってこと……?」
話を聞いたみやこは全身から滝の汗を流していた。その表情は確認するまでもなく拒否したいと書いてあった。
「はい。でも、わんだふるぷりきゅあは攻撃をしませんので、ガルガルしてる子を大人しくさせるだけでオーケーですよ♪」
「ガルガルしてる子を大人しくさせるだけって……プリキュアは女の子のモノだから。十八歳成人を迎えてる私には無理だよぉっ」
「あげはさんは十八歳専門学校生でプリキュアになりましたからみやこさんも大丈夫です」
「プリキュアになるんだったら……カナヲちゃんとか雪さんとかバトルオーケーな声仲間もいるじゃん……」
「カナヲさんは無限城攻略で忙しく、雪さんもメイドのお仕事が忙しいそうです。それに……攻撃に躊躇いのない人はキュアリリアンとしてはよろしくないので」
「確かに私は暇人で、攻撃性皆無だよぉおおおおおぉっ! でもぉ~~っ!」
みやこは頑張った。キュアリリアンをやりたくない一心で。
「私がプリキュアになれるわけないじゃん、ムリムリっ!」
だが、数分後──
「無理じゃなかったぁあああああああああああぁっ!!」
「プリキュアは多分音声認証なので、みやこさんなら正規の変身できますよ♪」
みやこはキュアリリアンに変身して近所の公園に立っていた。
「もうじき19歳なのに魔法少女のコスしてるなんて恥ずかしい……」
「ご近所の女の子から、みやこさんは魔法少女のコスプレをノリノリでしていると聞きましたよ」
「乃愛ちゃんかぁ……」
トップシークレットを知られみやこは精神的に凹んだ。
「よく似合ってますから大丈夫ですよ♪」
「ありがとう……でも、似合ってると恥ずかしいは別の感情なんだよ……」
「キュアリリアンにちゃんと変身できたのを確認したので私はこれで。代理、お願いしますね」
「えっ?」
「特別なワンダフルで大人プリキュアな悟いろを成し遂げなくちゃ~っ!」
「ええぇえええええええぇっ!?」
みやこが恥ずかしさで動けない間にまゆはダッシュで去ってしまった。
キュアリリアン(仮)は公園の中で棒立ちを続けた。
「ひなたちゃん。ミャーさんが魔法少女のコスプレして立ち竦んでいるんだけど……」
「みゃー姉は羞恥プレイ好きな変態だから放っておくのが良いんだぞ」
結局この日、ガルガルは現れず、みやこは変身放置プレイで終わりを告げたのだった。
***
変身したみやこの前にガルガルが現れたのはその翌日のことだった。
「悟くんのお誕生日を記念してお嫁入りするには、悟くんを暗がりに無理やり連れ込んで服を引き裂いてガルガルし尽くすしないっ! ガルガルガル」
裸にリボンを巻いて犬耳を付けた少女が鼻息荒くガルガルと喉を鳴らして公園へと入って来た。少女は人を連れ込んで襲い掛かるのに丁度良い暗がりを探して公園内を熱心に調べ回っていた。
「ああああっ!? 私が代理の時に、ガルガルが出現しちゃったよぉっ!?」
ジャージ姿でベンチに座って黄昏れていたみやこは己の運のなさを嘆いた。
だが、魔法少女アニメが大好きで一応それなりの正義感をアニメから受け継いでいるみやこは黙って逃げるわけにはいかなかった。
「ムーンプリズムパワーっ! メイクアップっ!」
掛け声は違ったが、とりあえず変身は成功。だが、目の前のガルガル少女にビビって全身を震わせていた。
「そっ、そこの、やたらガルガルしている犬耳少女ちゃん。おっ、大人しくなってくれないと……キュアリリアンが猫に代わってお仕置き、しちゃうよ……」
口上を完全に間違えてしまった。体の震えはより一層激しくなる。
だが、逃げない。正確に言えば、体が硬直して逃げることもできない状況だった。
「キュアリリアン? ガルガルガル」
ガルガル少女は変身したみやこを一瞥した。だが、すぐに興味を失ったようで、再び公園内の探索に戻ってしまった。
キュアリリアンに変身したところでみやこからはまるで強者の風格、力を感じない。少女にとって相手にして排除する価値もなかった。
「この公園は全部が明るすぎる。悟くんが泣き叫んだらすぐにバレてしまう。他の場所を探さなきゃ。悟くんに責任を取らせてお嫁入りをできる場所の確保を。ガルガルガル」
犬耳裸リボン少女は、この公園が目的にそぐわないと判断して出て行った。目を血走らせてガルガルしっ放しだったが、とにかくこの公園から出て行ったことは間違いなかった。
「これって……私がこの公園を守り切った。勝ちってことだよね……やったぁ~っ♡♡」
みやこは震えていたのも忘れ、万歳して公園の防衛に成功したことを喜んだ。
キュアリリアン(仮)の初陣はこうして街を守ることに成功したのだった。
だが、プリキュアは一度撃退に成功したぐらいで終わる易しい仕事ではない。
「明後日の12歳の誕生日を記念して、イエスロリータノータッチで手を出して来ない昴さんと結婚するには……適当な暗がりに連れ込んで、無理やりにでもスリーポイントシュートを私のゴールに決めさせて。男としての責任を取ってもらってお嫁入りするのが唯一の方法、ですよね♪ ガルガルガル」
次のガルガルが迫っていた。
頑張れ、キュアリリアン(仮)
キミの本当の戦いはこれからだっ!