呪術者の舞①
Added 2022-09-07 16:16:03 +0000 UTC時は昔。中国のある山奥に、1人の女が住んでいた。 その女はまだ二十歳になったばかりの若い女で、世話役の婢女2人と共にたった3人で寺院にいた。造りは古いが質の良い木を使用されており、定期的な手入れもあって、酷い老朽は見られない。 しかし、そんな素晴らしき寺院には、人は滅多に寄り付かなかった。山奥にあるというのも一つあるが、なにより、嫌な噂が流れていたのだ。 その寺院に住む若い女は、妙な術を使うというものだ。 話によれば、女は術を使うことで死者を蘇らせることが出来るという。 死者の霊を降ろすことは、他の術者たちでも可能だった。しかし、死者を完全に蘇らせることは誰にも出来なかったし、不可能とされていた。たとえ可能だとしても、禁忌として戒められている地区もある。 そんな唯一無二の術を、女は使えるというのだ。 もちろん対価は必要だ。術に代償は付き物である。一般的な術の使用に使われるのは高価な金品だが、その蘇生の術には、生きた人間の肉体が必要だと言う。 つまり、誰かを生き返らせるためには、誰かを殺さなければならないのだ。 それこそが、寺院に人が寄り付かない最大の理由であった。人を殺す術、呪術を使う者は、どこであっても居場所はない。人々から忌み嫌われ、やがては王朝の兵に囚われて処刑される定めである。関わるとろくなことにはならない。 しかし、そんな噂がいくら流れようと、王朝は女に対して決して動かなかった。それを訝しむ者もいれば、王朝すらも手が出せないほどの強力な呪術者なのだと、女をさらに畏怖する者もいた。少数だが、本当はそんな術者など存在しないのではないかと口にする者も現れた。それほどまでに、その女の存在は町の者たちにとって不可解な物だったのだ。 そんな恐怖と懐疑の噂は、やがて術者の女にある呼称を作るに至った。 その名は、「呪蝶(じゅちょう)」 呪いを振りまく、怪しげな蝶である。