※ネタバレ 何と無慈悲な、そして素晴らしい改変。 黄前部長がいなければ、北宇治は確実に崩壊していたと思う。だから久美子と真由の実力が「本当に」拮抗していたなら、ソリは自動的に部長になっていたはずだ。 しかし滝先生は久美子を選ぶことができなかった(思えば、その時点で答えは出ていた)。自分が真由を選べば、今度こそ部は崩壊する……先生はそう考えたのかもしれない(視聴者も納得しないだろう)。 そのくらい北宇治にとって、黄前部長は大きな存在になっていたと思う。 ●久美子と麗奈 「俺たちはもう引き返せねぇところまで来てるんだ。芹沢を斬った時から俺たちは変わったんだ」(大河『新選組!』) 「実力主義」を掲げて香織先輩を斬った(正確には自刃に追い込んだ)時、久美子と麗奈は後戻りできなくなった。はっきり言えば呪われた(これを肯定した視聴者も)。 そして今回、斬る側だった久美子は斬られる側となり、麗奈は(香織と同じく)自刃して果てることとなった。 私情を挟めば北宇治を裏切ることになる。 実力主義を通してきた久美子と麗奈、二人は怪物となり、ついには自分たち自身を八つ裂きにしてしまった。 とてもつらい。 「(手段を選ばず、恥も外聞もなく命乞いをするならば)死から逃れることは難しいことではない。しかし、不正義や不道徳を免れることはずっと難しい」(ソクラテス) ソクラテスは「己の命」よりも「正しくあること、善く生きること」を選び、穏やかに死を受け入れた。それによって、彼は人類永遠の教師となった。 12話における「不正義や不道徳」とは、感情に負け自分を曲げることと思われる。しかし久美子と麗奈は曲げなかった。己に勝った。「ソリを一緒に吹く」ことより大事なものを、二人は手に入れた。 彼女たちの選択は北宇治で語り継がれ、その伝統の礎となるだろう。 ……とか何とか。 冷静になろうと、こうして書いてみても悔しい。創作物を見て目の前が真っ暗になるなんて経験、なかなかない。 この展開を採用するのは、本当に勇気のいることだったと思う。 「他人を負かすってのはそんなむずかしい事じゃあないんだ……もっとも『むずかしい事』は! いいかい!もっとも『むずかしい事』は! 『自分を乗り越える事』さ!」(岸辺露伴) ●奏後輩について 奏「私だって…最後に久美子先輩と吹きたかった」 泣きじゃくる奏の姿を見ながら、確かにこっちの方がいい、これが正解だと思った。 黄前ちゃんとは別ベクトルで、奏後輩は株を上げたと思う。 奏の「一緒に吹きたかった」は、ほとんど「告白」のようなもので、これは久美子が敗れたからこそ光る展開。 「告白」は絶望を吹き飛ばすからだ(『SLAM DUNK』の「大好きです 今度は嘘じゃないっす」や『進撃の巨人』の「マフラーを巻いてくれてありがとう…」がそれだ)。 ここでようやく二人の心は繋がり、久石奏の物語は終わりを迎えた。 奏は望むものを何一つ手に入れることができなかったけど、そのことによって流れ落ちた涙は視聴者の心を代弁し、癒やした。 盤外において、彼女は勝利したのだ。 ……とでも考えないとやってらんない笑。 本当、彼女の存在に救われた。 ●黄前久美子は負けたのか? それは最終話ラストシーンを見れば明らかだろう。黄前ちゃんにとって、北宇治での3年間は大きな財産になった。 心からそう思う。 『響け!ユーフォニアム』、最高の作品でした。スタッフの皆様、9年間ありがとうございました。